イベントレポートその100kmが自信になる ラファ「Women's 100」に挑戦した女性サイクリストたち

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 世界中の女性たちが100kmの自転車ライドに挑戦する「Rapha Women’s 100(ラファ ウィメンズ ハンドレッド)」が、7月26日に世界各地で開催された。個人、またはチームを組んで走るグローバルなイベントで、ラファが運営するルートを含め、各国で約9千人もの女性サイクリストがエントリー。日本国内でも、ラファが「リードリーダー」と呼ぶ女性サイクリストが束ねるチームが全国17カ所で結成され、夏の炎天下を駆け抜けた。その舞台の1つとなった「Women’s 100 KANAGAWA」の様子を、スタッフのひとりとして参加した筆者がレポートする。(Kyoko)

世界中で同時開催された「Rapha Women’s 100」では、日本・神奈川もその舞台となり16人の女性ライダーが炎天下を駆け抜けた世界中で同時開催された「Rapha Women’s 100」では、日本・神奈川もその舞台となり16人の女性ライダーが炎天下を駆け抜けた

女性たちをリードする先輩サイクリスト

出発前には、交通ルールやマナーに加え、補給のコツについてもレクチャー出発前には、交通ルールやマナーに加え、補給のコツについてもレクチャー

 Rapha Women’s 100は、その名の通り女性のみが参加できるサイクリングイベントだ。ラファが「女性サイクリストの自立と、女性サイクリスト同士のコミュニケーションを図る場」として提唱し、年に1度、全世界で同じ日に一斉に開催される。3回目となる今年は、世界中で延べ8921人が参加。チームでも個人でもエントリーでき、最大で50人を超えるチームを含め、世界の女性たちが“それぞれの100km”を走り抜けた。

 リードリーダーとなる女性は、過去に同イベントに参加するなどして成長してきた経験豊富なサイクリスト。ガイド役となってチームをリードしていく。筆者がサポートすることになったWomen’s 100 KANAGAWAでは、「ちゅなどん」こと石井美穂さんが16人のサイクリストたちを率いた。また16人は走行時に3つのチームに分かれ、各チームをリードスタッフが先導した。

 参加者たちは最初は緊張気味だったが、天真らんまんなちゅなどんに迎えられると、旧知の友のようにすぐに1つのチームへと結束していった。「この女性たちが経験を積み、やがては自転車の楽しさを伝える立場になるときが来るのかな」と頭によぎったが、数年前にスポーツサイクルに乗り始めた筆者がいまスタッフ側にいることが、まさしくそういうことなのだろう。

スタート地点はサイクリングイベントなどを手がける「リンケージサイクリング」。自転車が続々と集まってきたスタート地点はサイクリングイベントなどを手がける「リンケージサイクリング」。自転車が続々と集まってきた

各地で設定される独自の「100km」

難所の1つとなった苔むした林道だが、木陰の涼しさがうれしい難所の1つとなった苔むした林道だが、木陰の涼しさがうれしい

 イベント当日の早朝、筆者はそのスタート地点へ電車に自転車をかつぎこむ「輪行」をしつつ向かった。休日のこの時間帯は、普段から輪行するサイクリストの姿を駅構内でよく見かけるが、いつもより明らかに女性サイクリストの姿が目立っていた。「あとでこの人と一緒に走ることになるのかな」―女性サイクリストを“仲間”と感じた時点で、私たちのRapha Women’s 100はすでに始まっていた。

 Rapha Women’s 100では、走るコースもリードリーダーが設定する。条件はただひとつ、「100kmであること」。100kmに挑戦する女性のレベルを考慮しつつ、その土地ならではの“魅力的な”ルートを考案するのだ。今回の参加者数人に経験値を尋ねると、「初めて100kmに挑戦」「平地でなら100kmを走ったことがある」という答えが返ってきた。

 環境が異なれば、コースプロフィールはさまざま。神奈川のコースは走行距離108km、標高の累計は1000mほどだが、大・中・小のヒルクライムポイントが5カ所設けられた。その間に林道、砂利道や苔むした未舗装路などの要素も盛り込まれている。

神奈川の「Rapha Women’s 100」では、炎天下の走行距離108kmを16人が駆け抜けた神奈川の「Rapha Women’s 100」では、炎天下の走行距離108kmを16人が駆け抜けた

 最大の敵は、猛烈な暑さだ。補給を上手に摂り、いかに自分の体力をキープするかが課題だと感じた。自分の身体機能やコンディションを知ることは、走る体力と同じくらいサイクリストの知識として重要なことだ。スタート前には、補給物のアドバイスを行った上で、多めの休憩設定や、万が一の時の救急体制を確認した。

炎天下の冒険

5人1チームに分かれて炎天下をこぎ進む5人1チームに分かれて炎天下をこぎ進む

 午前8時45分、炎天下の冒険がスタートした。参加者の中には集団走行や、走行中のハンドサインが初めてという人もいて、これから始まる未知の世界に、心なしかそれぞれの緊張が漂っていた。海沿いの国道を20kmほど走ったところで山に向かう道ヘ入った。クルマの通行がピタリと止み、蝉の声が響き始めた。生い茂る木々の緑も力強い。

 「ここ神奈川?」
「こんなに自然が豊かなところがあるなんて!」

相次ぐ坂と上から照りつける太陽に苦戦相次ぐ坂と上から照りつける太陽に苦戦

 緊張感のあったライダーたちから“ワクワク”が伝わってきたが、そんなサイクリング気分も束の間、いよいよ1つ目の坂がスタート。「坂」という言葉に皆の表情は一変し、「この坂は何km続くの?」「ここは何番目にきつい坂?」「斜度は何%くらい?」と質問が飛び交った。それでも皆、ペダルをこぐ足を止めることなく、2km、3kmと続く坂をクリア。時折現れる急坂や苔むした林道でも声をあげながら、辛くも楽しそうに乗り越えていた。

 次々に現れるハードルに全力で挑み、頂上に到着。木陰で涼み、ボトルの水を飲む仲間たちの間を風が通り抜けた。体が慣れ、達成感が積み重なっていくごとに、険しかった表情が緩んでいった。

“野性”を取り戻した女性たち

 日差しは、次第に強まっていく。今回のコースで距離が6kmと最も長い3つめの坂を上り終えた正午過ぎ、路面のコンクリートからの照り返しは45℃を超えていた。まるで絞られているタオルのように、体から大粒の汗が滴り落ちた。

 コース中盤を過ぎた50km地点で、距離5km、標高差200mの4つ目の坂があらわれた。スピードも次第にばらつき始め、途中、脚を止めて木陰に入り、仲間たちを待つ。後から上ってくるライダーの姿が、地面からの放射熱でゆらゆらと揺れて見えるほど、熱さに追い詰められていた。

暑さもピークを迎えた午後2時頃、休憩ポイントで水をかけあう女性たち暑さもピークを迎えた午後2時頃、休憩ポイントで水をかけあう女性たち

 やっとたどり着いた休憩ポイントで、作業用の水道を使って各々体を冷やす。最初は顔を洗ったり頭に水をかけていたが、やがてエスカレートし、ジャージごと全身に水を浴びせ始めた。

 水をかけられた女性は驚くことなく、「気持ちいい~!」と徐々に生気を取り戻した様子で、周囲に笑い声が広がった。日焼け止めもすっかり落ちた“すっぴん”で、太陽の下ではじけている女性たち。その姿は生命力にあふれ、輝いて見えた。ちゅなどんが率いる別チームでは、コース沿いの川の流れが弱いところに浸かって体を冷やしたそうだ。

コース沿いの川の浅瀬に飛び込んだチーム。濡れてもすぐ乾くからやりたい放題コース沿いの川の浅瀬に飛び込んだチーム。濡れてもすぐ乾くからやりたい放題

 はじけた女性というのは実に楽しく、野性的な生き物だ。山、太陽、木陰、水分―自分をとりまく自然に翻弄され、守られている間に、彼女たちはまるで自然の中に生きる動物のように強くなっていた。

走行後は次なる挑戦へ

 16人中1人が体調不良でリタイアとなったものの、最終的に15人がトラブルなく完走。時計は午後6時半を回ろうとしていた。ゴール地点となった湘南海岸公園では、昼間さんざん苦しめられた太陽が、「ご褒美」といわんばかりに美しい夕焼けを見せてくれた。そして驚いたのは、彼女たちが次に口にした言葉だ。

 「これから私もビンディングペダルにしてみようかな」
「もっと遠くに行きたいから輪行できるようになりたい」
「自転車で海外を旅してみたい」

ゴール後、美しい夕焼けの湘南海岸公園では、次なる挑戦が語られていたゴール後、美しい夕焼けの湘南海岸公園では、次なる挑戦が語られていた

 彼女たちの目は、早くも次なる挑戦へと向けられていたのだ。100kmを走り終え、サイクリストとして自分の意志で目標を見つけた女性たち。解散後、私たちスタッフに手を振り、それぞれの帰途に向かう女性たちの姿には、清々しい達成感と自信があふれていた。

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