「ライダーがいて観客がいることが幸せ」引退後もドイツ自転車競技界の発展に情熱 エリック・ツァベル氏が語るツール“参戦”の喜び

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 かつてツール・ド・フランスなどのトップレースで活躍したドイツの名スプリンター、エリック・ツァベル氏(45)はいま、母国ドイツの自転車メーカー「Canyon」(キャニオン)のチームリアゾンマネジャー(チームとメーカーをつなぐ役割)としてツールに参加している。レース会場でツァベル氏にインタビューし、ロードレース界の現状や、ドイツ勢の台頭について話を聞いた。(ヴァンヌ 柄沢亜希)

モビスター チームのバスの前に立つエリック・ツァベル氏(7月6日撮影)モビスター チームのバスの前に立つエリック・ツァベル氏(7月6日撮影)

母国ドイツの若手を育成

 ツァベル氏は1990年代から2000年代前半にかけて、ツール・ド・フランスで6年連続ポイント賞を獲得するなど大活躍した。ツァベル氏の引退後、ドイツではアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)を筆頭に、トニー・マルティン(エティックス・クイックステップ)、ジョン・デゲンコルプ、マルセル・キッテル(ともにチーム ジャイアント・アルペシン)ら有力選手の台頭が著しい。現在は21歳のツァベル氏の息子、リック・ツァベル(ドイツ)も、BMC レーシングチームに所属している現役プロ選手だ。

Cyclistのインタビューに応じるエリック・ツァベル氏。首の赤いスカーフは、この日のモビスター チームの拠点、スペイン・パンプローナで行われた「牛追い祭り」にちなんだ装いだ(7月7日撮影)Cyclistのインタビューに応じるエリック・ツァベル氏。首の赤いスカーフは、この日のモビスター チームの拠点、スペイン・パンプローナで行われた「牛追い祭り」にちなんだ装いだ(7月7日撮影)

 ドイツ勢躍進の理由をツァベル氏に尋ねると、「若手を育てるいいシステムがある」という。具体的な取り組みは聞けなかったものの、ツァベル氏自身がグライペル、マルティン、デゲンコルプらを「HTCハイロード時代にスポーツディレクターとして指導した経験がある」という。表舞台から退いた後も、後進の育成に力を発揮するツァベル氏のような存在は、国の自転車競技のレベルを引き上げる大きな推進力になっている。

 ドイツの自転車競技界は、ドーピング問題の影響で人気が下火になり、ツール・ド・フランスでさえテレビで生中継されなくなっていた。しかし今年、再びツールの生中継が行われ、多くのメディアが取材に入っている。ドイツ国内の自転車ロードレースを取り巻く環境は風向きが変わりつつある。

 グライペルはツール・ド・フランスでのステージ優勝後の記者会見で、ドイツ選手の躍進について「自然なこと」と表現した。国内での逆風が収まり、世間の関心が再び高まってきたことが、彼らへの追い風になっているのかもしれない。

「ケイリンは巨大な日本文化」

石畳コースに臨んだ7月7日、第4ステージのスタート前にエリック・ツァベル氏がモビスター チームの選手たちへアドバイスしていた石畳コースに臨んだ7月7日、第4ステージのスタート前にエリック・ツァベル氏がモビスター チームの選手たちへアドバイスしていた

 自転車ロードレースをめぐる状況がツァベル氏の現役時代と異なる点について、ツァベル氏は真っ先に「機材だね」とコメントした。カーボン素材など最先端の技術が投入されることによって、「自転車は軽く、剛性が増し、スピーディーに走れるようになったばかりか、選手にとって快適さが増した。それによって選手のレベルも向上している」と分析する。

 さらにツァベル氏は、「取材するメディアの数や、レースで訪れる町々での観客数が圧倒的に増えた。テレビ中継も増えて、選手の(走る)喜びも大きくなったかもしれない」と、ツール・ド・フランスが刻んできた歴史とツァベル氏自身の経験を振り返りながら語った。

 1994年のジャパンカップ参戦で来日したことがあるツァベル氏。日本の自転車競技についてたずねると、「ケイリンはとても巨大な日本文化だと思っている」と即答した。

 「ケイリンシリーズを経験してきたヨーロッパの選手たちに聞いてみても、ケイリンのシステムを褒める声ばかり。これは自転車文化にとって意味があること。選手が自転車に乗り、人々がそれを観戦することができるのであれば、ロードなのかトラックなのかは私にとって問題ではなく、幸せなことなのです」

元プロ選手が果たす大切な役割

 「私は自転車に対して情熱家。オフタイムも時間があればサイクリングしている。いまは、それほど速くなく、遠くまで走るわけでもない。ただ楽しむためにね」と語るツァベル氏。一方、レースの現場では、キャニオンのチームリアゾンマネ―ジャーとしての務めに大きな喜びを感じているという。

ツァベル氏についてコメントするオイセビオ・ウンスエ氏。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔で慕われているモビスター チームの共同創設者だツァベル氏についてコメントするオイセビオ・ウンスエ氏。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔で慕われているモビスター チームの共同創設者だ

 「この仕事も本当に楽しくて、ここにいられることをキャニオンに感謝している」

 キャニオンのバイクを駆るのは、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)といったスター選手を擁するスペインの名門、モビスター チームと、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー)らが活躍するロシア籍のチーム カチューシャだ。

 モビスター チーム共同創設者でありマネジャーを務めるオイセビオ・ウンスエ氏は、ツァベル氏について「チームに欠かせない一員。機材のセッティングや選手の気持ちなど、元プロ選手としてよく分かっている。石畳などテクニカルなステージでは特に大切な役割を果たしてくれている」と称賛した。

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