ベルギーを拠点に約1カ月間ヨーロッパ遠征で飛躍目指す愛三工業レーシング 若手中心に本場のレースを転戦

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 UCIコンチネンタルチームの愛三工業レーシングチームが7月上旬から、ベルギーを拠点に約1カ月間のヨーロッパ遠征を行っている。自転車競技の本場でレベルの高いレース経験を積むことが目標で、また遠征の後半に出場するUCIヨーロッパツアーのレースでは、UCIポイントの獲得も目指す。(レポート 田中苑子)

フランス、ペロンシでのUCIレース。海外でのレース経験が多い小森亮平が得意な石畳を力走フランス、ペロンシでのUCIレース。海外でのレース経験が多い小森亮平が得意な石畳を力走

プロケルメスからUCIレースへと転戦

 愛三工業レーシングのヨーロッパ遠征は、2013年より年間スケジュールに組み込まれ、今年で3シーズン目を迎えた。ベルギーのフランドル地方に住む橋川健氏の協力を得て、チームはベルギーに一軒家を借りて共同生活を行いながら、今年は7月6日から8月5日まで約1カ月間の日程でレースを転戦している。

 レーススケジュールは、遠征の前半にベルギー各地で開催される“プロケルメス”と呼ばれる街中のクリテリウムを5戦、そして後半の7月26日にはグランプリ・ド・ラ・ビレ・ド・ペロンシ(フランス、UCI1.2)、8月1日〜3日はクレイズ・ブレイズ(フランス、UCI2.2)と2つのUCIレースが組み込まれる。

ベルギー中部のエルゼルにあるチームの宿舎。毎年同じ一軒家を借り、ガレージに自転車を保管しているベルギー中部のエルゼルにあるチームの宿舎。毎年同じ一軒家を借り、ガレージに自転車を保管している
ベルギーの宿舎で、レース前に一つの食卓を囲んで昼食をとる。食事は基本的に自炊しているベルギーの宿舎で、レース前に一つの食卓を囲んで昼食をとる。食事は基本的に自炊している
イジエールのプロケルメスのスタートシーン。非UCIレースだが、参加するトップ選手たちは真剣勝負。毎レース、ハイレベルな展開になるイジエールのプロケルメスのスタートシーン。非UCIレースだが、参加するトップ選手たちは真剣勝負。毎レース、ハイレベルな展開になる

 “ケルメス”とは、ベルギーやオランダなどでよく開催されている巡業レース。街中に作られる周回コースを走るクリテリウムのようなレースで、順位に応じた賞金が出る。小さな子どもから、アマチュア、プロなど様々なカテゴリーがあるが、UCIコンチネンタルチームの愛三工業レーシングが出場するのは、プロ契約のある選手が出場する“プロケルメス”。所属チームのカテゴリーは関係ないため、同じレースにUCIワールドチームに所属する世界のトップ選手も出場する。

 スケジュールや主催者の招待などにより、21日のイジエール、そして23日のニノーヴェのプロケルメスにはロットNL・ユンボやFDJ、ロット・ソウダルら多くのUCIワールドチームが参加した。またトップスポートフラーンデレンやワンティ・グループゴベールなど地元ベルギーのプロコンチネンタルチームもチーム単位で出場し、橋川氏は「ヨーロッパの2クラスのレースよりもよっぽどプロケルメスのほうがレベルが高い」と分析。実際どちらのレースも序盤からハイスピードに展開する難易度の高いレースとなり、登坂を得意とする平塚吉光は「プロケルメスはとにかくキツく、耐えるようなレースだった」だと表現する。

イジエールのレース前にサイン台に上がり、チーム紹介を受ける。熱心なファンや子どもたちがステージ前で撮影するイジエールのレース前にサイン台に上がり、チーム紹介を受ける。熱心なファンや子どもたちがステージ前で撮影する
イジエールの街中をスタートして、郊外の細い田舎道を駆け抜ける。風を読む力や位置取りも非常に重要だイジエールの街中をスタートして、郊外の細い田舎道を駆け抜ける。風を読む力や位置取りも非常に重要だ
自作のポストカードをもって、サインをもらうファン。毎年、夏の間だけレースを走る愛三工業レーシングは大人気だ自作のポストカードをもって、サインをもらうファン。毎年、夏の間だけレースを走る愛三工業レーシングは大人気だ
ケルメスでは、レース前に選手たちがそれぞれに受付を行い、ゼッケンを受け取るケルメスでは、レース前に選手たちがそれぞれに受付を行い、ゼッケンを受け取る
忙しいスケジュールを縫って献身的にチームをサポートする橋川健氏が、レースを終えた福田真平のケアをする忙しいスケジュールを縫って献身的にチームをサポートする橋川健氏が、レースを終えた福田真平のケアをする

高い目的意識 走り方や戦術を学ぶ

=チームの指揮を執るだけでなく、遠征の段取りといった裏方でも忙しい別府匠監督

 毎年遠征に同行している別府匠監督は「7月、8月はチームの主戦場であるアジアではレースが少ない反面、ベルギーを中心にしたヨーロッパにはレースがたくさんある。また近年UCIアジアツアーの1クラス、超級のレースで活躍する選手たちの多くはヨーロッパ人選手。この時期にチームが自転車競技の本場であるヨーロッパのレースを走り、そこから走り方や戦術を学ぶ意義は大きい」と遠征の主旨を説明する。

 初年度の遠征は全所属選手が参加したが、去年と今年は若手中心となり、今年は27歳の福田真平キャプテンが最年長。このほか伊藤雅和、平塚吉光、小森亮平、早川朋宏、中根英登の計6選手が参加している。共同生活を送っているチームの雰囲気はとても良く、全員が高い目的意識をもって、各レースに挑んでいる。

今年の遠征に臨んだ愛三工業レーシングチームの6選手。(左から)伊藤雅和、福田真平、早川朋宏、中根英登、平塚吉光、小森亮平今年の遠征に臨んだ愛三工業レーシングチームの6選手。(左から)伊藤雅和、福田真平、早川朋宏、中根英登、平塚吉光、小森亮平

 若手から中堅の選手だけが参加する背景には「世界的にプロになる年齢は23歳、遅くても26歳まで。それまでの時期で選手の能力を引き上げないといけないし、ヨーロッパの2クラスやケルメスではプロをめざすその世代の選手が多いので、チームの若手選手たちにとって刺激になることを願っている」と別府監督。将来的な世代交代に向けて、若い世代の選手同士でよりチームとして結束すること、さらに選手個々にとっては、ここでいい結果を出して、格上チームからスカウトの声をかけられることも大きな目標だ。

イジエールのプロケルメスには橋川さんのお子さんも応援に駆けつけ、レース前の時間を和ませるイジエールのプロケルメスには橋川さんのお子さんも応援に駆けつけ、レース前の時間を和ませる
レース前の食事はきまってパスタ。ハムやチーズ、ふりかけなど、選手個々に味付けをして食べるレース前の食事はきまってパスタ。ハムやチーズ、ふりかけなど、選手個々に味付けをして食べる

経験を重ねて感じた手ごたえ

イジエールのプロケルメスのスタートを待つ中根英登(奥)と徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム)。このレースには竹之内悠(ベランクラシック)も出場したイジエールのプロケルメスのスタートを待つ中根英登(奥)と徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム)。このレースには竹之内悠(ベランクラシック)も出場した

 愛三工業レーシングに移籍して2年目、それ以前の大学時代から毎年ベルギーのレースを経験している25歳の中根英登は、「この遠征はヨーロッパのトッププロと同じレースを走れるチャンス。平坦や強風、石畳など苦手なレーススタイルではあるけれど、ここでしっかりと走れれば苦手分野の克服になると思って頑張っている。また毎年、定期的にベルギーに来て厳しいレースを走ることで、自分の実力がどこまで上がっているのか確かめることができる。今年は初めてプロケルメスで一桁の順位に入ることができた。最初は完走もままならない状態だったので、これまでチャレンジしてきたことが身になっていると実感できた」と話す。

 別府監督が「選手全員が思っていたよりも走れている。総合的に選手たちの実力が上がり、自分たちで考えてレースができている印象」と話すとおり、今年の遠征では勝利や表彰台にこそ届かないものの、チームは大きな手応えをつかんでいる。長年チームを率いてきた主力選手の西谷泰治と盛一大が昨年末に引退したために、周囲からはチーム力の低下が心配されたが、選手たちはそんな声を跳ね返す走りを見せている。

ニノーヴェのプロケルメスを走る伊藤雅和。周りはUCIワールドチームの選手たちだニノーヴェのプロケルメスを走る伊藤雅和。周りはUCIワールドチームの選手たちだ

 ニノーヴェのプロケルメスで、日本人選手で唯一追走集団でゴールした伊藤雅和は、2014シーズンの初戦、ツール・ド・ランカウイで落車により大腿骨を骨折。昨シーズンを丸々棒に振る大ケガだったが「ようやく調子が戻ってきている。今年は前半戦で思うように走れなかったので、この遠征を機にいい流れを作って結果を出し、今後のステップアップにつなげたい」と話す。

ニノーヴェのプロケルメスで伊藤雅和が前の選手を追う。終始ハイペースでレースが展開したニノーヴェのプロケルメスで伊藤雅和が前の選手を追う。終始ハイペースでレースが展開した
昨年のケガから完全復活を遂げ、今年の遠征で積極的な走りをみせる伊藤雅和昨年のケガから完全復活を遂げ、今年の遠征で積極的な走りをみせる伊藤雅和

UCIポイント獲得、そして再びアジアへ

 キャプテンの福田は「前に前に積極的に走るのがヨーロッパのケルメスレースで、気持ちが負けてしまうと後ろに取り残されてしまう。自分はここまでいい走りができていないので、悔しい反面、残りのUCIレースで頑張らないといけないと思っている。2クラスのUCIレースのほうがシンプルに動いて結果を出せると思う。チームの目標としても、最後のUCIレースがメーン。ここまで戦ってきた経験を生かしたい」と、今週末にフランスで開催される3日間のステージレースに向けて抱負を語る。

ニノーヴェのプロケルメスでスタートラインに並んだ福田真平ニノーヴェのプロケルメスでスタートラインに並んだ福田真平
後続集団でゴールスプリントに挑む福田真平。並みいるUCIワールドチームの選手たちに混ざり16位でゴールした後続集団でゴールスプリントに挑む福田真平。並みいるUCIワールドチームの選手たちに混ざり16位でゴールした
ケルメス名物のブックメーカー。優勝選手を予想して現金を賭ける。この日の倍率表には小森と福田の名前があったケルメス名物のブックメーカー。優勝選手を予想して現金を賭ける。この日の倍率表には小森と福田の名前があった

 1カ月間の遠征の最終戦、クレイズ・ブレイズはフランスのブルターニュ地方を舞台に8月1日から3日にかけて、全4ステージで開催される。今遠征の集大成となる同レースでの活躍、またヨーロッパでの厳しい経験を積んで、アジアのレースに戻ってくる愛三工業レーシングの、今後より一層の活躍を楽しみにしたい。

フランス、ペロンシでのUCIレースで健闘した早川朋宏。雨のなかの厳しいレースだったフランス、ペロンシでのUCIレースで健闘した早川朋宏。雨のなかの厳しいレースだった
周回コースに組み込まれた石畳区間。北フランス特有の荒れた路面が雨に濡れた周回コースに組み込まれた石畳区間。北フランス特有の荒れた路面が雨に濡れた

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