温泉保養地から発展した観光拠点ピレネーの要衝コテレ ツール・ド・フランスの山頂ゴールを迎える町のにぎわい

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 ツール・ド・フランスは7月14日の第10ステージから、スペインとの国境にそびえるピレネー山脈での山岳ステージに突入した。それまでの平坦ステージでは息を潜めていた山岳スペシャリストたちが台頭し、総合上位陣の順位が大きく入れ替わる可能性もあって、レースは新たな緊張に包まれている。15日の第11ステージのフィニッシュは、ピレネー観光の中心的な町、コテレ。観客にとっては、山岳ステージの醍醐味とリゾートの町の魅力を同時に味わえるまたとない機会だ。にぎわう町の様子を取材した。(コテレ 柄沢亜希)

「これからチラシを配りに行くの」とコテレのツーリストオフィスのスタッフたち「これからチラシを配りに行くの」とコテレのツーリストオフィスのスタッフたち

MTBなどのアクティビティをよりどりみどり

 コテレの主な産業は、温泉療法の保養地として発展してきた観光業。その昔、フランスの作家ヴィクトル・ユーゴーやジョルジュ・サンドも長期滞在したという。町を見下ろす高台には、町で最も大きい建物としてテルメ(温泉療法施設)がそびえている。リウマチなどの症状緩和を目的にここを訪れる人は、3週間のプログラムで湯治に励んでいくという。

町を見下ろす高台にそびえる温泉療法施設町を見下ろす高台にそびえる温泉療法施設
一般利用ができるリラクゼーションスパも隣接する一般利用ができるリラクゼーションスパも隣接する

 一般利用ができるスパがあると聞いて訪れると、建物の内外にあるプールは大賑わい。泉質は思った以上にとろりとしていて、いかにも湯治の効果が期待できそうだ。いつもは水温を36℃前後にしているそうだが、今年は猛暑が続いているため31℃に下げたところだとか。いずれにしても日本の温泉よりはぬるいし、当然、欧州では水着着用となる。

コテレの観光課PR担当のヴィンセント・ドゥートルさんコテレの観光課PR担当のヴィンセント・ドゥートルさん

 観光課でマーケティングを担当するヴィンセント・ドゥートルさん(Vincent Doutres)は、同課に9人いるスタッフのひとり。夏の観光シーズン中、町では山岳ガイドやゴンドラ運営などに160人がフル稼働しているという。夏場のメーンのアクティビティは、もちろん雄大なピレネーのハイキングや登山だが、「ゴンドラにMTBを積み込んで岩場から森を抜けるダウンヒルも人気。標高2400mから900mまで一気に下れるコースで、所要時間は速いと20分くらいかな。上ったところにはバイクパークもある。そのほかにキャニオニング、ヨガなども盛ん」という。さらに冬場はスキーを楽しむことができ、アルペン、クロスカントリーといったすべてのコースがそろう。

 ドゥートルさん自身も夏場はMTB、冬場はスキーに親しむ。「コテレは、自転車、トレッキング、スパなどからアクティビティを選ぶことができるのがいいところ。特にトレッキングは山専門のインフォメーション・センターを今年1月に開設したばかり。何日もかけて歩く道や、小さな子供を連れて行けるコースなど、ニーズに合わせたプランをプロがアドバイスしてくれます」と教えてくれた。

山専門のインフォメーション・センターではプロのアドバイスをもらえるほか、3Dシステムでルートをシミュレーションできる山専門のインフォメーション・センターではプロのアドバイスをもらえるほか、3Dシステムでルートをシミュレーションできる
保養地として発展してきたコテレは美しい建築物も多い。この家は伝統的なピレネー式のつくり保養地として発展してきたコテレは美しい建築物も多い。この家は伝統的なピレネー式のつくり
かつてパレスホテルとして繁栄した建物は現在アパートになっているかつてパレスホテルとして繁栄した建物は現在アパートになっている
現在はアパートとして使用されているがエントランスはゴージャスでパレスホテルの名残があった現在はアパートとして使用されているがエントランスはゴージャスでパレスホテルの名残があった
ドゥートルさんが「パリ式」と紹介した、こちらもかつてホテルで現在はアパートとなっている建物ドゥートルさんが「パリ式」と紹介した、こちらもかつてホテルで現在はアパートとなっている建物

ピレネーの名物グルメが集結

町では音楽隊が周回し、突然ジャズの音色が響きだす。観光客も足を止めて聞き入っていた町では音楽隊が周回し、突然ジャズの音色が響きだす。観光客も足を止めて聞き入っていた

 この町が大きく発展してきたのは、地理的要因も大きい。ピレネー国立公園へのアクセスポイントは谷に沿っていくつもあるが、コテレはその最奥部に位置する。町には、キャンプ用品をくくりつけた大きなバックパックを背負った観光客も多い。折しも記者が滞在した7月14日は、フランスの祝日「革命記念日」。学校に通う子供たちもすでに2カ月のバケーションシーズンを迎え、町には大勢の老若男女が行き交っていた。

 ロードバイクに乗るサイクリストにとっても、コテレは大切な町に違いない。ツールマレー峠を目指すサイクリストにとっては、休憩地点として使えるし、ここからオービスク峠やサン・マルタン峠へ向かうこともできる。カフェで休憩したり、あるいはスパでリラックスしたりと楽しみは尽きない。この日は、第11ステージのフィニッシュラインまで最後の数百mとなるコースを熱心に撮影するサイクリストの姿も見られた。

コテレへ上る入り口では「自転車注意、1.5mは距離を空けること」とクルマのドライバーに向けた標識が設置されていた。ここから各峠へ向かうサイクリストも多いコテレへ上る入り口では「自転車注意、1.5mは距離を空けること」とクルマのドライバーに向けた標識が設置されていた。ここから各峠へ向かうサイクリストも多い
ツール・ド・フランスに合わせて舗装されたコテレへ向かうピカピカの道ツール・ド・フランスに合わせて舗装されたコテレへ向かうピカピカの道
中央広場ではツール・ド・フランスの生放送をパブリックビューイング中央広場ではツール・ド・フランスの生放送をパブリックビューイング
羊肉を豆や野菜と煮込んだコテレ名物の料理羊肉を豆や野菜と煮込んだコテレ名物の料理

 食事は、ピレネー全域から集められるチーズやハチミツといった食材が魅力。羊肉を豆や野菜と煮込んだ料理は、コテレ名物だ。フルーツ系のアペリティフ(食前酒)も美味しく、またスペインに近いことからパエージャなどのスペイン料理もそろっている。

 名物のスイーツも数多い。最も人気があり、だれもがお土産に買って帰るという「トルテ」は、カップケーキの“おばけ”。手にとってみると、かなりの重量に後ろめたさを感じるほど…。また、かつて暖炉でじっくりと焼き上げたというハードタイプの「ガトー・ア・ラ・ブロッシュ」もこの地の銘菓だ。手作りのベルランゴ飴はお土産品として人気があり、町の目抜き通りではいくつもの店で売られていた。

フルーツ系の食前酒を試飲させてくれた女性店員とヴィンセント・ドゥートルさんフルーツ系の食前酒を試飲させてくれた女性店員とヴィンセント・ドゥートルさん
ピレネーの山々でとれたヤギやウシの乳で作られたチーズがたくさん売られていたピレネーの山々でとれたヤギやウシの乳で作られたチーズがたくさん売られていた
ピレネー名物のガトー・ア・ラ・ブロッシュピレネー名物のガトー・ア・ラ・ブロッシュ
カップケーキの“おばけ”トルテはお土産スイーツのナンバーワンカップケーキの“おばけ”トルテはお土産スイーツのナンバーワン
伝統菓子ベルランゴ飴を売る店舗はいくつもあった伝統菓子ベルランゴ飴を売る店舗はいくつもあった

ツール来訪は「世界的に注目されるチャンス」

 ツールの一行を迎える前日の14日夕、ツーリストオフィスのスタッフがチラシを片手に「これからお店やホテルに置いてもらうの」と歩いていた。町にはいつもの山歩き目当ての人たちに加え、ツール観戦目的の人たちが集まり、「どこもほとんど満杯だよ」とドゥートルさん。小さな町の中心エリアはツールが訪れる前夜から当日の午後まで完全に封鎖され、ツール関係車両を優先するため駐車も許されない。それでもドゥートルさんは、「壮大なイベントであるツールが来ることは大きなメリット。世界的に注目されるまたとないチャンスだよ」と話した。

日が暮れる頃には中央広場に人が集まってきた日が暮れる頃には中央広場に人が集まってきた

 日が暮れる頃には、中央広場に観光客が集ってきた。昼間は、ツール・ド・フランスの生放送をパブリックビューイングしていた場所だ。特設ステージではライブ音楽が流れ、人々は階段に腰掛けたり踊ったりしながら思い思いに過ごしていた。

革命記念日を祝して打ち上げられた花火を大勢の人とともに楽しんだ革命記念日を祝して打ち上げられた花火を大勢の人とともに楽しんだ

 革命記念日を祝う花火は夜11時の打ち上げ。夏のヨーロッパでは、とっぷり日が暮れるまで時間がかかる。記者はいったん宿に戻って仕事を終え、再び広場へ戻ると、道路まであふれ出すほどの人で埋め尽くされていた。「いったいどこで花火を打ち上げるのだろう?」といぶかしんでいると、「パン、パン」と山の中から花火が上がった。惜しみなく、次々と。

 打ち上げ場所や打ち上げ方、それにどちらかと言うと「火花」のような規模といい、日本の花火とはまったく異なる。それでも、居合わせた人々とともにクライマックスを楽しみ、「ブラボー」の声とともに拍手喝采を送ると、おめでたい気持ちを共有できたようで、心地よい気分に浸った。

ツール・ド・フランス第11ステージのゴール地点となる15日朝。何もなかった場所が、ツールのフィニッシュ地点に様変わりしていた。各賞ジャージの色にペイントされたゴンドラは、フィニッシュラインのちょうど上に来るよう止められていたツール・ド・フランス第11ステージのゴール地点となる15日朝。何もなかった場所が、ツールのフィニッシュ地点に様変わりしていた。各賞ジャージの色にペイントされたゴンドラは、フィニッシュラインのちょうど上に来るよう止められていた

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