Cyclist的エンタメ観戦記「事実だけにつらく、苦しい」 ドーピング描いた映画『レーサー/光と影』試写会レポート

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 女性ロードレーサーによるドーピングの実話を描いた映画『レーサー/光と影』のDVDが6月3日に発売される。それを記念して、作品を鑑賞し、元プロ選手のトークショーを聞いて共感や理解を深める試写会イベントが5月29日、東京・渋谷で開かれた。「タワーレコード×自転車女子部スペシャルトークショー&特別試写会」と題された催しで、トークショーに出演した元プロロードレーサーの田代恭崇さんは「ドーピングをめぐる人間模様がよくとらえられている。主人公のどうにもならない気持ちが伝わってきて、最後まで非常につらく、苦しかった」とコメント。参加した女性ライダーたちは、ドーピングの実態を目の当たりにしてショックを隠せない様子だったが、「主人公の心や体の動きに共感した」という同性ならではの感想も聞かれた。

映画「RACER/光と影」の試写会で、トークショーに出演し「主人公のどうにもならない気持ちが伝わってきた」と語った田代恭崇さん(右) =5月29日、東京都渋谷区映画「RACER/光と影」の試写会で、トークショーに出演し「主人公のどうにもならない気持ちが伝わってきた」と語った田代恭崇さん(右) =5月29日、東京都渋谷区

プレッシャーに追い詰められての転落劇

 主人公のモデルは、かつてロードレース界の女王としてその名を轟かせたジュヌビエーブ・ジーンソン。カナダで開催されたロード・サイクリング・チャンピオンシップで17歳にして女子ジュニア部門で優勝。その後世界各国の大会で数々の好成績を納め、2000年のシドニーオリンピックにはカナダ代表として出場している。本作では、その天才アスリートの栄光の裏に隠された壮絶なドーピングの実態に迫る。女子プロロードレーサーが周囲からの過度なプレッシャーに追い詰められ、葛藤にさいなまれながらもドーピングに手を染めていく転落劇を描き出している。

「自転車競技は非常に厳しいスポーツ。ドーピングが横行していた時代もあった」と語った田代恭崇さん「自転車競技は非常に厳しいスポーツ。ドーピングが横行していた時代もあった」と語った田代恭崇さん

 「自転車競技は非常に厳しいスポーツのひとつ。ドーピングが横行していた時代もあったが、いまはだいぶクリーンになってきた」と田代さん。その背景にあるのは、検査体制の強化だ。以前は、検査が行われるのは大会当日のみだったが、現在は「競技外検査」として3ヶ月に1度、検査官が突然選手の元を訪れる、いわゆる”抜き打ち検査”が行われるようになり、効果を上げているという。

 そのため、選手は常に居場所を管理されることになるが、結果的には「チームが監督することで、選手がドーピングの魔の手から守られるようになった」と田代さんは指摘する。ただ、ドーピングは完全になくなっていないのが現状だとし、「検査とドーピングはいたちごっこ。検査をすり抜けるための技術も向上していく。その構図はこれからも変わらないだろう」と、険しく悲しい表情を見せた。

 また田代さんは、ドーピング検査について、トップ選手になるほどその内容が厳しくなり、優勝者はゴール後に検査官が張り付き、トラックの中へ連行され尿を排泄する瞬間までチェックされるという具体的な事例も説明。大会後は脱水症になっている場合も多く、「尿が出るまでに3時間解放されなかったこともあった」という話に、会場からは驚きの声が漏れた。

 さらに、一般に市販されている風邪薬にもドーピングとみなされる禁止薬物が含まれていることを例に挙げ、規制がいかに厳しいものであるかを説明。最後に、作品を見た感想として「最後まで苦しかった」と打ち明け、「つらいけれど、自分が主人公になったつもりで観てほしい」と締めくくった。

”自転車女子”ならではの共感も

 この日の試写会には、およそ640人の女性が参加しているFacebook上のコニュニティー「自転車女子部」から、特別枠で15人の女性ライダーが招待された。主催したハピネットの高嶋浩子さんによると、募集開始後間もなく定員に達し、その後もキャンセル待ちが出るなど予想以上の反響だったという。

田代さんのトークをきっかけに、参加者からはさまざまな意見や感想が聞かれた田代さんのトークをきっかけに、参加者からはさまざまな意見や感想が聞かれた

 鑑賞後、女性ライダーからは「つらく、重たい内容」「咀嚼できない」といった率直な感想が聞かれた一方、「主人公の心や体の様子がよく表現されていて、心に響いた」と、同性として共感する見方も。また「ドーピングは本人の意思だけでなく、さまざまな状況が絡んでいるんだと知った」という視点や、「チームが選手を守る、といった田代さんの話がよくわかった。一般の人だけでなく、アスリートをはじめ、スポンサーなどアスリートを支える人たちにも見てほしい」という声もあった。

 違った視点からは、「上りのダンシング、集団走行のコーナリングが参考になった」「見応えある走行シーン!」「最後の激坂でのラストスパートは手に汗握った」など、レース観戦後のような感想も。それもそのはず、レースシーンは実際に女子の世界トップクラスのレース中に撮影したもので、本番さながらの撮影を敢行し、大規模な空撮も多用した臨場感溢れる迫力の映像に仕上がっている。

代役なしでレースシーン 迫真の演技

DVD「レーサー/光と影」のジャケットDVD「レーサー/光と影」のジャケット

 渾身の演技を魅せた女優は、期待の新人ロランス・ルブーフ。数ヶ月に及ぶ過酷なトレーニングを経て、代役なしで全てのレースシーンをこなしたという彼女の迫真の演技が、女性ライダーたちの心に響いたようだ。

 高嶋さんは、「ドーピングという言葉を知っていても、その実態はあまり知られていない。また女性のロードレースがあるということもあまり知られていない。女性サイクリストはもちろん、自転車競技を愛する多くの方々に観ていただきたい」と話している。

(レポート Kyoko)

『レーサー/光と影』DVD

6月3日発売(4,700円・税別)、レンタル開始

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