title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<110>マリアローザ獲得へ攻撃貫くコンタドール ジロ・デ・イタリアは第3週へ

  • 一覧

 熱戦が繰り広げられているジロ・デ・イタリアは、いよいよ第3週へ突入します。これまでに長距離個人TTや難関山岳ステージを経て、各チーム・選手の形勢がはっきりしてきました。今回は、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)の一騎打ちの様相となっているマリアローザ争い、総合表彰台を懸けた上位陣の動きなどを押さえていきます。

第2週を終え、休息日にチームメートらとトレーニングするアルベルト・コンタドール(左)<写真・砂田弓弦>第2週を終え、休息日にチームメートらとトレーニングするアルベルト・コンタドール(左)<写真・砂田弓弦>

ポートがリタイアを決意 スカイのエースはケニッグへ

不運なパンクや落車があったリッチー・ポートは第2週限りでのリタイアが決まった<写真・砂田弓弦>不運なパンクや落車があったリッチー・ポートは第2週限りでのリタイアが決まった<写真・砂田弓弦>

 総合優勝の有力候補と目されていたリッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ)が、第13ステージ終盤の落車により左半身の数カ所を負傷。第3週の1日目にあたる第16ステージには出走せず、大会を去ることがチームから発表された。

 この落車では、左膝と左腰を強打。さらに股関節痛を発症し、期待された第14ステージの個人タイムトライアル(59.4km)では、トップから4分20秒差の55位と失速した。続く第15ステージでもトップから27分4秒差のグルペットでフィニッシュし、総合成績を狙うことは事実上不可能となっていた。

リッチー・ポートに代わって、チーム スカイのエースとして総合上位を狙うレオポルド・ケニッグ<写真・砂田弓弦>リッチー・ポートに代わって、チーム スカイのエースとして総合上位を狙うレオポルド・ケニッグ<写真・砂田弓弦>

 これにより、チーム スカイはレオポルド・ケニッグ(チェコ)を総合エースに立てる“Bプラン”で戦っていく。ケニッグは第15ステージで7位と好走し、総合5位に浮上。第13ステージでは、ポートと同様にトップから約2分遅れてフィニッシュしている点が悔やまれるが、残るステージで実力を発揮してほしい。

 ケニッグは昨年まで所属したチーム ネットアップ・エンデューラ(現ボーラ・アルゴン18)で、2013年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合9位、2014年ツール・ド・フランス総合7位と、グランツールの戦績は十分。

 ポートは初のグランツール制覇に向け、大型キャンピングカーの導入など新たな取り組みが話題になったが、第10ステージでサイモン・クラーク(オリカ・グリーンエッジ)から前輪の提供を受けた際のペナルティや、リタイアの決定打となった落車など、不運が重なり失意の大会離脱となった。今後はけがの回復に努め、ツール・ド・フランスの出場メンバー入りを目指す。

マリアローザを守る近道は「アールへの攻撃」

 総合首位の証、マリアローザを今大会すでに10日間着用しているコンタドール。落車による負傷などピンチもあったが、第3週突入を前に7年ぶりの総合優勝へ視界は良好だ。

総合首位で最終週を迎えるアルベルト・コンタドール。攻撃的な姿勢でマリアローザを守る<写真・砂田弓弦>総合首位で最終週を迎えるアルベルト・コンタドール。攻撃的な姿勢でマリアローザを守る<写真・砂田弓弦>

 TTに強いコンタドールが帰ってきた。第14ステージの個人TTでは、59.4kmを激走してステージ3位。長距離TTにライバルたちが苦戦する中、後半にかけてペースを上げていく走りが奏功した。前日に落車で失ったマリアローザを取り戻したばかりか、ライバルのアールに対し“安全圏”ともいえる2分28秒の総合タイム差を築いた。

 第3週に向け、「まだ総合優勝が決定したわけではない」と気を引き締める。そして、「アールへの攻撃こそがマリアローザを守り抜く一番の近道」とも述べる。その証拠に、第15ステージでは中間スプリントで2位通過、フィニッシュでは3位としっかりボーナスタイムを獲得。わずかながらライバルとのタイム差を広げ、小さくガッツポーズをする場面もあった。

 不安要素を挙げるとすれば、今大会に限らずたびたび見舞われる落車トラブルだろう。第6ステージで負った左肩の脱臼はほぼ回復しているようだが、難易度の高い山岳ステージが待ち受ける最後の1週間は、平地や下りで慎重な走りが求められる。アシスト陣が全力でコンタドールを守ることだろう。

アールとランダの微妙な関係

第1週はキレのあるアタックを見せていたファビオ・アール(右)。(第9ステージ)<写真・砂田弓弦>第1週はキレのあるアタックを見せていたファビオ・アール(右)。(第9ステージ)<写真・砂田弓弦>

 コンタドールの最大のライバルであるアールは、第1週こそアタックを仕掛けるなど勢いがあったが、第2週に入り積極性が鳴りを潜めた印象だ。コンタドールのアタックへの反応が遅れ、ライバルの攻撃をギリギリ凌ぐ場面もあった。第13ステージでは念願のマリアローザを獲得したが、翌日の個人TTでは苦戦。コンタドールとの総合タイム差2分35秒差を追う形で第3週へと入る。

 2度目の休息日に「まだ希望は失っていないし、コンタドールに対し挑戦したことを今後につなげたい」とメディアに語ったアール。前向きな気持ちとは裏腹に、第3週最初のヤマ場となる第16ステージに向けては「走ってみないと分からない」とも。ここへきて、第15ステージを制し総合4位につけるチームメートのミケル・ランダ(スペイン)との関係性を危惧する声も出てきている。

第15ステージを制したミケル・ランダ。ファビオ・アールをアシストしながら、自らも結果を残した<写真・砂田弓弦>第15ステージを制したミケル・ランダ。ファビオ・アールをアシストしながら、自らも結果を残した<写真・砂田弓弦>

 第15ステージに限れば「ランダの方がアールより強かった」とコンタドールがコメントするなど、両者の力が逆転している可能性もある。チームはアールでの総合優勝を視野に戦い続ける構えだが、ランダも総合表彰台を目指して攻撃的な走りをするはずだ。

 リスクとなるのは、ランダがアタックした際にコンタドールを引き連れてしまうケース。ここでアールが反応できないと、マリアローザ争いの行方に大きく影響を及ぼすことになる。

 アシストを含め、今大会ナンバーワンの戦力を誇るアスタナ プロチーム。それゆえにチーム戦術の難しさが生じているが、残るステージでどのようにチームワークを保っていくかにも注目したい。

総合上位争いも熾烈に

 マリアローザを争うコンタドールとアールが一歩抜けた存在ではあるが、総合表彰台の残る1枠を目指す戦いや、総合トップ10入りを狙う選手たちの動きも熾烈になってきた。

1級山岳頂上ゴールの第15ステージで総合3位を守ったアンドレイ・アマドール<写真・砂田弓弦>1級山岳頂上ゴールの第15ステージで総合3位を守ったアンドレイ・アマドール<写真・砂田弓弦>

 総合3位を争うのはアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター チーム)とランダで、その差は27秒。アマドールから総合2位のアールまでは1分30秒以上の開きがあり、山岳ステージでのレース内容などを見ても、両者のターゲットは総合3位となりそうだ。また、ランダと総合5位のケニッグとの差は1分50秒。

 グランツール初の総合トップ10を狙うのは、アマドールやランダのほか、現在総合6位につけるユーリ・トロフィモフ(ロシア、チーム カチューシャ)、総合9位ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター チーム)、総合10位アレクサンドル・ジェニエス(フランス、エフデジ)。いずれもこの2週間安定した走りを続けており、残る1週間にも期待が持てそうだ。後続の追い上げが厳しくなってくるが、さらなる総合ジャンプアップを狙う積極的な走りに期待しよう。

ジロ第16~21ステージの展望

第3週の初日、5つの山岳が登場する第16ステージ ©RCS SPORT第3週の初日、5つの山岳が登場する第16ステージ ©RCS SPORT

・第16ステージ(5月26日、ピンツォーロ~アプリーカ、174km、難易度5)
スタートから2級山岳の上りが始まるなど、5つのカテゴリー山岳が登場。4つ目のモルティローロ峠は平均10.5%、最大22%の勾配。この上りで絞られたメンバーでフィニッシュへ向かう。

・第17ステージ(5月27日、ティラーノ~ルガーノ、134km、難易度1)
序盤に3級山岳を越えるが、その後はほぼフラット。ラスト約7kmでスイスへ入国。スプリントフィニッシュが濃厚で、大会に残っている有力スプリンターによる激戦が予想される。

・第18ステージ(5月28日、メリーデ~ヴェルバーニア、170km、難易度3)
ラスト50kmを切って迎えるは、1級山岳モンテ・オローニョ。登坂距離10.4km、平均勾配9.0%、最大勾配13%の急坂だ。その後も短いアップダウンが続く。最後はゴールに向かって約20kmのダウンヒルだ。

第19ステージは後半に3つの1級山岳が連なる最難関ステージ ©RCS SPORT第19ステージは後半に3つの1級山岳が連なる最難関ステージ ©RCS SPORT

・第19ステージ(5月29日、グラヴェッローナ・トーチェ~チェルビナイア、236km、難易度5)
終盤3つの1級山岳が選手たちをふるいにかける。いずれも最大勾配は12~13%の急坂だ。レース距離も長いことから、選手たちの消耗度もピークに達する。総合順位の変動も考えられる。

・第20ステージ(5月30日、サン・ヴァンサン~セストリエーレ、196km、難易度4)
総合争いの行方は、このステージで大方決まる。残り約48kmから上りが始まるコッレ・デッレ・フィネストレ(標高2178m)が今大会のチーマコッピ(最高標高地点)。約8kmの未舗装区間のある、平均勾配9.2%の上り。最後は3級山岳頂上のセストリエーレにフィニッシュする。

・第21ステージ(5月31日、トリノ~ミラノ、185km、難易度1)
トリノをスタートした一行は、しばしリラックスムードで走行した後、ミラノ市街地の周回コースへと入り、レースを本格スタートさせる。5.4kmのサーキットを7周し、今大会最後の勝者と、総合優勝者を確定させる。

今週の爆走ライダー-ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 5月23日のツアー・オブ・ジャパン第6ステージ(伊豆)。イラン勢2チームの総合成績をかけた争いをかいくぐり、逃げ切り勝利を挙げた。上りに強く、パンチ力も十分とあって、得意とするコースでプロ2勝目を獲得。来日は4度目、甘いマスクも相まって、日本のファンの間でもすっかり人気者だ。

ツアー・オブ・ジャパン第6ステージ(伊豆)を独走で制したヴァレリオ・コンティ<写真・福光俊介>ツアー・オブ・ジャパン第6ステージ(伊豆)を独走で制したヴァレリオ・コンティ<写真・福光俊介>

 その実力もさることながら、今回のTOJではジャーナリストや大会関係者の間で彼の人間性も高く評価された。ファン対応の真摯さや周囲への気配りなど、22歳とは思えない大人の振る舞いを見せた。

実力だけでなく、人柄でも高い評価をうけるヴァレリオ・コンティ<写真・福光俊介>実力だけでなく、人柄でも高い評価をうけるヴァレリオ・コンティ<写真・福光俊介>

 1度会った人物を忘れないといった一面も、彼が好かれる理由なのだろう。昨年のTOJで出会った筆者のことも覚えてくれて、会えばあいさつする仲だ。今大会ではあまり話ができなかったが、昨年10月のジャパンカップで来日した際、直前にプロ初勝利を挙げたことを筆者のもとへ報告しに来てくれたことは、大切な思い出になっている。

 今シーズンは、6月のツール・ド・スロベニア(UCI2.1)と、8月からのブエルタへ・ア・エスパーニャへの出場が決定しているという。「日本のレースで活躍した選手は世界へ飛躍する」というまことしやかなジンクスにあやかるならば、ブエルタのステージ勝利を期待していいかもしれない。その暁には、タイトルを引っ提げて再来日してもらおうではないか。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ジロ・デ・イタリア2015 ジロ2015・レース情報 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載