ツール・ド・フランス2015 第17ステージゲシュケが涙のステージ優勝 ヴァンガードレンがリタイア、コンタドールが落車の大波乱

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 ツール・ド・フランス第17ステージは7月22日、ディーニュ・レ・バンからプラ・ルーまでの161kmで行われ、フィニッシュまで残り46kmで逃げグループから飛び出したシモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)がツール初勝利となるステージ優勝を挙げた。今大会2回目の休息日明け、アルプス山脈での最初のステージで総合上位陣に大波乱が発生。総合3位でスタートしたティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が体調不良でリタイア、総合5位のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がレース後半の下りで落車しライバルから大きな後れを喫した。

ステージ優勝を飾ったシモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)ステージ優勝を飾ったシモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)

 大会はいよいよ第3週目へ。オランダ、ベルギー、フランス北部を巡った第1週、ピレネー山脈と中央山塊を進んだ第2週を経て、2015年ツールのクライマックスを飾るのはアルプス山脈だ。その最初となる第17ステージは、前半から中盤にかけて3級、3級、2級とカテゴリー山岳が立て続けに登場。中間スプリントを越えからの後半部は、1級山岳のアロス峠、そして2級山岳プラ・ルーの頂上ゴールを目指す。

 特に1級山岳のアロス峠はツールにおいて、数々のドラマが起こっている。1975年大会では、当時隆盛を誇ったエディ・メルクス(ベルギー)がハンガーノックに陥り、マイヨジョーヌを失った地として長きにわたって語り継がれる。また、頂上通過後の下りがテクニカルで、勝負を分けるポイントになる可能性を指摘する声も挙がっていた。6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージでは同じルートが採用され、この時はロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)が逃げ切りでステージ優勝を果たしている。

チームメートに援護され走るヴァンガードレン。しかしこのあとリタイアチームメートに援護され走るヴァンガードレン。しかしこのあとリタイア

 レースは序盤からアタックの応酬。ハイペースで進んだ中から逃げを決めたのは28人。総合成績を脅かす存在が含まれていないことや、多くのチームが前方に選手を送り込んだこともあり、メーン集団は大人数の逃げを容認。少しずつタイム差が広がっていった。

 そんな中、メーン集団のペースにもついていけなかったのがヴァンガードレン。ペダリングには力がなく、アシストに付き添われながら何とか走り続ける。集団のスピードが緩くなったことで一度は合流を果たしたが、またすぐに遅れだしてしまった。再度の脱落にはアシストが付くこともなく、最後はスタッフがチームカーから降りて制止を促した。その瞬間、総合表彰台をかけて大会第3週に臨んだヴァンガードレンのリタイアが確定。涙を流しながらバイクから降りた。実のところ、レース前から激しい頭痛に襲われ、戦える体調になかったという。

 逃げグループとの差が広がっていく一方のメーン集団だが、残り80kmを切ったところでマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)に引き上げられる形でコンタドールがアタック。前触れなく起きた動きに集団が一時的に活性化。コンタドールは捕まってしまったが、残り70km手前でロジャースが再びアタック。これに追随する選手が次々と現れ、5選手が先頭を行く28人を追った。

中盤でコンタドールが様子見的なアタック中盤でコンタドールが様子見的なアタック

 先を急ぐ28人の逃げグループは、ポイント賞争いでトップに立つペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)と、同じく3位のジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が含まれていることから、中間スプリントポイントに向けて慌ただしさを増す。しかし、2人が牽制している間にブノワ・ヴォグルナール(フランス、エフデジ)が先頭に立ち、そのまま1位通過してしまった。デゲンコルプ、サガンともにポイント数は伸ばしたものの、それぞれ2位と3位での通過となった。

 その直後、逃げグループからゲシュケがアタック。フィニッシュまで46kmを残しての動きに、誰も明確に追走の意思を示さない。ようやく追撃ムードが高まり始めたのは、残り27kmでのこと。ニコラ・ロッシュ(アイルランド、チーム スカイ)やマティアス・フランク(スイス、イアム サイクリング)が立て続けにアタックしたことをきっかけに、数選手がペースアップ。登坂力の高いティボ・ピノー(フランス、エフデジ)がその中から抜け出し、単独でゲシュケを目指した。

 後続の動きをよそに、快調に飛ばすゲシュケ。今大会最高標高地点2250mのアロス峠を1位通過したことで、「アンリ・デグランジュ記念賞(賞金5000ユーロ)」の獲得を決めた。続くテクニカルな下りも難なくクリア。追うピノーが落車するなど、その難しさに苦しむ一方で、ゲシュケは最後の上りであるプラ・ルーに向けて攻め続けた。

 プラ・ルーは登坂距離6.2km、平均勾配6.5%。ゲシュケは長時間の独走にもペースが落ちず、頂上のフィニッシュラインまで好ペースを刻み続けた。終盤に猛追したアンドルー・タランスキー(アメリカ、BMCレーシングチーム)に差を縮められはしたが、トップを脅かされることはなかった。レース中は一切表情を変えなかったゲシュケだが、フィニッシュを前に勝利を確信すると雄叫びを挙げて力強いガッツポーズ。見事な独走で優勝を決めた。

 ゲシュケはプロ7年目の29歳。前身のスキル・シマノ時代からの生え抜き選手で、現チーム一筋で走ってきた。キャリア通算では3勝目、ツールは3回目の出場でうれしいステージ初優勝となった。フィニッシュ後のインタビューでは、「本当に信じられない。自転車競技を始めた時からの夢がかなった。ここまでの道のりは簡単ではなかった」と述べると涙。第1週はデゲンコルプやワレン・バルギル(フランス)のアシストに専念し、第2週から自身のチャンスを探っていたことを明かし、勝因には「早めの仕掛けにあった」ことを挙げた。

 ゲシュケから10分以上の差でフィニッシュを目指したメーン集団。徐々に人数を減らしていき、アロス峠の頂上を目前にヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)とナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)がアタック。いずれもマイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が落ち着いて対応した。さらには、コンタドールとアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)もこの集団に残り、チャンスをうかがった。

ゴール前でのバルベルデら総合有力勢ゴール前でのバルベルデら総合有力勢

 しかし、その後の下りでコンタドールにアクシデントが発生する。逃げグループからペースを下げてアシストに回っていたロジャースと接触、2人ともバイクから地面へと投げ出されてしまった。再スタートを図ったコンタドールだったが、落車の衝撃でメカトラブルを起こしてしまい、ロジャース同様に前方から合流していたサガンのバイクに跨った。その間、ライバルたちから大きく遅れてしまい、その差を縮められないままプラ・ルーの上りへ入ることを余儀なくされた。

 フルーム、キンタナ、バルベルデ、ニバリに絞られたマイヨジョーヌグループは、プラ・ルーでキンタナが最初の仕掛け。1回目はライバルのチェックを許したが、残り1kmのフラムルージュ通過とほぼ同時に再びアタック。これに対応できたのはフルームだけだった。ラスト500mでフルームが一瞬ペースを上げたものの、2人の間に差が生まれることはなく、最後はキンタナを前にして同タイムフィニッシュ。優勝のゲシュケからは7分16秒差でキンタナとフルームがゴールし、7秒後にバルベルデが、さらに8秒後にニバリが続いた。トラブルに見舞われたコンタドールは、フルームらから1分17秒遅れでプラ・ルーの頂上ゴールへと到達した。

 これらを受け、マイヨジョーヌはフルームがキープ。キンタナが2位に続き、ヴァンガードレンが去った総合3位の座にはバルベルデが浮上。ここまで好走を続けるゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)がこのステージでも粘りを見せ、大きく遅れたコンタドールを逆転。総合4位に上がっている。コンタドールは総合5位のまま。また、ステージ5位に入ったフランクがジャンプアップに成功し、総合8位にランクインしている。

 一方で、休息日明けながら激しいレースとなったこともあり、ヴァンガードレンを含む6選手がこのステージでツールを離脱。その中には、世界王者のマイヨアルカンシエルを身にまとうミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)の姿もあった。

 23日の第18ステージは、ギャップからサン・ジャン・ド・モリエンヌまでの186.5km。序盤からカテゴリー山岳が連続。後半に入ると、超級山岳ル・グランドン峠の21.7kmにわたる上りが控える。その後いったん下り、2級山岳を越えるとフィニッシュまでラスト10kmは下りと平坦路。この1日だけで7カ所の山岳ポイントが待っており、山岳賞争いにおいて重要なステージとなる可能性が高い。

(文 福光俊介/写真 砂田弓弦)

第17ステージ結果
1 シモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン) 4時間12分17秒
2 アンドルー・タランスキー(アメリカ、チーム キャノンデール・ガーミン) +32秒
3 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +1分1秒
4 ティボ・ピノー(フランス、エフデジ) +1分36秒
5 マディアス・フランク(スイス、イアム サイクリング) +1分40秒
6 スティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) +2分27秒
7 ニコラ・ロッシュ(アイルランド、チーム スカイ) +3分2秒
8 ホナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター チーム) +3分4秒
9 セルジュ・パウェルス(ベルギー、MTN・クベカ) +3分5秒
10 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +3分21秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 69時間6分49秒
2 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分10秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +4分9秒
4 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) +6分34秒
5 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +6分40秒
6 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) +7分39秒
7 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) +8分4秒
8 マディアス・フランク(スイス、イアム サイクリング) +8分47秒
9 バウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング) +11分47秒
10 ワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン) +13分8秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 420 pts
2 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 316 pts
3 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン) 281 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 61 pts
2 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) 52 pts
3 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) 41 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) 69時間9分59秒
2 ワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン) +9分58秒
3 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +12分54秒

チーム総合
1 モビスター チーム 208時間18分5秒
2 MTN・クベカ +16分57秒
3 チーム スカイ +33分41秒

敢闘賞
シモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)

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