はらぺこサイクルキッチン<40>体調キープも準備のうち 長期海外遠征&レースモードへチューニングする食事
池田家では、いよいよ夏の長期海外遠征がスタートしました。MTBプロアスリートの夫・池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)がまず最初に参戦するレースは、6月27日開催のMTBマラソン世界選手権。すでに今年のレースの舞台となるイタリア北西部の山岳地帯、ドロミテに到着しています。その後は、アメリカ、モンゴル、韓国を周ります。世界選手権、ワンデーマラソンレース、ステージレースとレースの種類も様々。体調を含めたその準備編として、レースモードへチューニングするメニューもたくさん紹介します。
持ち物チェック! “健康であること”も忘れずに

訪れる国が多いと、やはりその分荷物も多くなります。7日間のステージレースが待ち受けるモンゴルではテント生活なので、寝袋も用意。バイク本体(今回はフルサスとハードテイルの2台体制です)、スペアパーツ、ちょい足しアスリートフードも万全に。去年の経験を生かして、洋服などの取捨選択は多少上手くなったつもりです。
持参した食材系は、ヘンプパウダー・ヘンプフレーク・ビーツパウダー・チアシード・チアグラウンド(粉末にしたもの)・粉末青汁・手作りグラノーラ・玄米酵素ブレンド・梅エキスと粒・細切り昆布・黒糖。普段から使っているスーパーフードを中心にセレクトしました。そして、万が一に備えて胃腸薬と食あたり防止の薬。
バイクパーツと同じで、どんなに身体によいものでも普段食べ慣れているもの以外は使いません。消化やアレルギーに問題のないもの、慣れ親しんでいる味であることが大事だと考えます。栄養素の面で信頼を置いている他に、環境が変わっても「いつもの味」で安心感が得られるというメリットもあるからです。


スーパーフードの他には、現地に着いてすぐに調理が始められるように、簡単な調味料を持参。醤油、オリーブオイル、塩。イタリアへオリーブオイルを持って行くのはどうかと思いましたが、使い切りサイズに惹かれて。普段愛用しているヘンプオイル(麻油)はアメリカへ着いたら調達したい、と買い物についても計画中です。アメリカで流行った食材が半年から1年後に日本でも流行するので、今年はどんなものにお目にかかれるか、楽しみでもあります。

そして何より…健康であることをお忘れなく! 持ち物ではありませんが、今まで積み重ねた努力を無駄にしないためにも、体調を崩さないことはとても大事。それはサポーターにとっても言えること。風邪を引いて選手に移した、なんてことがないように私も細心の注意を払って予防に取り組みました。飛行機の移動中も必ずマスクを着用し、乾燥・感染を防ぎました。今回は機内がかなり寒かったせいか、クシャミをする人が多発。油断大敵です。
意識を高めるスペシャルメニュー

池田祐樹が4月下旬から体調を崩し、5月に肺炎で入院したことはこの連載にも書いたとおり。順調に回復してきてはいますが、中田尚志コーチ(Peaks Coaching Group Japan)は、「パワーメーター上のパフォーマンス値を以前の数値に戻すまで5週間はかかる」との見解でした。退院から出発までの我が家の食卓では、いつも以上に“クスリのように”食材を選びました。
主食(炭水化物やビタミン)と主菜(タンパク質やミネラル)、副菜(食物繊維、ビタミン、ミネラルなど)、汁物をバランスよく。特に好評だった料理は、キヌアのサラダ、ビーツのスープと葉を使った炒め物、酵素玄米、ドラゴンレッド(長崎県産の赤い芋)を使った揚げないフライドポテトです。



食べているときはそこに集中し、しっかりと噛みながら体の中で栄養素が充分に吸収されることをイメージしながら食べました。そうやって、夫婦で世界選手権へ向けて意識をフォーカスしていきました。
精神も鍛え、いざ欧州へ
本番まで日本でトレーニングができる期間は約3週間。「よしやるぞ!」という時、同時にやってきた梅雨入りの知らせ…トレーニング日と重なるようにして、連日雨が続きました。
どんなに土砂降りになってもトレーニングメニューを変更することはありませんでしたが、冷え切って帰ってくることも度々でした。ここでまた体調不良がぶり返さないためにも、帰宅後はお茶などすぐに温かいものを胃にいれました。

「限られた時間の中でやれるだけのことはやった」と自信がついた様子の池田祐樹。もちろん危険回避は大切ですが、気持ちが折れてしまうような悪天候で行うトレーニングほど、精神面でも選手を強くし、いつも以上に達成感をもたらすのかも…と思いました。
トレーニングの結果、体型と体重は理想に限りなく近づいてきました。特に上半身の筋肉が短期間でついた印象です。今回のMTBマラソン世界選手権は、5年連続の参戦。日本代表選手として2年ぶりに出場する門田基志選手(Team GIANT)とも、欧州到着後に合流しました。現地ではレースコースの試走を重ねて、本番では走行距離87km、獲得標高4700mという怪物コースに挑みます。
連載では、およそ3カ月に渡る遠征の模様・各国で出会ったニュースを順次お届けしていきます。

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。