U23は欧州組の小石祐馬が制す“社会人の星”中村龍太郎に初の栄冠 與那嶺恵理は圧勝劇 全日本選手権個人TT詳報

  • 一覧

 栃木県大田原市で6月21日に開催された全日本選手権個人タイムトライアル(TT)で、混戦の男子エリートを制したのは初出場の中村龍太郎(イナーメ信濃山形)だった。名だたるプロチームに所属していない24歳のアマチュアレーサーは、自身も周囲も驚く快走で全日本のタイトルをもぎ取り、“社会人の星”として表彰台の最上段に立った。女子エリートは萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)との一騎打ちを力でねじ伏せた與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が、2位以下に大差をつける圧勝劇で2年ぶりに戴冠した。 (文・平澤尚威、写真・田中苑子)

金メダルと賞状を手に、優勝を喜ぶ中村龍太郎金メダルと賞状を手に、優勝を喜ぶ中村龍太郎

「TTが得意」 今年1月に“覚醒”した中村

1周目から快調に飛ばし、リードを守り切った中村龍太郎1周目から快調に飛ばし、リードを守り切った中村龍太郎

 1周12.4kmのコースを3周回で争われた男子エリートは、有力な優勝候補が見当たらない中、ノンプロの中村が鮮烈な勝利を飾った。「信じられない。明日、朝起きた時も、まだ信じられていないかも」と語るほど、自らにとっても驚きの勝利だった。表彰式では、レースを振り返りながら時折感極まったように声を震わせたが、フォトセッションでカメラを向けられると弾けるような笑顔を見せた。

 中村は昨年からTT用の機材をそろえ始めたばかりだというが、今年1月に伊豆大島で開催された2016アジア選手権のリハーサル大会で3位に入ったことで、TTが得意であると“覚醒”したという。「自分はTTではパワーメーターを見ずに感覚で走るタイプ」と語るように、この日は中間計測で1位という情報が入っても、リードを計算に入れず最後まで踏み抜いた。

全日本選手権タイムトライアルの男子エリートは中村龍太郎(中央)が初出場で優勝を飾った。2位は増田成幸(左)、3位は西薗良太全日本選手権タイムトライアルの男子エリートは中村龍太郎(中央)が初出場で優勝を飾った。2位は増田成幸(左)、3位は西薗良太

 中村が所属するイナーメ信濃山形は、トップレベルで活躍する社会人レーサーたちが集うチーム。中村は建設機械メーカーの住友建機でパワーショベルなどの設計をしている「バリバリの理系」のサラリーマンだ。平日は自宅でローラー台に乗り、定時で上がれる日は外で練習を積む。「社会人レーサーを代表するつもりで走って、プロに一矢報いることができた」と胸を張った。

 28日の全日本選手権ロードに向けては、「去年は完走できなかった。TTの全日本チャンピオンになったので、攻撃する意識をもって臨みたい」と気持ちを新たにした。

序盤に出遅れてしまった西薗

4秒差で優勝を逃した増田成幸4秒差で優勝を逃した増田成幸

 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は中村のタイムを追いかける展開だったが、わずかに届かず2位。この結果についてはきっぱり「悔しいです」と答え、「またチャレンジして、TTのタイトルを獲りたい」と、来年以降の優勝に意欲を燃やした。

 3位の西薗良太(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)は、最初の中間計測で28位と下位に沈んでいたが、終盤にかけて巻き返した。序盤は、思っていたより遅いペースで走ってしまったという。3周目には折り返しからゴール地点までの区間でこの日の最速タイムを叩き出したが、失ったタイムは大きく「もったいないレースをしてしまった」と振り返った。

<注>記事掲載当初、西薗選手が遅れた理由に言及しましたが、編集部で正確性を確認できないため削除しました。

1周目は出遅れたものの、終盤にかけて巻き返した西薗良太1周目は出遅れたものの、終盤にかけて巻き返した西薗良太
トラック競技を得意とするスピードマン、窪木一茂は4位トラック競技を得意とするスピードマン、窪木一茂は4位
昨年3位の山本元喜は、6位に終わった昨年3位の山本元喜は、6位に終わった
地元チーム、那須ブラーゼンの佐野淳哉は5位でゴール地元チーム、那須ブラーゼンの佐野淳哉は5位でゴール

絶妙のペース配分で走り切った與那嶺

出走の準備をする與那嶺恵理出走の準備をする與那嶺恵理

 2周回で争われた女子エリートは、最初から最後までハイペースを維持した與那嶺の走りが際立った。1周目は17分23秒、2周目は17分27秒と絶妙のペース配分。2周目でペースを落とした萩原を突き離し、トータルで1分近い差をつけた。

 「タイムを気にせず、パワーメーターの数値を見ながら走っていた」という與那嶺は、「目標としていた数値は出なかったけれど、コンディションはすごくいい」と語り、翌週に控える全日本ロードへの手ごたえも良好のようだ。

2周回ともハイペースを刻んだ與那嶺恵理2周回ともハイペースを刻んだ與那嶺恵理
2位に約1分差をつける快走を披露した與那嶺恵理2位に約1分差をつける快走を披露した與那嶺恵理
2年ぶりの優勝を飾った與那嶺恵理は表彰式で涙を拭った2年ぶりの優勝を飾った與那嶺恵理は表彰式で涙を拭った
2連覇のかかる萩原麻由子はペースがつかめず與那嶺恵理に後れをとる展開2連覇のかかる萩原麻由子はペースがつかめず與那嶺恵理に後れをとる展開

 2位に終わった前年女王の萩原は、「走り始めてからペースがつかめず、集中できなかった」と振り返り、表彰式でも悔しそうな表情を見せた。「調子がいい時はペースがつかめなくても身体が動くけれど、きょうは動かなかった」と語るように、万全の状態ではなかったようだ。一方で「與那嶺選手は強かった」とライバルの走りを称え、28日の全日本ロードに向けて「1週間あるので、コンディションを整えて頑張ります」と巻き返しを誓った。

レースに向けてウォーミングアップしながら集中力を高める萩原麻由子レースに向けてウォーミングアップしながら集中力を高める萩原麻由子

U23はアジア選手権ロード王者の小石が制す

アジア選手権U23ロードレースの王者、小石祐馬が男子U23を制したアジア選手権U23ロードレースの王者、小石祐馬が男子U23を制した

 1周で争われたU23は、2月に開かれたアジア選手権・U23個人ロードレースのチャンピオン、小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム)が優勝を飾った。

 このカテゴリーでは、序盤に出走した小林海(こばやし・まりの、リモ・コンストゥルクシオネスパウリーノ サイクリングチーム)が16分37秒を記録し、終盤まで暫定首位をキープ。小林を上回る選手がなかなか現れないなか、最後から3番目に出走した小石がトップタイムを9秒更新した。最終走者の山本大喜(やまもと・まさき、鹿屋体育大学)は小石に5秒及ばず2位となった。

 優勝した小石は、橋川健監督が率いる欧州のコンチネンタルチームに所属。「普段は海外で走っていて、全日本のために帰ってきたので、価値ある1勝になった」と喜びを語った。

 男子ジュニアは大町健斗(安芸府中高校)が、男子U17は小野寺慶(ブラウブリッツェン)がそれぞれ初優勝。女子ジュニアはアジア選手権女王の梶原悠未が全日本連覇を果たした。

男子U23表彰式(左から)山本大喜、小石祐馬、小林海男子U23表彰式(左から)山本大喜、小石祐馬、小林海
男子ジュニア表彰式(左から)石上優大、大町健斗、小野康太郎男子ジュニア表彰式(左から)石上優大、大町健斗、小野康太郎
地元の大きな声援を受けた男子U17の小野寺慶(ブラウブリッツェン)地元の大きな声援を受けた男子U17の小野寺慶(ブラウブリッツェン)
田園風景のなかを疾走する梶原悠未。女子17+Jrで2年連続2度目の優勝を飾った田園風景のなかを疾走する梶原悠未。女子17+Jrで2年連続2度目の優勝を飾った

 ◇         ◇

 タイムトライアルと併催された日本パラサイクリング選手権・ロード大会では、ハンドバイククラス、パイロットが先導する視覚障害クラス、3輪のトライサイクルなどさまざまな種目に14選手・組が出場した。

ハンドバイク・クラスH3・H4の部で1位の花岡伸和ハンドバイク・クラスH3・H4の部で1位の花岡伸和
パラサイクリング男子、自転車競技クラスC3・C4・C5の部1位の藤田征樹パラサイクリング男子、自転車競技クラスC3・C4・C5の部1位の藤田征樹
自転車競技クラスC2の部に出場した藤井美穂自転車競技クラスC2の部に出場した藤井美穂
トライサイクル・クラスT2の部に出場した小川睦彦トライサイクル・クラスT2の部に出場した小川睦彦
視覚障害クラスBの部、1位の大城竜之(右)・井上善裕組視覚障害クラスBの部、1位の大城竜之(右)・井上善裕組

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

パラサイクリング 全日本ロード2015 全日本ロード2015・レース詳報

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載