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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<114>コンタドール、キンタナが好調をアピール ツール・ド・フランス前哨戦を総まとめ

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 6月後半のレースがひと段落しました。この時期の注目レースは、いずれもツール・ド・フランスへと続く道とあって、有力選手たちの動向を確かめる絶好のチャンスです。そこで前回に引き続き、ツール前哨戦結果をまとめていきます。ぜひご一読いただき、ツールの足音を感じてください。

ルート・ドゥ・スッド第3ステージ、下りでアタックを決め逃げ切ったアルベルト・コンタドール ©ROUTE DU SUD 2015 / Maxime Lafageルート・ドゥ・スッド第3ステージ、下りでアタックを決め逃げ切ったアルベルト・コンタドール ©ROUTE DU SUD 2015 / Maxime Lafage

コンタドールが総合優勝 ルート・ドゥ・スッド

 フランス・ピレネー山脈を舞台に開催されたステージレース、ルート・ドゥ・スッド(UCI2.1)は6月18~21日に行われ、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が総合優勝を果たした。

ルート・ドゥ・スッド総合優勝を決め、笑顔のコンタドール。ツールに向けた調整は順調だ Photo: Tinkoff-Saxoルート・ドゥ・スッド総合優勝を決め、笑顔のコンタドール。ツールに向けた調整は順調だ Photo: Tinkoff-Saxo

 今大会のクイーンステージとなった第3ステージ(181km)で、コンタドールとナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が激しい山岳バトルを展開した。1級山岳を3つ越え、約20kmのダウンヒルを経てフィニッシュするコースが設けられたが、最後に登場するバレ峠で2人が大きく動いた。頂上を同時に通過すると、ゴールへの下りでコンタドールがアタック。キンタナの追撃を許さず、13秒差でステージ優勝しリーダージャージを獲得。最終日も守りきった。

 勝利した第3ステージの走りについて、「先行していたピエールロジェ・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)を追おうとキンタナに協力を求めたが、彼が応じなかった。あとは自分で攻めるしかなく、キンタナは私をマークしているだけだった」とコメント。大会を制し、ジロ・デ・イタリア後の調整が順調であることを示した形だが「ルート・ドゥ・スッドに勝利したからといって、ツールが大きく変化するわけではない。総合優勝は自信につながるが、ツールを最高の仕上がりで臨むための準備を進めていく」と、集中している様子だ。

 一方のキンタナは総合2位。バレ峠の下りはリスクをとらなかったとし、走りの内容・結果ともに満足しているという。5月上旬のツール・ド・ロマンディ以降はコロンビアに帰国し、故郷での高地トレーニングに励んだ。その成果を確認し、晴れてツール本番へと向かう。

 このレースには、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)も参戦。エーススプリンターのブライアン・コカール(フランス)が第2、4ステージを制するなど大会を通じて活躍したチームにあって、新城は中盤から後半にかけてのメーン集団コントロールを担当した。第4ステージでは逃げにトライするなど、4月に負ったけがの影響は心配ないことをアピール。各国選手権が終わる6月28日以降にツールのメンバーがチームから発表される予定で、トマ・ヴォクレール(フランス)らすでに決定している5選手に続く選出に期待が膨らんでいる。

キンタナはルート・ドゥ・スッド総合2位。下りではリスク回避に終始した Photo: Movistar Teamキンタナはルート・ドゥ・スッド総合2位。下りではリスク回避に終始した Photo: Movistar Team
ルート・ドゥ・スッドでけがからの復活をアピールした新城幸也 (Photo:Miwa IIJIMA)ルート・ドゥ・スッドでけがからの復活をアピールした新城幸也 (Photo:Miwa IIJIMA)

個人TTでスピラクが逆転総合優勝 ツール・ド・スイス

 UCIワールドツアーではツール前の最後のレースとなるツール・ド・スイスは6月13~21日、全9ステージで争われた。

ティボ・ピノーは第4ステージで頂上ゴールを制覇。ツールでは総合3位だった昨年を超える走りを見せられるか Photo: Tour de Suisseティボ・ピノーは第4ステージで頂上ゴールを制覇。ツールでは総合3位だった昨年を超える走りを見せられるか Photo: Tour de Suisse

 スイスアルプスの急峻な山々をめぐる難易度の高さがおなじみの大会だが、今年は上級山岳が第4ステージのみで、2ステージある個人タイムトライアル(TT)が総合争いにおける重要ポイントとなった。

 その第4ステージ(237.3km)では、ティボ・ピノー(フランス、エフデジ)が頂上ゴールを制覇。後続に30秒以上の差をつけ、この時点でリーダージャージを獲得した。その後のステージでも総合上位陣に変動はないまま、最終日を迎えた。

今シーズンの目標に据えていたツール・ド・スイスを制し「キャリア最大の勝利」を喜んだシモン・スピラク ©Tim De Waele / Team Katusha今シーズンの目標に据えていたツール・ド・スイスを制し「キャリア最大の勝利」を喜んだシモン・スピラク ©Tim De Waele / Team Katusha

 最後を飾る第9ステージは、38.4kmの個人TT。リードを守りたいピノーを、TTを得意とする選手たちが猛追した。ピノーはトップから1分50秒差の14位とまとめたが、シモン・スピラク(スロベニア、チーム カチューシャ)がトップから18秒差のステージ2位に入り、50秒あった総合タイム差を逆転。土壇場で総合優勝を決めた。

 スピラクに対し総合2位のゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)が5秒差、同3位のトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)が19秒差、同4位のピノーは45秒差と接戦だった。

個人TTで争われた第1、9ステージともに勝利したトム・ドゥムラン Photo: Tour de Suisse個人TTで争われた第1、9ステージともに勝利したトム・ドゥムラン Photo: Tour de Suisse

 なお、ドゥムランは第1ステージ(5.1km)、第9ステージの個人TTをともに制している。目標としている地元オランダ・ユトレヒトでのツール第1ステージ(個人TT)での勝利に向け、視界は良好だ。そのほかでは、ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が第2ステージ(117.3km)、第5ステージ(193.1km)で2勝。マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が第3ステージ(193.2km)、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)が第6ステージ(164.6km)で勝利を飾った。スプリンターたちも上々の仕上がりを見せている。

キッテルのツール出場は6月25日以降に発表へ

 昨年まで2年連続でツール第1ステージを制してマイヨジョーヌを着用、さらにはパリ・シャンゼリゼでの最終ステージでも勝利するなど、通算8勝を挙げているマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)。今年も勝利数を積み上げることが期待されていたが、雲行きが怪しくなっている。

1月開催のツアー・ダウンアンダー「ピープルズ・チョイス・クラシック」で優勝したマルセル・キッテルだが、それ以降目立った成績を残せていない<写真・砂田弓弦>1月開催のツアー・ダウンアンダー「ピープルズ・チョイス・クラシック」で優勝したマルセル・キッテルだが、それ以降目立った成績を残せていない<写真・砂田弓弦>

 キッテルは1月のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)でシーズンインし、顔見せのクリテリウム「ピープルズ・チョイス・クラシック」で2連覇を達成したものの、続くステージレース本番では目立った結果を残せなかった。翌月のツアー・オブ・カタール(UCI2.HC)も、ステージ優勝争いに絡むことなくレースを終えた。その後、ダウンアンダーやカタールの期間中はウイルス感染していたことが判明。5月上旬のツール・ド・ヨークシャー(イギリス、UCI2.1)で復帰したものの、第1ステージ途中で大会を去っていた。

 5月下旬のワールドポートクラシック(オランダ、UCI2.1)で再復帰。6月14日に地元ドイツで行われたルンド・ウム・ケルン(UCI1.1)ではメーン集団トップの6位でフィニッシュし復調の兆しを見せていたが、同17~21日のステルZLMツール(オランダ、UCI2.1)ではまたもステージ優勝争いに加わることができないまま、トップから12分58秒差の総合65位で終えた。

 今季ここまでの低迷を受け、チームはキッテルのツール出場の可否を慎重に検討し、6月25日以降にその結論を出す見通しだ。彼が出場できるかどうかで、チームの戦術が変更となるばかりか、メンバー選考にも影響を与えることだろう。

マルセル・キッテルのツール出場は6月25日以降に決定される。写真はワールドポートクラシック出場時 © ASO/P.Balletマルセル・キッテルのツール出場は6月25日以降に決定される。写真はワールドポートクラシック出場時 © ASO/P.Ballet

 とはいえ、キッテル本人はいたって前向きだ。ステージZLMツールを終え、「春はトレーニングやレースが不足していたことから、毎日ステージ後の回復に時間がかかった」とし、6月上旬に行った高地トレーニングの疲労が抜けていなかったことも示唆。「レース勘は取り戻せているし、ツールに向けてやる気に満ちている」と自身の公式ウェブサイトにてコメントしている。今後は、6月28日のドイツ選手権ロードに出場予定で、ツールを見据えて調整を続ける構えだ。

 果たしてどのような決定がくだされるのか。将来の活躍も期待されるビッグライダーゆえに、しっかりとした判断が求められる。

今週の爆走ライダー-シモン・スピラク(スロベニア、チーム カチューシャ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

パリ~ニースでは総合3位に入ったシモン・スピラク<写真・砂田弓弦>パリ~ニースでは総合3位に入ったシモン・スピラク<写真・砂田弓弦>

 今シーズンは3月のパリ~ニース総合3位、5月のツール・ド・ロマンディ総合2位。そして、6月21日に閉幕したツール・ド・スイスで総合優勝。2010年のロマンディで繰り上げによる総合優勝は経験しているが、今回は自らの力でタイトルを手繰り寄せた。「目標としていたレースでモチベーションは高かった。キャリア最高の勝利だ」と喜びもひとしおだ。

 近年は1週間前後のステージレースでの活躍が顕著。得意分野であることを自認している。武器は山岳での安定感とTTの強さ。スイスでは山岳で再三アタックを見せ、強力ライバルたちに対しあわや逃げ切りかという見せ場も演じた。さらには、最終日のTTをステージ2位でまとめ、逆転での総合優勝につなげた。

ツール・ド・スイス総合表彰台。左から2位ゲラント・トーマス、優勝したスピラク、3位トム・ドゥムランツール・ド・スイス総合表彰台。左から2位ゲラント・トーマス、優勝したスピラク、3位トム・ドゥムラン

 これからはグランツールでの走りにも注目が集まることだろう。過去に出場したジロとツールでは、ともに満足できる結果は残せていない。そうした事情もあって、2012年の現チーム入り後、グランツールから遠ざかっていた時期もあった。久々のツール出場を果たした昨年は、苦手な暑さに体調を崩し途中リタイアとなったが、今年こそ好成績をマークしたいところだ。

 29歳となり、ライダーとして最も脂がのる時期がやってきた。ここはひとつ、グランツールでの実績を積みたいところだ。間近に迫ったツールが、そのチャンスとなるか。確固たる実力を証明できれば、トップライダーとして大きく飛躍することは間違いない。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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