エイドステーションはサイクリストで大賑わい復興進む宮城・女川町 生まれ変わった姿で「ツール・ド・東北」参加者と“再会”

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 東日本大震災の被災地を走るサイクリング大会「ツール・ド・東北2015」が開かれた9月13日、4年前の震災で甚大な被害を受けた宮城県女川町は、復興が進んだ新しい姿でサイクリストたちを迎え入れた。津波から町を守る高台が新たに整備され、JR石巻線女川駅は新築・再開業した美しい駅舎を披露。駅前広場のエイドステーション(AS)は大勢の参加者で賑わった。(平澤尚威)

JR女川駅前に設けられ大賑わいの「ツール・ド・東北」女川エイドステーション Photo: Naoi HIRASAWAJR女川駅前に設けられ大賑わいの「ツール・ド・東北」女川エイドステーション Photo: Naoi HIRASAWA

「女川汁」に長蛇の列

 女川ASはメーン会場の石巻専修大学から19kmの地点にあり、全5コース中4コースで最初のASとなった。この日は朝6時過ぎから続々と参加者たちが到着し、まもなく、女川名産のサンマのツミレを入れた「女川汁」を求める長蛇の列ができた。新鮮な海の幸の味覚を堪能した参加者たちは、「想像を上回るおいしさ」「毎年これを食べないと」と満足そうだった。女川ASで足を休めた参加者は約3000人にのぼり、駅前広場の芝生でくつろぐ姿も数多く見られた。

女川エイドステーションで名物の「女川汁」をうれしそうに受け取る参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA女川エイドステーションで名物の「女川汁」をうれしそうに受け取る参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA
女川町の名物であるサンマのツミレを入れた「女川汁」 Photo: Naoi HIRASAWA女川町の名物であるサンマのツミレを入れた「女川汁」 Photo: Naoi HIRASAWA
上空から撮影した女川町 ©ツール・ド・東北 2015上空から撮影した女川町 ©ツール・ド・東北 2015

 女川町は、東日本大震災で津波の被害が特に大きく、4000以上あった民家のうち約3分の2が流失。当時の人口1万14人に対し、死者と死亡認定者は合わせて827人にのぼった。津波の最高到達点は海抜22mに達した。

 震災以前の女川駅は、現在の新駅よりも海寄りに位置し、海抜は2.5mだった。その駅を含め市街地が津波で壊滅したことから、女川町の復興計画では、盛り土を高く積み上げて市街地を移設。新しい女川駅は海抜約10mの商業エリアに建設された。居住地や学校は、商業エリアよりさらに高い区画に築かれる。

「命を守るため」の街づくり

女川町の産業振興課長、阿部敏彦さん Photo: Naoi HIRASAWA女川町の産業振興課長、阿部敏彦さん Photo: Naoi HIRASAWA

 ツール・ド・東北のASで女川町の職員を統括していた阿部敏彦・同町産業振興課長(57)は、「命を守るための復興計画」と説明した。「100年に一度レベルの津波がきても、商業エリアの手前で食い止める。もしも1000年に1度レベルの津波がきた時には居住地へ避難してもらう」という2段構えの区画整理で津波に備えるという。

新しいJR女川駅。その手前には駅前広場が広がり、奥には線路にそって造成が続いている ©ツール・ド・東北 2015新しいJR女川駅。その手前には駅前広場が広がり、奥には線路にそって造成が続いている ©ツール・ド・東北 2015

 女川駅の背後に広がる居住地の高台も整備が進んでいる。一方、駅から海の方向へはまっすぐ延びるショッピング通りが設けられ、2015年末には約40店舗、その2年後には約70店舗が並ぶ予定だ。

 海沿いの道路もかさ上げされ、防波堤を設けることなく、以前と変わらない海の景観を眺められる。町民の7割が水産業に携わっていることから、「海と上手に付き合いながら暮らせるように」という配慮だ。

駅から海へと続くショッピング通り。2015年末までに、40店舗がオープンする予定 Photo: Naoi HIRASAWA駅から海へと続くショッピング通り。2015年末までに、40店舗がオープンする予定 Photo: Naoi HIRASAWA

参加者も試練に挑戦 「一緒に頑張っている」

女川駅前に設置された足湯は、初対面の参加者同士でも会話できる憩いの場になっていた Photo: Naoi HIRASAWA女川駅前に設置された足湯は、初対面の参加者同士でも会話できる憩いの場になっていた Photo: Naoi HIRASAWA

 女川ASに続々とやってくる参加者を見て、阿部さんは「リピーターが多いな」と感じたという。参加者とボランティアがお互いに顔を覚えていて、「また来たよ」「景色が変わったね」と触れ合っている姿が目に留まった。また、阿部さん自身が「あの人は去年も来てくれたな」と思い出すことも多かった。

 「このあたりは坂道が多いんです。自分たちを励ましに来てくれた参加者のみなさんが、その試練に挑戦している姿を見ると『一緒にがんばっている』という気持ちになれます」

 参加者に励まされた阿部さんは、「来年も復興した女川を見せたい」と強く感じたという。

女川汁を振る舞った女川町の商工会女性部のみなさん Photo: Naoi HIRASAWA女川汁を振る舞った女川町の商工会女性部のみなさん Photo: Naoi HIRASAWA

 女川ASは、大会事務局が手配した「クルー」と呼ばれるボランティアの他に、女川町の商工会や観光協会、町役場などから40人ほどがボランティアに参加していた。女川汁は、シンプルな味付けながら、ツミレのだしが効いたツール・ド・東北の名物メニュー。これを振る舞ったのは、商工会女性部のメンバーたちだ。

 あまりの人気に、途中で材料が足りなくなって買い足すほど、とにかく大忙し。商工会女性部部長の木村孝子さんは、参加者たちと触れ合える時間はほとんどなかったが、「全国、そして世界各国から支援していただいているので、感謝を込めて『おいしく作ろう』と考えながら調理していました」と、充実した表情を見せた。

「新しい女川町」で参加者を迎えたい

 3回目のツール・ド・東北を終え、須田善明女川町長は「参加した方々から多くの励ましの言葉や、復興が着実に進んでいる状況への言葉をいただいた」と語り、女川を訪れたサイクリストたちに感謝の気持ちを表した。また「女川町は大きな変化を遂げる過渡期を迎え、新しく生まれ変わろうとしている。来年にはさらなる変化を遂げた女川町で、みなさまをお迎えします」と、参加者たちとの再会を誓った。

「ツール・ド・東北」のメーン会場がある石巻市が“石ノ森章太郎の町”として知られていることにちなんで、仮面ライダーのコスプレで走った高野功行さん Photo: Naoi HIRASAWA「ツール・ド・東北」のメーン会場がある石巻市が“石ノ森章太郎の町”として知られていることにちなんで、仮面ライダーのコスプレで走った高野功行さん Photo: Naoi HIRASAWA

 第1回以来の参加となった東京都練馬区の会社員、高野功行(よしゆき)さん(53)は、2年ぶりに訪れた女川の変わりように驚いたという。「4年半でここまで復興するというのはすごい。2年の間に町が整備され、駅に列車も通った。人の力はすごいなと思ったし、女川の景観を見て改めて感動した」と話した。また「高台の整備が目を引きますね。自然の脅威に対抗するのは困難なことだと思うけれど、100年後や200年後にはもっと進歩して、より安全な対策を取れるようになっているかもしれませんね」と未来の女川の姿に思いをめぐらせていた。

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