ツール・ド・北海道2012 第1ステージ詳報黒枝が電光一閃、プロを置き去りに 躍進続ける鹿屋体育大学

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【第1ステージ結果】大学生の黒枝士揮がスプリント勝利

獲得した3枚のリーダージャージと共に記念撮影をする鹿屋体育大学チーム。前列右から順に山本元喜、黒川剛監督、黒枝士揮獲得した3枚のリーダージャージと共に記念撮影をする鹿屋体育大学チーム。前列右から順に山本元喜、黒川剛監督、黒枝士揮

 ツール・ド・北海道は、日本で開催されるステージレースの中では、大学生チームの出場枠が多いレースだ。今年は計5チームが、国内外のプロチームに混じって出場する。その中で異彩を放ち続けるのが、鹿屋体育大学だ。9月15日に行われた今年の第1ステージではついに優勝を果たし、プロチームを抑えて総合トップの座に立ってみせた。

 最後の直線に入るまで、チームNIPPOのコントロールは完璧だった。無駄なアタックを封じて集団スプリントに持ち込むシンプルな展開。スプリントはやや混戦となったものの、NIPPOのスプリンターであるリケーゼは走行ラインをコース端に取り、ライバルたちのルートを巧妙に塞ぎながら、トップでゴールを切ろうとしていた。

 しかし中央に空いたラインから鋭い加速で飛び出した選手が、全ての選手をかわして先頭でゴールを駆け抜けた。鹿屋体育大学の黒枝士揮だ。「ちょっとだけ道が空いたので、思い切ってそこから出たら、ゴールラインが見えた」とやや驚き気味に話す黒枝。ステージ優勝だけでなく、個人総合、ポイント総合、U23賞の計3枚のリーダージャージを獲得してしまった。

 鹿屋体育大学は、この大会のU23賞(日本人の23歳未満選手の総合トップ)を現在7年連続で取り続けている。どんな強い選手でも4年で卒業してしまう学生チームとしては、驚異的な記録だ。獲得者も特定の選手に偏らず、7年間で6人。それだけ選手を生み出し続けているという証拠だ。

 大学の本拠地は、鹿児島県の南端近くに位置する鹿屋市。国立大学法人で唯一の単科体育大学だ。練習環境は抜群だが、チームの拠点としては、100%恵まれている訳ではない。高校で実績を残した選手は、どうしても首都圏の「ブランド校」に引っ張られてしまう。鹿児島からの試合遠征費の負担は大きく、トレーニングも意識を高く持たないと、刺激が薄い状態になりかねない。これらの問題を、同校自転車部監督の黒川剛さんが、積極的に解決してきた。

 まず地元企業をスポンサーに付けて、選手の遠征費の負担を減らした。鹿屋体育大学のチームウェアには、スポンサーロゴが数多く並ぶ。ウェアは無地一色かシンプルなデザインが主流だった大学生チームとしては画期的なことだった。また鹿屋の温暖な気候と練習環境を活かして、春先に国内プロチームや他大学チームの強化合宿を鹿屋に誘致した。トップ選手やライバルチームと交流することで、さまざまなノウハウを学び、選手の意識も自然に高まった。

 気が付けばチーム全体の力が向上していた。全国大会で優勝する選手が生まれ、その事でチームがさらにレベルアップし、また高校時代に実績を残した選手も鹿屋の門を叩くようになった。鹿屋でツール・ド・北海道のU23賞を獲得した選手は、全員がプロの道に進んだ。今や「自転車でプロになりたければ鹿屋に行く」という雰囲気にすらなっている。

 その鹿屋体育大学を現在引っ張るのが、3年生の黒枝と山本元喜だ。黒枝は昨年のU23賞を獲得。一方で山本は一昨年、大学生としては初めてのロードレースステージでの優勝を果たしている。黒枝が「元喜が勝っているから自分も、という気持ちがあった」と笑顔で話す通り、良きライバル関係だ。

 昨年、黒枝と山本は総合5位と6位に入った。日本人選手の中で2番目と3番目の成績だ。チーム総合でも5位に入った。今年は「全体の総合で3位、チーム総合3位」を目標に掲げる。決して不可能な目標ではない事は、第1ステージの成績が証明した。

 しかし、まだレースは始まったばかりだ。黒枝も「明日からの事を考えると、かなり大変だと思う」と表情をこわばらせる。総合リーダーを擁するチームは、レース全体をコントロールする責任を持ち、さらには他チームからの攻撃の的となる。第2ステージでは、プライドを潰されたプロチームが黙っていないだろう。だが重責の中で戦うことで、彼らはまた新たな経験を得られるはずだ。鹿屋体育大学チームの挑戦は、また新たなステージに上っている。
【第2ステージ結果】リケーゼが小集団スプリントを制して雪辱 総合リーダーも獲得

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