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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<122>チームTTコース問題、ニバリの失格…激動のブエルタ序盤戦にまつわる話題

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 いよいよ開幕したブエルタ・ア・エスパーニャ2015。第2ステージから頂上フィニッシュが設けられるなど、早くも「ブエルタらしさ」全開のレースが展開されています。そして、今回は(今回も?)波乱に満ちた序盤ステージの連続となりました。これら動きを整理しつつ、選手コメントをもとにその真相に迫ってみたいと思います。

ブエルタ・ア・エスパーニャ序盤戦、最初のロードレースとなった第2ステージで勝利したヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が、第4ステージまで総合首位のマイヨロホをキープしている <写真:砂田弓弦>ブエルタ・ア・エスパーニャ序盤戦、最初のロードレースとなった第2ステージで勝利したヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が、第4ステージまで総合首位のマイヨロホをキープしている <写真:砂田弓弦>

主催者による安全性最優先の判断に選手たちが高評価

 大会の開幕を告げる、第1ステージのチームTTは、コースの危険性を考慮しステージ結果とチーム総合のみが有効とされ、個人総合成績には反映されないとの判断が主催者によってなされた。プエルト・バヌスからマルベリャまでの7.4kmのコースは、世界のVIPたちが所有する船が並ぶヨットハーバーをスタートし、海岸線を進むルートだったが、路面には砂が浮き、幅の狭い木製の橋を渡るなど、多くのリスクが潜んでいた。

ジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、チーム キャノンデール・ガーミン)は「ビーチクルーザーで走った方がいいかも」とTwitterに投稿ジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、チーム キャノンデール・ガーミン)は「ビーチクルーザーで走った方がいいかも」とTwitterに投稿

 開幕を2日前に控えた8月20日、意気揚々と試走に出た選手たちは、コース上に表れた大問題を嘆いた。SNSを通じ次々と路面状況を示す写真がアップされ、怒りとも悲しみとも受け取ることのできる言葉が並んだ。そうした声が反映され、翌日に主催者が前述の措置を決定。多くの選手・チームスタッフが胸をなでおろした。

 この決定による選手たちの反応を挙げると、ツール・ド・フランスとの総合2冠が期待されるクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は「正しい判断だね。エキサイティングなレースはお見せできないが、われわれにとっては安全が最優先なんだ」とコメント。チームメートのゲラント・トーマス(イギリス)も「すべての安全が保障された。(仮に個人総合成績に反映されるとの判断がくだされていたとしても)どんなに攻めても通常のチームTTにはならなかったはずだ」と述べる。それでも、チームとして勝利を狙っていたようで、「楽しみにしていただけに、本当に残念だ」とガッカリ。

 第2ステージで失格(後述)となり大会を去ったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)は、コース設定に呆れ顔。「観る側が楽しめるスタンスは大切だが、砂の上でチームTTを行うことはアイデアとして相応しくない。誰もそんなリスクは望んでいない」と話す。さらには、「主催者は事前にコースチェックを実施していたのだろうか。また、UCIはレースとして成り立つようあらかじめコントロールすべき立場でなければならない」と意見した。

コーナーに突入する、優勝したBMCレーシングチーム。砂地ではないものの、路面はいかにも滑りやすそう <写真:砂田弓弦>コーナーに突入する、優勝したBMCレーシングチーム。砂地ではないものの、路面はいかにも滑りやすそう <写真:砂田弓弦>

 一方で、「(チームTT)世界チャンピオンの誇りにかけて走った。それが義務だと思っていた」と話したのは、BMCレーシングチームの総合エースであるティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)。王者の名に恥じない強さを見せ、開幕ステージを勝利。「砂の区間あり、ゴムマットの区間あり、桟橋の区間ありと、決して走りたいと思える環境とは言い難かった」とコースの感想を口にしたが、それでもコーナーでは無理をせず、直線区間を攻めることで勝機を見出したという。

 チームによって本気度に大きな差が出た第1ステージ。その背景には、選手たちのさまざまな意識が強く関係していたようだ。

ニバリ失格の裁定に大会委員長が「ルールは順守されなければならない」

第2ステージ、トラブルが影響して遅れてゴールするニバリ。この後失格に <写真:砂田弓弦>第2ステージ、トラブルが影響して遅れてゴールするニバリ。この後失格に <写真:砂田弓弦>

 第2ステージ残り約31kmで発生した、メーン集団内での大規模落車。これに巻き込まれたニバリは交換バイクに手配に時間がかかり、再出走時には大きな遅れを喫してしまった。集団復帰を焦るあまり、チームカーにつかまってペースアップする助力行為を受け、ステージ終了後に失格の裁定が大会主催者によってくだされた。

 ニバリ本人は、さまざまな不運が重なったと主張する。落車はもとより、前述の再出走に時間を要した点、集団復帰を目指すにあたって肝心のアシストが手薄だったなど、すべてが後手に回ってしまったという。チームカーにつかまったシーンは、テレビ中継ではっきりと映されており、追走グループの中でニバリだけが突如飛んでいくように進んでいく様は、いささか滑稽でもあった。もちろん、選手本人・チームスタッフは必死だったわけだが…。

 自らの過ちを認めたニバリは、「罰金はもちろん、ペナルティタイムとして10分が総合タイムに加算されたとしても、それは受けるつもりだった」としたが、結果的に失格に。大会委員長のハビエル・ギーエン氏は、「主役の1人が大会を去ることは多大な喪失であることは理解している。ただ、ルールは順守されなければならない」と裁定の理由を明かした。

ニバリの失格について説明する大会委員長のハビエル・ギーエン氏 <写真:砂田弓弦>ニバリの失格について説明する大会委員長のハビエル・ギーエン氏 <写真:砂田弓弦>

 この大クラッシュでは、カレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の動きが原因だとニバリは指摘したが、イーウェンはそれを否定。「私の前方で落車が発生していて、誰がきっかけだったのかは分からない」と述べた。何より、「彼の一方的な意見で、不公平でしかない。私に問題があったと思うのならば、互いに意見を交わしたうえでメディアへ発信すべきではないだろうか」と、ニバリの姿勢に不快感を示した。

 「目に余るルール違反だ」と怒りをあらわにしたのは、総合争いのライバルとなったであろうヴァンガードレン。レース後にVTRで問題のシーンを確認したといい、衝撃的だったと表現。「ボトル渡しをしていた様子でもないし(チームカーから選手にボトルを渡す際、加速気味に車を走らせ選手の負担を軽減することがある程度容認されている)、明らかにルールを冒している。タイム加算や罰金などのペナルティではなく、失格としてしまうのは罰として重い気はするが、ルールはルールだ」とキッパリ。また、ニバリ同様に追走グループからメーン集団への合流を目指していたスティーヴン・カミングス(イギリス、MTN・クベカ)は、「ボトルの受け取りで数メートルつかまるなら分かるが、チームカーとともに行ってしまったんだ」と目撃証言する。

 大会前には、複数のエースクラスと堅実なアシストをそろえていることから、総合優勝候補筆頭に推す声も挙がっていたニバリだったが、思わぬ向かい風に見舞われそのチャンスを逸してしまった。

ブエルタ第5~10ステージ プレビュー

■第5ステージ ロタ~アルカラ・デ・グアダイラ 167.3km

ほぼフラットな第5ステージ ©Unipublicほぼフラットな第5ステージ ©Unipublic

 コースはほぼフラット。スプリンター向けのステージだ。アンダルシア州最大の都市セビージャの中間スプリントポイントは残り約18km。ゴール直前と合わせ、終盤はスプリンターたちの激しい動きが見られるかもしれない。ラスト数百メートルは上り基調。パワー勝負となりそうだ。

■第6ステージ コルドバ~シエラ・デ・カソルラ 200.3km

丘陵地のアップダウンが続く第6ステージ ©Unipublic丘陵地のアップダウンが続く第6ステージ ©Unipublic

 アンダルシア州内陸部の丘陵地帯へと入っていく。3ステージぶりに登場するカテゴリー山岳が勝負の行方を左右する。残り約25kmからしばらく緩やかな上りが続き、ラスト3kmで3級山岳の登坂が始まる。コース特性上、あらゆる展開が想定でき、主導権を握るチームがどのようにレースをコントロールするかが注目される。

■第7ステージ ホダル~ラ・アルプハラ 191.1km

1級山岳頂上ゴールとなる第7ステージ ©Unipublic1級山岳頂上ゴールとなる第7ステージ ©Unipublic

 頂上フィニッシュである1級山岳アルト・デ・カピレイラのインパクトに尽きると言えそうだ。シエラネバダ山脈の一角にあたる登坂距離18.7kmの上りは、ラスト1kmのポイントで最大勾配の14%に達する。激坂ハンターの脚の見せどころとなるだろう。総合争いにおいても、取りこぼしが許されないステージとなる。

■第8ステージ プエブラ・デ・ドン・ファドリケ~ムルシア 182.5km

終盤に3級山岳を2度越える第8ステージ ©Unipublic終盤に3級山岳を2度越える第8ステージ ©Unipublic

 開幕から7日間走り続けたアンダルシア州に別れを告げ、隣のムルシア州へと入っていく。最後の3級山岳頂上からフィニッシュまでの約17kmが勝負を分けそうだ。同地がゴールとなった2010年の第6ステージでは、トル・フスホフト(ノルウェー、当時サーヴェロテストチーム)が優勝。その後の世界選手権ロードレース優勝につなげている。

■第9ステージ トレビエハ~クンブレ・デル・ソル・ベニタチェル 168.3km

第9ステージは大半がフラットだが2度の激坂が待ち受ける ©Unipublic第9ステージは大半がフラットだが2度の激坂が待ち受ける ©Unipublic

 ブエルタの醍醐味ともいえる激坂が勝負を決める。2度通過するクンブレ・デル・ソルは、2回目に最大勾配19%の区間が登場。4.1kmの登坂する中腹で激坂をクリアし、いったんは勾配が緩むもののフィニッシュ直前で再び10%超えの上りが待つ。総合を見据える選手は何としても集団前方で急斜面へと入っていきたい。

■第10ステージ バレンシア~カステリョン 146.6km

第1週のラストを飾る第10ステージ ©Unipublic第1週のラストを飾る第10ステージ ©Unipublic

 長かった第1週がようやくこのステージで終わる。フィニッシュまで残り17kmで通過する2級山岳は登坂距離が7.5kmと、スプリンターの脚を削るには十分なレベル。上れるスプリンターが生き残ることができるか。また、パンチャーたちにとっては、絶妙のアタックで飛び出しを図ることができれば、逃げ切りの可能性も十分にある。

今週の爆走ライダー-ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMC レーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今シーズン後半に入り、コンスタントに上位にランクインする気鋭のスプリンター。8月2日のライド・ロンドン・サリークラシック(イギリス、UCI1.HC)では、逃げグループの攻防を制しワンデーレース初優勝を果たした。現在出場中のブエルタでは、強力メンバーぞろいのチームにあって、エーススプリンターを任されている。

8月2日のライド・ロンドン・サリークラシックで優勝したジャンピエール・ドリュケール。現在参戦中のブエルタ・ア・エスパーニャでも好調だ(Photo: RIDELONDON)8月2日のライド・ロンドン・サリークラシックで優勝したジャンピエール・ドリュケール。現在参戦中のブエルタ・ア・エスパーニャでも好調だ(Photo: RIDELONDON)

 ライダーとしてのキャリアはシクロクロスから。年代別を含むと計11回ルクセンブルクチャンピオンに輝き、プロとしても4年走った。ロードへの本格転向は2011年。プロコンチネンタルチームで実績を積んでいたが、昨シーズン、地元のツール・ド・ルクセンブルク総合2位やパリ~ツール6位などの好成績が注目され、晴れてビッグチーム入りをかなえた。

 スプリント向けのレースであれば確実に好リザルトをマークする点や、トレインがなくとも自ら位置取りをこなして勝負に絡む巧さが魅力。これから求められるのは、グランツールやステージレースでの勝利だ。

 そのチャンスは、ブエルタで巡ってくることだろう。早速第3ステージで4位に食い込み、可能性を広げている。

 ルクセンブルクといえば、古くはシャルリー・ゴールにはじまり、キム・キルシェン、フランクとアンディのシュレク兄弟など、オールラウンダーやクライマーを代々輩出してきた。そんな中で台頭してきたスプリンターのドリュケールは一見異色の存在だが、今後は同国を代表する選手になるだろう。今からでも、しっかりと彼の存在を押さえておきたい。

 9月で29歳と、トップチームで走るには遅咲きの感こそあるが、“遅れてきたルーキー”には、この先の飛躍がきっと約束されているはずだ。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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