2012年MTB世界選手権大会 オーストリアミナーが2度目のDH世界王者に輝く 清水一輝は70位 女子は新星シャールが制覇、末政実緒は20位

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ダウンヒルのスタートゲートには一枚板を彫り抜いたボードが設置され、オーストリアのMTBフィールドらしい雰囲気が漂うダウンヒルのスタートゲートには一枚板を彫り抜いたボードが設置され、オーストリアのMTBフィールドらしい雰囲気が漂う

 今年のMTB世界選手権は変則的なスケジュールとなっており、10キロ程離れた二つの街を会場とする。8月31日~9月2日にかけてはレオガングで4X(フォークロス)とダウンヒルが、翌週の9月6日~9日はサールフェルデンに場所を移してトライアル、XCO、XCE(クロスカントリー・エリミネーター:勝ち抜きトーナメント形式のショートクロスカントリー)が開催される。

 まずはレオガングで行われた4Xとダウンヒルの模様をお届けする。

 4Xとは全体が見渡せる程度の広さ場所に起伏やロックセクション、バーム、ジャンプ等を盛り込んだ下り基調のコースを設置し、フォークロスと読む通り、スタートゲートから4人並んでスタートして一斉にコースを走り先着上位2名が勝ち上がる形式のレースだ。

マッドコンディションで開催された4Xとそれを見守る観衆マッドコンディションで開催された4Xとそれを見守る観衆

 コースの造成などに多額のコストや時間が必要である事も一因して、今年からワールドカップの種目からは外れてしまった4Xだが、新たに4X PRO TOURとして年間5戦(2013年度は年間7戦が予定されている)のレースが行われている。4Xのトップライダー達は健在で今回の世界選手権を迎えた。

4Xスタートゲート。ゲートが倒れると一斉に第1コーナーを目指す4Xスタートゲート。ゲートが倒れると一斉に第1コーナーを目指す
4Xでは第1コーナーで勝負が決まるケースが多いので特に激しい攻防が見られ、それが4Xの醍醐味の一つとなっている4Xでは第1コーナーで勝負が決まるケースが多いので特に激しい攻防が見られ、それが4Xの醍醐味の一つとなっている
4Xのスタートは瞬発力が全てだ。ゲートが開くタイミングに神経を研ぎ澄ます4Xのスタートは瞬発力が全てだ。ゲートが開くタイミングに神経を研ぎ澄ます
4Xの第1コーナー。ここで勝負の大勢が決まってしまう事が多い4Xの第1コーナー。ここで勝負の大勢が決まってしまう事が多い

 決勝まで勝ち上がったのはデビット・グラフ、トーマス・スラヴィック、マイケル・メフューラ、ロジャー・リンダーネクトの4名。レースは優勝候補筆頭であったスラヴィックとグラフがスタート直後に絡んで転倒し、その転倒をうまく回避したリンダーネクトが自身初となる4X世界王者の座を獲得。女子はアネケ・ベルテンが危なげなく優勝し、2年連続の世界チャンピオンとなった。

4Xのジャンプを飛ぶミカル・プロコップ。5位〜8位を決めるスモールファイナルで1着となり5位となった4Xのジャンプを飛ぶミカル・プロコップ。5位〜8位を決めるスモールファイナルで1着となり5位となった
4Xコース中盤のロックセクション。後ろでは放牧された牛がカウベルを鳴らす4Xコース中盤のロックセクション。後ろでは放牧された牛がカウベルを鳴らす
4X優勝のロジャー・リンダーネクト。表彰台に向かう通路で多くのファンに囲まれ、サイン攻めにあっていた4X優勝のロジャー・リンダーネクト。表彰台に向かう通路で多くのファンに囲まれ、サイン攻めにあっていた
4X女子表彰式。末政実緒とも親好が深いアネケ・ベルテンは2年連続の世界王者となった4X女子表彰式。末政実緒とも親好が深いアネケ・ベルテンは2年連続の世界王者となった
4X男子表彰式。3位となったトーマス・スラヴィックは決勝戦での転倒で肩を痛めて腕を吊っている4X男子表彰式。3位となったトーマス・スラヴィックは決勝戦での転倒で肩を痛めて腕を吊っている

 一方のダウンヒルは連日の雨でマッドコンディションでの試走が続き、コースが酷く荒れてしまう中で決勝の朝を迎えた。しかし朝まで降った雨が上がり、女子エリートクラスが開始される頃にはオープンなセクションはドライコンディションに変化。森の中のシングルトラックは泥が重たくなり、タイヤセレクトを含めて難しい状況となっていった。

練習初日、ドライコンディションでの試走をする末政実緒。コース常設の大きな木製バームはスピードをまったく殺す事無く、直角に曲がる事が可能だ。この後、天候は崩れて決勝の朝まで雨が降り続いた練習初日、ドライコンディションでの試走をする末政実緒。コース常設の大きな木製バームはスピードをまったく殺す事無く、直角に曲がる事が可能だ。この後、天候は崩れて決勝の朝まで雨が降り続いた
ゴンドラの列に並ぶ清水一輝と末政実緒。後ろに見えているのはゴールゲートだゴンドラの列に並ぶ清水一輝と末政実緒。後ろに見えているのはゴールゲートだ
雨の中、コース上部を試走する末政実緒。練習日から熱心な観客がライダーを見守る雨の中、コース上部を試走する末政実緒。練習日から熱心な観客がライダーを見守る
試走から攻めた走りを披露する清水一輝。左に見える木製のバームはこのフィールドに常設のセクションで、いくつかは今回のレースでも使われた。一般開放のコースとしてはレベルの高いレイアウトとなっており、上級者でも十分に満足できるようなセクションを多数設置しているのはオーストリアのMTBフィールドの特徴だ試走から攻めた走りを披露する清水一輝。左に見える木製のバームはこのフィールドに常設のセクションで、いくつかは今回のレースでも使われた。一般開放のコースとしてはレベルの高いレイアウトとなっており、上級者でも十分に満足できるようなセクションを多数設置しているのはオーストリアのMTBフィールドの特徴だ
泥のシングルトラックを試走する優勝したグレッグ・ミナー。どちらかと言えばドライコンディションを好むミナーにとって、決勝の天候が晴れに変化したのは幸運だった泥のシングルトラックを試走する優勝したグレッグ・ミナー。どちらかと言えばドライコンディションを好むミナーにとって、決勝の天候が晴れに変化したのは幸運だった
雨でも熱心なファンがコースの上部まで登ってくるあたり、さすが世界選手権と言えるだろう。古いホイールやハンドルバーは「鳴り物」の定番で、ライダーが通過する度にガンガン叩いて応援するのだ雨でも熱心なファンがコースの上部まで登ってくるあたり、さすが世界選手権と言えるだろう。古いホイールやハンドルバーは「鳴り物」の定番で、ライダーが通過する度にガンガン叩いて応援するのだ
決勝当日、最後の試走に取り組む末政実緒。朝の段階ではまだ路面は重く、マッドタイヤをチョイスする必要があるほどだった決勝当日、最後の試走に取り組む末政実緒。朝の段階ではまだ路面は重く、マッドタイヤをチョイスする必要があるほどだった
コースの警備、資材の搬送、緊急時の対応にはオーストリア軍隊が当たり、素晴らしい仕事をこなしていた。雨が降った直後には大量のウッドチップを搬入。プレスセンターへのルート上にある水溜りはすべて解消し、アクセスはとても快適になったコースの警備、資材の搬送、緊急時の対応にはオーストリア軍隊が当たり、素晴らしい仕事をこなしていた。雨が降った直後には大量のウッドチップを搬入。プレスセンターへのルート上にある水溜りはすべて解消し、アクセスはとても快適になった
決勝前、男子エリートの試走が終わる頃には太陽が顔を出し、路面は急速に回復し始めた。コース中盤に用意されたビッグジャンプを飛ぶサム・ヒル決勝前、男子エリートの試走が終わる頃には太陽が顔を出し、路面は急速に回復し始めた。コース中盤に用意されたビッグジャンプを飛ぶサム・ヒル
暗い森の中を飛んでいくグレッグ・ミナー。このセクションで赤いスプレーの岩を飛び越えるラインを使ったのはアーロン・グゥインとブルック・マクドナルド、そしてミナーだけだった暗い森の中を飛んでいくグレッグ・ミナー。このセクションで赤いスプレーの岩を飛び越えるラインを使ったのはアーロン・グゥインとブルック・マクドナルド、そしてミナーだけだった

 多くの観客が見守る中、最後から2番目に登場した南アフリカのグレッグ・ミナーが、暫定トップだったジー・アサートンのタイムを更新。ワールドカップ今季4勝と絶好調のアーロン・グゥインをゴールで待つ事になった。ところが最終走者のグゥインは序盤でブレーキにトラブルが発生し、ペースダウン。グレッグの2003年以来となる2度目の世界王者が決定した。2位にジー・アサートン、3位にはスティーブ・スミスが入った。昨年度のチャンピオン、ダニー・ハートは怪我のため今回は欠場、日本から出場した清水一輝はトップから+24.902の70位でレースを終えた。

男子決勝の頃には完全に快晴となった。この大きなジャンプは今回の目玉セクションで、多くの観客が集まった。しかし実際に大きい方を飛んだのは、15名に満たないだろう。ライダーはベン・リード男子決勝の頃には完全に快晴となった。この大きなジャンプは今回の目玉セクションで、多くの観客が集まった。しかし実際に大きい方を飛んだのは、15名に満たないだろう。ライダーはベン・リード
優勝したグレッグ・ミナーの決勝ラン。多くの観客が待つ最終シングルに進入していく優勝したグレッグ・ミナーの決勝ラン。多くの観客が待つ最終シングルに進入していく

 女子はフランスの新星、22歳のモルガン・シャールが素晴らしい走りを見せ、昨年度のチャンピオンであるエミリー・ラゴーを抑えて優勝。2位ラゴー、3位にマノン・カーペンター。日本の末政実緒は20位だった。

女子エリートクラスを制したモルガン・シャール(フランス) 。練習から際立った走りを披露していた女子エリートクラスを制したモルガン・シャール(フランス) 。練習から際立った走りを披露していた
ヴァルディゼールでのワールドカップで初優勝し、勢いそのままに乗り込んできたブルック・マクドナルド。「雨や泥は大好きだし調子もいい!」と話していたが、決勝ではコースはドライ方向に変化していった。8位で世界選を終えたヴァルディゼールでのワールドカップで初優勝し、勢いそのままに乗り込んできたブルック・マクドナルド。「雨や泥は大好きだし調子もいい!」と話していたが、決勝ではコースはドライ方向に変化していった。8位で世界選を終えた
ダウンヒル男子表彰式。理由は不明だが今回の表彰式にはシャンパンが用意されておらず、一部のカメラマンからは「世界選なのにちょっと寂しいね!」という声も聞かれたダウンヒル男子表彰式。理由は不明だが今回の表彰式にはシャンパンが用意されておらず、一部のカメラマンからは「世界選なのにちょっと寂しいね!」という声も聞かれた
世界中に多くのファンを持つダウンヒル界の重鎮、スティーブ・ピートには20回目となる世界選手権への参加を記念して「20」と書かれたアルカンシェルジャージが贈呈された世界中に多くのファンを持つダウンヒル界の重鎮、スティーブ・ピートには20回目となる世界選手権への参加を記念して「20」と書かれたアルカンシェルジャージが贈呈された
ダウンヒル日本チーム。左からメカニックを勤めた藤田知高、清水一輝選手、末政実緒選手、スタッフ・マッサーの田崎綾ダウンヒル日本チーム。左からメカニックを勤めた藤田知高、清水一輝選手、末政実緒選手、スタッフ・マッサーの田崎綾
ダウンヒルライダーの末政実緒はチームマネージャーも兼任。毎日夕方に行われるチームマネージャーズミーティングに参加して細かいルールやコースの変更、注意点等を確認していたダウンヒルライダーの末政実緒はチームマネージャーも兼任。毎日夕方に行われるチームマネージャーズミーティングに参加して細かいルールやコースの変更、注意点等を確認していた
プレスセンターのすぐ隣にあるホテルに日本チームは滞在していた。MTBレースはチームリレーを除くと個人戦なので通常のワールドカップでは国籍よりも個人の成績が注目されるが、世界選手権は国別対抗戦の色合いが濃い。予選、決勝では全てのライダーが各国のナショナルジャージを着て登場する事もあって、会場はオリンピックに似たような雰囲気に包まれるプレスセンターのすぐ隣にあるホテルに日本チームは滞在していた。MTBレースはチームリレーを除くと個人戦なので通常のワールドカップでは国籍よりも個人の成績が注目されるが、世界選手権は国別対抗戦の色合いが濃い。予選、決勝では全てのライダーが各国のナショナルジャージを着て登場する事もあって、会場はオリンピックに似たような雰囲気に包まれる

4X男子エリート決勝
1 ロジャー・リンダーネクト(スイス)
2 マイケル・メフューラ(チェコ)
3 トーマス・スラヴィック(チェコ)
4 デビット・グラフ(スイス)

4X女子エリート決勝
1 アネケ・ベルテン(オランダ)
2 ロマナ・ラボウンコヴァ(チェコ)
3 セリーヌ・グロス(フランス)
4 アニタ・モルシク(オーストリア)

ダウンヒル男子エリート結果
1 グレッグ・ミナー(南アフリカ) 3:21.790(54.116km/h)
2 ジー・アサートン(イギリス) 3:22.371
3 スティーブ・スミス(カナダ) 3:23.004
4 マイケル・ハンナ(オーストラリア) 3:23.930
5 サムエル・ヒル(オーストラリア) 3:25.196
6 ダミアン・スパニョーロ(フランス) 3:25.649
7 フローレン・ペイエ(フランス) 3:26.017
8 ブルック・マクドナルド(ニュージーランド) 3:26.651
9 マーカス・ペコル(オーストリア) 3:27.564
10 マルセロ・グティエレス(コロンビア) 3:27.854
70 清水一輝(日本) 3:46.692

ダウンヒル女子エリート結果
1 モルガン・シャール(フランス) 3:50.654(45.684km/h)
2 エミリー・ラゴー(フランス) 3:51.853
3 マノン・カーペンター(イギリス) 3:52.144
20 末政実緒(日本) 4:16.731

(文・写真 中川裕之)

中川裕之中川裕之(なかがわ ひろゆき)
’06年、大きな病気を乗り越える課程で写真を撮り始める。
’11年からは活動の場を海外に広げ、山の中を走る自転車レースを追いかけている。
MTBのコアな部分にフォーカスした雑誌SLmの発行人。
http://www.slmedia.jp/slm-mtbphotojournal/

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