山口和幸の「ツールに乾杯! 2015」<3>ル・アーブルで大逃げを決めたマリー マイヨジョーヌ不在の1日は新時代の呼び水となるか

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 今年の大会では第5ステージがアラスからアミアンまで、第6ステージがアブビーユからル・アーブルまでで行われたが、1991年のツール・ド・フランス第6ステージはアラスからル・アーブルまでの距離259kmを一気に走るコースだった。

第6ステージのコースから海に向かったところにある小さな町。かつては英国領でエリザベス1世が住んでいたという第6ステージのコースから海に向かったところにある小さな町。かつては英国領でエリザベス1世が住んでいたという
特産物はカマンベールに代表される白カビチーズやガレット。リンゴで作るシードルが口に合う特産物はカマンベールに代表される白カビチーズやガレット。リンゴで作るシードルが口に合う

 NHKが最後に放送した年で、翌年からはフジテレビに放映権が移るのだが、ノルマンディー地方のル・アーブルにゴールする1991年の第6ステージで記録的なエシャペ(逃げ)が成功した。小柄で青い瞳をしたフランス人、ティエリー・マリーだ。

 マリーはタイムトライアルのスペシャリストで、ツール・ド・フランスではプロローグやチームタイムトライアルなどで6勝した。ローラン・フィニョンをエースにしたシステムUやカストラマで走り、フランスの第一人者だった。ボクが初取材した1989年は最終日にベルサイユからパリ・シャンゼリゼまでの個人タイムトライアルが最終日に行われ、グレッグ・レモンがローラン・フィニョンを8秒差で大逆転するのだが、そのとき3番目のタイムを記録したのがマリーだった。

1991年のツール、第6ステージを独走で制したティエリー・マリー(写真・砂田弓弦)1991年のツール、第6ステージを独走で制したティエリー・マリー(写真・砂田弓弦)

 もともとこのノルマンディー地方の出身で、アラス〜ル・アーブル間はまさに地元。そのためレース序盤で単独アタックすると、当時は「故郷に錦を飾らせてやれ」という選手間の許容もあったので、世紀の大逃げを始める。途中から大集団も必死に追いかけるが、独走力のあるマリーのスピードに追いつかない。

 マリーはテレビ画面を独占し、併走するバイクカメラに向かってシャンソンまで披露。歌い終わるとはにかんだような笑顔を見せて、さらにゴールを目指して逃げ続けた。こうしてゴールのル・アーブルまで234kmという記録的な独走を成功させて優勝した。歴代2位の記録というが、最長記録は競技としてのレベルが高くない時代のもので、マリーの記録はもう破られないのではと言われている。

ル・アーブルのフェリーポート近く。パリを流れるセーヌ川が英仏海峡に注ぐところだル・アーブルのフェリーポート近く。パリを流れるセーヌ川が英仏海峡に注ぐところだ
第6ステージのスタート地点。パリまであと2600kmだ第6ステージのスタート地点。パリまであと2600kmだ

 「もう24年前のことだけど、あれはいい思い出だ」

 当時のことを振り返るラジオ番組のインタビューで、今回の期間中にマリーが当時を振り返っている。

 「あの日のことは、いまでも初めての人に会うと話題になるよ。ベルナール・イノーは『狂気でしかないよ』と笑い飛ばすけどね」

 マリーはこの年、プロローグで優勝して1日だけマイヨジョーヌを着用したが、2日目にはグレッグ・レモンに、3日目にはロルフ・ソレンセンに移る。しかし第5ステージでソレンセンが落車骨折し、マイヨジョーヌの姿のままリタイア。マリーが独走した日は総合2位からの繰り上がり着用をレモンが拒否したので、マイヨジョーヌ不在のステージだった。

 マリーはステージ優勝とともに総合成績でも首位に。再びマイヨジョーヌを奪還する。その後はレモンとミゲール・インデュラインの戦いとなり、インデュラインが前人未踏となる5連覇への最初の勝利を獲得することに。今年の大会でもマイヨジョーヌ不在の1日があったが、あのときと同じように新時代の到来となるのだろうか?

第6ステージではマイヨジョーヌのマルティンが落車し、チームメートにいたわれながらゴール。その後の検査で骨折が判明し、レースを去ることになった。翌第7ステージは総合2位だったフルームがマイヨジョーヌ着用を辞退し、マイヨジョーヌ不在のレースとなった(写真提供:ASO/P.Perreve)第6ステージではマイヨジョーヌのマルティンが落車し、チームメートにいたわれながらゴール。その後の検査で骨折が判明し、レースを去ることになった。翌第7ステージは総合2位だったフルームがマイヨジョーヌ着用を辞退し、マイヨジョーヌ不在のレースとなった(写真提供:ASO/P.Perreve)
山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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