躍り出たローカルヒーロー高校2年の井岡佑介がプロを抑えて優勝 「ダウンヒルシリーズ」第2戦SRAM PARK

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 PROクラス最終走者、加藤将来のあまりのパワーにタイヤが外れたとき、会場はどよめきに包まれた。6月27、28日に開催されたダウンヒルシリーズ第2戦 SRAM PARK(スラムパーク)で、PROクラスのライダー全員を抑えて優勝したのは、エリートクラス優勝者に与えられる「下克上システム」を使ってPROクラスに挑戦した高校2年生のローカルライダー、井岡佑介(HottSpin nukeproof)だった。

コース脇に観客がズラリと並ぶなか、風に乗ったかのようなスピードで優勝を決めた井岡佑介選手©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIESコース脇に観客がズラリと並ぶなか、風に乗ったかのようなスピードで優勝を決めた井岡佑介選手©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

どんどんスピードが上がるコース

会場全体図。今会場には12社の出展ブースが並んだ©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES会場全体図。今会場には12社の出展ブースが並んだ©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 コースは全長425m、スラムパークの山頂をスタートし、すぐに90度ターンのクランクが続くシングルトラックに入る。そこを抜けると、リズムセクションの連続。ジャンプと細かいバンクが組み合わされ、「下りのパンプトラック」と言ってもいいほど難しいレイアウトだ。どんどんスピードが上がるため、距離が短い割に体力を使う。バイクに置いていかれないよう、いかにコントロールできるかがポイントだ。

 昨年の大会は土砂降りとなり、今年も週間予報では雨の週末を覚悟していたものの、コースを湿らせた雨は土曜の明け方に止み、試走が始まる頃には最高の路面コンディションとなった。ただし、ヌタヌタの沼になったセクションが1カ所あり、そこではフロントが埋まって前転するライダーもみられた。

タイムドセッションで沼セクションをジャンプでクリアする井手川直樹選手(AKI FACTORY/STRIDER)は、本戦では#1に続いて3位に入った©Ryuta	IWASAKI/DOWNHILL SERIESタイムドセッションで沼セクションをジャンプでクリアする井手川直樹選手(AKI FACTORY/STRIDER)は、本戦では#1に続いて3位に入った©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 スラムパークの最大のポイントは、コースの全てが見えること。全長の短さもあって、スタート直後からフィニッシュまで、コース脇の観客は途切れることがない。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース攻略の鍵だ。

 軽トラックでの搬送は約5分。会場では昨年に引き続き、このスラムパークを練習拠点とするFMX(フリースタイルモトクロス)ライダーが搬送ドライバーを務めてくれた。タイムドセッション前の昼休みにはFMXショーも行われ、普段なかなか見ることのない、エンジン付きバイクの空中ショーに参加者たちも大盛り上がりだった。

 今大回のエントリーは96人。土曜日のタイムドセッションには76人が参加した。今年から全クラスの総合ランキングも参考に発表しており、タイムドセッションの総合1位はエリートクラスの泉野龍雅選手(桜丘高校/KONA/自転車道)。 2位に加藤将来選手(AKI FACTORY/ACCEL)、3位には井本はじめ選手(SRAM/LITEC)。この3人が51秒台を出した。4位には、ショートダウンヒル荒らしとも呼ばれるハードテールの使い手、エリートクラス出走の増田直樹選手(DTP)が入った。

スタート地点でスタートを待つ井本はじめ選手。最高の天気©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIESスタート地点でスタートを待つ井本はじめ選手。最高の天気©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
搬送は、軽トラで5分。1日で20本以上試走した強者も©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES搬送は、軽トラで5分。1日で20本以上試走した強者も©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
コミュニケは、ダートフリークトラックに掲示された。今回から、全クラス総合の順位も発表される©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIESコミュニケは、ダートフリークトラックに掲示された。今回から、全クラス総合の順位も発表される©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

刻々と変わるコンディション

 日曜日も快晴。梅雨はどこへ行った?と言いたくなるほどの青空が広がった。朝から試走の長い列ができ、最終的には20本近く走ったという強者も。どんどん乾く路面は、すでにホコリっぽい。「濡れて滑るのと、乾いて滑るのは全然違う。昨日と今日じゃ、違うコースだと言ってもいいくらい」とは、SRAMPARK管理人の波多野さんの談。そして本戦が始まる頃になると、急に風が強くなりはじめた。スタート地点から吹き下ろす風は、MCアリーの立つテントを飛ばしそうになるほど。

井岡佑介選手の乗る NUKEPROOF ROOKはシェイクダウンしたばかり©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES井岡佑介選手の乗るNUKEPROOF ROOKはシェイクダウンしたばかり©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 今回も、エリート男子優勝者は「下克上システム」でPROクラスライダーに挑戦する権利を持つ。そこで表彰台に上った場合、もちろん賞金も与えられる。若手から往年の名選手までが揃った今大会は、シリーズ開幕戦の十種ヶ峰で「下克上システム」の権利を獲得し、PROクラス4位に入った藤村飛丸(Blanky Dog/MUDDY CHOCOLATE)もかすんでしまいそうなほどの強豪揃いだ。

 前日のタイムドセッションの結果をもとに、リバーススタートによる本戦が始まると、みんな着々とタイムを更新していく。タイムドセッション3位の井岡が出走したとき、突風が吹いてフィニッシュゲートが倒れるアクシデントが発生。しかし、その突風に乗ったかのようにフィニッシュに飛び込んできた井岡が、今大会初めての50秒台をマークした。タイムドセッション2位の泉野と3位の増田は51秒台となり、PROへの挑戦権を得たのはスラムパークをホームコースとする地元の若手・井岡となった。

疲れが見えない16歳 PROクラスでタイムを更新

#1で優勝した井本はじめ選手は0.029秒及ばずの2位に終わった©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES#1で優勝した井本はじめ選手は0.029秒及ばずの2位に終わった©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 PROクラスの前走者として、もう一度山頂からスタートした井岡は、エリート優勝を決めた自身のタイムをさらに0.349秒更新し、50秒283という数字を叩き出す。疲れが見えないのは、さすが若者? その後、プロライダーたちが次々にスタートするものの、なかなか51秒を切れない。残り2人、ここで井岡の表彰台は確定。プロライダーとして負けるわけにはいかない開幕戦優勝者の井本はじめがついに50秒台を出すも、井岡に0.029秒届かず。最終走者の加藤将来選手も豪快な攻めの走りでゴールを目指す。しかし、中盤のタイトなバームでの切り返しで、あまりのパワーにタイヤが悲鳴を上げ「パンッ」という音と共に一瞬にしてタイヤがリムから外れてしまった。その瞬間、会場はため息に包まれ、そしてこの日のローカルヒーローをたたえる拍手が湧いた。

 「マジで嬉しいです。涙が出ました。タイムドセッションで勝てなくて、本戦でも勝てないんじゃないか、と今日一日吐きそうなくらいの思いでした」と話した井岡。ひとりだけ空中でもペダルを漕いでいた、という自転車歴5年、16歳の少年が、プロのライダーたちに勝ってしまう結果となった。

PROクラス表彰台©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIESPROクラス表彰台©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
エリート男子表彰台©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIESエリート男子表彰台©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
集合写真©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES集合写真©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 全エントリーの内、地元愛知県からの参加者は38人と約4割。SRAMPARKはできてから2年。自転車歴1年未満の若手ライダーのエントリーも多く、どんどんローカルライダーが育ってきているのが分かる。ご夫婦でスラムパークを走り込んでいるという吉岡邦岳さんは、エリートで本戦7位となり、「数を走っていれば勝てるわけではないですね。色んなライン取りが見られて面白いです」と話してくれた。

 ローカルヒーローに活躍してほしい! ダウンヒルシリーズを企画した当初の構想が、今季第2戦で早くも現実となった。第3戦は8月1、2日に岐阜県郡上市のウイングヒルズ白鳥リゾートにて行われる。

レポート・平野志磨子
写真・Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

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