title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<123>“ヤング・ブエルタ”の第1週 若手とベテランが雌雄を決する本格山岳へ

  • 一覧

 熱戦続くブエルタ・ア・エスパーニャは、第1週が終了しました。波乱含みの10ステージでしたが、徐々に戦いの構図が見えてきました。今大会前半を盛り上げたのは1990年以降に生まれた若い選手たち。飛躍のときを迎えている彼らに対するは、百戦錬磨のベテランたち。“ヤング・ブエルタ”となっているここまでの戦いをおさらいしていきます。

第9ステージでは(右から)トム・ドゥムラン、クリストファー・フルーム、ホアキン・ロドリゲスらが山頂ゴールで激闘<写真・砂田弓弦>第9ステージでは(右から)トム・ドゥムラン、クリストファー・フルーム、ホアキン・ロドリゲスらが山頂ゴールで激闘<写真・砂田弓弦>

“ゴールデンエイジ”1990年生まれが台頭

 第1週を終え、総合首位のマイヨロホを着るのはトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)。ポイント賞のプントスを着る総合3位、ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)との激しい首位攻防は、大会前半のハイライトでもあった。ドゥムランは複合賞のコンビナーダでもトップを行く。再三の逃げで山岳賞・モンターニャを着るオマール・フライレ(スペイン、カハルラル・セグロス RGA)も含め、現時点で4賞ジャージに袖を通す3選手はいずれも、現プロトンの“ゴールデンエイジ”と呼ばれる1990年生まれだ。

 すでに大会を去ったものの、第3ステージ勝利のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)も1990年生まれだ。同じく離脱したが、第5ステージで鮮やかなスプリント勝利を収めたカレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は1994年生まれ。第8ステージでプロ初勝利のジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック ファクトリーレーシング)は1992年生まれで、第10ステージ勝利のクリスティアン・スバラーリ(イタリア、MTN・クベカ)も1990年生まれと、第1週は若きスプリンターの競演でもあった。

 第2週からは、いよいよ本格山岳での戦いが待ち受ける。まずは、アンドラ公国が舞台の第11ステージが、各選手の真価を問うステージとなる。

上りでの実力を示し、存在感を増しているトム・ドゥムラン<写真・砂田弓弦>上りでの実力を示し、存在感を増しているトム・ドゥムラン<写真・砂田弓弦>

 ツール・ド・フランスでの失意の落車リタイアから一転、復帰戦のブエルタで驚きの快走を続けるドゥムラン。TTを得意とし、1週間程度のステージレースでは力を見せてきたが、グランツールでも上位を狙う力があることを証明しつつある。急峻なルートが続く第2週を上位でクリアできれば、第3週最初の個人TT(第17ステージ、38.7km)で優位に立つ可能性が高い。

 激坂を制した第9ステージ終了後、「これほど上れるとは思わなかった」とドゥムラン自身が口にしているように、第2週は未知の領域への挑戦となる。ここまで、各ステージ要所では自らがメーン集団を牽引しペースメークするシーンが見られるが、加えてアシスト陣がどれだけ奮起できるか。エーススプリンター、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)の立場もあり、チーム内での比重の置き方もカギになってくる。

第2、6ステージで勝利し、大きなインパクトを与えたヨアンエステバン・チャベス<写真・砂田弓弦>第2、6ステージで勝利し、大きなインパクトを与えたヨアンエステバン・チャベス<写真・砂田弓弦>

 ドゥムラン同様に存在感をアピールしてきたチャベス。ステージ2勝はいずれもインパクト十分だった。第9ステージではリーダージャージを守る立場ゆえ、総合上位陣の動きを次々とチェックし、結果的に消耗を招いてしまった印象だ。ドゥムランから総合タイム差が59秒あり、当面はその差を徐々に縮めながら上位をうかがう走りに集中したい。

 総合を狙ううえで、3週間をトータルに走った実績に乏しいドゥムランとチャベスに対して、総合5位のファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)、同7位ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、同9位ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)は若くして戦い方を知っている選手たち。

単独エースの座を確保し、勢いづいているファビオ・アール<写真・砂田弓弦>単独エースの座を確保し、勢いづいているファビオ・アール<写真・砂田弓弦>

 アールは共闘が期待されたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)の失格、ミケル・ランダ(スペイン)の総合争いからの脱落があり、チーム内で単独エースの地位を確保した。3位に入った第7ステージ終盤でのアタックは鮮烈で、総合優勝候補の中ではいま最も勢いがあるとの声もある。

 ツール総合2位の勢いそのままに戦うキンタナは、引き続きアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とのダブルエース態勢が好調。得意とするタイプの山岳ステージが次々と控え、エンジン全開となるはずだ。

 「アンドラで動きを見せたい」と意気込むのはマイカ。そのポイントとして、「休息日のトレーニング方法」を挙げる。この1日を充実させ、アンドラで全力を注ぐ構えだ。

 ほかにも、トップチームからのマークが厳しくなっている23歳のルイ・メインティス(南アフリカ、MTN・クベカ)が総合12位につけ、上位進出を狙って山岳ステージへと向かう。

 大器ひしめく総合上位陣。今大会の主役候補に名乗りを挙げたヤングライダーたちからますます目が離せなくなってきた。

戦い方を知るベテランも黙ってはいない

 もちろん、グランツールの戦いを知り尽くしているベテランが、若い選手たちの動きを黙って見ているなんてことは考えられない。第1週から激しいレースが続いたが、要所を押さえながらも「勝負はまだ先」との意識を持っていたことは確かだ。

総合優勝を狙うアレハンドロ・バルベルデ(左)とホアキン・ロドリゲス<写真・砂田弓弦>総合優勝を狙うアレハンドロ・バルベルデ(左)とホアキン・ロドリゲス<写真・砂田弓弦>

 ブエルタでは確実に結果を残してくるホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)は、急坂の連続となる第2週が本番だ。苦手の個人TTが最終週に控えることから、早いうちにアドバンテージを築き、その貯金で大会終盤へと入っていきたい。特に、拠点としているアンドラでの第11ステージに、並々ならぬ意欲を見せている。

 “ミスター・ブエルタ”の1人であるバルベルデも、総合首位ドゥムランから1分17秒差の6位と好位置につける。奇しくも、チームメートのキンタナと同タイムとあって、レース展開に合わせてどちらでも動ける態勢を整える。総合優勝を見据え、あらゆる戦術を図るはずだ。

第7ステージではライバルから遅れたクリストファー・フルームだが、調子は上向き<写真・砂田弓弦>第7ステージではライバルから遅れたクリストファー・フルームだが、調子は上向き<写真・砂田弓弦>

 ここへきて、「やはり強い」との評が挙がってきたのがクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)。第7ステージではライバルから30秒近く遅れ、勝利したツールの疲労が抜けきっていない印象だったが、第9ステージで2日前に失ったタイムをリカバーする好走。最後はドゥムランの粘りに屈したが、調子が上向きであることをアピールした。その状態は、次の1週間で明白になるだろう。

 ドゥムラン同様、個人TTで絶対的な力を発揮することが計算できるだけに、ここ数日の山岳の走りで上位を確保できれば優位に立つ可能性が高い。本人もチーム首脳陣も可能と見ている「ツールとブエルタでの“ダブル・ツール”」が実現するか。少々気が早いが、その行方を楽しみにしたい。

 また、チームではニコラ・ロッシュ(アイルランド)が総合4位、ミケル・ニエベ(スペイン)が同11位と、彼らにもさらなる上位をうかがうチャンスがある。ロッシュは落車の影響が心配されているが、持ち前の安定感でカバーすることだろう。

ブエルタ第11~16ステージ プレビュー

■第11ステージ アンドラ・ラ・ベリャ~クルタルス・デンカム 138km 9月2日

サバイバル必死の第11ステージ ©Unipublicサバイバル必死の第11ステージ ©Unipublic

 舞台はスペイン北部へ。全行程がピレネー山脈の小国・アンドラ領内で行われる。今大会最初の上級山岳ステージは、1級、1級、1級、超級、2級、1級の順で、いずれも平均勾配10%前後。サバイバル必至で、この日を今大会のクイーンステージに推す声も多い。総合争いで優位に立つには、絶対に落とすことのできないステージとなる。

■第12ステージ エスカルデス-エンゴルダニ. アンドラ~レリダ 173km 9月3日

スプリンター向けの第12ステージ ©Unipublicスプリンター向けの第12ステージ ©Unipublic

 アンドラでの激闘を終えた一行は、カタルーニャ州内陸部へと進んでいく。おおむね下り基調で、クラッシュや風による集団分断などがなければ、平穏にレースが進むはずだ。1日を通して、スプリンターチームが主導権を握ることになるか。いずれにせよ、総合上位陣にとっては恵みの1日となりそうだ。

■第13ステージ カラタユー~タラソナ 178km 9月4日

強風が吹く可能性のある第13ステージ ©Unipublic強風が吹く可能性のある第13ステージ ©Unipublic

 最終日のマドリードを除けば最後の平坦ステージ。大会主催者は、この地域特有の強風がレースに何らかの影響を及ぼす可能性を指摘する。集団分断を計算に、戦術を練るチームも出てきそうだ。終盤に細かなアップダウンがあり、フィニッシュ前も上り基調。途中のカテゴリー山岳も含め、スプリンターにも登坂力が試されるステージと言えそうだ。

■第14ステージ ビトリア~アルト・カンポオ. フエンテ・デル・チボ 215km 9月5日

登坂距離の長い頂上ゴールが待ち受ける第14ステージ ©Unipublic登坂距離の長い頂上ゴールが待ち受ける第14ステージ ©Unipublic

 大会のハイライトになるであろう、カンタブリア山脈での3連戦がスタート。中盤の1級山岳プエルト・デル・エスクードは最大勾配15%。まずはこの上りで選手たちの脚が試される。超級山岳頂上フィニッシュのアルト・カンポオは、登坂距離が18kmと長く、有力選手同士の我慢比べとなりそう。山岳アシストをそろえるチームが主導権を握るか。

■第15ステージ コミージャス~ソトレス. カブラレス 175.8km 9月6日

1級山岳頂上ゴールの第15ステージ ©Unipublic1級山岳頂上ゴールの第15ステージ ©Unipublic

 勝負は頂上フィニッシュの1級山岳アルト・デ・ソトレス。登坂距離12.7km、平均勾配9.5%、最大勾配13.3%。前日にこなした超級山岳アルト・カンポより難しいと感じる選手も少なからず現れると見られる。激坂ハンターや、強烈なアタックを武器にするクライマーに勝機が訪れるかもしれない。

■第16ステージ ルアルカ~エルミタ・デ・アルバ. キロス 185km

大会のクイーンステージと目される第16ステージ ©Unipublic大会のクイーンステージと目される第16ステージ ©Unipublic

 カンタブリア3連戦の最終日、第11ステージとならんでクイーンステージと目される。カテゴリー山岳が7カ所登場。超級山岳エルミタ・デ・アルバは、登坂距離6.8km、平均勾配11.1%。中腹で最大の21%に達し、その後もフィニッシュに向けて15%前後の上りが続く。上りきった先にはマイヨロホが待っている。そして運命の第3週へと向かう。

今週の爆走ライダー-ベアトヤン・リンデマン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 序盤から先行した選手たちの逃げ切りが決まった第7ステージ。3人の争いとなった最終局面を制したのは、3年ぶりにブエルタ出場を果たしたリンデマンだった。「総合優勝候補たちに先着したばかりか、キャリア最大の勝利が得られるなんて」と、フィニッシュ直後に感激に浸った。今シーズンはツール・ド・ロマンディ第4ステージで3位に入っていたが、「比較にならない。レースの規模がまったく違うんだ」と、いかにグランツールでの勝利が大きな意味を持つかを強調した。

第7ステージでキャリア最大の勝利を飾ったベアトヤン・リンデマン<写真・砂田弓弦>第7ステージでキャリア最大の勝利を飾ったベアトヤン・リンデマン<写真・砂田弓弦>

 2012年から2年間所属したヴァカンソレイユ・DCMでは、クラシック中心のレースプログラム。当時出場したブエルタでも目立ったリザルトは残していなかった。やがて、チーム解散に伴い行き場を失ってしまった。2014年は格下のラボバンク デヴェロップメントチームに所属。プロ経験が強みとなり、UCIヨーロッパツアーで好リザルトを連発。今シーズンのプロ復帰で雪辱を誓った。

 そしてやってきた成就のとき。「一度プロから落ちた身として反撃したいと思っていたが、最大の成果が発揮できて本当に幸せだ」。

 ブエルタのステージは続くが、モチベーションは依然上々。チャンスがあれば再び勝負に絡みたいという。「チームにとっても重要な勝利だった。ここまで不運も多かったし疲れてもいるけど、まだまだ戦う気持ちは失っていないよ」と前向きだ。

 チーム方針として、ステージ優勝狙いで臨む今回。リンデマンは2勝目を狙って引き続きレースを動かす心積もりでいる。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2015 ブエルタ2015・レース情報 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載