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つれづれイタリア~ノ<58>“成長段階”のNIPPOで「20代に戻った気分」 ダミアーノ・クネゴ独占インタビュー

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 UCIプロコンチネンタルチーム「NIPPO・ヴィーニファンティーニ」のキャプテン、ダミアーノ・クネゴ選手が9月6日に電撃来日をしました。千葉市のイオンモール幕張新都心で開かれた「イオンイタリアフェア」に出席するためです。イオン主催で在日イタリア大使館が後援したイベントで、いきなり決まった来日でしたが、200人以上のファンが集結しました。そして、彼を通訳などでサポートするために私が呼ばれ、イベント開催中はずっと行動を共にしました。仕事とはいえ、プロ選手の隣にいるだけで、すごくラッキーなことです。一流選手が放つエネルギーは並大抵ではありません。 (マルコ・ファヴァロ)

「イオンイタリアフェア」のトークショーに出席するため来日したダミアーノ・クネゴ選手 Photo: NIPPO-VINI FANTINI「イオンイタリアフェア」のトークショーに出席するため来日したダミアーノ・クネゴ選手 Photo: NIPPO-VINI FANTINI
トークショーに出演したダミアーノ・クネゴ選手と通訳を務めたマルコ・ファヴァロさん Photo: Marco FAVAROトークショーに出演したダミアーノ・クネゴ選手と通訳を務めたマルコ・ファヴァロさん Photo: Marco FAVARO

 実は以前にもダミアーノ・クネゴを通訳することがあったので、ある程度、顔見知りになっていました。そして、今回は仕事の合間を縫って、インタビューも実現しました。トップカテゴリーのワールドツアーチームでなく、セカンドカテゴリーに属するNIPPO・ヴィーニファンティーニへ移籍した真相など、気になっていた質問をぶつけてみました。

 このインタビューを通じて、イタリアの国内外でクネゴ選手が愛されている理由はよくわかりました。本当に低姿勢で、サービス精神旺盛、そしてまじめ。34歳になったクネゴ選手ですが、少年のように目がキラキラしていました。これこそ本物のプロの姿だなぁ、と改めて感じました。

「新しい刺激」を求めNIPPOへ

――日本へようこそ。あなたはかつて10年以上、同じチーム(現ランプレ・メリダ)に所属していました。今シーズンに、なぜ新しいチームのNIPPO・ヴィーニファンティーニへ移籍しようと考えたのですか? 冒険的に見えるこの決定の真相を教えてください。

クネゴ「選手として10年間同じチームにいることは確かに異例のことですが、ランプレ・メリダは素晴らしいチームで、とてもいい時間を過ごしました。そして出させてもらったレースの結果も悪くありませんでした。しかし、昨年からどこかで私のモチベーションが下がり、新しい刺激がほしいという強い気持ちが芽生えました。そして私を受け入れたのがNIPPO・ヴィーニファンティーニです」

――ランプレ・メリダとの別れはつらくなかったですか。

クネゴ「思ったよりつらくなかったです。不安がなかったわけではないですが、逆に新しいチームに入ってすぐになじみました」

――イタリア人スタッフがいたためでしょうか。

クネゴ「もちろん、言葉の面が大きいです。サイクルロードレース界では、さまざまな言葉が飛び交うチームが多いので、イタリア人に限らず多くの選手にとってコミュニケーションがとりづらいことがあります。この点ではNIPPOへの移籍はすんなりいきました」

ダミアーノ・クネゴ選手にインタビューする筆者のマルコ・ファヴァロさん Photo: Marco FAVAROダミアーノ・クネゴ選手にインタビューする筆者のマルコ・ファヴァロさん Photo: Marco FAVARO

――NIPPO・ヴィーニファンティーニはどんなチームですか。

クネゴ「素晴らしいチームです。本当のことを言えば、今シーズンの前にさまざまなチームからオファーがありました。しかし、このチームに決めた理由は、その姿勢でした。このチームはプロコンチネンタルチームになったばかりで、まだ成長の段階にあります。スタッフも選手も向上したい、もっと上を目指したいと、とても刺激的な環境の中で動けます。20代に戻った気分です。ワールドツアーチームはいい面もありますが、プロコンチネンタルチームにいると、みんなが“燃えている”ような気がします。これがこのチームの良さです」

ジャパンカップがきっかけで日本を好きに

NIPPO・ヴィーニファンティーニのジャージにサインするダミアーノ・クネゴ選手 Photo: Marco FAVARONIPPO・ヴィーニファンティーニのジャージにサインするダミアーノ・クネゴ選手 Photo: Marco FAVARO

――イタリアと日本の融合ともいえるチームですが、本当に不安はなかったですか。

クネゴ「ありませんでした。以前からある程度チームメンバーのことは知っていましたし、チーム自体の存在は前から気になっていました。そして日本との長い付き合いがありますので、不安より好奇心のほうが強かったです」

――確かにサエコ(クネゴ選手がランプレ移籍前に所属していたチーム)時代から日本に来ていますね。

クネゴ「そうですね。最初の頃は自分の意思ではありませんでした。チームマネジャーが各選手の出るレースを決めていたので、偶然にもジャパンカップに出ることになりました。カレンダーの最後のレースでしたし、経験を積むためか、一番若い選手や研修生などが送られていました。でもこの偶然の出会いが、すぐに日本を好きになったきっかけの一つです」

ファン一人一人のサインと写真に、丁寧に応じているクネゴ選手のおもてなし Photo: Marco FAVAROファン一人一人のサインと写真に、丁寧に応じているクネゴ選手のおもてなし Photo: Marco FAVARO

――日本の何がよかったですか。

クネゴ「テレビの情報などから、ある程度、日本のことは知っていました。イタリア人には日本のアニメが人気で、もちろん私も見ていました。『ルパン三世』『キャプテン翼』『釣りキチ三平』がとても好きでした。でも日本に来て一番驚いたのは、アスファルトの良さでした。ヨーロッパでは、路面が荒れている場合が多いのでパンクしやすいのですが、日本はそれがない。そして、ファンの温かさも魅力です。今日も会場に来ていたファンから多くのプレゼントをいただきました。毎回心から感謝しています。イタリアでは、ファンが選手にプレゼントをする習慣があまりないので、どう対応するかいつも迷っています。私にできるのは、ファンのみなさんの希望に応えることだけですね」

サイン会のために朝から並んだファンたち Photo: Marco FAVAROサイン会のために朝から並んだファンたち Photo: Marco FAVARO
「イオンイタリアフェア」の展示コーナー Photo: Marco FAVARO「イオンイタリアフェア」の展示コーナー Photo: Marco FAVARO

――日本人のライダーはどうですか? 力があるのか、ないのか。変えるべき何かがあるとか。教えてください。

クネゴ「難しい質問ですね。まずはヨーロッパ、特にイタリアと日本のレース環境はずいぶん違います。イタリアには多くの選手がいるし、競技経験者も大勢います。日本はまだまだ遅れているように感じますが、10年間でずいぶん変わってきていると思います。別府史之(トレック ファクトリーレーシング)、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)はトップアスリートの仲間入りを果たしましたが、若い世代も期待できます。NIPPO・ヴィーニファンティーニでは3人の日本人選手ががんばっています。日本でも自転車競技という文化がもっと定着したら、飛躍的に変わると思います。その未来は決して遠くないはずです」

――あまり焦らないほうがいいということですか。

クネゴ「そうですね。社会がこのスポーツを愛していないと、理解が得られないし、トップアスリートも生まれません。まずはジュニアから始めないとダメですね」

勝てば絶賛の嵐、負ければ強烈な批判

――イタリアでは多くのメディアがクネゴ選手を批評してきました。グランツールに向いているか、ワンデーレースに向いているか、ずいぶん大きな論争が続いていました。個人的にどう思いますか。

今年5月のジロ・デ・イタリアで負った傷はまだ生々しく残っています Photo: Marco FAVARO今年5月のジロ・デ・イタリアで負った傷はまだ生々しく残っています Photo: Marco FAVARO

クネゴ「まぁ、なんと言えばいいでしょうか。それが記者の仕事でしょ? イタリアでは自転車競技は人気なので、ジャーナリズムも過熱しやすいです。もちろん、勝てば絶賛の嵐。負けたら、強烈な批判にも耐えなくてはいけません。選手というのは勝つことを前提に仕事しなければなりませんし、批判も受け止めなければなりません。個人的には、批判的な記事も大事で、それによって自転車競技全体が盛り上がればいいと思います」

――クネゴ選手自身は今年で34歳になりました。あと何年ぐらいプロ選手として活躍したいですか? また、ヴィンチェンツォ・ニバリやアルベルト・コンタドールのように自身が主宰するチームを作りたいとか、レースを主催したいと考えていますか。

ジロ・デ・イタリアが大好きというアリタリア航空の乗務員たちとのスリーショット Photo: Marco FAVAROジロ・デ・イタリアが大好きというアリタリア航空の乗務員たちとのスリーショット Photo: Marco FAVARO

クネゴ「30歳を超えますと、選手として長期的なビジョンは立てにくいですね。毎年6月に、地元のヴェローナで私の名前を冠したグランフォンドが開催されていて、今年で11年目を迎えました。このような大会を通じて、アマチュアの方にも自転車競技に興味を持っていただくことは大事です。自転車産業も活性化しますし、ロードレースのファン層も増えます。このようなイベントも含めて、将来設計を考えています。でもその前に、ロードレーサーとしてたっぷり活躍したいですね」

――日本のファンや選手へ、メッセージやアドバイスはありますか。

クネゴ「このスポーツは多くの犠牲を伴うので、まずは地道に練習すること。自分に甘えないことが一番大事です。現在、プロロードレーサーになるためには7歳から始めるのがいいとされていますが、私は比較的遅かった。でもがんばれば報われるスポーツです。そしてチームプレーを学んでほしいです。勝利のために牽制しあうことも大事ですが、競争相手と協力するという駆け引きがこのスポーツの魅力ですね。またジャパンカップで会いましょう。そしてNIPPO・ヴィーニファンティーニへ温かい声援を送って下さい」

■ダミアーノ・クネゴ(34歳)
ヴェローナ出身
【所属チーム】
2002-2004 サエコ
2005-2014 ランプレ
2015~ NIPPO・ヴィーニファンティーニ
【主な成績】
ジロ・デ・イタリア 総合優勝(2004)
ジロ・デ・イタリア 通算4勝(2004)
ツール・ド・フランス 新人賞(2006)
ブエルタ・ア・エスパーニャ 通算2勝(2006)
ジロ・ディ・ロンバルディア優勝(2004, 2007, 2008)
アムステルゴールドレース優勝(2008)
ジャパンカップサイクルロードレース優勝(2005, 2008)
好きな食べ物:甘いもの。特に、こてこてのザッハータルト

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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