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はらぺこサイクルキッチン<44>標高3000mのレースってどんなかんじ? トレラン参戦でサポート“される側”の求める食を探る

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 今回は、いつもと違って私のアスリート生活(!?)のお話。夫でMTBプロアスリートの池田祐樹(トピークエルゴンレーシングチームUSA)を“サポートする側”から、“される側”へ。サポーターの存在、より運動効率をあげる食事、体のメンテナンスなど、これまでとは違った角度から見えたことや感じるものがありました。

遠征先の米コロラド州・ブリッケンリッジでトレランに初参加。ゼッケンを付けるとレースへの気持ちも高鳴ります遠征先の米コロラド州・ブリッケンリッジでトレランに初参加。ゼッケンを付けるとレースへの気持ちも高鳴ります

“逆転サポート”を受けてチャレンジ

美しい大自然に囲まれてのランニング。景色を楽しむ余裕も出てくると、気持ちが良い!美しい大自然に囲まれてのランニング。景色を楽しむ余裕も出てくると、気持ちが良い!

 「標高3000m以上でレースするとは、一体どんな世界なのだろう?」――恐れ多くもこの世界を共感したいと、祐樹さんの遠征サポートのため滞在していた米コロラド州・ブリッケンリッジの大自然を相手に、トレイルランニングレースに人生で初めて挑むことにしました。エンデュランススポーツ(耐久スポーツ)を自分がやることで、長距離MTBレースを主とする夫の競技において、身体が何を欲しているかの理解に役立てたかったのです。

 決心をしてから大会「Summit Trail Running Series Race #5」開催の8月12日まで、1カ月。参戦には、かつてアメリカでマラソントレーナーを経験したこともある祐樹さんも大賛成で、「サポートするから頑張って!」と早くも強力なサポーターを得たのでした。大会までは、祐樹さんが組んでくれたトレーニングメニュー表を基本として、最善の食事管理と体づくり、トレーニングに励みました。

レースが開催される8月12日に向けて、祐樹さんが組んでくれたトレーニングメニュー表レースが開催される8月12日に向けて、祐樹さんが組んでくれたトレーニングメニュー表
週に3〜5回は通ったジム。毎回鍛える部位を変えて、休息もしっかりと。徐々に今まで無かった所に筋肉が付いてきました週に3〜5回は通ったジム。毎回鍛える部位を変えて、休息もしっかりと。徐々に今まで無かった所に筋肉が付いてきました
食事内容について夫婦で話し合うこともしばしば。食べたいものが違う時でも、食卓の中心に野菜、というのは変わりません食事内容について夫婦で話し合うこともしばしば。食べたいものが違う時でも、食卓の中心に野菜、というのは変わりません

食べたい食材は「赤」

苦しい時に思い浮かんだのは「赤」の食材。こちらは今回の滞在中も何度作ったか分からない、豆のフムス。中でもビーツ入りが好評でした苦しい時に思い浮かんだのは「赤」の食材。こちらは今回の滞在中も何度作ったか分からない、豆のフムス。中でもビーツ入りが好評でした

 最初は、この高地で1kmも連続してまともに走ることができずに焦りました。とにかく息が苦しい。なんとか走るものの薄目を開けているのがやっとで、頭が朦朧とすることも。体験したことのない辛さでした。

 走っているときは、苦しさの中で食べ物のことも考えていました。パッと、食べたい食材が浮かんでくるのです。ビーツ、ほうれん草、サーモン、ケール、納豆…色で言うと「赤」。これらの食材は、実際に血液を増やす働きがある食材でもあるので、面白いものですね。

 「アスリートが極限状態になったとき本能的に身体が欲するものが、栄養素として足りていないものであり必要としているもの」という考えは以前からありましたが、まさにそれで、感覚が研ぎ澄まされることを実感しました。

毎週金曜日はファーマーズマーケットで農家から直接運ばれてくる新鮮な野菜を調達するのが楽しみの一つ。色の濃い野菜がいっぱい毎週金曜日はファーマーズマーケットで農家から直接運ばれてくる新鮮な野菜を調達するのが楽しみの一つ。色の濃い野菜がいっぱい
大会にて最高地点3368mへと向かうジープロード。今思い出しても、ここはキツかった大会にて最高地点3368mへと向かうジープロード。今思い出しても、ここはキツかった
山でのトレーニング中には、祐樹さんに遭遇することもしばしば山でのトレーニング中には、祐樹さんに遭遇することもしばしば

運動前・中・後のおすすめ食

レースコースを試走。スタートからこの地点まで、トレイルを一気に駆け上がりますレースコースを試走。スタートからこの地点まで、トレイルを一気に駆け上がります

 ここで“アスリートフードマイスターSayako的”おすすめ食を、運動前・中・後に分けてご紹介します。実際に私が摂ったメニューの写真もご参照ください。

 運動後に食べるといつも以上にとてもおいしく感じられたのは、やはり身体が求めているからなのでしょう。ジムにも入会し、ランニング後は筋トレヘ行くのがほぼ日課になっていたので、ヘトヘトになって帰宅してすぐに食事を作れない時は肉類の数倍のプロテインを含むヘンプパウダーを摂取していました。祐樹さんから「足に今までなかった筋が入ってきた!」と言われるほど、徐々に身体も変化していきました。

時間がない時のリカバリーにはヘンプパウダーを利用しました時間がない時のリカバリーにはヘンプパウダーを利用しました
グルテンフリーのベーグルに、アーモンドバターとビーツハマスを塗った朝食プレートグルテンフリーのベーグルに、アーモンドバターとビーツハマスを塗った朝食プレート

<運動前>

 糖質を中心に。例えば30分程度の短い時間でランニングなど強度の高い運動は、搾りたてのコールドプレスジュース(繊維を抜いたもの)が最も調子がよく走れました。人参・りんご・ケールを絞って飲めば、胃に食べ物がないので身体が軽くもありながら、糖質効果でしっかりと身体を動かすことができます。長めの運動の時は炭水化物(米・パン・オートミールなど)やフルーツを中心に摂取

お湯で溶かしてシナモンをかけたオートミール、芋、バナナ、水でふやかしたチアシードお湯で溶かしてシナモンをかけたオートミール、芋、バナナ、水でふやかしたチアシード
ケール・りんご・人参を絞ったジュース。絞って3日で酵素が壊れてしまうので、手作りしたものを3日以内に飲みますケール・りんご・人参を絞ったジュース。絞って3日で酵素が壊れてしまうので、手作りしたものを3日以内に飲みます

<運動中>

 私のおすすめは、100%(砂糖無添加)のココナッツジュース。ココナッツジュースには天然の電解質が含まれているため、体内への吸収が速い上、疲労しにくいという作用があります。手作りする時間があれば、レモン汁と梅エキス、ハチミツ、水を混ぜて作るとドリンクも、疲労回復とエネルギー補給に役立ちます。梅エキスには天然の電解質が含まれているため基本的には塩分を添加する必要はありません

天然の電解質が含まれるココナッツウォーターを常備して、運動中の水分補給として利用しました天然の電解質が含まれるココナッツウォーターを常備して、運動中の水分補給として利用しました
運動中に飲むためのドリンクを手作り。レモン汁、梅エキス、ハチミツ、水を混ぜてできあがり運動中に飲むためのドリンクを手作り。レモン汁、梅エキス、ハチミツ、水を混ぜてできあがり

<運動後>

 「栄養摂取のゴールデンタイム」と言われる、運動後30分以内に何を摂取するかはとても大切。このチャンスを逃す手はありませんね。主に摂取したいのは、酷使した“筋肉を修復する”タンパク質、“疲労回復”のためのクエン酸、そして上記の2つを手助けする糖質。これらはすでによく知られていますが、更に細胞の再生に有効的な抗酸化作用物質を含む緑や紫の野菜を加えることをおすすめします。それらをすべて盛り込んだ「リカバリー丼」も参考にしてみてください

キヌアのリゾット、ビーツのサラダ。糖質が欲しい時は、サラダにフルーツを加えても、美味でビタミンも補給されて良いですよキヌアのリゾット、ビーツのサラダ。糖質が欲しい時は、サラダにフルーツを加えても、美味でビタミンも補給されて良いですよ
一晩浸水しておいた小豆をご飯と炊いて、小豆ご飯に。赤飯より低カロリーで、夏バテ防止にもおすすめ一晩浸水しておいた小豆をご飯と炊いて、小豆ご飯に。赤飯より低カロリーで、夏バテ防止にもおすすめ

*「リカバリー丼」の材料と作り方*

 米(玄米は夏バテ予防に効果的なビタミンB1が含まれています。同様に、1日浸水しておいた小豆を米に加えて炊く小豆ご飯もおすすめ)/糖質、アボカド、納豆/タンパク質、梅干し/クエン酸、グリーンミックスや紫キャベツなど生で食べられる色の濃い野菜/抗酸化作用物質。これらを全てどんぶりに盛り付け完成。

「リカバリー丼」は、玄米、梅干し、アボカド、そして納豆にネギを混ぜました「リカバリー丼」は、玄米、梅干し、アボカド、そして納豆にネギを混ぜました

声援ひとつでみなぎるエネルギー

レース当日、レジストレーション。夕方6時スタートに向けて続々ランナーが集まってくるレース当日、レジストレーション。夕方6時スタートに向けて続々ランナーが集まってくる

 レース当日は、レジストレーションから始まりました。これもいつもは見ている側ですが、いざ自分となると胸が高鳴り、ゼッケンを付けると更に気持ちが高揚していきます。アップをして夕方6時、いざスタート。日没(8時4分)までに帰って来なければ。スタート時の標高は2948m、最高地点は3368m、距離にして14kmの旅が始まりました。

 最初の頃は、出場したことを後悔するほどの苦しさがしばらく続き、足を止めかけました。そんな時に見えた祐樹さんの姿。クルマを走らせ、至るとこに先回りして補給食を持ってカメラを構えてくれていました。「頑張れ!」「他のレーサーに惑わされずに一定のペースで」と声をかけてくれたのが何よりの補給になりました。

心が折れそうな時に、現れる祐樹さん。笑顔になると、自然に身体が軽くなるように感じます心が折れそうな時に、現れる祐樹さん。笑顔になると、自然に身体が軽くなるように感じます

 一度誤って8kmの部のコースを走ってしまったのですが「大丈夫、焦らずに」という掛け声に暗示され、落ち着いていました。何かアクシデントが発生した時のサポーターの気持ちはレーサーに大きな影響を与えるものだと、知りました。私もレース中サポートに立つ時には、常にポジティブにいようと決意を新たにしました。

 行く先々でのボランティアスタッフからの「Looking good(いい感じ)!」という声援も、前進し続けるパワーになりました。「もうダメ」というところからどうしてその声ひとつでエネルギーがみなぎるのか、不思議です。いつもは送る側の声援を受け取るのも、自分の限界に挑戦する極上のご褒美に感じました。

リカバリーライドもしっかりと

「やったー!」走り切れたことの喜びは、想像以上に大きなものでした「やったー!」走り切れたことの喜びは、想像以上に大きなものでした

 最終的には14.87kmを走り、1:47’34でフィニッシュしました。順位は後ろから数えたほうが早かったのですが、達成感は言葉に表せません。他のランナーとも言葉を交わし(レース中も必ず、抜かす人が「Good job!」などと声をかけていました)、「ビジター(旅行者)でよくこの標高を走ったわね!」と褒められました。これも、祐樹さんが参戦してきたバイクのレース後に見る光景と重なりました。レース中はバトルを繰り返していても、フィニッシュラインを越えれば、自然とお互いの健闘を称え合う。とても気持ちがよいものですね。

フィニッシュ直後。放心状態…フィニッシュ直後。放心状態…
いつもとは立場逆転でサポートしてくれた夫に感謝!いつもとは立場逆転でサポートしてくれた夫に感謝!

 レース後のケアも、ストレッチとマッサージで入念に行いました。翌日はバイクに乗って、リカバリーライドへ出かけました。バイクはランニングに比べて膝への負担が地面からダイレクトに来ない分、リカバリーには最適。やや軽めのギアで足をクルクル回して、血流を促しました。トレイルを一気に駆け下りたので懸念もありましたが、お陰で筋肉痛もナシ。ただ、丸一日なぜか鼻水は止まらなかったです。周りのアスリートによれば「追い込んだ時に出る症状」だそう。そう聞いてなぜか少し誇らしく感じたのは、おかしいですかね。

◇         ◇

 プロアスリートにはとても届かない結果ですが、自分自身の限界への挑戦は、大きな収穫となりました。レース中にサポートしてもらったのも初めて。サポーターの役目と与える影響の大きさを知り、これからのサポートに必ず役立つものとなりました。次は、モンゴルへと旅立ちます。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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