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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<120>フルーム、キンタナ、ニバリらがブエルタ・ア・エスパーニャ出場を続々と表明

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 ツール・ド・フランス閉幕から約2週間。気が付くとブエルタ・ア・エスパーニャ開幕の足音が聞こえてきます。そして、スペインでの戦いに向けて、ビッグネームが次々に出場の意思を明らかにしています。そこで今回は、ブエルタ参戦を表明した選手たちをピックアップするとともに、“ロード・トゥ・ブエルタ”ともいえる各地の前哨戦も押さえていきます。

ツール・ド・フランスで総合優勝争いを演じたクリストファー・フルーム(中央)らがブエルタ・ア・エスパーニャ参戦を続々と表明(写真・砂田弓弦)ツール・ド・フランスで総合優勝争いを演じたクリストファー・フルーム(中央)らがブエルタ・ア・エスパーニャ参戦を続々と表明(写真・砂田弓弦)

ビッグネームが集結 史上最高レベルの戦いなるか

 ブエルタといえば、シーズン最後のグランツールにして後半戦最大のレース。急峻な山々が舞台となるのが特徴で、これまで多くのクライマーやオールラウンダーが名勝負を繰り広げてきた。8月から9月にかけて開催されるため、5月のジロ・デ・イタリアや7月のツールにおける結果を勘案したり、疲労からの回復具合を見たりしながらブエルタ出場の可否を見極める選手は多い。また、ブエルタ閉幕から約1週間で迎える世界選手権ロードに向けた調整の場にもなっている。現時点で今年のブエルタ出場を表明した選手たちも、それらの例に漏れず、何らかの形でジロやツール、世界選手権とのつながりを明確にしている。

 第1週から山岳ステージが続々と登場する今大会。もちろん主役は総合力に長けたライダーたちとなる。なかでも、ツール閉幕後すぐにブエルタに臨むことを明らかにしたのが、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)とティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)だ。

ツール・ド・フランスでは第19ステージで優勝を飾ったヴィンチェンツォ・ニバリ(写真・砂田弓弦)ツール・ド・フランスでは第19ステージで優勝を飾ったヴィンチェンツォ・ニバリ(写真・砂田弓弦)
ツール・ド・フランス第17ステージで体調不良に苦しんだティージェイ・ヴァンガードレン(写真・砂田弓弦)ツール・ド・フランス第17ステージで体調不良に苦しんだティージェイ・ヴァンガードレン(写真・砂田弓弦)

 ニバリはツール総合2連覇が成らず、大会期間中からチーム首脳陣がブエルタ参戦を要請。今回の出場表明は既定路線だったともいえる。ジロで大ブレイクしたチームメートのファビオ・アール(イタリア)、ミケル・ランダ(スペイン)もブエルタのメンバー入りが確定しており、トリプルエースとして総合優勝を狙う可能性は十分にある。

 ツールでは総合上位につけながら突然の体調不良に襲われ、第17ステージでの途中リタイアに泣いたヴァンガードレンも、直後に「なんとしてもブエルタで結果を残す」と強い意志を明らかにした。チームは7月下旬、どこよりも早く出場選手9人を発表し、再度ヴァンガードレンのためのシフトを組んでいる。

ナイロアレクサンデル・キンタナもブエルタ出場を表明。ツールに続き、バルベルデとの共闘で上位を目指す(Photo: Movistar Team)ナイロアレクサンデル・キンタナもブエルタ出場を表明。ツールに続き、バルベルデとの共闘で上位を目指す(Photo: Movistar Team)

 モビスター チームは、ツールに続きナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)がコンビを組む。この2人も8月に入り出場表明。ツールではキンタナが総合2位、それをアシストしたバルベルデが総合3位でフィニッシュした。ブエルタではその関係が逆になることも考えられるという。スペイン唯一のUCIワールドチームとして大会のホスト役も務める同チームだけに、ここは優勝にこだわりたいところだ。

ツール・ド・フランスで総合優勝したクリストファー・フルーム。ブエルタ・ア・エスパーニャとの2冠を狙う(写真・砂田弓弦)ツール・ド・フランスで総合優勝したクリストファー・フルーム。ブエルタ・ア・エスパーニャとの2冠を狙う(写真・砂田弓弦)

 そして、ツール王者のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)もスペインへ乗り込むと宣言。チームが大会主催者に提出したロングリスト(14人の出場候補者リスト)にはフルームのほか、ゲラント・トーマス(イギリス)らも含まれ、スタートラインに並ぶ9人は強力メンバーとなるだろう。フルームは各種SNSで、活躍を誓うコメントを投稿。ゼネラルマネジャーのデイヴィッド・ブレイルズフォード氏も、「クリスがツールとブエルタの連続制覇を狙うことは可能だ」とコメントした。フルームがブエルタ出場4回目にして初めて頂点に立てるかどうかに期待が高まる。

 ツールではフルーム、キンタナ、ニバリにアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)を加えた優勝候補の4選手が「ファンタスティック4」と呼ばれ話題になったが、今度のブエルタもコンタドールを除く3選手の出場が固まった。さらには、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)も参加の見通しだ。

 総合系ライダー以外では、ツールでの落車負傷から回復を目指しているファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、シーズン前半の体調不良から立て直しを図るスプリンターのマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が出場を予定。さらには、すでにメンバー入りが決定している新城幸也(チーム ヨーロッパカー)も意欲をみなぎらせている。

 これだけでも十二分にタレントがそろっているが、今後さらに有力選手の参加が決まるはずだ。少々気が早いかもしれないが、ブエルタ史上最高レベルの戦いを期待していいだろう。

キッテルがステージ優勝で復調をアピール

 8月に入り、ブエルタや世界選手権を見据えた選手たちが少しずつ動き始めている。この時期のレースは“ブエルタ前哨戦”に位置付けられることもあり、各地のレースで活躍した選手がその勢いのままスペイン入りしようと目論む。いま一度、顔触れがそろったレースを中心に結果をおさらいしていきたい。

クラシカ・サン セバスティアンを制したアダム・イェーツ。鮮やかなアタックで逃げ切った(Photo: Orica-GreenEDGE)クラシカ・サン セバスティアンを制したアダム・イェーツ。鮮やかなアタックで逃げ切った(Photo: Orica-GreenEDGE)

 8月1日にスペイン・バスク地方で行われたクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)は、終盤の上りで抜け出したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が独走勝利。UCIワールドツアー初優勝を飾った。

 このレースでは、一度は先行していたフレッヒ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)がコース内を走行していたモーターバイクと接触するトラブルが発生。ヴァンアーヴェルマートに大きなけがはなかったものの、その場でリタイアを余儀なくされてしまった。事態を把握していなかったイェーツは、フィニッシュラインを通過するまで自分がトップであることを知らないまま走行していた。チームカーからの無線も不調で、勘だけを頼りに逃げ続けての勝利だった。

クラシカ・サンセバスティアン終盤、上りの途中でフレッヒ・ヴァンアーヴェルマートがモーターバイクと接触。リタイアに追い込まれた ©Tim De Waeleクラシカ・サンセバスティアン終盤、上りの途中でフレッヒ・ヴァンアーヴェルマートがモーターバイクと接触。リタイアに追い込まれた ©Tim De Waele
復活を目指すマルセル・キッテルがツール・ド・ポローニュでステージ勝利とポイント賞を手にした(fot. ATCommunication)復活を目指すマルセル・キッテルがツール・ド・ポローニュでステージ勝利とポイント賞を手にした(fot. ATCommunication)

 8月2日から8日までポーランドで開催されたツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)は最後まで総合争いがもつれる展開となり、最終の第7ステージ個人タイムトライアル(TT)で好走したヨン・イサギレ(スペイン、モビスター チーム)が総合優勝を飾った。第1ステージではキッテルがスプリントを制し、復調をアピール。第2ステージ以降も上位でフィニッシュし、最終的にポイント賞を獲得している。山岳の第5ステージではバルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)、同じく第6ステージではセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)がそれぞれ独走勝利を挙げている。

 ブエルタが控えるスペインでは、ブエルタ・ア・ブルゴス(UCI2.HC)が8月4日から8日まで行われ、レイン・タラマエ(エストニア、アスタナ プロチーム)が総合優勝。第2ステージのチームTTを制するなど、アスタナ勢が大会を通して主導権を握った。

 また、アメリカではツアー・オブ・ユタ(UCI2.HC)が8月3日から9日まで行われた。総合は、山頂ゴールの第6ステージを制したジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、チーム キャノンデール・ガーミン)が優勝。本来エースとして臨む予定だったトム・ダニエルソンが禁止薬物テストステロンの陽性反応を受け、大会直前にチームを離脱するハプニングがあったが、ドンブロウスキーが見事に代役を果たしてみせた。

ツアー・オブ・ユタ第1ステージのスタートを前にリラックスした様子のフィニー。このステージでは3位と復活劇を演じた ©Tim De Waeleツアー・オブ・ユタ第1ステージのスタートを前にリラックスした様子のフィニー。このステージでは3位と復活劇を演じた ©Tim De Waele

 この大会では、昨年5月のアメリカ選手権ロードで落車し大けがを負ったテイラー・フィニー、同様に今年4月のブエルタ・アル・パイス・バスコで落車負傷したピーター・ステティナ(ともにアメリカ、BMCレーシングチーム)が戦線復帰。フィニーは第1ステージで終盤の逃げに乗り、3位でフィニッシュする華麗な復活劇を演じた。

今週の爆走ライダー-バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 最後の最後まで熾烈な争いとなったツール・ド・ポローニュ。大会を盛り上げる活躍を見せた1人がデクレルクだ。いくつもの上りをこなすタフなコースが採用された第5ステージで逃げ切り勝利。一時は総合トップに立つなど、終始好走を続けた。

ツール・ド・ポローニュ第5ステージで逃げ切り勝利を挙げたバルト・デクレルク。総合でも2位に食い込んだ(fot. ATCommunication)ツール・ド・ポローニュ第5ステージで逃げ切り勝利を挙げたバルト・デクレルク。総合でも2位に食い込んだ(fot. ATCommunication)

 その名が知れ渡ったのは2011年。プロデビューしてすぐに臨んだジロだった。山頂ゴールが設けられた第7ステージ、有力選手たちが牽制する隙をかいくぐって飛び出した彼は、後続の猛追をしのぎきってステージ優勝。劇的なプロ初勝利の瞬間は、大会のハイライトの1つに数えられた。

 元々は陸上競技・競歩で将来を嘱望された選手だった。けがでトレーニングに苦慮していた時期に出会ったのがロードバイクだったのだとか。乗り始めるとすぐに頭角を現し、やがてロードレーサーへと転身した。プロ入りは24歳と遅めだが、まだまだ活躍する余地はありそうだ。

 ポローニュでの活躍もあってブエルタのメンバー入りが濃厚な状況で、ヴァンデンブロックのために山岳アシストを務める公算だ。そして、あわよくば自らも好リザルトを目指す。シーズン後半の活躍を期して高地トレーニングを積むなど、準備は万全。クライマーとしての新境地を開拓するチャンスがきっとめぐってくるはずだ。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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