日本人歴代最速の43時間23分でゴール「ロードレースの原点」 パリ~ブレスト~パリを走破した三船雅彦さんがトークショー

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 8月16〜20日にフランスで開かれた世界最高峰のブルベ「パリ〜ブレスト〜パリ」に、元プロロードレーサーの三船雅彦さんが出場し、1200kmのコースを不眠不休のまま43時間23分で走り切った。日本人参加者としては初めて50時間を切る驚異的な歴代最速タイムだ。その挑戦を振り返るトークイベント「三船雅彦が語るパリ〜ブレスト〜パリ2015」が9月6日夜、東京・千駄ヶ谷の「ラファサイクルクラブ東京」で開かれ、約40人が参加。三船さんは「100年前の、ロードレースの原点はこんな風だったんだろうと思った」などと貴重な体験談を語った。

1200kmを走る世界最高峰のブルベ「パリ~ブレスト~パリ」を日本人歴代最速の43時間23分で完走した三船雅彦さん =9月6日夜、東京・千駄ヶ谷のラファサイクルクラブ東京 Photo: Yoshiyuki Kozuke1200kmを走る世界最高峰のブルベ「パリ~ブレスト~パリ」を日本人歴代最速の43時間23分で完走した三船雅彦さん =9月6日夜、東京・千駄ヶ谷のラファサイクルクラブ東京 Photo: Yoshiyuki Kozuke

あらゆる準備を整えて本番へ

 ブルベは、チェックポイントとをたどりながら超長距離を走るサイクリングイベント。その中でも最も権威のある大会が、4年に一度、パリからフランスの最西端、ブレストまでを往復するパリ~ブレスト~パリだ。タイムや順位を競うレースではないが、1891年の第1回大会以降、長らくレースだった歴史的背景があり、今も先頭グループの選手たちはトップゴールを目指してレースさながらの駆け引きとスピードで展開している。

トークイベント「三船雅彦が語るパリ〜ブレスト〜パリ2015」には、約40人の聴衆が聞き入った Photo: Yoshiyuki Kozukeトークイベント「三船雅彦が語るパリ〜ブレスト〜パリ2015」には、約40人の聴衆が聞き入った Photo: Yoshiyuki Kozuke

 トークショーには三船さんと、サイクルウェアブランド「ラファ」を展開するラファ・ジャパン社長の矢野大介さんが登壇した。三船さんは2011年の前回大会でも上位でのゴールを目指したが、ライバルたちのスピードや戦略的な走りに太刀打ちできず、苦渋をなめたという。

 4年前の挑戦について、「あの時は、チェックポイントでみんなランニングで先を急ぐことに驚いた。食べるものも買えず、そのおかげでとんでもないハンガーノックになってしまった」と振り返る三船さん。今回は矢野さんが個人として三船さんのサポート部隊を務め、あらゆる準備を整えて大会本番に臨んだという。

集団内は“国別対抗戦”

 スタート後、220km地点の第1チェックポイントまでは、ロードレースさながらのスピード感で展開され、三船さんは「コーナーでインを差され、『スペースを空けてはいけない』と気付いた。10年前に出ていたプロのロードレースのようだった」と感じたそうだ。矢野さんは、最初のチェックポイントで、夜にどんな風にライダーが入ってくるかわからず、緊張して待ち受けたという。

三船雅彦さん Photo: Yoshiyuki Kozuke三船雅彦さん Photo: Yoshiyuki Kozuke
ラファ・ジャパン社長の矢野大介さん Photo: Yoshiyuki Kozukeラファ・ジャパン社長の矢野大介さん Photo: Yoshiyuki Kozuke

 トップグループはおおむね数十人で推移したが、集団内は実は国別対抗のような争いだった。三船さんは「集団内でフランス人たちとベルギー人たちが『先頭を引け』『引かない』というやりとりをずっとやっていた。自分たちが先頭でゴールしたいという意欲をすごく感じた。本来はレースではないので勝者がいない大会だが、明らかに勝ちを狙っている。個人を超えたナショナリズムを強く感じた」とプロトンの内幕を明かした。

パリ~ブレスト~パリ2015を激走する三船雅彦さん ©Brian Vernorパリ~ブレスト~パリ2015を激走する三船雅彦さん ©Brian Vernor
ゴール後、疲れ果てた様子で床に足を投げ出した三船雅彦さん。白い紙片は完走証 ©Brian Vernorゴール後、疲れ果てた様子で床に足を投げ出した三船雅彦さん。白い紙片は完走証 ©Brian Vernor
三船雅彦さんと矢野大介さんの話に聞き入る来場者たち Photo: Yoshiyuki Kozuke三船雅彦さんと矢野大介さんの話に聞き入る来場者たち Photo: Yoshiyuki Kozuke

 矢野さんは「ロードレースで国別で争うのはオリンピックと世界選手権だが、選手は所属するプロチームからお金をもらっているので、チームや個人の事情が絡む。パリ~ブレスト~パリは国対抗の形が一番素直な形で出ているイベントではないか」と指摘。「これがロードレースの原点なのかな」と語る三船さんに、矢野さんは「そういうロマンチックな感じがした」と応じた。

寝ずに走って現れる幻覚・幻聴

矢野大介さんはパリ~ブレスト~パリ開催中、三船雅彦さんの奮闘ぶりをツイッターでリアルタイムで発信し、大きな反響を得た Photo: Yoshiyuki Kozuke矢野大介さんはパリ~ブレスト~パリ開催中、三船雅彦さんの奮闘ぶりをツイッターでリアルタイムで発信し、大きな反響を得た Photo: Yoshiyuki Kozuke

 大会開催中、三船さんの戦いぶりや現地の模様を矢野さんが個人のツイッターなどで情報発信したところ、日本のサイクリストたちの間で大きな反響が起こり、たくさんの激励メッセージが寄せられた。矢野さんはラスト200kmあまりのチェックポイントで、三船さんに「日本はすごく盛り上がっている。ゴールはもうすぐ。絶対に最後までこのグループに残ってください」と伝えたところ、三船さんは心の中で「矢野君、200kmは“すぐ”ちゃうで…」と問いかけながら再スタートしたというエピソードも紹介された。

三船雅彦さんを乗せて1200kmを走りきったロードバイク「リドレー ヘリウム」。日の丸をモチーフにしたスペシャルペイントが施されている Photo: Yoshiyuki Kozuke三船雅彦さんを乗せて1200kmを走りきったロードバイク「リドレー ヘリウム」。日の丸をモチーフにしたスペシャルペイントが施されている Photo: Yoshiyuki Kozuke
大会出場時の仕様で、泥汚れがついたままのリドレー ヘリウムを見つめる来場者たち Photo: Yoshiyuki Kozuke大会出場時の仕様で、泥汚れがついたままのリドレー ヘリウムを見つめる来場者たち Photo: Yoshiyuki Kozuke

 来場者からは「走っている時に幻覚は見えるのか」という質問が出され、三船さんが「寝ずに走っていると、すごいものが現れる時がある」と答えた。別のブルベ大会で1000kmを走った時には、「おじいちゃんが『家はアンテナ付きを買え』と言った声が聞こえた」という幻聴があったという。また、この日の来場者には、三船さんと一緒にパリ~ブレスト~パリを完走したサイクリストも数人が駆けつけ、そのうち何人かは幻覚を見たという。

 トークイベント「三船雅彦が語るパリ〜ブレスト〜パリ2015」は9月9日にラファサイクルクラブ大阪(大阪市北区)でも開かれる(申込受付は終了)。

※Cyclistでは後日、ラファ・ジャパンの協力を得て、パリ~ブレスト~パリの詳細なレポートを連載する予定です。

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