猫も杓子も?! ツール・ド・フランス<1>フランスでのツールTV放送大作戦 ターゲットは若者と女性、スタート前の生放送あれこれ

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 世界中のファンを3週間熱狂させる世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランス。レースの模様は今や衛星放送やインターネットのオンデマンドで、日本でも長時間楽しむことができます。そんなツール、開催の地元であるフランスでは、一体どのように楽しまれているのか? 日本では分からないフランス国内での空気感を、フランス在住21年のライター、祐天寺りえさんが連載でレポートします。

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ツール・ド・フランスの地元フランスでも、最もポピュラーな観戦方法はやはり「TV観戦」ツール・ド・フランスの地元フランスでも、最もポピュラーな観戦方法はやはり「TV観戦」

ツール・ド・フランス、まったく興味なし!

 7月の3週間で、路上に1200万人以上もの観戦者、TVに至っては、世界190カ国で3億5000万人以上の視聴者を集めるというツール・ド・フランス。フランス国内でのTV観戦者数についても、先日のEtape4(エタップ4=第4ステージ)では350万人(視聴率37.4%)、Etape5では310万人、日曜のEtape2では、ピーク時に480万人を記録した。

 今年も前年のそれを、すでに上回る好調ぶりを見せている…と言うと、あたかもツールは誰もが観るフランスの「国民的スポーツイベント」のように聴こえるけれど、実際には「ツール・ド・フランス? まったく興味なし!」というフランス人も半数近くいる(2013年統計:48%)。とりわけ低いのは若者と女性からの人気だ。

レース前に「歌」と「料理」

その日のレースのスタート地点がコンサート会場になる。この日出演したのは、インドネシア出身の世界的に人気の歌手、アングン(Anggun)その日のレースのスタート地点がコンサート会場になる。この日出演したのは、インドネシア出身の世界的に人気の歌手、アングン(Anggun)

 でも、それを逆にツール人気を伸ばす「伸びしろ」…と考えたのがフランステレビジョン(フランス公共放送局)。連日、スタートの村「ヴィラージュ・デパー」に有名歌手を3〜4組招き、朝から無料の野外コンサートを開催し生放送。現地にもTVの前にも多くの若者を集めることに成功している。

 現地ではこのコンサート舞台の脇にスタートルートがあることが多く、キャラバン隊によるグッズのバラまきが終わった後も観客を離散させないために、コンサートでスタート時間まで盛り上げ続ける。

 また、人気料理研究家キャリーヌ・テイサンディエ(Carinne Teyssandier)も、レースの3週間を帯同契約。各地で地元のシェフや市民が郷土料理を調理実演し、彼女がそれらを紹介。これをコンサートの合間を縫って生放送するのだが、今ではそれも「レースは見ないけれど、その時間帯だけはTVをつける」とまで言われる、女性たちに人気のコーナーになっている。

フランス国内のツール・ド・フランス番組は、スタートより1時間〜1時間半前から開始。最初はスタート地点を紹介するコーナーなどが主フランス国内のツール・ド・フランス番組は、スタートより1時間〜1時間半前から開始。最初はスタート地点を紹介するコーナーなどが主
視聴者も女性やコンサート目当ての若者が主流。そして料理研究家キャリーヌ・テイサンディエが各地で郷土料理を紹介するコーナーが大人気視聴者も女性やコンサート目当ての若者が主流。そして料理研究家キャリーヌ・テイサンディエが各地で郷土料理を紹介するコーナーが大人気
料理コーナーは有名シェフが作る日もあれば、この日のように地元民が出演する場合も料理コーナーは有名シェフが作る日もあれば、この日のように地元民が出演する場合も
この日は地元のチーズを使っての家庭料理を競い合ったこの日は地元のチーズを使っての家庭料理を競い合った

 他国での放映ではほとんどカットされていることが多いこの部分だが、このスタートの1時間半程前からの生放送が、フランス国内では、

 「自転車もツールもまったく興味ない」

 「でも音楽やコンサートは大好き!」

 「各地の郷土料理は見られるのは楽しい!」

 という“猫や杓子”族に人気の枠。連日20〜30%もの視聴率をあげている。

観客数を育て、リッチな大会に

レースがスタートし、夕方になるにつれて、今度は本当のレースファン、男衆がTVの前に陣取り、ワインやビールを呑みながらの観戦となるレースがスタートし、夕方になるにつれて、今度は本当のレースファン、男衆がTVの前に陣取り、ワインやビールを呑みながらの観戦となる

 テレビ放映が魅力を放てば、それは次第に“視聴者”を“観戦者”にも成長&発展させる。家の近くがスタート村になれば、「ナマを観られる。行ってみようか?!」と、コンサートや料理実演を観にかけつけるし、レースが付近の道を通過すると聴けば、朝や前夜から繰り出し、路上で待機。いつもはTVでしか観たことのない自転車の群れを目前で観る圧巻を味わって興奮する。

 そうして視聴者や観戦者の数が増えていけば、それはスポンサーを確実に増やし、すなわち資金を芳醇にさせていく。そう。つまり“猫や杓子”を増やすことは好循環&好回転を生み、最終的には“リッチな大会”に導く。

 これこそ、「まことアッパレ!」と他競技から羨望のまなざしで仰ぎ見られている、世界最大級のスポーツイベント「ツール・ド・フランス」の確固たる運営姿勢。それが、この“マニア”よりも“大衆”、“真の自転車ファン”よりも“猫や杓子”を集める方針によって、「ショー・ビジネス」として成功させている鍵でもある。

悩ましき側面も

 とはいえ、もちろん「100%の成功ストーリー」など、あり得ない。ツールも、この“猫や杓子”たちに悩まされている問題…がある。

 それについては次回!

祐天寺りえ(ゆうてんじ・りえ)

1964年 横浜生まれ。1994年よりフレンチ・ アルプスのスキー場Meribel(メリベル)に在住。既出本:「フランスだったら産めると思った」原書房、「食いしんぼうの旅 アルプス〜コートダジュール編」パラダイム出版、「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て」小学館

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