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ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージ 現地レポートドゥムラン一色のタイムトライアル スペイン人の心をつかんだ“インドゥラインの再来”

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 2度目の休息日が明けた9月9日、ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージの個人タイムトライアル(TT)は、25歳のトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)の独壇場になった。結果は2位に1分以上の差をつける圧勝劇だったが、実のところ、現地ブルゴスは朝からドゥムラン一色というムードに包まれていた。 (ブルゴス 福光俊介)

スタート直前までバイクのフィーリングをチェックするトム・ドゥムラン。ゆっくりとしたペースから急激にスピードを上げたりと、独特の方法でバイクの調子を確かめた Photo: Syunsuke FUKUMITSUスタート直前までバイクのフィーリングをチェックするトム・ドゥムラン。ゆっくりとしたペースから急激にスピードを上げたりと、独特の方法でバイクの調子を確かめた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

新世代のTTスペシャリスト

 第16ステージを終えた時点で、総合首位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)と2位ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)の総合タイム差は1秒。ロドリゲスから3位ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)までは1分35秒、同4位トム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)まで1分51秒。5ステージを残して、総合リーダージャージ「マイヨロホ」の行方はこの4人に絞られたとの見方が強まっていた。

大活躍を受け、トム・ドゥムランのサポーターが現地で応援。「オーレ、トム!」の大合唱が会場に鳴り響いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU大活躍を受け、トム・ドゥムランのサポーターが現地で応援。「オーレ、トム!」の大合唱が会場に鳴り響いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU
トム・ドゥムランのサポーターによってチームバス前に掲げられた横断幕 Photo: Syunsuke FUKUMITSUトム・ドゥムランのサポーターによってチームバス前に掲げられた横断幕 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 この日の個人TTは38.7km、レイアウトはおおむね平坦基調だ。

 上位4人の中でTTの実力に長けるのはドゥムラン。昨年の世界選手権個人TT3位で、新世代のTTスペシャリストとの呼び声が高い。これまで1週間程度のステージレースでは総合優勝争いを演じてきたが、グランツールではスプリントトレインの牽引役を担うことが多かっただけに、総合優勝圏内に残るほど総合力が向上していることには誰も気付いていなかったようだ。もっとも、第9ステージの頂上フィニッシュを制した際に、ドゥムラン自身が「こんなに上れるとは思わなかった」と口にしたほど。今大会は本人にとっても驚きの展開が続いている。

 このステージはレース距離から考えて、TT能力の差がタイムに大きく現れるのは明白だった。1分や2分は簡単にタイム差が開いてしまうステージを前に、ドゥムランは首位から2分以内と絶好のポジションをキープしたのである。

集中した様子でウォーミングアップを行うトム・ドゥムラン。レース前の準備に余念がない Photo: Syunsuke FUKUMITSU集中した様子でウォーミングアップを行うトム・ドゥムラン。レース前の準備に余念がない Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 各チームの監督らに「今日のレースが終わってマイヨロホを着ているのは誰だと思う?」と聞くと、返ってくる答えはいずれも「ドゥムラン」。各国のジャーナリストたちも「間違いなくドゥムランだろうね」と答えた。せめて、ドゥムランと総合争いを演じる3選手のチーム関係者くらいは、自分たちのエースの名を挙げるだろうと思いきや、彼らでさえドゥムランと予想した。マイヨロホのロドリゲスを擁するカチューシャの広報担当者は、「その質問はホアキンに聞いてみてよ…」と口を濁した。

見えてきたグランツール総合優勝

 フタを開けてみると、ドゥムランは中間計測ポイントからトップを守って完勝。レース前からマイヨロホは確実と言われていたが、ステージ優勝まで獲得してみせた。平均時速は出走者で唯一の50kmオーバーとなる時速50.460kmだった。

第17ステージで優勝を飾り、総合首位に浮上したトム・ドゥムラン Photo: Yuzuru SUNADA第17ステージで優勝を飾り、総合首位に浮上したトム・ドゥムラン Photo: Yuzuru SUNADA

 ジャイアント・アルペシンのクリスティアン・ギベルトー監督はこの日のレース前、ドゥムランの総合争いについて「ロドリゲスもアールもマイカも、皆リスペクトしなければならない相手。マイヨロホ獲得は壮大なミッションだ」と謙遜していたが、ステージ優勝という結果に「アールとは総合タイムで3秒差だが、どう戦うかはこれから考えるよ」と手放しで喜び、「重要なステージ? マドリードにたどり着くまですべてさ」と総合優勝に向けて意気込んだ。

マイヨロホ「守れると信じている」

 今大会の大躍進で、ドゥムランはスペイン人ファンのハートもつかんだ。レース会場では「トム!」と呼びかける子供たちの声が響き、ウォーミングアップの様子を一目見ようと観客が群がるなど、彼の一挙手一投足に注目が集まっている。TTスタート時に起こった歓声は、地元スペイン人ライダーに負けていなかった。

 ドゥムランの走りのスタイルを、スペインが誇る往年の名選手、ミゲル・インドゥラインに重ねて見る人も増えている。インドゥラインと言えば、ツール・ド・フランスで1991年から5連覇を果たした伝説的なライダー。全盛期の走りは、個人TTでライバルたちに圧倒的な差をつけ、その貯金を山岳ステージでコントロールするというスタイルだった。山岳で粘り、得意のTTでタイムを稼ぐデュムランの走りりは「インドゥラインの再来」との声も挙がっている。

レース会場には日本人ファンの姿も。第14ステージからブエルタを追っているという Photo: Syunsuke FUKUMITSUレース会場には日本人ファンの姿も。第14ステージからブエルタを追っているという Photo: Syunsuke FUKUMITSU
スペイン人ファンの心をつかんだドゥムラン。大歓声を受けコースへと飛び出した Photo: Syunsuke FUKUMITSUスペイン人ファンの心をつかんだドゥムラン。大歓声を受けコースへと飛び出した Photo: Syunsuke FUKUMITSU
ウォーミングアップ中のファビオ・アール。ステージ10位とまとめ、トム・ドゥムランとの総合タイム差3秒で残り4ステージでの逆転を図る Photo: Syunsuke FUKUMITSUウォーミングアップ中のファビオ・アール。ステージ10位とまとめ、トム・ドゥムランとの総合タイム差3秒で残り4ステージでの逆転を図る Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レース後、デュムランは「休息日に上手く回復できた。今もまだフレッシュな状態だ」と好調ぶりをアピールした。総合タイム差3秒で続くアールとはともに1990年生まれで、プロトンが誇るゴールデンエイジによる総合優勝争いが実現しそうだ。

 「ブエルタ開幕の時には思いもしなかったことが私の身に起こっている。それだけでもこのブエルタは大成功だが、今はマイヨロホを守ることができると信じている」とドゥムラン。山岳アシストが手薄と言われるチームを助けるべく、チーム ロットNL・ユンボ勢が同胞のオランダ人ライダーをアシストするとの噂も持ち上がっている。強力な援軍が手に入れば、若きグランツールライダーの偉業達成も現実味を帯びてきそうだ。

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