猫も杓子も?! ツール・ド・フランス<3>スポーツ観戦に垣根なし ツール・ド・フランスは誰もが楽しめる“夏のお祭り”

  • 一覧

 前回とりあげたのは、ツール・ド・フランスをショービジネス化し、観戦者を“猫も杓子も”と広げたことによって生まれた「ちょっと困り者の観戦者たち」。しかし、それでもやはり「万人に楽しめるスポーツ観戦」の成功は素晴しい! ということで、最終回の今回は、実際にツールのコースを訪れ、さまざまな観戦スタイルを通じてツールの魅力をお伝えします。

毎年人気のヴィッテルのキャラバン。ミネラルウォーターのボトルをくれるほか、暑いなかで観客達に向かって水噴射攻撃をして喜ばせる毎年人気のヴィッテルのキャラバン。ミネラルウォーターのボトルをくれるほか、暑いなかで観客達に向かって水噴射攻撃をして喜ばせる

自らコースを走る“理想的”観戦者

ツールの行程が発表された時点から、もうそのルートを辿り、どこかで観戦できないかと自分のスケジュール調整を始める。そんな人が、自転車乗りのツールファンにはとても多いツールの行程が発表された時点から、もうそのルートを辿り、どこかで観戦できないかと自分のスケジュール調整を始める。そんな人が、自転車乗りのツールファンにはとても多い

 ツールを現地で楽しむ観戦者のタイプは主に3つ。最も好ましく理想的、模範的といえる観戦者たちは、なんといっても、自ら自転車に乗っているサイクリストたち…に違いない。

 彼らは自転車の楽しさも、そして危険性も身をもって知っている。なので選手の邪魔になる行為はしないし、敬意をもって観戦する。

 そして何カ月も前から、地図を片手に楽しく観戦を計画する。

 現地には自転車でアクセスするか、あるいは数日前から近場に滞在。キャンプをしながら事前にコースを走り、「あの坂は思ったよりもダラダラと長い上り。見た目よりずっと辛いんだ」などと下調べをし、レース当日は、選手たちの走りを感心しながら眺め、同じコースを自分も走ったことを歓びとする。

 また大会後、8月になってからバカンスを取り、ツールコースの一部を自分でも走ってみたり…そんなファンもとても多い。だから、そのためのプランを売る旅行代理店もあったりする。

親子でイギリスからやってきた観戦者親子でイギリスからやってきた観戦者
クルマは麓に置いておき、朝から峠に向かって上り始め、ツールを待ち伏せするクルマは麓に置いておき、朝から峠に向かって上り始め、ツールを待ち伏せする
1人でやって来て、乗用車で野宿。運転席に自転車をしまい、後部座席を倒してトランクを広げ、そこに寝袋を敷く。明日はどこから上って観戦しようか…と地図を眺めて作戦会議1人でやって来て、乗用車で野宿。運転席に自転車をしまい、後部座席を倒してトランクを広げ、そこに寝袋を敷く。明日はどこから上って観戦しようか…と地図を眺めて作戦会議
バーで朝食をとりながら相談するドイツ人グループ。この日はスタートの祭りを見た後、コースを逆方向から上ってゴール手前で観戦をすることに決定!バーで朝食をとりながら相談するドイツ人グループ。この日はスタートの祭りを見た後、コースを逆方向から上ってゴール手前で観戦をすることに決定!
定年退職した3年前から自転車に乗り始めたという男性。以来毎年、友人と2人で「ツール観戦・3日間の旅」をすることに決めているそう定年退職した3年前から自転車に乗り始めたという男性。以来毎年、友人と2人で「ツール観戦・3日間の旅」をすることに決めているそう
7月19日に開かれた「エタップ・デュ・ツール」に参加したという女性。「日本人のきれいな子もいたわよ〜」と、日向涼子さんのことを語った7月19日に開かれた「エタップ・デュ・ツール」に参加したという女性。「日本人のきれいな子もいたわよ〜」と、日向涼子さんのことを語った
クルマはなし。自転車で野宿しながらツール観戦クルマはなし。自転車で野宿しながらツール観戦

母国の選手を応援 世界中から訪れるファン

凄い人気のナイロアレクサンデル・キンタナ選手。チームや国籍に関係なく、老若男女から一番の人気はこの人かも凄い人気のナイロアレクサンデル・キンタナ選手。チームや国籍に関係なく、老若男女から一番の人気はこの人かも

 とはいえ自転車のなかでもとりわけロードバイクは、誰もが気軽に乗れるものではなく、経済的にも余力がないと手の出せないスポーツの代表例でもある。だからこそ「憧れ」を抱くファンも多い。

 各選手がみな鍛え上げた見事な身体をもち、それを各チームのジャージが引き立たせる。ヘルメットもサングラスも色鮮やかで、またがる自転車は1台で乗用車1台が買えるような価格のものばかり。

 そんなゴージャスなショーを観戦料なしに、しかも手が届くほど間近で観られるのだから、たまらない。

 またサッカーと同様、チームごとの戦いでありながら、チーム員は多国籍だ。

 彼らの応援に世界中から母国のファンがかけつけ、国旗を振ったり、身につけたり、沿道に貼ったり、掲げたりしながら声援を送る。それがまたツールを華やかな国際大会として盛り上げてもいる。

 スポーツに国境という「垣根」は要らない。でも母国選手を応援する「愛国心」は、誰の気持ちもホットにする。

ノルウェージャージを着たカップルノルウェージャージを着たカップル
親子でスペインから親子でスペインから

来てみればわかる「ツールの楽しさ」

カルフールのキャラバンに群がる観戦者たちカルフールのキャラバンに群がる観戦者たち

 自ら自転車に乗るファン&競技が好きなファン&好きな選手がいるファン、それらをトータルしても、ようやく観客の半数。残り半数は、「キャラバンのグッズ集めが目的。それが楽しいから来た!」と、なんら悪びれることなく観戦理由をそう答える。

 でも、それでいい。観戦すれば、ツールは間違いなく、テレビのニュースなどで見かけるよりもずっと楽しいと体感できる。自転車競技に好感を持てる。

 とりわけ、近年はドーピング問題ばかり注目されるツール。それだけを聞いていると嫌悪感が募りがちだけれど、一度観戦し、キャラバンの楽しさを味わい、選手たちの格好よさを間近に見て、その走りの素晴しさに目を見張ると、「でも、なんやかや言っても、やっぱりツールっていいよね」と支持するようになる。自転車競技の選手に敬意を抱くようにもなる。

p-1

 「アシストや駆け引き、ポイントなど、複雑すぎてサッパリ解らない」

 「どの選手もヘルメットとサングラスで恰好いいけれど、誰が誰だかわからない」

 そんな人でも集っていい。観戦者は増えれば増えるほど、その大会を大きくし、その競技を繁栄させるのだから。

 観戦に垣根は不要。自転車競技のことなどわからない人も、そして子供から高齢者までもが1日楽しめる“お祭り”。それを実践して、われわれに教えてくれているのがツール・ド・フランスだ。スポーツ競技イベントの偉大なるモデルの1つに違いない。

p-20
祐天寺りえ(ゆうてんじ・りえ)

1964年 横浜生まれ。1994年よりフレンチ・ アルプスのスキー場Meribel(メリベル)に在住。既出本:「フランスだったら産めると思った」原書房、「食いしんぼうの旅 アルプス〜コートダジュール編」パラダイム出版、「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て」小学館

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2015 ツール2015・コラム

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載