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最終ステージも狙う「ランプレ列車」の秘策ダンシングに表れるコンタドールの好調ぶり 宮澤崇史さんのジロ現地レポート<2>

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 ジロ・デ・イタリア終盤戦を視察・取材している元プロロードレーサー、宮澤崇史さんによる現地レポート。今回は、個人総合争いで2位に大差をつけているアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)の好調ぶりと、スプリント・ステージに強く、最終ステージの制覇も狙うランプレ・メリダのトレインの強さを分析します。

総合リーダーの証、マリアローザ(ピンクのジャージ)を着用し、急坂をチームメートに守られながらダンシングで上るアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)総合リーダーの証、マリアローザ(ピンクのジャージ)を着用し、急坂をチームメートに守られながらダンシングで上るアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)

宮澤現地レポート<1>コンタドールを中心に奮い立つティンコフ・サクソ

◇      ◇

軽快なダンシングで驚異的パワー

 アルベルトコンタドールは5月29日の第19ステージ終了時点において、個人総合成績で2位のファビオ・アールに4分37秒の差をつけている。残る山岳ステージは1ステージとなった。

第16ステージの上り坂をダンシングで攻めるアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)。このステージではモルティローロ峠で圧巻のヒルクライムを見せた (写真・砂田弓弦)第16ステージの上り坂をダンシングで攻めるアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)。このステージではモルティローロ峠で圧巻のヒルクライムを見せた (写真・砂田弓弦)

 コンタドールはシッティングよりもダンシングを多用する選手の一人で、ペースが上がっても、イーブンペースでも、リズムを確認するかのようにダンシングをする。体調が悪い時はお尻の位置が低くなり、ハンドルにもたれかかるフォームになるコンタドールだが、このジロではそういった不調に見える走りは全く見えない。

 まるで空を飛んでいきそうなくらい軽快なダンシング。他の選手が見せる、ペダルを一生懸命踏みにいっている走りとは真逆の、ペダルに乗りにいっているようなコンタドールのダンシングを見れば、その好調さは一目瞭然だ。勾配の厳しい山岳ではまるでダンスを踊るように、勾配の緩やかな山岳では重いギアをまるで平地のような速さで加速していく。

 私も選手時代はダンシングを多用する一人だった。登りの得意な選手は「リズムに入れると(シッティングで)我慢ができる」と言うが、ダンシングが得意な選手はダンシングをしながら息を落ち着ける事もできるのだ。

 コンタドールはこのジロ・デ・イタリアの山岳で、「タイムトライアルのペースで淡々と走っている」と答えた。コンタドールの伝説といえば、タイムトライアルトレーニングの時に50分間で平均450Wという驚異的なパワーを出したという。その時の体重はなんと63kg。コンタドールの上りの自信は、そんなところからきているのだろう。

選手の特性を生かしたランプレのスプリント

第13ステージで万全のスプリントを決め、グランツール初勝利を挙げたサーシャ・モドロ(ランプレ・メリダ)。後ろでチームメートのリケーゼが手を挙げた (写真・砂田弓弦)第13ステージで万全のスプリントを決め、グランツール初勝利を挙げたサーシャ・モドロ(ランプレ・メリダ)。後ろでチームメートのリケーゼが手を挙げた (写真・砂田弓弦)

 今大会4勝をマークし、そのうち2つ(第13ステージ17ステージ)はトレインを組んだゴールスプリントで勝利しているランプレ・メリダ。彼らの走りは、ゴールまでの残りの距離から、自分たちがスプリントへ入っていく「タイミング」を徹底して測っていると思っていた。

 それは、各チームが集団の先頭で主導権争いをしている時には集団の20番手あたりで控え、残り1kmを切ってから3人の列車を整えるのだ。TVでみていると「まだこんなに選手が残っていたの?」と思うほど。

 エーススプリンターのサーシャ・モドロ(イタリア)に秘訣を聞いた。

崇史「今大会どのチームよりもスプリントに入るタイミングが良く、モドロらしい勝ち方ができていると思う。うまく噛み合っているようですね」

モドロ「今大会の前半ステージはうまくかみ合わず苦しんだが、自分たちにとって何がベストかをマックス(=マクシミリアーノ・リケーゼ)とフェラーリ(=ロベルト・フェラーリ)と話しあって勝つことができた。今シーズンずっと試行錯誤しながら走っていたのが実を結んだね」

崇史「ランプレ列車はスピードのある2選手がアシストということで、トレインを組んで前へ前へとスプリントに入っていくチームとは違いますよね」

モドロ「自分たちは常にいい位置をキープしながら、最後の局面で一気に前に出て主導権を取りにいく走りが武器。選手の特性を生かした走りは他のチームとは違うね。彼らのスピードは他のチームにはないもの。大きな武器だよ」

3人の強力トレインでスプリント・ステージを獲りにいくランプレ・メリダ。(左から)マクシミリアーノ・リケーゼ、サーシャ・モドロ、ロベルト・フェラーリ3人の強力トレインでスプリント・ステージを獲りにいくランプレ・メリダ。(左から)マクシミリアーノ・リケーゼ、サーシャ・モドロ、ロベルト・フェラーリ

 有力スプリンターには、チーム列車で主導権を握り、最高速に持ち込んでスプリントにはいる力技のスプリンターに対し、1人でも集団の中を列車の後ろにつきながら走る(かつての名スプリンター)ロビー・マキュアンのようなタイプもいる。ランプレの走りはどちらかというと単独スプリンター型で、今後スプリンターを抱えるチームの新しい武器になる走りなのかもしれない。

 私も1人でスプリントをする事が多かったが、ゴール前にチームメイトがもう1人いるだけでかなり力をセーブできるし、集団の中でポジションを取りやすい。

 ランプレ型トレインのデメリットは、集団の中は常にポジション争いが激しいので、チームメート同士が離れてしまう可能性が高い事だ。狙い通りに全てがうまく運ぶのは、針の穴に糸を通すような働きがあっての事なのだろう。それを実現できるのは、経験に裏打ちされた「集団の中で“待つ”勇気」と「前にでるタイミング」を両立させているのだと感じた。

 今後もこの3人のトレインから目が離せない。

宮澤崇史宮澤崇史(みやざわ・たかし)

1978年2月27日生まれ、長野県出身。元プロロードレーサー。18歳よりフランス、イタリアを拠点に活動。23歳で生体肝移植で母に肝臓の一部を提供するが、その後レースに復帰し、全日本チャンピオン、アジアチャンピオン、2008北京五輪日本代表など日本を代表する選手として活躍。2012年、34歳で世界のトップカテゴリーのチーム「サクソバンク・ティンコフバンク(現ティンコフ・サクソ)」に加入し、2シーズンを走った。2014年引退。オフィシャルサイト「bravo

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