乗り味スムーズ、チェーンによる油汚れを解消“ひも”で駆動する画期的な機構を搭載 「ストリングバイク」日本上陸第1号車に試乗

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 チェーンに代えて高密度ポリエチレンのストリング(ひも)の往復運動で後輪を駆動するユニークな自転車「STRINGBIKE」(ストリングバイク)がハンガリーで誕生した。踏み込むときに力が入りやすく、チェーンオイルによる油汚れの心配もない画期的な機構を搭載しており、ヨーロッパでは2013年から販売されている。その日本上陸第1号となったバイクに試乗する機会を得た。

ストリング(ひも)を使って後輪を駆動するストリング(ひも)を使って後輪を駆動する

理解しづらいエレガントな動き

独自の駆動方式をもつ「ストリングバイク」の日本上陸第1号車独自の駆動方式をもつ「ストリングバイク」の日本上陸第1号車

 ストリングバイクのペダル付近には、従来見慣れたギアホイールやチェーンは見られず、独特な形のリンク機構とカラフルなひもが張り巡らされている。一見してどのように動くのか想像することすら難しく、実際に動作している動画を見ても理解しづらい。まるでパズルのように各部が組み合わさって、独特のエレガントな動きを形作っている。

 左右に取り付けられたスイングアームが、リンクを介してクランクの回転運動を前後の往復運動に変換。これで左右のストリングを交互に引っ張ることで、後輪を回転させている。引っ張るのと反対側のストリングは、後輪側のばねによる巻き取り機構で元に引き戻される。引っ張る~戻すの動作を左右で逆位置に設定することで、従来の自転車と変わらないペダル回転による駆動を実現している。

リアハブを左右から交互に動かすリアハブを左右から交互に動かす

 ストリング自体は文字通りの「ひも」で、両端にストッパーが付けられただけの簡単な構造だ。傷ついてしまって交換したり、別の色のストリングにしたくなったりする際には、工具不要で取り替えることができる。ストリングが触れる部分には潤滑油が一切使用されていないので、交換作業で手を汚す心配はない。高密度ポリエチレンは広く使われている素材で、交換用のストリングも数百円レベルと安価だという。

20年近い開発が製品に結実

フルカーボンフレームの「Carbon」フルカーボンフレームの「Carbon」

 ストリングバイクの開発は1990年代の初め、ブダペストの工科大学の学生数人が、大学の研究プロジェクトとして、自転車の新しい駆動システムの可能性を調査したことから始まった。従来のギアとチェーンを使ったシステムは、左右非対称構造でアンバランスであるとともに、汚れやすい駆動部は伝達効率が落ちやすく、使っているうちにチェーンが緩まるなど、故障の原因となる要素も少なくなかった。これらの弱点を克服し、かつ自転車として従来と変わらないこぎ方や変速が可能なシステムの開発が試みられたのだ。

 さまざまな試作品が作られては捨てられ、現在のストリングバイクの元となるアイデアが形作られた。こうして実に20年近い開発が続けられた結果、2010年に会社を設立してプロトタイプを発表。2013年に製品の販売を開始し、現在はハンガリー以外にドイツ、イギリス、オーストラリア、韓国でも市場に投入されている。

クロスバイクタイプの「Cross」クロスバイクタイプの「Cross」
クルーザータイプの「Trekking」クルーザータイプの「Trekking」

 製品版の自転車は、ハンガリーで戦前より自転車製造を手がけるチェペル社と協力体制を結び、フレームなどの部分はチェペルが製造。シティバイクにとどまらず、クロスバイク、トライアスロンバイクといったラインナップまで販売されている。いずれも19段変速で、カーボンフレームのトライアスロンバイクは、重量7kg台と軽量だという。現在はまだ販売台数が少なく、クロスバイクでも30~35万円程度と高価だが、将来的には各国のライセンシーのもとで安価に製造したいと考えているという。

静かでスムーズ 独特のペダリング感覚

実際に試乗して乗り味を確かめた実際に試乗して乗り味を確かめた

 日本では未発売のストリングバイクだが、駐日ハンガリー大使館で保管されているクロスバイクタイプの試乗車を借りて、乗ってみることができた。

 まず面白いと感じたのが、足をペダルから下ろした際に、クランクの位置が踏み込みやすい水平状態にリセットされる仕組みだ。そしてペダルを踏み込むと、従来の自転車で感じるようなチェーンがギアに咬む感触はなく、不思議なほどスムーズかつ静かに走り出す。

スイングアーム上のプーリーの位置を上下させることで、19段変速を実現するスイングアーム上のプーリーの位置を上下させることで、19段変速を実現する

 変速はスイングアーム側のプーリーの位置を変化させ、リニアな19段変速を実現している。機構としてはかなり原始的で、例えばシマノ製の変速システムと同等の軽快さは望むべくもないが、従来と全く異なるアイデアで動作する駆動部は、見ても乗っても楽しめるものだ。

 ペダリングの感覚は、楕円チェーンリングをより極端にしたような感じ。踏み込むところでより多くの駆動力を発生させており、反対にペダルが上死点・下死点を通過する際は力を入れなくてもスッと通過する。どちらかと言えば、ペダリングスキルがあまり高くない人向けの味付けがされている印象だ。踏み味のクセは慣れの範囲だと思うが、大掛かりなリンクで動かすスイングアーム部分の機構は、毎分100回転以上のケイデンスが常態となるロードレーサーの乗り方には不向きかも知れない。

 まだ荒削りな部分もあるが、自転車の最も汚く危険な部分であるチェーン周りを劇的に改善した駆動機構と、そのスムーズな踏み心地は魅力だ。また、駆動部分のメカニカルな動きや、ガジェットとしての完成度は他に類を見ない存在感を放ち、大人のコレクションとしての所有欲をかきたてられる。シティ系クルーザーバイクなどの選択肢として、例えばベルトドライブやシャフトドライブのように、一定の地位を築く可能性はあると感じた。

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