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シンプルさと一体感を生むアイデアを融合ファブリックの独創的なサドル「セル」を“最も引き立たせる”デザインのバイクが決定

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
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 「東京サイクルデザイン専門学校」(TCD)の学生たちが、サイクルアクセサリーブランド「fabric」(ファブリック)の新型サドル「CELL」(セル)に似合うデザインをテーマに、フレーム製作に挑戦してきたコンテスト「デザインアワード」の審査結果が9月8日、東京・神宮前の同校で発表された。最終選考に残った4チーム中の1位に選ばれたのは、砂浜を走るビーチレーサーをベースにしたバイク「シーガル」。審査したファブリック創立者のニック・ラーセン氏から「セルをうまく車体のデザインと融合させ、サドルを引き立たせた」という高評価を受けての栄冠だ。

ファブリックと東京サイクルデザイン学校がコラボレーションした「デザインアワード」で、チームIの「シーガル」が1位に輝いた Photo: Naoi HIRASAWAファブリックと東京サイクルデザイン学校がコラボレーションした「デザインアワード」で、チームIの「シーガル」が1位に輝いた Photo: Naoi HIRASAWA

創立者ラーセン氏「どのアイデアも素晴らしい」

ビデオレターに見入る学生たち Photo: Naoi HIRASAWAビデオレターに見入る学生たち Photo: Naoi HIRASAWA

 ラーセン氏は、完成したフレームの写真や、7月に実施された学生たちによるプレゼンテーションの内容をもとに4チームを審査し、その結果をビデオレターで学生たちに向けて発表した。ラーセン氏は「どのアイデアも素晴らしい」と語り、順位決定に悩みながらも楽んで審査したという。学生たちは自分たちが製作したフレームがどう評価されるのかと、期待するようにビデオレターの映像を見つめた。

ハンドルバーに埋め込まれたエラストマー Photo: Naoi HIRASAWAハンドルバーに埋め込まれたエラストマー Photo: Naoi HIRASAWA

 1位を獲得したシーガルは、白く塗装されたハンドルが羽ばたいている鳥のように見えることと、ビーチという要素から「シーガル」(かもめ)と名付けられた。クロスバイクのようなシンプルなデザインながら、幅広のハンドルバーとシートステーの一部に、セルに似た素材のエラストマーを埋め込んだ。ハンドルバーのエラストマーは、セルほどのクッション性はもたせず「グリップとして不安感のない固さ」に調整されている。シートステーのエラストマーは2~3mmほどのしなりを生み出し、振動吸収性を向上させている。

砂浜を走るビーチレーサーをベースにした「シーガル」 Photo: Naoi HIRASAWA砂浜を走るビーチレーサーをベースにした「シーガル」 Photo: Naoi HIRASAWA

「毎晩バイク設計のことを考えていた」

ファブリック創立者のニック・ラーセン氏から寄せられたビデオレター Photo: Naoi HIRASAWAファブリック創立者のニック・ラーセン氏から寄せられたビデオレター Photo: Naoi HIRASAWA

 シーガルについてラーセン氏は、「シンプルでエレガント」だと称賛。「エラストマーを採用しているのは素晴らしい」とも述べ、色々なアイデアが盛り込まれることを評価した。

 チームのメンバーたちは「はじめからみんなでコンセプトを共有できていて、セルを一番うまく見せられるんじゃないかと思っていた」と自信があったことを明かした。その理由は、セルの特徴である六角形や曲線的なフォルムに着目するのではなく、「全く新しいサドルである」という点を意識したからだという。「セルの世界観を壊さない“展示台”のバイクとして、組み合わせてかっこよく見える」ようにデザインしたことが、他のチームと違う方向性であり、今回の結果に結びついたと分析する。

製作した「シーガル」が1位を獲得し、充実感に満ちた表情を浮かべるチームI Photo: Naoi HIRASAWA製作した「シーガル」が1位を獲得し、充実感に満ちた表情を浮かべるチームI Photo: Naoi HIRASAWA
フレームの解説に熱が入る Photo: Naoi HIRASAWAフレームの解説に熱が入る Photo: Naoi HIRASAWA

 チーム全員で役割を分担しながら作り上げた作品。メンバーたちは「日程や技術的な面で難しいことも多かったけれど、完成度の高い作品ができた。1位という結果になって報われました」と達成感に満ちた表情を見せた。「毎晩寝ようとするたびに、バイクの設計やデザインのことがちらつくぐらい、毎日デザインアワードのことを考えていました」という言葉に、このバイクに賭けてきた気持ちが込められていた。

きゃりーぱみゅぱみゅに「似てる」バイクに

 2位になった「ミヤビ」は“原宿系”と呼ばれる個性的なファッションを好む女性がターゲットで、扇の形を多様した曲線的なフレームが特徴。セルの魅力であるカラフルでやわらかな印象が「女性にぴったり」と考え、それを生かせるようにデザインした。ピンクのフレームに、他の班が使用している青いセルではなく、あえて緑を合わせて鮮やかさを演出した。さらにハンドルバーを紫、ハンドルグリップを水色にするなど、大胆な配色で仕上げている。

扇状をモチーフにしたチームFの「ミヤビ」 Photo: Naoi HIRASAWA扇状をモチーフにしたチームFの「ミヤビ」 Photo: Naoi HIRASAWA

 ラーセン氏は斬新なアイデアを見事に表現したフレームを賞賛するとともに、「このデザインを形にできたことは素晴らしい」と技術の高さにも驚いていた。チームメンバーは「ほぼ100%、イメージ通りにできました」と語りながら、「(原宿系を象徴するモデル、歌手の)きゃりーぱみゅぱみゅに似てると思う」と自ら評価して笑いを誘った。

ピンクのフレームに緑のセルが映える Photo: Naoi HIRASAWAピンクのフレームに緑のセルが映える Photo: Naoi HIRASAWA
扇を組み合わせたデザインのフレーム Photo: Naoi HIRASAWA扇を組み合わせたデザインのフレーム Photo: Naoi HIRASAWA

何度も書き直しながら設計

 3位に入った「フュージョン」は、蜂の巣のように六角形を並べた際の結合部をモチーフにしている。通常の自転車だと前三角にあたる「Y字」の部分は、スケッチブックに何度も書き直して、最もきれいに見える角度に設計したという。完成したフレームは「イメージ通りにできた」という出来栄えだ。強度を出すために厚みのあるチューブを使用し、「見た目は不安な感じがあるけれど、乗りやすいです」という。黄色く塗り上げたフレームと青いセルのコントラストが目を引いた。

六角形の辺と辺を重ね合わせた際の、結合部をフレームで表現したチームFの「フュージョン」 Photo: Naoi HIRASAWA六角形の辺と辺を重ね合わせた際の、結合部をフレームで表現したチームFの「フュージョン」 Photo: Naoi HIRASAWA

 ラーセン氏が気に入ったのは、このデザインに至った経緯やリサーチの内容などが「現実的なフレームビルディング」だからという。TCDの橋本博匡先生は「ダイヤモンド型ではないフレームは、完成形に近づけることが難しいものだが、イメージ通りにできたのは貴重な経験になると思う」と学生たちの努力を称えた。

ブルーと対照的なイエローのフレームは、ロゴなしでシンプルな仕上がり Photo: Naoi HIRASAWAブルーと対照的なイエローのフレームは、ロゴなしでシンプルな仕上がり Photo: Naoi HIRASAWA
Y字の角度にこだわったフレーム Photo: Naoi HIRASAWAY字の角度にこだわったフレーム Photo: Naoi HIRASAWA

独特なフレームデザインに「われながらすごい」

 敢闘賞には、「ヘックスバイク」が選ばれた。ラーセン氏はセルのモチーフである六角形を、トップチューブを折り曲げたような独特なフレームデザインで表現したことを評価。「美的センスが素晴らしい。プロデュースし甲斐のある作品」と話した。

フレームで六角形を表現したチームEの「ヘックスバイク」 Photo: Naoi HIRASAWAフレームで六角形を表現したチームEの「ヘックスバイク」 Photo: Naoi HIRASAWA

 製作チームのメンバーによると、製作過程ではトップチューブの曲がっている箇所を歪まないように接続するのが難しかったが、形になってみると「われながらすごいな」と思えたという。少しでも六角形に見えるようにと緻密にフレーム設計した。敢闘賞という評価について、「最終選考に残っただけでも周囲から驚かれたので、このような賞をもらえてすごくうれしいです」と喜んだ。

トップチューブを折り曲げて六角形を表現 Photo: Naoi HIRASAWAトップチューブを折り曲げて六角形を表現 Photo: Naoi HIRASAWA
六角形の部分に青いラインが引かれている Photo: Naoi HIRASAWA六角形の部分に青いラインが引かれている Photo: Naoi HIRASAWA

セルを際立たせた学生たちのアイデア

学生たちの完成した作品を見て「感無量です」と語ったファブリック・ジャパンの池田新(あらた)社長 Photo: Naoi HIRASAWA学生たちの完成した作品を見て「感無量です」と語ったファブリック・ジャパンの池田新(あらた)社長 Photo: Naoi HIRASAWA

 ファブリック・ジャパンの池田新(あらた)社長は審査発表を見届け、学生たちに向けて「みなさんの作品はどれも素晴らしく、ファブリックのブランドコンセプトである『Think different』を体現していた」と講評した。

 池田社長はファブリックのサドルが日本に初上陸するにあたって、ひときわ特徴的なデザインのセルの魅力を「エモーショナル(感情的)に訴えかけたい」と思い、自らデザインアワード実施を発案。学生たちの創造性に期待し、コラボレーションを実現させた。「学生たちが作ったバイクは、見事にセルを際立たせるデザインになっている。狙った通りの出来栄えでした」と満足そうに語った。

受賞した4チームのバイクを店頭で展示

 受賞した4チームのバイクは、10月10日から11月上旬まで、スポーツサイクル専門店「ワイズロード」の新宿クロスバイク館(東京都新宿区)と名古屋本館(名古屋市中区)で2台ずつ展示される。これまでのデザインアワードの様子が動画や写真で紹介され、ファブリックの世界観を表現した展示となるという。

 また、11月6~8日に千葉・幕張メッセで開かれる「サイクルモードインターナショナル」では、東京サイクルデザイン専門学校のブースで展示。さらにその後も全国の2店舗で展示する方針という。

デザインアワードに参加した学生ら Photo: Naoi HIRASAWAデザインアワードに参加した学生ら Photo: Naoi HIRASAWA

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