笑顔と“おみやげ”振りまくホステスを記者も体験ツール・ド・フランスを盛り上げたキャラバン隊の一日 「フェスティナ」に密着取材

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 オランダ・ユトレヒトからフランス・パリまでの23日間、ツール・ド・フランスで選手と共に旅した広告キャラバン隊。スポンサーをPRするため、クルマやトラックに趣向を凝らしたデザインを施し、選手たちが通過する前のコース沿道で観客たちの目を楽しませた。またキャラバンから配られる“おみやげ”は観客にとって大切なコレクターズアイテムだ。ツールのオフィシャルタイムキーパーを務めて23年となる時計ブランド「FESTINA」(フェスティナ)のキャラバン隊の一日を追った。

フェスティナのキャラバン隊。20~40代のメンバーで23日間を共に過ごしたフェスティナのキャラバン隊。20~40代のメンバーで23日間を共に過ごした

羨望のホステス

スタート地点に並んだフェスティナのキャラバン隊スタート地点に並んだフェスティナのキャラバン隊

 キャラバンは、レースのスタートからフィニッシュまで選手が走るルートのほぼ全てをパレード走行する。スポンサー数はおよそ25、それぞれ5~11台の車輌で構成されている。フェスティナチームの車輌は全部で7台。500人の応募者から選ばれたスタッフ16人が、大会期間中の23日間にわたって行動を共にした。

 毎朝、スタート前には洗車が欠かせない。キャラバンカーはブランドの“顔”だ。スタート地点へ向かう途中にガソリンスタンド・洗車ステーションに立ち寄るほか、キャラバンの隊列が車を止めて待機している間も手作業でクルマを磨き上げていた。フェスティナは毎年、隊列の最後尾を務めることになっている。先頭チームの出発からは30分の時間差があるせいか、どこかゆったりとした雰囲気があった。

「スペシャルカー」と呼ばれる装飾されたキャラバンカー「スペシャルカー」と呼ばれる装飾されたキャラバンカー
洗車ステーションの後は、手作業でクルマ磨き!洗車ステーションの後は、手作業でクルマ磨き!
チームの“華”として活躍するホステスの3人チームの“華”として活躍するホステスの3人

 チームの“華”は、沿道へPRグッズのサイクルキャップを配る「ホステス」だ。クレア・ヴォンクォリさん(24、Claire Vancoillie)さんは、今年4回目のフェスティナキャラバン参加。ホステスのほかにこれまで、ドライバー、ヴィラージュでのVIP客対応ホステスと異なるタイプの役割を経験してきたという。

一度クルマの上に立てば日陰はない。ホステスたちは出発前に念入りに日焼け止めを塗る一度クルマの上に立てば日陰はない。ホステスたちは出発前に念入りに日焼け止めを塗る

 ヴォンクォリさんにとって1番魅力的だった役割はと記者が問うと、「やっぱりホステス」ときっぱりとした答えが返ってきた。「沿道で観戦をしてきた小さいころから、ここに立つことが夢だったの。レースをまったく違う景色で見ることができるって、インクレディブル(信じられないほどすごいこと)だわ!」

 記者がフェスティナのキャラバンに同行した7月22日、ディーニュ・レ・バンからプラ・ルーまでの第17ステージで、ホステスを体験するチャンスが巡ってきた。前日にあいさつをしつつキャラバンのメンバーたちと話をしていると、「ジャージを貸してあげるからホステスをしてみたらいいよ」と持ちかけられ、あれよあれよという間に大役が降ってきたのだ。

クルマの上に設置されたボックスに立ち、記者もホステス役にチャレンジクルマの上に設置されたボックスに立ち、記者もホステス役にチャレンジ
クルマの上に設置されたボックスの内側は沿道に配られるキャップでいっぱいだクルマの上に設置されたボックスの内側は沿道に配られるキャップでいっぱいだ
ボックスに立つホステスは、ベルトやバックルでしっかりとホールドされる仕組みボックスに立つホステスは、ベルトやバックルでしっかりとホールドされる仕組み

 取材のつもりでクルマの上に立ってみると、ヴォンクォリさんの言う「インクレディブル」は明らかだった。同じキャラバンであっても、観客からの熱いまなざしと狂気の掛け声は、ドライバーには向けられない。「お願いお姉さん、キャスケット(フランス語でキャップの意)ちょうだい」「うちの子にひとつ!」という声とともにニョキニョキと手が伸びてくる。中には「フェスティナの時計だよ」と時計を指差し、“フェスティナ愛”を表現しつつキャップを求める観客もいた。

 受け取った観客からの「ありがとう」の嵐に混じって、もらえなかった観客からは罵(ののし)りが聞こえてくることもある。「嫌な気分になるわね」とヴォンクォリさん。ただし、罵りもそれだけキャップを熱望しているという証拠だ。その後、沿道でケンカにならないことを祈りつつ、また次の手へとキャップを差し伸べるのだった。

ホステスに手を伸ばして懇願するようにキャップを求める観客たちホステスに手を伸ばして懇願するようにキャップを求める観客たち
みごとキャップを獲得した女の子は本当に嬉しそうだみごとキャップを獲得した女の子は本当に嬉しそうだ
クルマの上からながめるキャラバン隊の景色は新鮮だクルマの上からながめるキャラバン隊の景色は新鮮だ

消防士や警備隊員にもプレゼント

観客にしゃべりかけて盛り上げるMCの男性。「きょうのホステスには日本から来たジャーナリストもいるよ!」などと紹介も欠かさない観客にしゃべりかけて盛り上げるMCの男性。「きょうのホステスには日本から来たジャーナリストもいるよ!」などと紹介も欠かさない

 ホステスがどんな観客にキャップを投げているのかといえば、そういったフェスティナへの愛を投げかけてくる人や子供、さらに「消防士や警備隊も」と思わず聞き返したくなるような答え。そう、沿道で期待いっぱいに長時間待機している点では誰もが同じだ。記者も警備隊員に届くように投げてみると、真面目な表情を崩さず口元だけ微笑んで拾ってくれた。

 また時々、ホステスに先導して走るスピーカーを乗せたクルマの上で、MCが「欲しい人は踊ってね~」などと沿道に呼びかけて盛り上げを図る。後に続くホステスは、呼びかけに応じて激しく体を揺らす観客たちにもれなくキャップを投げていった。

 ホステスを観客の元へと導くドライバーのひとり、クレモン・コンタンさん(21、Clément Cantin)は、チーム最年少。免許取得後3年間の運転経験がなければ応募することができないドライバーのポジションに、念願叶って初参加だ。誰もが物欲しげな沿道の様子は「クレイジー」と、感嘆とも呆れ気味とも言えるコメントだが、「貧しい人も裕福な人も同じように沿道に並んでいる。それってすごいことじゃない?」と微笑んだ。

綺麗に列をなして進むフェスティナのキャラバン隊綺麗に列をなして進むフェスティナのキャラバン隊
ドライバー役で初参加したクレモン・コンタンさんドライバー役で初参加したクレモン・コンタンさん

キャラバンも緊張の山岳

 アルベルト・コンタドールが落車をするなど、ツール・ド・フランス参戦選手にとって過酷だったこの日の山岳ステージは、広告キャラバン隊にとっても一筋縄でいかない行程となった。山頂のスペースが限られるためプレスのクルマは「登頂不可」と事前に通達され、その他の関係車両も台数が制限された。加えて、暑さによるアスファルトの溶解が激しいため、選手が来る前に路面をなるべく荒らさぬようにと、キャラバンカーにはさらなる台数制限がかけられた。

行く手に見えるのは、つづら折りの沿道にそって並んだ観客の姿だ行く手に見えるのは、つづら折りの沿道にそって並んだ観客の姿だ
山岳コースで何重にも集まった観客山岳コースで何重にも集まった観客

 狭くうねった急峻な道はまた、絶好の観戦ポイント。道の両側にたくさんの観客が詰めかけ、訪れたキャラバンは興奮の渦に飲み込まれた。

 ホステスが投げたキャップが観客の手に弾かれ道の真ん中に落ちると、観客は躊躇なくそれを拾おうとした。クルマから見ていると、まるで人々がクルマの前方にダイブしてくるようで、助手席に乗っていてもヒヤヒヤさせられた。コンタンさんも集中した表情でハンドルを握っていたが、それと同時に前を走るキャラバンカーのホステスに対して、もっと道路より遠くへ投げるよう無線を介して注意を促していた。

ベテランのまなざし

チームを束ねるベテラン、ニコラ・エンベルさんチームを束ねるベテラン、ニコラ・エンベルさん

 およそ5時間、興奮と緊張のパレード走行を終えたチームは、一路ホテルへと向かった。ホステスたちのこの日の感想は、「(悪態をつくような)感じの悪い観客はほとんどいなかったけれど、観客の全体数が少なかった、キャップがたくさん残っちゃったわ」とのこと。

 チームを束ねるニコラ・エンベルさん(Nicolas Imbert)は、フェスティナのキャラバンに携わって15年のベテラン。「そんな日もあるさ。あしたはまたあしたの風が吹くよ」と朗らかに話し、メンバーの労をねぎらった。

 エンベルさんはメンバーに「ニコ」と呼ばれて親しまれている。そんなエンベルさんのことをコンタンさんは、「例えば昼間に僕らを注意したり叱ったりしたとしても、夜までそれを引きずることはない。とても尊敬できるよ」と話した。「ここには、僕みたいな若者も40歳以上のベテランもいる。いっしょに働けることはとても素晴らしいチャンスだし、小さなチームだけど気に入っている。来年以降も続けることができたら、いつか僕がチームを託される日が来るかもしれないね」

スタートエリアで観客の目を楽しませるフェスティナの新キャラスタートエリアで観客の目を楽しませるフェスティナの新キャラ
食後のバーで両手にホステス。青いタイツを脱いでも…やっぱり同じポーズだ食後のバーで両手にホステス。青いタイツを脱いでも…やっぱり同じポーズだ
観客がいない下り坂ではしばし絶景を堪能しながら静かな道を走る観客がいない下り坂ではしばし絶景を堪能しながら静かな道を走る

◇         ◇

 ホテルに到着してそれぞれの部屋に引き取ったチームメンバーは、誰彼ともなくバーに集まってきた。話は尽きることなく、そのまま夕食の席へ。翌日の出発は、朝8時。「それほど早くないから」と食後、メンバーは再びバーに移動していく。そこへ、いつの間にかほかのキャラバンチームも合流し、大音響のクラブミュージックとともに夜は更けていった――ただしキャラバンカーのドライバーは、朝のスタート時に抜き打ちで飲酒チェックがあるそうだ。

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