古城を改装したゲストルーム目指すは「サイクリストホテル」 元NIPPO主将バリアーニが歩む“第二の人生”

by 田中苑子 / Sonoko TANAKA
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 「この1年で、僕の生活はすっかり変わったんだよ」。少し照れくさそうな笑顔でそう言うと、自慢の“お城”を案内してくれた。フォルトゥナート・バリアーニ(イタリア)は、昨年6月のツール・ド・韓国をもってプロロードレーサーを引退。現在は地元イタリア中部のウンブリア州で、古城を改装したホテルを管理している。 (レポート 田中苑子) ※敬称略

ホテル「トッレ・デッラ・ボトンタ」の管理人を務めるフォルトゥナート・バリアーニホテル「トッレ・デッラ・ボトンタ」の管理人を務めるフォルトゥナート・バリアーニ
ホテル「トッレ・デッラ・ボトンタ」のエントランス。城壁をくぐるとレセプションや宿泊スペースがあるホテル「トッレ・デッラ・ボトンタ」のエントランス。城壁をくぐるとレセプションや宿泊スペースがある
ホテル内の雰囲気のある食事スペース。基本的には朝食のみの提供だが、事前予約で夕食をここで食べることも可能だホテル内の雰囲気のある食事スペース。基本的には朝食のみの提供だが、事前予約で夕食をここで食べることも可能だ

NIPPO時代は「宝もののような時間」

チームNIPPOでキャプテンとして活躍したチームNIPPOでキャプテンとして活躍した

 16年間の現役時代、には、イタリア屈指のクライマーとして、ジロ・デ・イタリアで山岳賞ジャージを着用したこともあるバリアーニ。2011年に日本企業のNIPPOがスポンサードするダンジェロアンティヌッチ・NIPPOに移籍すると、2014年までNIPPOとともに活動し、キャプテンとして底抜けに明るいキャラクターでチームをまとめ上げてきた。

 その間、2012年、2013年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝など輝かしい成績を残し、チームメートとして一緒に走った若い日本人選手、内間康平(現ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)、中根英登(現愛三工業レーシング)、早川朋宏(同)、石橋学(現NIPPO・ヴィーニファンティーニ)らには、ロードレースを戦うための様々な知識や経験を伝えた。

城壁の内部。中央部分と城壁部分に居住スペースがあり、小さな町のような印象城壁の内部。中央部分と城壁部分に居住スペースがあり、小さな町のような印象
城壁の中に暮らす男性。いまも10人ほどの住人がお城の中に暮らしており、「トッレ・デッラ・ボトンタ」のゲストを歓迎してくれる城壁の中に暮らす男性。いまも10人ほどの住人がお城の中に暮らしており、「トッレ・デッラ・ボトンタ」のゲストを歓迎してくれる

 「長い現役生活だったけれど、とくに記憶に残っているのが、日本のチームに所属していた頃だね。あの頃は、アレドンド(ジュリアン・アレドンド、現トレック ファクトリーレーシング)やマックス(マクシミリアーノ・リケーゼ、現ランプレ・メリダ)、そしてたくさんの日本人選手たち…。素晴らしい仲間に恵まれて、僕たちは本気でレースを走り、たくさんの勝利を挙げた。レースが終われば、こんどは本気で遊んだんだ。家族のようなチームで、自分にとって宝もののような貴重な時間だった。今になるとすごく懐かしく、思い返すと少し恋しい気持ちになるね」

 2014年はデンマーク籍のUCIコンチネンタルチーム、クリスティーナウォッチス・クマに所属。40歳を目前に引退すると、同年12月からホテル「トッレ・デッラ・ボトンタ(Torre Della Botonta)」の管理人としての仕事を始めた。

毎朝、ゲストの好みでカプチーノやエスプレッソを用意する。慣れた手つきでバーカウンターで働く毎朝、ゲストの好みでカプチーノやエスプレッソを用意する。慣れた手つきでバーカウンターで働く
朝食は屋外でとることも可能。城壁のなかにある教会の鐘が朝を知らせてくれる朝食は屋外でとることも可能。城壁のなかにある教会の鐘が朝を知らせてくれる

管理人が自らゲストをおもてなし

 「トッレ・デッラ・ボトンタ」はウンブリア州カステル・リタルディという街にある。四角い城壁に囲まれた古城内の空き部屋を改装してホテルを営み、現在5部屋が宿泊可能だ。歴史を感じさせる外観とセンスのいい内装が気持ちよく調和し、城壁内に住む地元の方々との交流も楽しい。

「トッレ・デッラ・ボトンタ」の外観「トッレ・デッラ・ボトンタ」の外観
新しく改装されたゲストルーム「Canapa/Hemp」。インテリアにもこだわりがある新しく改装されたゲストルーム「Canapa/Hemp」。インテリアにもこだわりがある
すべての部屋のバスルームは清潔感のあるモダンな造りすべての部屋のバスルームは清潔感のあるモダンな造り
ゲストルーム「Seta/Silk」の内装。城壁の2階部分に位置する部屋ゲストルーム「Seta/Silk」の内装。城壁の2階部分に位置する部屋
改装したばかりだというファミリー向けのゲストルーム「Mura」。ベッドルームが2部屋あり、4人まで宿泊可能改装したばかりだというファミリー向けのゲストルーム「Mura」。ベッドルームが2部屋あり、4人まで宿泊可能

 バリアーニは基本的に1人で、この仕事をしているため、早朝に自宅からホテルにやってきて、庭木の水やりや朝食の準備をスタート。ゲストたちが起きる頃にはカプチーノを入れ、チェックアウトすると部屋の掃除やベッドメーキングを行う。そして時間があるときは、ここから走りに行き、午後は予約の管理や事務作業、朝食用のケーキ作り、そして夕方になると新しいゲストたちの到着を待つのが日課だ。自転車に乗れるのは週に3、4日、合計10時間ほどだと話す。

朝食はバイキング形式。提供されるケーキ類はすべてバリアーニの手作り!朝食はバイキング形式。提供されるケーキ類はすべてバリアーニの手作り!
ゲストたちがチェックアウトすると部屋の掃除とベッドメーキングが始まるゲストたちがチェックアウトすると部屋の掃除とベッドメーキングが始まる

世界中からサイクリストを受け入れたい

 ホテルの今後については「サイクリストホテルとして、このホテルを売り出していきたい」と話す。ウンブリア州は山あり、観光名所あり、美食あり。サイクリングを楽しむのには絶好の場所だといい、バリアーニも現役時代、ずっとウンブリア州でトレーニングを行ってきた。現在も時間が許すかぎり、自転車に乗っており「トレーニングではなく、自転車に乗るのは本当に楽しいね。好きなときに止まれるし、雨が降れば乗らなくてもいい。引退し、それまで以上に自転車が好きになったよ」と笑う。

アッシジのサン・フランチェスコ聖堂。聖堂は上下2段に分かれ、それぞれに異なった建築様式が用いられているアッシジのサン・フランチェスコ聖堂。聖堂は上下2段に分かれ、それぞれに異なった建築様式が用いられている

 そして「世界中からサイクリストを受け入れて、ウンブリアの素晴らしい場所を案内したいんだ」と話すバリアーニ。ホテルからキリスト教の聖地であるアッシジ(Assisi)までは約25km、その手前にはスペッロ(Spello)というかわいらしい街もあり、このエリアは1年中観光客が絶えない。ペルージャ空港から50km、ローマ・フィウミチーノ空港から150kmという立地で、ゲストからの希望があれば、喜んでバリアーニ自身がサイクリングガイドを務めると言う。

世界遺産に登録されているキリスト教の聖地、アッシジ。聖フランチェスコの出身地で荘厳な街のなかにいくつもの教会や修道院が立ち並ぶ世界遺産に登録されているキリスト教の聖地、アッシジ。聖フランチェスコの出身地で荘厳な街のなかにいくつもの教会や修道院が立ち並ぶ
「トッレ・デッラ・ボトンタ」の向かいにあるレストランはバリアーニの友人の店。ウンブリアの地元料理が楽しめる「トッレ・デッラ・ボトンタ」の向かいにあるレストランはバリアーニの友人の店。ウンブリアの地元料理が楽しめる
向かいのレストランで食べられるウンブリアの郷土料理、赤ワインソースのニョッキ。美味しいワインも名物だ向かいのレストランで食べられるウンブリアの郷土料理、赤ワインソースのニョッキ。美味しいワインも名物だ

 また、かねてから自転車競技の指導者として第2のキャリアを歩みたいと話していたバリアーニ。じつは引退後にアメリカでのコーチ業を打診されたが、長いあいだ自転車選手として世界中を飛び回ってきた経緯があり、「これ以上家を空けたくなかった」と、地元に残る道を選んだ。しかし、若いイタリア人選手やツール・ド・フランスに出場中のアレドンドからも(!)練習方法やコンディショニングなどの相談を受け、個人として面倒を見ている選手は少なくはない。練習環境やアクセスもいいことから、今後、若い日本人選手を近くに滞在させる計画もある。

「トッレ・デッラ・ボトンタ」近くにあるスペッロの街並み。入り組んだ狭い路地にはたくさんの草花が植えられている「トッレ・デッラ・ボトンタ」近くにあるスペッロの街並み。入り組んだ狭い路地にはたくさんの草花が植えられている
丘のうえにある街、スペッロ。アッシジと比較すると観光客も少なく、バリアーニが勧める観光地丘のうえにある街、スペッロ。アッシジと比較すると観光客も少なく、バリアーニが勧める観光地
スペッロからの風景。自然が多く、サイクリングには最高のロケーションスペッロからの風景。自然が多く、サイクリングには最高のロケーション

日本からも予約可能

ゲストルームの清掃中、換気のために窓を開けて、ポーズをとるバリアーニゲストルームの清掃中、換気のために窓を開けて、ポーズをとるバリアーニ

 ホテルの予約は以下のサイトから可能。決して得意ではないというが、英語でも対応してくれる。古城の小さな門をくぐると、現役時代と変わらない豪快な笑顔が出迎えてくれるだろう。

トッレ・デッラ・ボトンタ(Torre Della Botonta)
住所:Via Albornoz, fraz. Castel San Giovanni Castel Ritaldi (PG) Umbria – ITALY
電話:+39 331 8462565
eメール:info@torredellabotonta.com

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