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ブエルタ・ア・エスパーニャ 現地レポートプロトンと関係車両との共存に変化は必要か 選手・関係者に聞くレースの在り方

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 熱戦が続くブエルタ・ア・エスパーニャ。今大会はレース中の選手と関係車両とが接触するアクシデントが発生し、大きな波紋を呼んでいる。また、事故に至らないまでも、選手たちが関係車両の運転方法に疑問の声を上げるなど、レースそのものの在り方が問われている。そこで、いま話題の大会関係車両について、選手・関係者双方の声や考え方を聞いた。 (ブルゴス 福光俊介)

ペテル・サガンは第8ステージ終盤にモトバイクと接触し落車。負傷の影響もあり、翌ステージは未出走となった Photo: Tinkoff-Saxoペテル・サガンは第8ステージ終盤にモトバイクと接触し落車。負傷の影響もあり、翌ステージは未出走となった Photo: Tinkoff-Saxo

プロのドライバーは存在しない

 第8ステージ終盤、ステージ優勝をかけて追撃態勢に入っていたペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を突然のアクシデントが襲った。シマノ社のニュートラルサービスバイクと接触し落車。チャンスが水の泡と消えたサガンは、後続の関係車両を殴るなどして怒りを露わにした。

 また、同じくティンコフ・サクソのセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル)は、第11ステージ序盤にカメラバイクと接触。コーナーで自ら当たってしまった格好だったが、バイクが急な減速をしていたことが原因とのもっぱらの見方だ。

第11ステージ序盤にモトバイクと接触したセルジオ・パウリーニョ。左膝下を17針縫う傷を負った Photo: Tinkoff-Saxo第11ステージ序盤にモトバイクと接触したセルジオ・パウリーニョ。左膝下を17針縫う傷を負った Photo: Tinkoff-Saxo

 そのほかにも、第11ステージでクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が近くから撮り続けるカメラに対し不快感を示すなど、ナーバスになっている選手や関係者が多い印象だ。

 こうした事態から、選手や関係者だけでなくファンまでもが、責任の所在やドライバーのスキルなどを議論するようになった。

 実際、どのような規模のレースにおいても、関係車両の運転手はドライビングテクニックに長け、相応の信頼と実績を得ている人物が務める点で共通している。その一端として、国際自転車競技連合(UCI)で自動車やモトバイクを運転するドライバーの認可制度を3年前から導入し、セミナーへの出席やライセンスの取得が求められている。一方で、セミナー時のライディングテストは実施されておらず、運転スキルは個々の経験や力量に委ねられている。

 サイクルロードレースの関係車両の運転だけで生計を立てることは難しく、「プロのドライバー」は基本的に存在しないと言われる。レース規模によってはドライバー自身の自動車やバイクを用いてレースに臨む、“自費参加”に近いパターンも少なくない。

ドライバー「私たちは何も変える必要がない」

 こうした背景を踏まえ、ブエルタの現場でドライバーたちの考えを聞こうと、第17ステージの個人タイムトライアルのレース中、束の間の休息に入っていたシマノ・ニュートラルサービスカーとモトバイクのドライバーたちに質問した。

 ――サガンとパウリーニョの件を受けて、主催者や関係者から何らかの指示はありましたか?

 「何もないね」

 ――同時に、あなたたちの考え方に変化はありましたか?

 「まったくない。全然変わっていないよ。いつも通りやるだけさ」

シマノ社のニュートラルサービスカーとスタッフたち Photo: Syunsuke FUKUMITSUシマノ社のニュートラルサービスカーとスタッフたち Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レースを先導するモトバイクは、この日、数人のドライバーが交代しながら、次々スタートを切る選手たちの前を走っていた。役割を終えて戻ってきた彼らにも、次の出走までの間に同様の質問をぶつけてみた。すると、「何も変わっていない。もし変わるならば、それはオーガナイザーだ。ウニプブリク社(主催者)だね。結局のところ、私たちは主催者の指示のもと動いているわけだから」との返答。

 大会期間中に起きた2件のアクシデントは、あくまでも当該ドライバーの不注意または何らかの要因が重なったものであり、その他のドライバーたちまでもが問題視されるべきではないとの意識が返答からは見受けられた。

新城「選手1人ひとりが注意して走れば問題は起きない」

 ティンコフ・サクソの2選手のケースでは、チームが声明を発表し、場合によっては訴訟も辞さない姿勢を明らかにした。もちろん、レースの主役は選手であり、トラブルなく安全に走り切ることが最も大切だ。しかし、プロトンの選手全員が関係車両の動きに注意しているのかどうか、疑問もある。そのあたりを新城幸也(チーム ヨーロッパカー)に聞いてみた。

新城は「選手1人ひとりが注意して走れば問題はそう多くは起きない」との持論を述べた Photo: Syunsuke FUKUMITSU新城は「選手1人ひとりが注意して走れば問題はそう多くは起きない」との持論を述べた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 多くの車両が行き交うレースの中で起きた今大会の2つのアクシデントについて、新城は少し考えたのち、「自分たちが気を付けていればよいだけの話。危ないなと思えばブレーキを握って減速する。結局、選手1人ひとりが注意して走れば問題はそう多くは起きないと思う」と話した。

 また、このところ増えていると言われる関係車両の台数についても、「これまでと大きくは変わっていないのではないか」との見方を示した。レースを取り巻く環境の変化は小さいと見ているようだ。

 また、「カメラバイクなどがあって初めて報道され、みんながサイクルロードレースを見るきっかけにもなる。それがなくなったらレースが成り立たない」と述べ、関係車両あっての競技であることを強調した。

レースはあらゆるリスクと隣り合わせ

 ブエルタに限らず、さまざまなレースで安全性が疑問視されるケースが発生している。それは、地形やコース状況、レース展開が多岐にわたるサイクルロードレース特有の状況でもあり、競技はあらゆるリスクと隣り合わせで進行している。

レースを先導するモトバイク隊も、今まで通りの仕事を強調する Photo: Syunsuke FUKUMITSUレースを先導するモトバイク隊も、今まで通りの仕事を強調する Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 接触事故や落車などが増加傾向にあるなら、その原因を突き止め、改善していかねばならない。BMCレーシングチームのゼネラルマネージャーであるジェームズ・オショウィッツ氏がこのほど、UCIのブライアン・クックソン会長に安全強化を要請。UCIも対策する方向で調整を始めた。選手と関係車両の接触や相次ぐ集団落車、観客やバリケードへの激突など、問題は山積みだ。現状ではUCIから具体的な施策は明らかにされておらず、今後の動きに注目が集まる。

 レースの高速化と戦術の多様化、さらには変化に富むコース設定が進む昨今のサイクルロードレースにあって、いま求められるのは選手・関係者それぞれが安全性への意識を高め、未然に可能な限りの対策を施しておくことだと言えるだろう。

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