初トライアスロンはハワイで!苦闘のゴールの先に見た奥深さ 宮澤崇史さんの「ホノルルトライアスロン」挑戦記

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 ハワイ・オアフ島で5月17日に開催された「ホノルルトライアスロン2015」に、元プロロードレーサーの宮澤崇史さんが出場しました。自転車では世界のトップクラスに上り詰めた宮澤さんですが、トライアスロンは今回が初めて。舞台は、日本から毎年数百人が参加する人気のレースです。全く新たな世界へ飛び込んだ宮澤さんが、現地の様子や大会の盛り上がり、そして自身のトライアスロン初挑戦の奮闘ぶりをレポートします。

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レース前のトレーニングで訪れたMakapu'u lookout 。ラビット・アイランドが見える絶景ポイントレース前のトレーニングで訪れたMakapu'u lookout 。ラビット・アイランドが見える絶景ポイント

憧れの地・ハワイでトライアスロン初挑戦

 私がトライアスロンに出ることを決意したのは、トライアスリートとの出会いからだった。

 日本とハワイに拠点を持つ実業家で、世界中を旅しながら世界で戦う日本人シェフを取材していた本田直之氏、そしてハワイアンをはじめとしたレストラン業界のスペシャリストである稲本健一氏。このお二人と、3年前にフィレンツェで出会った。食の話、トライアスロンの話、ハワイの事を聞くうちに、このホノルルトライアスロンという大会にぜひ参加してみたいと思ったのだ。

 ホノルルトライアスロンは、日本のトライアスロン界のパイオニアである白戸太朗さんが、7年前からレース運営をしている人気大会だ。気候が温暖で、時間がゆっくりと流れるハワイでトライアスロンを楽しむことは、トライアスリートの憧れであり、「これからトライアスロンを始めたい人でも無理なくレースに臨める」と白戸さんは言う。

子供たちのトライアスロンも開催!子供たちのトライアスロンも開催!
自分のペースでゴールを目指す自分のペースでゴールを目指す

 エントリーは前日まで申し込めるので、急に参加したいという場合でも出場でき、多忙なアスリートにも好評だ。そしてレースは制限時間がなく、自分のペースでゴールを目指せる。その“ゆるさ”がハワイの空気に合っているのかもしれない。

 今回ハワイに来て初めてのライドは、ホノルルからカイルアまでの90km。丘を越え、海沿いを走った。降り注ぐ太陽の日差しは強いが、蒸し暑さはない。そしてどこまでも続く海。全てが気持ちよくて、どこまでも、どこまでも走り続けたくなる。こんな気持ちで自転車に乗った事があっただろうか。ハワイはそんな初心に帰れる場所だった。

ホノルルの日常はスポーツと共にある。部屋の中でやるのが勿体なく感じてしまうホノルルの日常はスポーツと共にある。部屋の中でやるのが勿体なく感じてしまう
初日トレーニングの折り返し地点、商店には5種類のコーヒーや、サンドイッチなどが揃う初日トレーニングの折り返し地点、商店には5種類のコーヒーや、サンドイッチなどが揃う
トレーニングの後はアサイーボール。火照った体に冷たいアサイーが染み渡る。酸味と甘みが絶妙な一品トレーニングの後はアサイーボール。火照った体に冷たいアサイーが染み渡る。酸味と甘みが絶妙な一品
ホノルルの日常、海で夕方の涼しい時間に泳ぐ人も多いホノルルの日常、海で夕方の涼しい時間に泳ぐ人も多い

準備万端、いざスタート

地元のトライアスロンチームがレースに向けて最後のインターバルトレーニング地元のトライアスロンチームがレースに向けて最後のインターバルトレーニング

 私が参戦したのは「オリンピックディスタンス」というカテゴリー。文字通りオリンピックで採用される、スイム1.5km・バイク40km・ラン10kmという距離構成だ。

 バイク=自転車は問題ないとして、一番の課題、それは「スイム」だ。海では陸と違って見渡せる高さが低いため、海の中で迷子になってしまうこともあるという。トライアスロンのスペシャリストである白戸太朗さんには、目標とする方向を確認しながら泳ぐことが大切だと教えていただいた。陸にある「建物」や「鉄塔」などを見ながら、時には平泳ぎをしながら確認するのだという。

 大会に向けて、プールトレーニングと競技最後のランは、プロトライアスリートとしてアジアチャンピオンにも輝いたことのある山本淳一コーチに指導していただいた。レース直前には大会スポンサーであるRERAKU(リラク)のマッサージを受けて、万全の体制でレースへと臨んだ。

初のホノルルトライアスロン、ゼッケンは19初のホノルルトライアスロン、ゼッケンは19
RERAKUのストレッチとマッサージで最後のコンディショニングRERAKUのストレッチとマッサージで最後のコンディショニング
親子でトライアスロン参戦! トライアスロンは家族で同じ感動を味わえるスポーツだね親子でトライアスロン参戦! トライアスロンは家族で同じ感動を味わえるスポーツだね

 トライアスロンはレース会場へ行く時に必要な物が多い。ゴーグル、キャップ、ヘルメット、シューズ、ラン用ゼッケン、水、タオルなど、1つ1つレースをシミュレーションしながら、どの順番で使うか考えながら並べていく。それをリュックに詰め終えたら、翌朝3:50の起床に向けて、22時にはベッドへ。しかしなぜか夜中に起きてしまい、運動会前の子供のように、ほとんど眠れない状態でレース当日を迎えた。

レース前のブリーフィング、レースを無事走り切るために大事な時間。私も知らないことが多く、聞いててよかった!レース前のブリーフィング、レースを無事走り切るために大事な時間。私も知らないことが多く、聞いててよかった!
前日に全てのトランジッションをイメージして準備万端! ラン用のベルトゼッケンがあるなんて、現地に着くまで知らなかった前日に全てのトランジッションをイメージして準備万端! ラン用のベルトゼッケンがあるなんて、現地に着くまで知らなかった

 朝5時前とあって、まだ日も上がらない暗い中での移動。会場に着くと、トランジットエリアでスイム〜バイク〜ランのレーストランジットのシミュレーションをし、昨日準備したアイテムを1つ1つ確認しながらバイクラックに置いて、ウォーミングアップへ向かう。海はレースが始まるのを待っているかのように穏やかだが、ビーチでは今か今かとレースに向けて気持ちの高まる自分がいる。AM5:40にレースのスタートが切られ、海に向かって全力で走り始めた。

トライアスロンはスイムのポジションが大事。スタートは全力で走り出すトライアスロンはスイムのポジションが大事。スタートは全力で走り出す

順調に思えたスイムとバイク

 海に入ると大きく深呼吸をし、周りのペースに惑わされないように自分のペースで泳ぎ始める。コーチに教えてもらった事を1つ1つ思い出しながら泳ぐ。前半は蛇行してしまうが、平泳ぎで目標を確認しながら折り返し地点を目指した。後半はようやく自分の泳ぎのリズムに乗り、後ろから抜かれた選手を追いかけながら、なんとかスイムを終えた。

実はスイムが終わった時、すでに脚が攣っていた実はスイムが終わった時、すでに脚が攣っていた (photo by Finisherpix.com)
バイクはハンドルに付けたパワーメーターを見ながら走ったバイクはハンドルに付けたパワーメーターを見ながら走った (photo by Finisherpix.com)

 トランジットへ着くとようやく自分の得意パートのバイクへ。40kmのコースは平坦で、風との勝負になる。SRMパワーメーターを見ながら1kmかけてゆっくりと自分のペースに上げていき、270W〜300Wを目標に維持する。前半の高速区間は気持ち良く脚が回って、前をどんどん追い抜いていく。

 息が荒れないギリギリを狙いながら我慢の走りを続けられるのも、前を走っている選手が見えてくるから。何とかあそこまで!と自分を奮い立たせて走り続ける。後半の向かい風パートは日が上がってきて、時間とともに向かい風が強くなるが、なんとか55分台でバイクパートを終わることができた。

バイクは3種目の中で一番長い戦いバイクは3種目の中で一番長い戦い
残り10km! ホノルルの街を背に後半の向かい風区間は踏ん張りどころ残り10km! ホノルルの街を背に後半の向かい風区間は踏ん張りどころ (photo by Finisherpix.com)

ランに落とし穴、もがいてゴールへ

 しかし、ここで身体に思いもよらない異変が起こっていることに気付く。私は自転車を速く走らせるスキルとスピードの出し方はわかっているが、トレーニング不足で筋肉が悲鳴を上げている事に、走っている時に全く気が付いていなかったのだ。ランを走り始めようとした瞬間から臀筋が痛く、すでに攣りそうで立っている事さえ辛い。

 スプリントディスタンスという短い距離を走っている女性にも抜かれるようなペースで、なんとかランを走り出すものの、どう走っていいかわからない。そこから58分という長い長い旅が始まったのだ。

ラン残り1km地点は、参加者全員が辛い場所。海岸からの追い風を受けてラストスパートラン残り1km地点は、参加者全員が辛い場所。海岸からの追い風を受けてラストスパート
後半は脚の痛みと戦いながら無事フィニッシュラインを通過!後半は脚の痛みと戦いながら無事フィニッシュラインを通過! (photo by Finisherpix.com)

 何度も歩いては走り出すことを繰り返し、止まりたくて、心が折れそうで半泣き状態で走っている時に、多くの人に声援をいただいた。同じCVSTOSのジャージを着ている選手がいると、大きな声で「頑張れ〜!」と声を掛け合う事でなんとか前に前に進む事ができた。

 残り1kmはまだかまだかと心の中で繰り返しながら最後のストレートへ。多くの観客とゴールした選手に迎えられながら最高のゴールを迎えた。

 白戸太朗さんが迎えてくれたとき、なんとかこの初トライアスロンをゴールできたと心から安堵した。そして次から次へとゴールを迎える選手と、お互いの健闘を讃え合い、レース中のハプニングの話で盛り上がる。仲間がいるからできるスポーツでもあるんだと実感した瞬間だった。

仲間が待っていてくれるからこそ頑張れる競技でもある仲間が待っていてくれるからこそ頑張れる競技でもある
レース後はジュリ先生のリカバリーヨガ! ヨガで疲れを癒すレース後はジュリ先生のリカバリーヨガ! ヨガで疲れを癒す

生きる上での戦いがここにある 来年は…

 今回初めてトライアスロンを走り、このスポーツの奥深さを実感した。私たちが生きているこの地球上の、切っても切り離せない3つの要素である「海」と戦い、「風」と戦い、「大地」と戦い、そして自分自身と戦う。そんな奥深さが、また次のレースへの挑戦する活力になっているんだと思った。

 「来年はアイアンマンに挑戦したい!」

 レース後、そう自分自身に目標を課していた。

 もうトライアスリートの道を歩き始めてしまったようだ。

無事走りきった。疲れよりも、やりきった想いでイッパイだ無事走りきった。疲れよりも、やりきった想いでイッパイだ

(写真提供 宮澤崇史、アスロニア)

宮澤崇史宮澤崇史(みやざわ・たかし)

1978年2月27日生まれ、長野県出身。元プロロードレーサー。18歳よりフランス、イタリアを拠点に活動。23歳で生体肝移植で母に肝臓の一部を提供するが、その後レースに復帰し、全日本チャンピオン、アジアチャンピオン、2008北京五輪日本代表など日本を代表する選手として活躍。2012年、34歳で世界のトップカテゴリーのチーム「サクソバンク・ティンコフバンク(現ティンコフ・サクソ)」に加入し、2シーズンを走った。2014年引退。オフィシャルサイト「bravo

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