2020年に3万3000台の駐輪場設置へ駐輪場の「空あり」を街角で確認 24億円かけ快適な自転車環境を生んだオランダ・ユトレヒト

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 ツール・ド・フランスの開幕で盛り上がりをみせるオランダ・ユトレヒトは、オランダ随一の自転車都市でもある。この4年間で駐輪場のインフラ整備に費やされた市の予算は、1740万ユーロ(およそ24億円)と膨大だ。「Le Tour Utrecht」(ユトレヒトのツール・ド・フランス開催実行委員会)の広報担当者、ハイス・ブールヴィンクルさん(Gijs Boerwinkel)に話を聞いた。(ユトレヒト 柄沢亜希)

2014年に完成したユトレヒト駅すぐの屋内駐輪場は、収容可能台数4200台と大規模2014年に完成したユトレヒト駅すぐの屋内駐輪場は、収容可能台数4200台と大規模

駐輪場の新しいスタイルを模索

ユトレヒト駅すぐの駐輪場入り口ユトレヒト駅すぐの駐輪場入り口

 自転車インフラに関する市の投資の中で最も象徴的なのが、2014年に中央駅の入り口下に併設された収容可能台数4200台の屋内駐輪場だ。利用料金は24時間まで無料となる。日本国内の都市なら、どの駅前を見渡しても商業ビルやマンションが中心的な存在で、誰でも利用できる駐輪場は慢性的に不足傾向。あったとしても、屋内施設で24時間まで無料なんて聞いたことがない。

 欧州の都市では、かつて塀に囲まれていたような旧市街が街の中心地になっていることが多く、それはたいてい駅から少し離れた場所に位置する。実際ユトレヒトでも、駅周辺で足を止めるべき場所は、駅から市の中心街へつながる通路としての機能をもつショッピングモール程度だった。駐輪場のように商業的利益を生み出さない施設が駅前を占めることの難しい日本に対し、この視点だけで見れば欧州では駐輪場を設置しやすい条件が整っているのかも知れない。

「Le Tour Utrecht」広報事務局のハイス・ブールヴィンクルさん「Le Tour Utrecht」広報事務局のハイス・ブールヴィンクルさん

 既存の施設、あるいは開発中の建物の地下に駐輪場を設けるなど「クリエイティブな方法を常に模索している」と語るブールヴィンクルさん。景観の悪化や駅前の通路を狭めてしまうという理由から所定の場所以外の駐輪をなくしたいのは日本と共通だ。欧州での課題は、「クルマの駐車場スペースとのせめぎあい」となりそうなところだが、ユトレヒトでは大型駐輪場の新規設置に成功した。

 「駐輪場を作ったほうが省スペースで済むというのがポイントだね。それに大量の自転車が駐輪場に収まったことで、誰にとっても魅力的な憩いの場が生まれた。今では駅周辺の駐輪場を合わせると1万2000台収容が可能となっている。それでも、十分とは言えない。2020年には3万3000台の自転車を収容することができるようにこれからも整備を続けていく」

駐輪がなくなり駅前に広がった。人々がくつろぐ段状のスペースの内部は駐輪場だ(写真は夜8時)駐輪がなくなり駅前に広がった。人々がくつろぐ段状のスペースの内部は駐輪場だ(写真は夜8時)
駅前の広場にはツール・ド・フランスのスーベニアショップが登場した駅前の広場にはツール・ド・フランスのスーベニアショップが登場した

市内で発展する自転車インフラ

昼下がりの駐輪場は常に人が出入りしていた。入って右が交通ICカードをタッチする場所昼下がりの駐輪場は常に人が出入りしていた。入って右が交通ICカードをタッチする場所

 昼下がりに駅直下の駐輪場を訪れると、自転車を押して歩く人がひっきりなしに出入りしていた。冒頭の1740万ユーロを費やして創出されたのは、7000台分の駐輪場。この駐輪場も含まれていることになる。

 駐輪場の中には、平置きとその上部の可動式スタンドを組み合わせた2段の駐輪列がずらりと広がっていた。各列の入り口には空きスペース数が電光掲示され、通路を挟んで左右の列を見渡せる位置には、監視カメラが定間隔に並んでいる。入り口にはレンタサイクルステーションが配置されているため、昼間は有人。シンプルだが効率的な安全管理システムだ。

駐輪場の各列の空き台数がわかるように電光掲示板が配置され、盗難防止の監視カメラが稼働駐輪場の各列の空き台数がわかるように電光掲示板が配置され、盗難防止の監視カメラが稼働
駐輪場入り口に構える自転車グッズのショップ駐輪場入り口に構える自転車グッズのショップ

 ユトレヒトでは今後さらに400万ユーロ(およそ5億5000万円)を投じる計画という。駐輪場の拡大や支払いシステムのデジタル化をはじめ、「世界でも初めて」という駐輪スペース空き情報の路上案内を増やしたり、ツール・ド・フランスといったイベント時や駐輪場が足りてないと思われる場所での「ポップアップパーキング」(臨時駐輪場)の設置に充てたりと、自転車の駐輪環境向上に費やされるそうだ。

内部は3階建て。階段を上った突き当りにフロアの空き台数が表示されていた内部は3階建て。階段を上った突き当りにフロアの空き台数が表示されていた
駐輪スペース空き情報を街角で確認することができる(提供写真)駐輪スペース空き情報を街角で確認することができる(提供写真)

 7月4日、5日と同市で開催されるツール・ド・フランスの際も、ポップアップパーキングが登場。自転車で観戦に訪れる人のために、サイクリングルートや、コースを横断できるポイント、トイレ、パブリックビューイング設置場所、救急所といった案内が掲載された地図も配布されている。

ツール関連イベントには自転車教室も

自転車でグランデパールに訪れる人のために、サイクリングルートをはじめとする情報を掲載した地図も配布自転車でグランデパールに訪れる人のために、サイクリングルートをはじめとする情報を掲載した地図も配布

 ユトレヒトの街なかは本当に自転車だらけで、どこを写真で切り取っても必ず自転車が写ってくる。「サイクリングはずっと、オランダ文化のひとつとして築かれてきた」とブールヴィンクルさん。スポーツとしての自転車はもちろん、一般的な自転車乗りはユトレヒトの場合、毎年4%ずつ増加しているという。

 ツール・ド・フランスが同地を訪れるにあたり、「自転車の交通ルールや安全教育といった面でも充実したプログラムが組まれてきた」とブールヴィンクルさんは胸を張る。大会開催の100日前からスタートした一連のイベントの中で、サイクリング教室も開催。学校で実施されたものの、参加対象は生徒にとどまらず、上手な自転車の乗り方を学びたい人すべてに開かれたプログラムだったという。

ハイス・ブールヴィンクルさん自身ももちろんサイクリスト(提供写真)ハイス・ブールヴィンクルさん自身ももちろんサイクリスト(提供写真)

 そんなブールヴィンクルさんは、実はアムステルダム出身。ユトレヒトからスタートするツール・ド・フランスにについて尋ねると、「クールなことだね。アムステルダムほど大きくないけれど、おしゃれな街や立派なドム(聖堂)もある。都会特有の交通混雑に悩まされずに、最長で30分以内に市内のどこへでもアクセスできるのはとても快適。引っ越せばいいって? ちょっと頭によぎったよ」と笑顔で語った。

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