title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<113>白熱するツール・ド・フランス前哨戦 フルームが“ミニ・ツール”ドーフィネを制覇

  • 一覧

 ジロ・デ・イタリアの余韻がいまだ残っている時期ではありますが、そうこうしている間にツール・ド・フランスの開幕が迫ってきました。6月に入り、“ツール前哨戦”と位置付けられる注目レースがヨーロッパ各地で開催されています。そこで、今回はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネなど、6月前半のレース結果をお届けします。あわせて、これから控えるビッグネームぞろいのレースも押さえていきます。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第6ステージ終盤にアタックを仕掛けるクリストファー・フルーム ©PresseSports/B.Paponクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第6ステージ終盤にアタックを仕掛けるクリストファー・フルーム ©PresseSports/B.Papon

尻上がりに調子を上げたフルーム

 ツール前哨戦の中でも、一番の注目度を誇るのがクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ。UCIワールドツアーであるのはもちろんのこと、ツールと同じアモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)が主催することから、例年“ミニ・ツール”と呼ばれるコースを設定する。

ツール・ド・フランス第17ステージのコース。ドーフィネの第5ステージは同じコースで争われた ©A.S.O.ツール・ド・フランス第17ステージのコース。ドーフィネの第5ステージは同じコースで争われた ©A.S.O.

 ツールでは大会中盤に差し掛かる第9ステージに、チームタイムトライアル(チームTT)が待ち受ける。それを意識して、ドーフィネでは第3ステージにチームTT(24.5km)を設定。また、第5ステージ(161km)は、ツール第17ステージと同じコースを採用。ツールの要所となるステージで、ここ数年のドーフィネの中でも特に際立って“本番”をイメージした設定となった。

 全8ステージで行われたレースは、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が総合優勝。2年ぶりのツール制覇に向け、ライバルたちに実力を見せつけることに成功した。

ドーフィネで好走したヴァンガードレンは、ツールの総合表彰台候補に名乗りをあげた ©Tim De Waele ドーフィネで好走したヴァンガードレンは、ツールの総合表彰台候補に名乗りをあげた ©Tim De Waele

 大会中盤以降、総合争いでティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)との一騎打ちとなったフルーム。BMCが第3ステージのチームTTを制してヴァンガードレンのアドバンテージを得たのに対し、フルーム率いるスカイは35秒遅れと苦戦した。第5ステージでも、先に仕掛けたフルームをヴァンガードレンがゴール前でかわして2秒先着。強烈なアタックでライバルを振り切るフルームに対し、一定のペースで追い上げるヴァンガードレンと、タイプの違う2人が熾烈な争いを展開した。

フルームは最終の第8ステージを制し、逆転での総合優勝を決めた ©ASO/X.Bourgoisフルームは最終の第8ステージを制し、逆転での総合優勝を決めた ©ASO/X.Bourgois

 フルームのエンジンがかかり始めたのは、終盤の3ステージ。第6ステージでヴァンガードレンに2秒先着すると、1級山岳頂上ゴールの第7ステージ(155km)でステージ優勝を飾った。第5ステージ終了時点で41秒だったヴァンガードレンとの総合タイム差は、18秒に縮まった。さらに最終の第8ステージ(156.5km)では、残り2.6kmでアタックを決めると、食らいついたヴァンガードレンを引き離してそのまま単独でフィニッシュ。逆転総合優勝を決めた。

 多くの有力選手が参戦した中でも、2人の走りは際立っていた。フルームは大会終了後、「まだ本調子ではない」と名言しており、ツールまでの約3週間でどこまで仕上げてくるかが楽しみだ。一方のヴァンガードレンも、ツールの総合表彰台を狙う存在として名乗りを挙げた。

ニバリは“本番”に向けた走り

 このドーフィネでは、実績豊富な選手やベテランを中心に、ツールまでの日数を逆算したうえで調整レースと位置付けた選手が多かった。これは近年顕著になっている傾向だ。なかにはバウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング)のように、「これまでツール本番で最大限の力を発揮できていなかったのは、ツール・ド・スイスで調子を上げすぎていたため」と自己分析し、スイスよりも開幕が1週早いドーフィネを選択したケースもある。

ドーフィネ第6ステージで逃げ集団を牽引し、勝利まであと一歩まで迫ったヴィンチェンツォ・ニバリ ©PresseSports/B.Paponドーフィネ第6ステージで逃げ集団を牽引し、勝利まであと一歩まで迫ったヴィンチェンツォ・ニバリ ©PresseSports/B.Papon

 ツール2連覇を目指すヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)は昨年同様、トレーニングを兼ねてドーフィネに参戦した。アレルギーを抱えていたため、ステージごとの内容に波があったが、第6ステージでは逃げ集団を積極的に牽引。最後はルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)に屈したものの、ステージ優勝まであと一歩の走りでマイヨジョーヌを獲得した。着用は1日のみにとどまったが、ツール本番に向けて調子はいいようだ。

ドーフィネ第6ステージを制し、総合3位で終えたルイ・コスタ(Photo: Lampre - Merida)ドーフィネ第6ステージを制し、総合3位で終えたルイ・コスタ(Photo: Lampre - Merida)

 コスタは、ニバリと争った第6ステージの走りが貯金となって総合3位。昨年までツール・ド・スイス3連覇の偉業を成し遂げたが、今年はツールを見据えてドーフィネに参戦。新たなアプローチでも上々の結果を残した。ニバリ、コスタとともに逃げ集団に加わったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は、調整をゆっくり進めている様子だ。山岳ステージでの優勝争いには加わることができず、早い段階で集団から遅れるシーンもあった。それでも、フルームから3分12秒差の総合9位にまとめるあたりはさすが。こちらも本番に向けて、確実に仕上げてくるはずだ。

 若い選手もツールへの期待が膨らむ好走を見せた。サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)は第8ステージで2位に入り、最終的に総合5位。新人賞のマイヨブランを獲得した。総合6位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール・ラモンディアル)は、優勝した第5ステージでダウンヒルにも非凡さを見せた。スプリンターのナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)は、第2、4ステージを制しポイント賞をゲット。ツールでもマイヨヴェールを目指す構えだ。

ルート・ドゥ・スッドにコンタドール、キンタナ、新城が参戦

 ここからは、6月後半の注目レースを押さえていきたい。いずれもツール前哨戦に位置付けられる期待のレースだ。

 6月13日から開催されているツール・ド・スイスでは、第1ステージ(5.1km個人TT)でトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)が優勝。ツール第1ステージ、地元オランダ・ユトレヒトでの13.8km個人TTでは優勝候補の1人だ。また、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)が2位、マティアス・ブランドレ(オーストリア、イアム サイクリング)が3位と続き、ツール最初のマイヨジョーヌ着用を狙う選手たちが上位に食い込んでいる。

ツールに向けて調子を上げるぺテル・サガン。ツール・ド・スイス第3ステージで優勝した(Photo: Tinkoff-Saxo)ツールに向けて調子を上げるぺテル・サガン。ツール・ド・スイス第3ステージで優勝した(Photo: Tinkoff-Saxo)

 第2ステージ(161.1km)では、ラスト1kmで抜け出したクリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、ランプレ・メリダ)が逃げ切り勝利。今大会最初のスプリントステージとなった第3ステージ(117.3km)は、ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が制している。

 総合争いは、超級山岳頂上ゴールの第5ステージ(227.3km)、38.4kmの個人TTで争われる第9ステージがポイント。その他のステージでは、サガンのほか、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)らスプリンターが主役となりそうだ。

 オランダで開催されるステルSLMツール(6月17~21日、UCI2.1)にもスプリンターが集結。ブアニ、マルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)らが火花を散らす。

アルベルト・コンタドールはピレネー山脈が舞台のルート・ドゥ・スッドに臨む(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>アルベルト・コンタドールはピレネー山脈が舞台のルート・ドゥ・スッドに臨む(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 フランスでは、ピレネー山脈が舞台のルート・ドゥ・スッド(UCI2.1)が6月18日からスタートし、全4ステージで争われる。ジロ王者のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、ライダー・ヘシェダル(カナダ、チーム キャノンデール・ガーミン)が参戦。1級山岳を3つ超える第3ステージに注目が集まる。また、チーム ヨーロッパカーからは新城幸也が参戦。リエージュ~バストーニュ~リエージュで負ったけがからの回復と好調さをアピールして、ツールのメンバー入りへ大きく前進したいところだ。

今週の爆走ライダー-アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、サウスイースト)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

41歳でキャリア最後のジロに出場したアレッサンドロ・ペタッキ(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>41歳でキャリア最後のジロに出場したアレッサンドロ・ペタッキ(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 長年にわたりスプリンターとして第一線で活躍したペタッキが、イタリアメディアのインタビューで引退を発表。19年のプロキャリアを終える。

 「今回で最後」と決めた今年のジロでは、第2ステージ5位、第6ステージ6位と、41歳となった今なお力のあるところを見せていたが、大会終盤にウイルス感染。第20ステージでリタイアを喫し、途中で大会を去った。その後も体調が戻らず、6月中に予定していた数レースの出場を見合わせていた。

 圧倒的な爆発力と勝負強さで、全盛期には“アレ・ジェット”の異名がついた。2000年代前半には、グランツールのスプリントステージを次々とモノにした。通算では、ジロ22勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ20勝、ツール6勝。山岳ステージでリタイアすることが多かったが、それでも3つのグランツールすべてでポイント賞を獲得。スプリンター最高の栄誉であるミラノ~サンレモでも2005年に優勝している。

ジロ・デ・イタリアで通算22勝を挙げたアレッサンドロ・ペタッキ。2004年にはステージ9勝という偉業を達成<写真・砂田弓弦>ジロ・デ・イタリアで通算22勝を挙げたアレッサンドロ・ペタッキ。2004年にはステージ9勝という偉業を達成<写真・砂田弓弦>

 禁止薬物サルブタモールの陽性反応による出場停止が明けた2008年秋以降は、レーススタイルを変化。彼の代名詞でもあったトレインを組まず、巧みな位置取りで勝利することや、体重を絞ってグルペットで山岳ステージをクリアできるよう工夫を凝らすなど、ベテランらしい知的な走りを見せるようにもなった。かつてはアドレナリン全開でフィニッシュ前後のトラブルが多かったが、近年は後進の育成にも着手。若い選手の飛躍の後押しにも尽力する。

 今後しばらくは、家族との時間を大切にしたいという。「いつかやりたいと思っていた」テニスにも挑戦するつもりなのだとか。それでも、サウスイースト加入時に首脳陣から「ゆくゆくはチームスタッフに」との打診を受けていることもあり、そう遠くないうちにレース現場に戻ってくるかもしれない。

 2013年に一度は引退を表明しながら数日で撤回したが、今度は“完全な”引退となる様子だ。一時代を築いた名スプリンターの競技人生を、心から称えようではないか。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載