山口和幸の「ツールに乾杯! 2015」<8完>エッフェル塔が見えると感無量のゴールへ 選手とともにボクもツール全日程を“完走”

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 パリだ。エッフェル塔が見えた! 23日間の日程で開催されるツール・ド・フランスを出場選手と一緒にまわり、無事にパリに到達できたときは感無量だ。クルマに乗る取材記者でもそうなのだから、選手はそれ以上に感動的なのだと思う。

© Paris Tourist Office - Photographer : © Jair Lanes© Paris Tourist Office - Photographer : © Jair Lanes

 自転車競技不毛の地、沖縄県石垣島出身の新城幸也(現チーム ヨーロッパカー)が、高校を卒業後に初めてフランスへ渡ったとき、「フランスのイメージ…エッフェル塔しかなかったですね。田舎者なので。東京タワーもエッフェル塔も同じ感覚ですよ」というイメージを持ったという。やはりフランスの象徴は、そしてツール・ド・フランスの最終到着地パリのシンボルは、エッフェル塔なのだ。

© Paris Tourist Office - Photographer : © Stéphanie Rivoal© Paris Tourist Office - Photographer : © Stéphanie Rivoal

 パリを何度か訪問しているうちに、その景観について驚くべき事実があることに気づいた。パリのすべての歴史的建造物は、車道を走っているときの目線で眺めると、常に視線のど真ん中に配置されているのである。

 ほとんどの観光客は道路の脇にある歩道からバスティーユのモニュメントやコンコルド広場のオベリスクを見るのだが、その位置からは街路樹や建物にじゃまされて見にくかったりする。ところがクルマやバスのように道路を走るときの視線で見ると、モニュメントが左右正対称でキチッと配置されているのだ。

 あの有名な凱旋門は星(エトワール)のような放射線状に12本の道路が集まる中心点に建てられているので、エトワール凱旋門と呼ばれているのは有名な話だが、12本の道路のすべてにおいて、そのど真ん中に立てばエトワール凱旋門は街路樹に隠されることなく全貌が眺められるというわけ。

 これはパリの都市計画時にきちんと計算され尽くされたもので、歴史的な遺産だ。当時はもちろん馬車に乗ったときの視点で考えられたのだが、今日ではそれがクルマであったり、そしてツール・ド・フランスを走る自転車選手もまたそれを目撃できるわけだ。

ラルプデュエズでマイヨジョーヌを死守し、パリ・シャンゼリゼに凱旋することになるクリストファー・フルーム © ASO/G.Demouveauxラルプデュエズでマイヨジョーヌを死守し、パリ・シャンゼリゼに凱旋することになるクリストファー・フルーム © ASO/G.Demouveaux

 自転車専門誌のサイクルスポーツで9年間、ツール・ド・フランス別冊付録の総編集を担当し、巣立った後の1997年から19年連続での全日程を取材したことになる。もちろん経費も体力もそれは相当大変なのだが、ボクが大会の全日程を回ることにこだわるのは理由がある。

 初取材となった1989年は大会後半からの現地入りだった。最終日にベルサイユからパリ・シャンゼリゼまでの個人タイムトライアルが行われ、米国のグレッグ・レモンが大逆転し、ツール史上最僅差の8秒差で総合優勝を飾った。その晩に全日程を取材し続けていた日本人カメラマンと夕食をご一緒させてもらうのだが、カメラマンは食事中に昏倒するかのようにテーブルに突っ伏してしまった。

 「全日程を追いかけるのってこんなに大変なものなのか」という衝撃。それと同時に肉体と精神力の限界までこのレースに没頭することで、役割こそ違えど同じように集中する選手の気持ちが共有できるのではないか。ツール・ド・フランスのアシスト役は成績など関係なしに、そして役目が終われば途中でレースを捨ててしまうというエピソードもプロらしい。でもそれは違うのではないかなと。世界最高峰のステージレースは、もちろん優勝すればスゴいのだけれど、パリに完走するのも勲章なのではないだろうか。

開幕地ユトレヒトの生んだキャラクター、ミッフィーちゃんもボクの取材車両に乗ってツール・ド・フランスを完走した開幕地ユトレヒトの生んだキャラクター、ミッフィーちゃんもボクの取材車両に乗ってツール・ド・フランスを完走した

 今年は優勝争いも白熱し、ツール・ド・フランスにふさわしい好レースとなった。そんなフランス一周レースを選手とともに完走できたことが本当にうれしい。毎年のことながらもう疲労は限界まで達し、ヘロヘロでゴールしたが、来年もこの場で頑張れるように11カ月間かけて身体を鍛えたい。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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