ウィグル・ホンダのアボットが最終日勝利で総合2位ジロ・ローザはファンデルブレッヘンが総合優勝 ステージ優勝の萩原麻由子は総合17位に

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 女子ロード界の最高峰ステージレース、「ジロ・ローザ」が7月12日、イタリア北部サンドメニコでの頂上決戦をもって、10日間にわたる長い戦いを終えた。アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ)が総合優勝し、萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)がアシストするエース、マラ・アボット(アメリカ)は最終日の最難関山岳ステージで区間優勝を飾った。 (レポート 田中苑子)

最終ステージの表彰台。華やかにシャンパンファイトが行われた最終ステージの表彰台。華やかにシャンパンファイトが行われた

総合優勝をめぐる厳しい戦い

 7月3日に開幕した今年のジロ・ローザ。全日本チャンピオンの萩原麻由子擁するウィグル・ホンダは、第6ステージで萩原の区間優勝に歓喜したが、その後の本格的な山岳ステージ以降は、2010年および2013年のジロ・ローザ覇者であるマラ・アボット(アメリカ)と、イタリアンリーダーとして青いリーダージャージを着るエリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)、2人のエースを総合優勝に導くための厳しいステージが続いた。

出走サインをする萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)出走サインをする萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)
レースに駆けつけたチームのマネージャー、ロッシェル・ギルモワ氏と日本語がかかれたシャンパンを持ってレースに駆けつけたチームのマネージャー、ロッシェル・ギルモワ氏と日本語がかかれたシャンパンを持って
コースの沿道にあった萩原麻由子を応援する日本国旗。イタリア人のファンが作成しているものコースの沿道にあった萩原麻由子を応援する日本国旗。イタリア人のファンが作成しているもの
山岳コースを走る萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)山岳コースを走る萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)
第7ステージで先頭集団にいながらも落車して遅れてゴールした萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)。前日の勝利から一転、厳しいステージとなった第7ステージで先頭集団にいながらも落車して遅れてゴールした萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)。前日の勝利から一転、厳しいステージとなった
イタリアらしい細い道もコースに組み込まれるイタリアらしい細い道もコースに組み込まれる

 総合上位勢が1分以内の僅差につける接戦となった中盤戦。第2ステージで区間優勝を果たし、同時にマリアローザ(総合リーダージャージ)を獲得したアメリカチャンピオンのメーガン・グアルナー(ボールス・ドルマンズ)がリードしたが、総合上位につけるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ)と、彼女の所属チームで世界トップのチーム力を誇るラボ・リブ勢が徐々に攻撃を加えていった。

 そして第8ステージ、21.7kmの個人タイムトライアルで、総合上位勢の成績が大きく動いた。コースは狭い街の中を抜け、細い曲がりくねった道を下って、上り返す。残り5kmは幅の広い平坦基調となるが、高低差約200メートルのテクニカルなコース設定となっており、多くの選手はノーマルバイクでの出走を選んだ。

第8ステージの個人タイムトライアル前に入念にバイクをチェックする第8ステージの個人タイムトライアル前に入念にバイクをチェックする
第6ステージの区間優勝以来、カメラをもって記念撮影に訪れるファンが急増した第6ステージの区間優勝以来、カメラをもって記念撮影に訪れるファンが急増した

総合逆転をかけて最終日へ

第8ステージ、個人タイムトライアルのスタートシーン第8ステージ、個人タイムトライアルのスタートシーン

 難しいタイムトライアルのステージを制したのは、第7ステージでトップと17秒差の総合3位だったアンナ・ファンデルブレッヘン。今年のフレーシュワロンヌの勝者でもある彼女が、区間2位となった総合リーダーのメーガン・グアルナーに1分2秒の大差をつけて、総合成績での逆転に成功した。好タイムの背景には、平坦区間でTTバイクに乗り換えたこともあったという。

 一方、ウィグル・ホンダはこのステージで苦戦を強いられてしまった。第8ステージを終えて、マラ・アボットは2分29秒差の総合5位、エリサ・ロンゴ・ボルギーニは3分1秒差の総合6位となり、総合リーダーとのタイム差が大きく広がった。最終日はアボットの得意な山頂フィニッシュだったが、それでも総合成績の逆転は非常に厳しい状況となった。

最終ステージ、5選手でのスタートとなったウィグル・ホンダ最終ステージ、5選手でのスタートとなったウィグル・ホンダ
イタリアナンバーワンの人気を誇るエリサ・ロンゴ・ボルギーニは天真爛漫なかわいらしい性格イタリアナンバーワンの人気を誇るエリサ・ロンゴ・ボルギーニは天真爛漫なかわいらしい性格

 最終日を前にしたウィグル・ホンダのミーティングでは「リスクを冒さないかぎり、何も得るものはない。最後のステージでは、みんな全力を尽くして、マラの優勝ためにやれるだけのことをやろう」そんな会話が交わされたという。第8ステージを前に1選手がリタイアし、ウィグル・ホンダは5人でのレースだったが、平地ではスプリンターであるブロンジーニとエミリアがマラのための位置取りをし、萩原は序盤から逃げに乗ること、そして登坂が始まれば、総合6位につけているエリサが自分の成績を犠牲にしてもアタックを繰り返す―そのようなシナリオがチームにはあった。

暑い日が続き、スタート前のクールダウンは欠かせない暑い日が続き、スタート前のクールダウンは欠かせない
最終日のスタートを待つ萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)最終日のスタートを待つ萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)
華やかなスタートとなった最終ステージ。ヴェルバニアは5月のジロ・デ・イタリアでもゴール地点となった華やかなスタートとなった最終ステージ。ヴェルバニアは5月のジロ・デ・イタリアでもゴール地点となった
最終ステージをスタートしていく萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)最終ステージをスタートしていく萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)

最終ステージ優勝も総合は2位

最終ステージで独走で区間優勝を挙げたマラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ホンダ)最終ステージで独走で区間優勝を挙げたマラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ホンダ)

 最終日はマッジョーレ湖畔のヴェルバニアから標高1400メートルの1級山岳、サンドメニコにゴールする92.7kmのレースで、スタート直後からハイスピードでレースは展開した。そして作戦どおりに萩原はアタックに反応して最終的に8人の逃げに乗り、最後の登坂区間前に後ろから各チームのエースたちが追いつき、登坂区間でエリサがアタックをかけるのを見て、萩原は集団からドロップし、最後の仕事を終えた。そして先鋭たちに絞られた先頭集団では、マラが単独でアタックを仕掛け、マリアローザを着るアンナ・ファンデルブレッヘンに55秒の差をつけて区間優勝を挙げたが、残念ながら総合成績で逆転はできず、総合2位に留まった。

 また第6ステージを終えて、総合7位にいた萩原だったが、第7ステージで落車してしまい後退。最終ステージを終えて、総合成績は17位という結果だった。

10日間のレースを終えて、ゴールラインへと向かう萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)10日間のレースを終えて、ゴールラインへと向かう萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)
最終ステージを走り切った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)最終ステージを走り切った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)
区間優勝を挙げたマラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ホンダ)とエリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)が抱き合って、互いの力走を讃え合う区間優勝を挙げたマラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ホンダ)とエリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)が抱き合って、互いの力走を讃え合う

ステップアップを感じた大会

 レースを終えて萩原は「チームの目標であった総合優勝はできなかったので、100%成功とは言えないレースだった。しかし、最後にマラが区間優勝したので、良い形で終えることができたと思う。序盤にチームの主力選手を2人を落車で失った状況を考えると、やれることはやったと思う。最終日もチームはよく機能していた」と話す。

 チームとしての目標は達成できなかったが、萩原が今季の目標として掲げていたジロでの区間優勝を彼女は達成することができ、彼女にとっては「大きな意味のある大会だった」と振り返る。「いい日、悪い日、その中間はなかったように思う。荒削りなレースだったけど、ステップアップを感じることができた。勝負の感覚を味わい、トップの選手の走りを間近で見ることができたことも良かった」。

総合成績トップ3の選手たち。ウィグル・ホンダのエース、マラ・アボットは2位でレースを終えた総合成績トップ3の選手たち。ウィグル・ホンダのエース、マラ・アボットは2位でレースを終えた
2015年のジロ・ローザで総合優勝に輝いたアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ)2015年のジロ・ローザで総合優勝に輝いたアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ)

 そして、今大会を通して、今まで以上にトップとの差や、自分にとって何が足りないのかが明確になり、それを克服するためには何をするべきか新しい目標も生まれてきた。チームでは山岳に強い選手として認められているが、「それにしては、登坂力、体力、決定的な攻撃力が足りていない」。今回はマークが厳しくなかったために勝てたという要因もあり、今後マークされた上で勝つためには、「もっと足りないものを強化しないといけない」と将来を見据える。

 萩原の今後の目標はリオ五輪に向けた出場枠(UCIポイント)の獲得、リオ五輪での入賞圏内でのレース、また少し先の目標としては、ジロ・ローザなどのトップレースで山岳賞などのリーダージャージを着用すること。ワンデーレースでも勝ちたいし、もちろんジロ・ローザでの総合優勝も大きな目標となる。

プロとして結果を出すために

10日間のジロ・ローザを走り切った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)10日間のジロ・ローザを走り切った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)

 「結果が出なかったときに言い訳はしたくない」

 ヨーロッパに拠点を移して3年目。ベルギーからドイツに拠点を移し、またレースの合間を縫ってイタリアやフランスなどでトレーニングを積んでいる萩原にとって、“強くなるための”環境づくりは常に大きな課題となっている。「結果が出なかったときに、坂の練習ができなかったとか、移動が大変だったとか言いたくないし、居心地のいいところがいい環境というわけではない。プロとして結果を出すために、自分の能力を最大限に伸ばせる場所をこれからも探していきたい」と話す。

 レースとしての結果を私たちは知ることができるが、そこに至るまで、いかにして1人の日本人女子選手が戦っているのかを知ることは難しく、そこには私たちの想像を絶する苦労がある。萩原は人に好かれる選手であり、たくさんの良い出会いや運も彼女のキャリアを支えているが、海外のチームに溶け込み、そこで結果を出すことの厳しさを乗り越えての今回の勝利に心からの賞賛を贈りたく、また今後のより一層の活躍も期待したい。

最終ステージに応援に駆けつけたNIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督。「日本の男子選手も彼女の活躍に刺激されて頑張ってほしい」最終ステージに応援に駆けつけたNIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督。「日本の男子選手も彼女の活躍に刺激されて頑張ってほしい」

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