ジロ・ローザ第6ステージで歴史的勝利【詳報】アタック繰り返し山岳ステージを制した萩原麻由子 世界トップクラスの実力を証明

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 「信じられない。すごく嬉しい!」

 それは最後の最後まで、チームメートのために献身的な走りをした萩原麻由子にとって、サプライズともいえる勝利だったという。一方で萩原が自分で思う以上に、萩原の実力が世界のトップクラスにあることを証明してくれた。

日本チャンピオンジャージを着て表彰台に登った萩原麻由子日本チャンピオンジャージを着て表彰台に登った萩原麻由子

作戦は「アタックに乗ってトライ」

スタート台に並んだウィグル・ホンダの選手たちスタート台に並んだウィグル・ホンダの選手たち

 北イタリア、ロンバルディア州のトレシビオからモルベーニョまでの102kmで開催された“女性版ジロ・デ・イタリア”ジロ・ローザの第6ステージ。2級、1級、2級と3つのカテゴリー山岳が設定された山岳ステージで、ウィグル・ホンダのエゴン・ファン・ケッセル監督は「今大会で最も厳しいステージの一つ」と話す。山の斜面に沿った細い山道を上っては下る、そんな印象のコースだった。連日の酷暑はやや落ち着きをみせたものの、それでも30度を超える強い日差しのなかで、ちょうど太陽が真上に昇った12時にレースはスタートした。

小さな山あいの街トレシビオからジロ・ローザ第6ステージがスタート小さな山あいの街トレシビオからジロ・ローザ第6ステージがスタート
リンゴとブドウの畑のなかを縫ってレースがスタートしていくリンゴとブドウの畑のなかを縫ってレースがスタートしていく

 レース前に萩原は「アタックがあれば、それに乗ってトライすること。集団になれば、自分の総合成績のために順位が近い選手をマークすることが今日の作戦」と説明してくれていた。萩原の調子の良さはチームの誰もが認めているが、チームとしての目標は、あくまでもマラ・アボット(アメリカ)と、エリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)の総合優勝だ。

 つまり、彼女の話す「アタック」や、逃げに乗ることは、エースのための作戦上のもの。彼女が攻撃を仕掛けることで、ライバルチームに脚を使わせるのが狙いだ。そしてレースが始まると最初の登坂区間で、作戦どおりに萩原を含む6人の先頭集団が形成された。

「マユコはすごく調子がいいのだから、チャンスがあればトライするんだ」ファン・ケッセル監督がミーティングで指示を出す「マユコはすごく調子がいいのだから、チャンスがあればトライするんだ」ファン・ケッセル監督がミーティングで指示を出す
作戦についてチームメートと真剣に相談する萩原麻由子作戦についてチームメートと真剣に相談する萩原麻由子
今日もジョルジア・ブロンジーニ(イタリア)がムードメーカーとなり穏やかな雰囲気でレース前の時間が流れる今日もジョルジア・ブロンジーニ(イタリア)がムードメーカーとなり穏やかな雰囲気でレース前の時間が流れる
6選手の逃げに乗った萩原麻由子6選手の逃げに乗った萩原麻由子

追いつかれ、再び単独でアタック

中盤にペースアップするメーン集団。イタリアンリーダーの青いジャージを着るエリサ・ロンゴ・ボルギーニが前方で走る中盤にペースアップするメーン集団。イタリアンリーダーの青いジャージを着るエリサ・ロンゴ・ボルギーニが前方で走る

 「できるだけ長く逃げて、他のチームにダメージを与えたかった」と振り返る萩原。その後、後ろから1選手が追いつき、7選手になって、メーン集団から最大で3分半ほどのタイム差を稼ぐ。2つ目の登坂区間では、メーン集団からマリアローザを着るメーガン・グアルナー(アメリカ、ボールス・ドルマンズ)ら、総合上位の選手たちが追走を開始し、3つ目の上りを前に萩原ら先頭集団を吸収。追いついてきた集団には、ウィグル・ホンダの2人のエースも含まれていた。

 そして残り25km地点で、再び萩原が単独でアタックを仕掛けた。ここでも「とにかく、他のチームにダメージを与えることだけを考えていた」と言うが、登坂区間での鋭いアタックで、誰も萩原に続く選手はいなかった。そしてタイム差が2分ほど開くと、萩原がトップから1分1秒差の総合12位に付けていることもあり、12名ほどの追走集団はペースを上げて下り区間に入った。

残り1kmで優勝を確信

 「後ろの集団にマラとエリサがいることがわかっていたので、捕まっても大丈夫だと思い、少しでも長くチームメートのために逃げ続けようと一生懸命走った。でも残り5kmでタイム差が30秒ほどだったので、じきに捕まると思っていた」。しかし、残り5kmを切ってから、タイム差は大きく縮まらず、ゴール地点では萩原の勝利が濃厚になったとチームスタッフがガッツポーズを掲げた。

 「向かい風もあり本当にキツかった」と振り返るが、意外にも自身のステージ優勝の可能性を意識したのは「残り1kmで後ろを振り返ったときにオートバイしか見えなかった」とき。そこからは後ろを一切振り返らずに、力のかぎり踏み続け、結果、後続に24秒差をつけての独走優勝を挙げた。

後続に24秒差で単独でゴールラインに飛び込んだ萩原麻由子後続に24秒差で単独でゴールラインに飛び込んだ萩原麻由子
ゴールラインを越えて勝利を実感。笑顔を見せる萩原麻由子ゴールラインを越えて勝利を実感。笑顔を見せる萩原麻由子
萩原麻由子がゴール後に勝利を喜ぶ萩原麻由子がゴール後に勝利を喜ぶ

ライバルを振り落とし、自身も総合7位に

 萩原の動きにより、総合上位からライバルの2選手が脱落した。それによりロンゴ・ボルギーニは昨日の5位から4位(+25秒)へ、アボットは9位から8位(+53秒)へ、そして萩原自身も12位から7位(+33秒)と総合成績のジャンプアップに成功。ウィグル・ホンダにとって、とてもいいステージとなり、ゴールしたチームメートたちが「マユコは素晴らしいチャンピオンだ!」「すごい、新しい歴史を作ったね」と、思い思いのお祝いの言葉で、萩原の勝利を喜び、抱き合った。

チームのエース、エリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)が抱き合って喜ぶチームのエース、エリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)が抱き合って喜ぶ
追走集団でゴールしたエリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)とマラ・アボット(アメリカ)が喜ぶ追走集団でゴールしたエリサ・ロンゴ・ボルギーニ(イタリア)とマラ・アボット(アメリカ)が喜ぶ

 萩原の実力を確信し、それが結果に繋がったことをファン・ケッセル監督も心の底から喜んでいた。「今日の結果を本当に嬉しく思っているよ。マユコは素晴らしいレースをした。厳しいステージにおいて、序盤から逃げ続けて勝つのは、簡単なことではないけど、世界に数人それができる選手がいて、その1人がマユコだ。日本のみなさんにも、おめでとうと言いたいよ」と満面の笑みを見せる。

マラ・アボット(アメリカ)と抱き合う萩原麻由子	マラ・アボット(アメリカ)と抱き合う萩原麻由子
今季からチームの監督を務めるエゴン・ファン・ケッセル氏と萩原麻由子今季からチームの監督を務めるエゴン・ファン・ケッセル氏と萩原麻由子
ゴールしてきたチームメート全員が萩原麻由子の勝利を祝福したゴールしてきたチームメート全員が萩原麻由子の勝利を祝福した
表彰台でシャンパンを飲む表彰台でシャンパンを飲む

また明日から

 日本人選手として初めて、女子ロード界のグランツールであるジロ・ローザで優勝した萩原。現チームに所属し、活動拠点を欧州に移して3シーズン目に掴んだ嬉しいヨーロッパでの初勝利だった。けれども喜ぶのはチームの目標が達成されたとき。表彰式を終えて「また明日から、明日からこそ、厳しいステージが続くと思う。今日みたいに走ってチームのエースを助けていきたい」と話す。日の丸が描かれた日本のチャンピオンジャージを来て、ひたむきにエースのために走る彼女の姿がとても誇らしい。

文・写真 田中苑子


※ジロ・ローザ公式YouTubeより
 

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