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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<116>マイヨジョーヌ争いはフルームがリード、ニバリは劣勢 ツール・ド・フランス第1週

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 7月4日に開幕した世界最大のサイクルロードレース、ツール・ド・フランスは第1週が終了。総合首位のマイヨジョーヌを筆頭に、4賞ジャージをかけた戦いは大会序盤から盛り上がりを見せています。そこで今回は、第9ステージまでの戦いを振り返りつつ、今後のレースを占っていきます。

マイヨジョーヌを着るクリストファー・フルームは、第1週のヤマ場となったチームタイムトライアルでも好タイムをマークしたマイヨジョーヌを着るクリストファー・フルームは、第1週のヤマ場となったチームタイムトライアルでも好タイムをマークした

“ファンタスティック4”中心の第2週へ

 前回のこのコーナーは第4ステージまでの展開をお伝えしたが、以降は総合上位陣に大きな変動はほとんどなく、第1週のヤマ場である第9ステージ・チームタイムトライアル(TT)を迎えることとなった。13.8km個人TTだった第1ステージ、横風による集団分断が起きた第2ステージ、「ユイの壁」激坂勝負だった第3ステージで発生したタイム差を、有力選手や各チームがチームTTでどのように広げるか、または縮めるのかが焦点となった。

 結果的に、総合優勝候補を抱えるチームが順当に上位フィニッシュ。今回のチームTTのコースはアップダウンが厳しく、ともすれば大差がつきかねないレイアウトであったが、各チームとも対策を講じ、大きな遅れは免れた。

第12ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第12ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 第2週は、ピレネー山脈から中央山塊へと走る7日間。その最初となる第10ステージ(167km)から早速超級山岳頂上フィニッシュが登場。第12ステージ(195km)も超級山岳プラトー・ド・ベイユの頂上フィニッシュで、それ以外にも急坂がレースを左右するステージが続く。確実に、総合順位のジャンプアップを狙った戦いが見られるはずだ。

マイヨジョーヌを着用するクリストファー・フルームマイヨジョーヌを着用するクリストファー・フルーム

 マイヨジョーヌ争いの中心となるのは、やはり“ファンタスティック4”だ。クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は、会心の好走で第1週をクリア。自身も総合8位につけるゲラント・トーマス(イギリス)ら、アシスト陣の要所での働きも目覚ましく、絶対的エースを盛り立てる。早くもマイヨジョーヌが安泰との見方もできてしまいそうだが、当然ライバルたちも黙ってはいない。

 1分3秒差の総合5位につけるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)は、総合優勝したジロ・デ・イタリアの疲労がいささか気になるところだが、大きなトラブルなく序盤戦を終えた。ユイの壁では最終局面で失速気味だったが、パヴェが登場した第4ステージ、ミュール・ド・ブルターニュの上り勝負となった第8ステージと、苦しみながらも上位戦線にとどまった。第9ステージ・チームTTでは28秒差の4位だったが、「結果やタイム差自体はまずまず」としており、山岳ステージの本格化とともに調子を上げてきそうだ。

 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)は、1分59秒差の総合9位。第2ステージで集団分断にハマってしまったのが痛いが、ステージを追うごとに総合順位を上げてきた。第1週は落車に巻き込まれる場面もあったが、それでも山岳での強さは“ファンタスティック4”の中では一番との評価は変わっておらず、これからフルームらとのタイム差をどのように縮めてみせるのかに注目していきたい。

第8ステージのゴール前で失速したヴィンチェンツォ・ニバリ第8ステージのゴール前で失速したヴィンチェンツォ・ニバリ

 この3人から水をあけられた印象なのが、前回王者のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)。第8ステージ、ミュール・ド・ブルターニュでの遅れは大会前半の衝撃シーンだった。あの走りで不調と判断するのは早計だが、フルームから2分22秒の差は、実績豊富な彼といえども取り戻すのは至難の業と言えるだろう。

ヴァンガードレンは“ビッグ5”となれるか

 第9ステージのチームTTを制したBMCレーシングチーム。今大会は、序盤ステージからたびたびトレインを組んでメーン集団前方を確保するなど、レースの主導権を握るシーンも多い。そして、メンバー9人の力がそのまま反映されるチームTTを勝利したとあって、ムードも上々だ。

チームタイムトライアルを制し、ティージェイ・ヴァンガードレンの総合争いを優位に運んだBMC レーシングチームチームタイムトライアルを制し、ティージェイ・ヴァンガードレンの総合争いを優位に運んだBMC レーシングチーム

 エースのティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)は、トップのフルームから12秒差の総合2位で第1週を終えた。今後の戦いにあたっては「ピレネーは、ツール制覇に相応しい選手を絞り込む場。そして、アルプスが勝者を決める舞台となる」と述べる。絶好調を実感し、フルームに匹敵する状態にあると自己分析をしているが、「私自身がどうなるかは第3週で分かる。ツールはマラソンのようなものだから」と浮かれた様子は見せない。

 “ファンタスティック4”を凌駕する勢いに、彼を含めた“ビッグ5”との見方が現地メディアを中心に挙がっている。本人は「4人との決定的な違いは、グランツールを制しているかどうかだ。だから、私が“ビッグ5”に含まれるのかは分からない」というが、今大会での走り次第では大物ライダーの仲間入りも夢ではない。

BMCレーシングチームがメーン集団前方でレースを展開している場面が多く見られるBMCレーシングチームがメーン集団前方でレースを展開している場面が多く見られる

 山岳アシストを務めるサムエル・サンチェス(スペイン)は、ヴァンガードレンを取り巻くここまでの流れを「2011年にツールを制したときのカデル・エヴァンス(オーストラリア、2015年2月に引退)を見ているようだ」と評する。エヴァンス氏の2011年ツールは、大会序盤から総合上位をキープし、最終盤の重要ステージでトップに立ち総合優勝を勝ち取ったが、それに近いと感じているという。ヴァンガードレンが大きく飛躍するには、サンチェスらベテランの力が必要不可欠だ。

 ヴァンガードレン以外には、総合14位に終わったジロのリベンジを目指すリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)や、山岳ではしっかりとまとめてくるバウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング)といった、実績のある選手もこれからエンジンがかかってくるだろう。それぞれ、トップから1分18秒差の総合6位、2分52秒差の総合15位に位置する。地元フランス勢では、2分43秒差の総合14位につけるワレン・バルギル(チーム ジャイアント・アルペシン)が上位をうかがう。

マイヨジョーヌ以外の賞レースも活性化

 山岳ステージが本格化する第2週に向けて、マイヨジョーヌ争いに目が奪われがちになるが、その他の各賞レースも見どころは満載だ。

第9ステージ終了時で山岳賞トップのダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオン第9ステージ終了時で山岳賞トップのダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオン

 まず、山岳賞のマイヨアポワ争いはこれからが本番になる。第9ステージを終えて、ダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオン(エリトリア、MTN・クベカ)が着用しているが、獲得ポイントは4点。第10ステージの頂上ゴールを制すれば一挙50点が入ることから、クライマーではないテクレハイマノットにとってはジャージのキープは難しい。ジャージの行方は総合争いと並行して着用者が変わっていくのか、上位進出が厳しくなった山岳巧者が狙いを切り替えてくるのかは、もう少し見定めていく必要がありそうだ。

ポイント賞で首位に立つペテル・サガンポイント賞で首位に立つペテル・サガン

 ポイント賞のマイヨヴェール。今後しばらくは、中間スプリントポイントでの通過順位がカギとなってくるだろう。各ステージともスプリンターが競えるよう、上級山岳の前にポイントが置かれている。コース序盤に設けられているステージもあることから、有力スプリンターを抱えるチームは逃げグループの形成を許さず、スタート直後からの主導権争いを繰り広げる可能性がある。各選手が獲得するポイント数はもちろんだが、中間スプリントポイントを通過してからのスプリンターたちによる総合エースへのアシストぶりも、レースを楽しむ一端として見てほしい。

 25歳以下が対象の新人賞・マイヨブランは、ここまでペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が保持しているが、山岳ステージに入ってからはキンタナを中心にジャージ奪取に挑むこととなる。

今週の爆走ライダー-ダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオン(エリトリア、MTN・クベカ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 アフリカ大陸北東部の国・エリトリア。1960年代から続いたエチオピアとの激しい独立戦争を経て、1993年に独立を果たした新興国だ。1800年代後半にイタリアの植民地だった影響から、自転車競技が国技として長く愛されている。それもあって、サイクルロードレースで世界的に活躍する選手は国民的英雄として喝采を浴びる。

ツール・ド・フランスに駆けつけたエリトリアの応援団から声援を受けるダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオンツール・ド・フランスに駆けつけたエリトリアの応援団から声援を受けるダニエル・テクレハイマノット・ギルマジオン

 ツール第6ステージ以降、山岳賞のマイヨアポワを着るテクレハイマノットは、新たな勢力となりつつあるエリトリア勢の筆頭格。サイクルロードレースのキャリアは2005年、16歳の時にスタートした。2008年にUCIのトレーニング機関であるワールドサイクリングセンター(スイス)に入り、ヨーロッパで活動を始めると、すぐに持ち前の身体能力の高さを発揮し、アマチュアレースで勝利を重ねた。2010年にサーヴェロテストチームのトレーニー(研修生)を経て、2012年にオリカ・グリーンエッジでプロデビュー。昨年、アフリカ大陸を代表する現チームへと加わった。

 6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞を獲得し、一躍名が知れ渡ったが、エリトリア自転車界ではパイオニアと称され、彼を知らない者はいない。その人気の証拠に、昨年末に開かれた彼の結婚式には3000人もの国民が駆け付け、門出を祝福した。また、ドーフィネ後に国内選手権出場のため帰国した際には、空港にファンが詰めかけもみくちゃにされた。誰もが憧れる存在なのだ。

 今年はエリトリア自転車協会が発足して80年目。そんな節目の年に、彼とチームメートのメルハウィ・クドゥスゲブレメドヒンの2人が同国史上初めてのツール出場を果たした。そして山岳賞ジャージを獲得し、開幕から数日でエリトリアはおろか、自転車界全体の歴史を大きく変えてみせた。国内リーグが充実し、有望株が育ちやすい土壌が整備されつつあるエリトリアのサイクルロードレース事情。そこに大きな希望と可能性を与えるテクレハイマノットは、残すツールの2週間でいかなる走りを見せるのか。われわれはそれを見守るとともに、彼らの活躍からエリトリアという国が身近になっていることを実感していきたい。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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