飯島美和のフォーカス・ツール2015<1>開幕の地、オランダの誇りに懸けて ロットNL・ユンボ

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 ツール・ド・フランス2015の期間中、飯島美和さんのコラム「フォーカス・ツール2015」を連載します。毎回、注目のチームや選手に焦点を当て、レースの裏側から見た、ツールを彩る選手の想いや人間模様を描き出します。

たくさんのファンに見守られながらのウォーミングアップ。噴霧器内蔵の扇風機で暑さ対策たくさんのファンに見守られながらのウォーミングアップ。噴霧器内蔵の扇風機で暑さ対策 (写真・飯島美和)

◇      ◇

炎天下で迎えたオランダ・グランデパール

 ツール・ド・フランス2015が7月4日、13.8kmの個人タイムトライアル(TT)でスタートを切った。開幕の地となったオランダ第4の都市ユトレヒトは、グランデパールを待ちわびたファンの熱気とともに気温も上昇。選手たちは体をアイシングしながらウォーミングアップをし、スタート前に水をかぶるなど、暑さ対策をとっていた。

 しかし大変なのは観客や私たちカメラマン。個人TTでは最初の選手がスタートする午後2時から、最後の選手を送り出す17時過ぎまで、炎天下で立ち尽くしているのだから、まるで苦行のようだ。そんな悪条件に耐えて最後まで声援を送り続けた地元ファンの想いにしっかりと報いたのが、今回のツール・ド・フランス出場チームの中で唯一オランダ国籍の、チーム ロットNL・ユンボだった。

 日本でおなじみの、とは言い難いチーム名だが、前身がラボバンクと言えば、オールドファンにもなじみがあるだろう。この日のTTのコースはまさに、そびえ立つラボバンク本社ビルの麓を駆け抜けた。

 ラボバンクはオランダの農業団体向けの金融機関だ。長らくこの自転車チームをサポートしてきたが、自転車競技界のドーピング問題の影響によるイメージダウンを懸念し、2012年を最後にスポンサーから撤退。

 その後、チームのスポンサーはブランコ、ベルキンへと毎年入れ替わり、チーム名も次々に変わった。昨年、スポンサーが見つからないというニュースも流れたが、その後にオランダ宝くじ公社のロットNLと、同国の大手スーパーマーケットのユンボを新たなスポンサーに迎え、ワールドツアー落ちを免れた。

プレッシャーの中で出した“結果”

タイムトライアルのオランダチャンピオンジャージで登場したウィルコ・ケルデルマン。ギリギリまでクールスーツを着用していて、スタート直前に全身オランダ国旗のナショナルチャンピオンジャージがお披露目されたタイムトライアルのオランダチャンピオンジャージで登場したウィルコ・ケルデルマン。ギリギリまでクールスーツを着用していて、スタート直前に全身オランダ国旗のナショナルチャンピオンジャージがお披露目された (写真・飯島美和)

 9選手中7人と、オランダ人選手が一番多く所属するチームということもあり、この日のロットNL・ユンボのチームバスには、普段の会場では見られない(と言っては失礼だが…)ひときわ大きな人垣ができた。異例の2台体制のチームバスの前では、選手がウォーミングアップをしている横で、スポンサーや関係者に軽食ブッフェやワインを振舞うというサービス。そこだけがパーティー会場と化していた。

 そんな中で走る選手たちのプレッシャーは、並大抵のものではない。かといって、この13.8kmのTTで勝ちを狙える選手がいるとは、とても言い難い。チーム最高位はオランダ期待の新星、個人TTオランダチャンピオンのウィルコ・ケルデルマンの10位だった。

 しかし何とこの日のチーム総合優勝は、チームTT世界チャンピオンのBMCでも、TT上位常連のオリカ・グリーンエッジでもなく、ロットNL・ユンボだった。まさに故郷に錦を飾る大活躍といえるだろう。

「個人でできないことが、チームならできる」

 実は開幕前、「このツールに出場するために、あと1年、という想いで選手を続けてきた」と話してくれたのは、今回で9度目のツール・ド・フランスに挑む36歳のベテラン選手、ブラム・タンキンクだった。

​リラックスした表情でスタート台に上がるブラム・タンキンク リラックスした表情でスタート台に上がるブラム・タンキンク (写真・飯島美和)

 彼はステージのチーム1位が決まると、「個人でできないことが、チームならできる」と、目に涙を浮かべて喜びを語ってくれた。

 7月2日に開かれたチームプレゼンテーションでは、選手たちはユトレヒト生まれの人気キャラクター、ミッフィーと一緒にステージに上がった。実はこの演出を仕掛けたのもタンキンクだった。

 地元開催のツールでしっかりとホストとしての役目を果たしたチーム・ロットNL・ユンボ。今年のジロ・デ・イタリアで最後まで山岳賞争いをしていたスティーフェン・クルイシュウィックや、昨年のツール総合9位のローレンス・テンダムらの、山岳ステージでの活躍にも注目したい。

(飯島美和)

ミッフィーを背中のポケットに入れ、観客とハイタッチしながらチームプレゼンテーション向かうロットNL・ユンボミッフィーを背中のポケットに入れ、観客とハイタッチしながらチームプレゼンテーション向かうロットNL・ユンボの選手 (写真・飯島美和)

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