飯島美和のフォーカス・ツール2015<2>逃げて輝く ペリグ・ケムヌール(チーム ヨーロッパカー)

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 ツール・ド・フランス第6ステージ、マイヨジョーヌのトニー・マルティンがフィニッシュライン直前での落車で鎖骨骨折してしまうという波乱の中、フランス語で「コンバテビテ」と呼ばれる敢闘賞を獲得し表彰台に上がったのは、チームヨーロッパカーのペリグ・ケムヌール(フランス)だった。

第6ステージで敢闘賞を獲得。表彰式のあと、テレビの生放送に出演するペリグ・ケムヌール(フランス、チーム ヨーロッパカー)第6ステージで敢闘賞を獲得。表彰式のあと、テレビの生放送に出演するペリグ・ケムヌール(フランス、チーム ヨーロッパカー)

甘いマスクのイケメンは、愛妻家のイクメン

第6ステージで敢闘賞を獲得。表彰台に立った第6ステージで敢闘賞を獲得。表彰台に立った

 彼の名前を知っている日本人ファンはかなりのツウかと思う。というのも、所属するヨーロッパカーは新城幸也はもちろん、トマ・ヴォクレール、ピエール・ローラン、ブライアン・コカールと個性が前面に出た濃いキャラクターの選手たちが揃っているのだ。影に隠れるのも無理はない。

 実はペリグは2010年のジャパンカップにも来日。目鼻立ちがひときわ濃い顔立ちに優しげなハの字眉が、宇都宮のショップ店員さんや、女子高生たちには「カッコいい」と一番人気だった。フランスでも彼のビジュアル的人気は相当で、あるレースの警備に来ていた女性警察官がペリグを追いかけ、電話番号を渡したというエピソードもあるくらいのモテ男ぶり。

 しかし、彼はどこから見ても愛妻家の、5歳の女の子と2歳の男の子を持つイクメン。「妻が大好きなので」と近所に住む新城に巻き寿司の作り方を教えてもらい、実際に家族のために何度も作っているというのだから、頭が下がる。

逃げ職人

第4ステージ、「パヴェは好きじゃない」と言いながらこの日も逃げた第4ステージ、「パヴェは好きじゃない」と言いながらこの日も逃げた

 そんなペリグは今回のツールですでに3度の逃げに乗っている。なぜ、彼は逃げるのか? スバリ言うと、彼の役目は“それしかない”からだ。ゴールスプリントでコカールを引っ張るほどスプリント力があるわけでもない。山岳でピエールのために位置取りができるかというと、位置取りは苦手。

 彼がツールのメンバーに選ばれた理由…それは逃げることができるからなのだ。

 どんなレースでも簡単に逃げられるレースはなく、特にツール・ド・フランスは逃げてテレビに映るだけでも価値があるため、多くのチームが逃げを狙う。スタートから何十kmにも及ぶアタック合戦が続き、やっと逃げが形成されるのだ。「存在感のない選手の方が自由に逃げられる」なんていう事も聞くが、そうではないと思う。

 彼はほぼ毎日誰よりも早くスタートラインに並ぶ。逃げる意志の表れだが、アタック合戦が始まると、どのタイミングで逃げが決まるかわからないのだから、最前列でひたすらアタックを繰り返さなければならない。ペリグは毎回そうして「逃げ」を作ってきたのだ。

第6ステージで3人の逃げ。背後にイギリス海峡が広がる上りを行く第6ステージで3人の逃げ。背後にイギリス海峡が広がる上りを行く
今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも逃げた。カメラに向かって舌を出し、サービス精神も旺盛今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも逃げた。カメラに向かって舌を出し、サービス精神も旺盛

ヴォクレールの忠実な「第一秘書」

チームメートのロマン・シカール(手前)と最前列でスタートを待つチームメートのロマン・シカール(手前)と最前列でスタートを待つ

 もちろん、彼以外の選手たちのアタックに反応し、逃げができることも多々ある。そこにも彼が含まれていることが多いのは、長年のレースでの経験だ。

 実は10代のころからトマらと一緒に、ヨーロッパカーのサテライトチームのヴァンデUに所属。そのカテゴリーではフランス中のタイトルを総なめにし、鳴り物入りでプロ入りした。もちろんこの時もトマと一緒。日本で言われているように、トマを「社長」と評するならば、ペリグは20年来トマに仕えてきた第一秘書と言うべきだろう。

 フランス人には珍しく(?)空気を読み、周りに合わせられる人だと感じる。だからこそ、この個性派ぞろいのチームで第一秘書が務まるのだ。

 でも彼は逃げているときこそ、彼の個性が輝いている時なのかもしれない。ペリグは今後のステージでも逃げ続け、総合敢闘賞でパリの表彰台でスポットライトをひとり占めできるだろうか?

(飯島美和)

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