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栗村修の“輪”生相談<53>10代女性「プロロードレースチームのチームコックになりたいです」

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わたしの将来の夢は調理師です。

 そこでロードレースをみるようになってから「プロロードレースチームのチームコックになりたいな」と強く思うようになってきました。

 チームコックになることは難しいでしょうか?

 教えていただけるとありがたいです。

(10代女性)

 10代の女性! 僕はびっくりしています。もちろん、嬉しくてびっくりしているんです。いやあ、10代の女性が自転車に関する仕事をしたいと言ってくれる時代になりましたか…。漫画『弱虫ペダル』効果で若い女性が自転車競技に関心を持ってくれているとは聞いています。質問者さんがこの競技に興味を持ってくれたきっかけが何だったかはわかりませんが、時代は変わりました。ぜひ、夢をかなえて頂きたいと思います。

 ただ、チームのコックというとかなり専門的な話になりますので、実は僕も詳しいことはわかりません。僕も元選手ですが、専属のコックがいるチームに所属したことはありません。ポーランドの、今で言うプロコンチネンタルチームだった「ムロズ」にも専属コックはいませんでした。チーム専属のコックがいるのは世界最高峰の「ワールドツアー」に登録しているチームと、プロコンチネンタルチームの一部に限られるでしょう。

 国内チームで食事の管理をしてくれるのは多くの場合、管理栄養士です。ただ、チームのお抱えではありません。サプリメントなどを提供してくれるサプライヤーなりスポンサーなりからやってきてアドバイスをしてくれるという程度です。コックさんを雇っている国内チームは現状ゼロだと思います。

ブリヂストンアンカー サイクリングチームにアドバイスするのは「VAAM」をサポートする明治の栄養士ブリヂストンアンカー サイクリングチームにアドバイスするのは「VAAM」をサポートする明治の栄養士

 そもそも、自転車選手の食事はシンプルです。というか、豪華なもの、美味しいものはむしろNGです。脂っこいし、カロリーもありますから。自転車選手は、茹でたパスタに塩とオリーブオイルをかけて食べるような食生活を送っています。コックさんの出る幕は、あまりないのかもしれません。遠征する場合でも食事は外食ですませてしまうことがほとんどですしね。

 外食することができず、誰かが食事を作るとしても、作るのはコックさんではありません。よくあるのは、マッサージが仕事のマッサーが、料理も担当するケースです。栄養士から栄養面のアドバイスを受けながら、手が空いたマッサーがご飯を用意するんです。

 もちろん、そうじゃないケースもあります。たとえば、新城幸也選手が所属するヨーロッパカーは食事に力を入れていて、移動式のキッチントラックがレースに帯同しています。トラックの中には選手たちが食事をするテーブルもあり、もちろん専属のコックがいて、料理を作ります。ただ、専用トラックまで用意しているチームはワールドチームの中でも限られていますね。キッチントラックは無くてもコックはいる、というチームのコックは、選手たちが泊まるホテルの厨房を利用して料理します。

ティンコフ・サクソのキッチントラックで調理作業をするヘッドシェフのハンナ・グラントさん。世界最高峰のレストラン「NOMA」で働いた経験を持つ(写真・柄沢亜希)ティンコフ・サクソのキッチントラックで調理作業をするヘッドシェフのハンナ・グラントさん。世界最高峰のレストラン「NOMA」で働いた経験を持つ(写真・柄沢亜希)

でも、いずれにしても、専属コックがいるのは世界のトップチームだけです。専属コックだけを志望して自転車競技の世界に入るのはちょっとリスクが大きいかもしれません。

 だから、コックを目指すならば料理以外のこともできたほうがいいと思いますよ。調理師免許だけでなく、栄養士やマッサージの資格も一緒に持っていれば国内チームでは重宝されるはずです。僕が監督ならぜひチームに欲しいですね。

 国内チームの若手選手などは寮で共同生活している場合が多いので、そこに料理ができ、もちろん栄養バランスはばっちりで、しかもマッサージまでできる人がいれば最強です。ちょっと大変かもしれませんが、チームの縁の下の力持ちとしてこれ以上の存在はないでしょう。

(編集 佐藤喬・写真 柄沢亜希)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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