飯島美和のフォーカス・ツール2015<4>この強さは罪なのか? クリストファー・フルーム(チーム スカイ)

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レーススタート前、笑顔も控えめなマイヨジョーヌのフルームレーススタート前、笑顔も控えめなマイヨジョーヌのフルーム

 ツール・ド・フランス第20ステージを終えて、残すはパリのシャンゼリゼでのゴール。大きくタイム差のつく山岳ステージが終わりクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が、落車でのリタイアなど大きなトラブルがない限り、実質的に2度目の総合優勝を手にした。

 フルームのマッサージャーに最終日を前にして、「おめでとう!」と言うと、「ありがとう。でもまだ、終わってない!」と言われた。パリの表彰台に立つまでは、スタッフもフルームが気が抜けないのだ。

 早い段階からマイヨジョーヌを身にまとい続けた彼だが、今年のツールは決して楽なものではなかったと感じられたのは、第19ステージのレース中の記者会見でのことだ。「2位のキンタナとのタイム差が2分28秒であることについて、このタイム差をどう思うか?」と言う質問を受け、フルームはしばらく下を向き「このタイム差を作るのは簡単ではなかった」と、言葉を詰まらせながら語った。

 この日、逆転のチャンスを狙う選手たちの総攻撃の中、チームメートを盾とし、盤石の体制で最後の勝負所に入ったフルームだったが、暑さで溶けたアスファルトの一部がチェーンに付着するというマシントラブルで、バイク交換を余儀なくされた。

アルプスの上りでは、ライバルとなるキンタナとの一騎打ちが続いたアルプスの上りでは、ライバルとなるキンタナとの一騎打ちが続いた

 その隙をついてかどうかは本人のみぞ知るところだが、昨年の総合優勝者のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)がアタック。ニバリは逃げ切って区間優勝を果たした…。“紳士協定”や“暗黙の了解”という言葉で成り立っているロードレースの世界において、このニバリのアタックには大きなブーイングが起こると考えるのが普通だ。

 しかし、プレスルームの現場ではフルームがメカニックトラブルを起こした瞬間、拍手が起こり、ニバリのアタックに声援が飛んだ。懸命に追いかけるフルームに対してブーイングも聞かれるような状況。見ていて不思議でならなかったが、ファンが多ければ多いほど、アンチファンがいる。これが強すぎる選手の宿命なのか?

第15ステージ、フルームを守るチーム スカイの隊列第15ステージ、フルームを守るチーム スカイの隊列

 ちょうどこの日のステージのスタート前に、フルームのマシンがスキャナー検査を受けていた。マシンの内部にモーターなどが組み込まれていないかをチェックする検査だという。なんともバカげた検査に感じるが、そんなことすら疑ってしまう強さだと言えるのかもしれない。

 こんな状況のなか日々マイヨジョーヌを守り続けなければいけないフルームの苦悩は、きっとこのジャージに袖を通した選手しか理解することはできないだろう。

 彼は「チームメートの誰もが、このジャージを着るチャンスがある実力を持っている」とある日の記者会見で言っていた。

フルームを気遣うニコラ・ロッシュらチームメートフルームを気遣うニコラ・ロッシュらチームメート
ライバルたちがフルームをしっかりマークライバルたちがフルームをしっかりマーク

 そう、彼の強さはチームの強さだといえるだろう。

 スカイのアシストは、山岳ステージで10人ほどに絞られた集団に3、4人の選手を残し、フルームを気遣いながら上ってくる。そしてタイム差を計算しながらスピードを上げるために、自分の順位を捨てて牽引し続ける。それはその位置で走れる選手たちが揃っているからできることなのだ。

表彰式では毎日がこの笑顔!表彰式では毎日がこの笑顔!

 「強すぎてつまらない」とブーイングを浴びるマイヨジョーヌには、最強のアシスト陣がいて、そんなブーイングからも守ってくれるのだ。

 だからロードレースのヒーローは一人じゃない。

(飯島美和)

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