はらぺこサイクルキッチン<41>イタリアで出会った食材「ポレンタ」 消化しやすくアスリートにぴったりの主食
マウンテンバイク(MTB)プロアスリートの夫・池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)が6月27日、イタリアの山岳地帯、ドロミテ地方を舞台に開催されたUCI(国際自転車競技連合)MTBマラソン世界選手権に出場しました。この日は同じコースを走る「HERO」というアマチュアレースも開催され、街を挙げてMTBレースの盛り上がりが最高潮になりました。今回は、買い出しからスタートしたイタリアでの食生活をお届けします。
生ハムやチーズ、オーガニック製品が豊富
イタリアでの滞在先は、自分の目で食材を選んでコンディションを整えるためにも、キッチン付きの宿を選びました。街にはスーパーマーケットが数件あり、土日も営業していて生活に必要なものは大体そろう環境でした。ただし、観光地なので物価はとても高かったですが。
もちろんレースを戦う目的で訪れたのですが、その土地が好きになるかそうでないかを決定付けるのは、景色や人だけでなく「食」の要素も大きいと思います。ドロミテの素晴らしい景観に加え、食の面でも新たな食材と出会えて、選手の夫だけでなく私にとっても楽しい旅となりました。
街へ到着後、最初にすることは買い出し。初めての土地では、どんなスーパーマーケットがあるのか探し歩くのも、毎回楽しみにしていることのひとつです。向かった先は、街の中心にあるスーパーマーケット。店内は明るくきれいで、生鮮食品のほか、生ハムの量り売り、チーズ、パン、ワインも種類豊富に取りそろえてあり、イタリアらしさを実感しました。
特にチーズや生ハムは、日本の半値以下でした。他に、グルテンフリーのお菓子やパスタなども多かったです。だいたいの食材が、通常のものとオーガニック製品から選択することができました。
オリジナルアレンジは「パーフェクト」
「ポレンタ」という食材をご存知でしょうか。1年前、イギリスMTBの“女王”サリー・ビグハム選手に食生活をインタビューした際に、彼女が愛用していると教えてくれた、コーンをやや粗めの粉状に挽いたものです。お米のように水で炊いて(ブイヤベースでもおいしいと思います)、主食(アスリートにとって非常に重要な炭水化物)として食べます。

これがライド後の疲れた体でも柔らかくて食べやすく、夫も気に入りました。初めて食べたのは外食でしたが、宿でも炊いてみたところ、調理時間は約10分と短く、重宝しました。油を使わず調理するので、消化しやすく胃もたれしません。
ポレンタは日本であまりメジャーではないものの、ヨーロッパではポピュラーな食材の一つ。炊く段階で塩やハーブで味付けするのですが、醤油や、イタリア名産のポルチーニ茸を水で戻して、出汁と一緒に炊いてもいいですね。
私はさらにアスリート向けにアレンジするために、持参したチアシードと一緒に炊きました。チアシードが本来もつトロみとうまく合わさって、よりふわっとした仕上がりに。普段からポレンタをよく食べているオーストリアの友人は、「店によっても全然違うのだけど、固すぎても柔らかすぎてもダメなのよ」とアドバイスをくれた上、「とっても上手にできている。パーフェクトな仕上がりだわ!」と褒めてくれました。
小麦の代わりにそばを使って斬新メニュー
一緒に滞在していたカナダのコーリー・ウォレス選手(KONA)の、そば粉とそばの実の斬新な使い方をご紹介します。ジャガイモやブロッコリーなどの野菜を、トマト99%から作られるトマトペーストとハーブで煮込み、そこへそば粉を投入。少しクリーミーな野菜スープのようなものになりました。そばの実は少なめの水で煮て、野菜と合わせ、卵とじに。こちらもハーブやトマトを使用して、塩は極力減らしましたが、野菜本来の味とそばの実の風味がよく出ていました。日本人ではなかなか思いつかないアレンジと風味が新鮮でした。
グルテンアレルギーをもつウォレス選手は、そばを小麦製品の代わりに活用しているそうで、「栄養価が高い上、使い方も幅広くて万能。欠かせない食材だよ」とのことでした。余談ですが、世界選手権直後に誕生日を迎えた私に、そば粉と米粉(配合は5対5)のパンケーキを焼いてくれました。とっても美味しかったです!

世界選手権を走った祐樹さんの結果は、150人中82位でした。肺炎を患って入院してから実質3週間のトレーニング期間を経ての参戦となりましたが、実際に走ってみての感想は、「結果には満足していないけれど、あの状態からここまで体を戻せたのは、限られた期間の中では最短距離だった。やれるだけのことはやれた、という感覚」とのことでした。ヨーロッパ勢は層も厚く、とても強かったです。まだまだ追求することはたくさんあります。
さて、次の舞台はアメリカです。レースの舞台に合わせて、高地トレーニングがスタートします。アメリカで過ごす夏は3年目。ここでもまた新たなことを吸収したいと思います!




アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。