レース遠征前の期間に密着新生“ブリヂストンアンカーベース”で培うチームワーク フランスの地でひとつ屋根の下

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 日本で生まれ、世界の舞台を目指す「ブリヂストン アンカー サイクリングチーム」は、欧州での活動拠点をフランス中央部のクレルモン・フェランに置く。所属する日欧の選手たちが集い、共同生活を送りながら勝利を目指すトレーニング基地だ。今年、新たな建物へと移転した「ブリヂストンアンカーベース」を7月末に訪れ、トレーニングに励む選手たちの姿を追った。

ウシのたたずむ牧場などのどかな風景を通過するルートもブリヂストン アンカー サイクリングチームのフランスでのトレーニングコースになっているウシのたたずむ牧場などのどかな風景を通過するルートもブリヂストン アンカー サイクリングチームのフランスでのトレーニングコースになっている

ゆとりあるスペース、ほどよい距離感

ブリヂストンアンカーベースの1階リビング・ダイニングルーム。井上和郎と内間康平の部屋が隣接するブリヂストンアンカーベースの1階リビング・ダイニングルーム。井上和郎と内間康平の部屋が隣接する

 新しいベースは、かつての場所から自転車で10分ほど離れた場所に建つ一軒家。1部屋少なくなったものの、リビングからダイニング、キッチンまでがつながった開放的な空間や、バイク機材や補給食などを格納するガレージとの距離、屋根付きの大きなテラスなど、選手たちにとって使い勝手の良さが魅力だ。疲れを癒すジャグジー風呂も新たに備わっている。

 リビングスペースの隅に置かれたソファーやラグでは、ラップトップやタブレットを手にひとりの時間を楽しむこともできれば、各自が愛用するグッズを用いてストレッチもできる。7月末になって初めて拠点に足を踏み入れた井上和郎は、「まだ慣れない」という言葉とは裏腹に、1階の内間康平との相部屋に置かれたベッドにゴロンと横たわってリラックスした時間を過ごしていた。

井上和郎と内間康平は相部屋だ井上和郎と内間康平は相部屋だ
屋根付きのテラスは、トレーニング前の水谷壮宏監督との打合せや雨天時のローラートレーニング、BBQなど多用途に使われる屋根付きのテラスは、トレーニング前の水谷壮宏監督との打合せや雨天時のローラートレーニング、BBQなど多用途に使われる
ブリヂストンアンカーベースからトレーニングへ出発する選手たちブリヂストンアンカーベースからトレーニングへ出発する選手たち

井上と寺崎武郎がテーブルを卓球台にして熱戦を繰り広げ、椿大志がパソコンに向かっているころ、内間はサラダ作りに専念していた。内間はいつも一番乗りで調理をスタートする。

 「夕方5時半にはごはんを作り始めます。その後、(一番早く)夜9時には就寝しますが、メンバーのうち一番に起床するとは限りません(笑) 和郎さんが起きてるなぁとまどろみながら2度寝をする雰囲気を味わうのも好きです」

「もうしばらく卓球はやらなくていいね」と互いに言うほど熱戦を繰り広げた井上和郎(中央)と寺崎武郎(手前)。奥では椿大志がくつろいでいた「もうしばらく卓球はやらなくていいね」と互いに言うほど熱戦を繰り広げた井上和郎(中央)と寺崎武郎(手前)。奥では椿大志がくつろいでいた
内間康平はいち早くキッチンで夕食の支度にとりかかった。「ちょっと高かったのに…失敗!」とアボカドに奮闘中内間康平はいち早くキッチンで夕食の支度にとりかかった。「ちょっと高かったのに…失敗!」とアボカドに奮闘中

 思い思いに過ごしながらも、互いの気配を感じることができるほどよい距離感。チームワークの良さの秘訣はここにあり、と感じさせる光景だった。

サラダ、メイン、デザートと食べているものは違えどメンバーが一緒にひとときを過ごす場所はトレーニング以外では食事の席が多いサラダ、メイン、デザートと食べているものは違えどメンバーが一緒にひとときを過ごす場所はトレーニング以外では食事の席が多い

恵まれた練習環境

水谷壮宏監督がクルマから選手の走りを見つめる。渡航の翌日とあって「まだ少し(走りが)重いかな」水谷壮宏監督がクルマから選手の走りを見つめる。渡航の翌日とあって「まだ少し(走りが)重いかな」

 トレーニングライドへの出発は、たいてい午前10時。各自の準備が整ったら出発だ。トレーニングのアクティビティを記録したデータはクラウドサービスで共有され、普段は水谷壮宏監督が同行することなくトレーニングが進められていく。この日はカリブ海のフランス領・グアドループで7月31から8月9日に開催されたステージレース「ツール・ド・グアドループ」(Tour de la Guadeloupe)の直前だったこともあり、選手のコンディションを把握するため水谷監督がチームカーで同行した。

愛車と対話をする椿大志(実際は、ガーミンをチェック中)愛車と対話をする椿大志(実際は、ガーミンをチェック中)
トレーニング出発前にリビングスペースに敷かれたラグでストレッチをする寺崎武郎トレーニング出発前にリビングスペースに敷かれたラグでストレッチをする寺崎武郎
水谷壮宏監督が「お気に入り」という橋の風景。選手たちが走るルートは、かつて水谷監督自身もトレーニングをした場所だ水谷壮宏監督が「お気に入り」という橋の風景。選手たちが走るルートは、かつて水谷監督自身もトレーニングをした場所だ
チームの活動をSNSへやウェブサイト上で報告するため写真を撮りためる水谷壮宏監督チームの活動をSNSへやウェブサイト上で報告するため写真を撮りためる水谷壮宏監督

 クルマは選手の後方について後続車に選手の存在を知らせることもあれば、先行して曲がり角で待機することもある。水谷監督は「最近購入した」というスマホ用の魚眼レンズを駆使して、チーム公式フェイスブックページなどへ掲載するために選手たちの写真を撮りためていた。

 トレーニングで走行するルートは、各選手のコンディションやレーススケジュール、天候を見ながら決めていく。記者が同行した取材の2日目は、ツール・ド・グアドループヘ向けた足慣らしとして、山がちなルートを盛り込んだ110kmのコースが設定された。選手たちは、観光客がそぞろ歩くバカンスシーズン真っ盛りの街を抜け、高原を見晴らす位置にそびえるミュロル城を横目に、平均時速31kmほどで距離を重ねていった。

フランスの街並み走り抜けるブリヂストン アンカー サイクリングチームのジャージが映えるフランスの街並み走り抜けるブリヂストン アンカー サイクリングチームのジャージが映える

 ベースに戻った選手たちは、パワーデータなどの走行記録をチェックして自身のライドを振り返る。標高差の累計で1285mを上ったこの日は、「半袖ジャージでは寒いほどの気温だった」と井上と寺崎。記録によれば、走行中の最低気温は17℃だった。

高地にそびえるミュロル城が真横に見える位置まで上ってきた高地にそびえるミュロル城が真横に見える位置まで上ってきた
それぞれの走行記録を見比べる井上和郎(右)と寺崎武郎それぞれの走行記録を見比べる井上和郎(右)と寺崎武郎

洗車も遠征準備のうち

ガレージでスペアバイクの梱包をする中山直紀メカニックガレージでスペアバイクの梱包をする中山直紀メカニック

 選手たちがトレーニングに出たり、戻ってくつろいだりしている間、グアドループ遠征に向けて準備を進めていたのは今シーズンチームに加わった中山直紀メカニックだ。この遠征では機材の積み込みのほかに、スペアバイク2台、TT(タイムトライアル)バイク1台を用意した。中山メカニックは、「TTバイクは全員分用意してあげたいけれど、(飛行機での)運搬料金を考えると全員分は持って行けないのがつらい」と、遠隔地のレースに臨む大変さを表した。

 その頃、水谷監督はチームトラックを整備していた。翌日には、パリのシャルル・ド・ゴール国際空港まで、選手たちと機材を載せて4時間半のドライブが待っている。預ける荷物の重量をチェックし、必要なグッズを各選手の輪行バッグへ同梱してもらえるよう分配したり、クーラーボックスを用意したりと、細かな準備も怠らない。また、遠征時の通信ネットワークを確保しようと、フランスの格安SIM「Free」を入手するためにクルマを走らせた。

チームトラックを整備する水谷壮宏監督チームトラックを整備する水谷壮宏監督
格安SIM「Free」は商店などに設置された自動販売機で購入することができる格安SIM「Free」は商店などに設置された自動販売機で購入することができる

 トレーニングと食事を終えた内間は、眠気と闘いながら出発準備に取り組んでいた。その内間が、10ステージのレースに向けた遠征用のパッキングの内容を見せてくれた。記者が大切なものを問うと、「日焼け止めは必須です。それから、愛用の電動歯ブラシと、気分転換に効果的なレモン系の香水。リカバリー用のサプリメントも持参します」と説明した。

内間康平が遠征に持参するもの一式。ウェア系は、半袖・ビブス×2、グローブ・ソックス×3、Tシャツ×3、ハーフパンツ×2、サングラス×4、レインウェア(長袖)×1。その他には洗濯物干し、手洗い洗濯用バッグ、蚊取り線香、電動歯ブラシ、リカバリー用サプリメント、香水、日焼け止め、マッサージオイル、クレンジング剤、電気ケーブル類内間康平が遠征に持参するもの一式。ウェア系は、半袖・ビブス×2、グローブ・ソックス×3、Tシャツ×3、ハーフパンツ×2、サングラス×4、レインウェア(長袖)×1。その他には洗濯物干し、手洗い洗濯用バッグ、蚊取り線香、電動歯ブラシ、リカバリー用サプリメント、香水、日焼け止め、マッサージオイル、クレンジング剤、電気ケーブル類

 ブリヂストン アンカーでは、レース以外のライドで汚れたバイクは、選手自らがクリーニングする決まりだ。休憩前にせっせと洗車をしていた寺崎は、「洗車は好き。バイクの調子をメカニックに見てもらう時もきれいにしてから渡しますよ」と教えてくれた。一方、「日本で洗車をしてきた」という内間は、この日はテラスにバイクを立てて簡易的なクリーニングに留めた。

レースではピカピカのバイクで走ることができるよう、遠征出発前に念入りに洗車する寺崎武郎レースではピカピカのバイクで走ることができるよう、遠征出発前に念入りに洗車する寺崎武郎
左からブリヂストンアンカーベースでトレーニングを積む内間康平、寺崎武郎、椿大志、井上和郎と中山直紀メカニック左からブリヂストンアンカーベースでトレーニングを積む内間康平、寺崎武郎、椿大志、井上和郎と中山直紀メカニック

◇         ◇

 ツール・ド・グアドループには、井上、内間、寺崎、椿に加えダミアン・モニエ、トマ・ルバ(ともにフランス)の計6人が参戦。寺崎とモニエが落車により打撲や骨折をしてリタイアとなったものの、第6ステージを制したルバや、第2ステージで山岳賞を獲得した内間らの活躍により、前年に続いて2度目のチーム総合優勝を飾った。

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