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若手に求められるチャレンジ精神攻撃的な走りができなかった日本勢 ツアー・オブ・ジャパンで浮かんだ現実と課題

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 5月24日の第7ステージ(東京)で閉幕した日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」では、昨年と同様に外国人選手が全ステージを制し、また総合上位を独占。日本人選手は、総合成績では増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の16位が最上位に終わったほか、ステージ成績でも黒枝咲哉(日本ナショナルチーム)が第7ステージで5位となったのが最高だった。海外勢との差を見せつけられる結果となった日本勢の戦いを、選手のコメントなどからいま一度振り返り、今後の課題を探った。 (文・写真 福光俊介)

最終日・東京ステージ終了後の表彰式で、笑顔で手を振る外国人選手たち。大会全日程を通して日本人選手が表彰台に立つことはなかった最終日・東京ステージ終了後の表彰式で、笑顔で手を振る外国人選手たち。大会全日程を通して日本人選手が表彰台に立つことはなかった

地力の差が浮き彫りとなった富士山

 今大会は序盤ステージから海外勢が上位を占めた。日本人選手は逃げを試みる場面こそあったが、決定的な動きには至らない。第3ステージ(美濃)で土井雪広(チームUKYO)が6位でゴールしたものの、それはエーススプリンターの引き上げが上手くいかず、やむなく土井自身が先頭集団内でのポジション維持に専念した結果だった。

第4ステージ(富士山)を走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。このステージも、個人総合成績でも日本人最上位となった第4ステージ(富士山)を走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。このステージも、個人総合成績でも日本人最上位となった

 そして第5ステージ(富士山)で、日本人選手の苦戦ぶりが明白となる。昨年同様にイラン勢がレースを席巻し、日本勢は中盤までに後れをとってしまい、最上位は増田の22位にとどまった。コースレコードでステージ優勝したラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム)からは4分0秒もの差をつけられてしまった。

記者会見で「完全に地力の差が出てしまった」と悔しさをあらわにした増田成幸記者会見で「完全に地力の差が出てしまった」と悔しさをあらわにした増田成幸

 レース後の記者会見で増田は、「実力差がはっきりと出る富士山で、完全に地力の差が出てしまった」と悔しさを隠さなかった。けがからの復帰直後で昨年とほぼ同タイムをマークした自身の走りには満足していると話しながらも、「自分が日本勢トップとなっているあたりで、日本人選手のレベルを表してしまっている」と窮状を嘆いた。

戦術で立ち向かう必要性

 最終ステージを終えた24日にも、「昨年以上に海外勢との力の差を見せつけられてしまった」と振り返った増田。だが、個の力での勝負となりやすい富士山を除けば、太刀打ちすることは十分に可能だとも感じているという。逃げに選手を送り込むことや、勝負どころでのアタック、スプリントでのフィニッシュなど、「展開を見ながらレースを動かすことで勝機を見出せるはずだ」と訴える。

第6ステージ(伊豆)で積極果敢な走りを見せ、ラスト1周まで逃げグループに残った寺崎武郎(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)第6ステージ(伊豆)で積極果敢な走りを見せ、ラスト1周まで逃げグループに残った寺崎武郎(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)

 一度はプロを引退し、1年のブランクを経て今季、トップシーンに復帰した西薗良太(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)も同様の考えだ。西薗は、第6ステージ(伊豆)で逃げ集団に乗ってラスト1周まで粘ったチームメートの寺崎武郎を例に挙げ、「イラン勢は身体能力が高いが、レース運びが雑な面がある。寺崎は彼らの力をうまく利用しながら逃げ続けた」と評価した。

 自身の戦いぶりについては「体力面よりも、頭の部分(レース勘)がまだついていけていない」と評するが、日本勢がフィジカルに勝る海外勢に対抗するには戦術面の強化が不可欠だと強調した。

失敗覚悟でチャレンジをする勇気

 オリンピックや世界選手権のロード種目出場枠を得るためには、UCI(国際自転車競技連合)のポイントが必要だ。日本の場合、最も高いカテゴリーであるUCIワールドツアーを走れる選手がほとんどいないため、UCIアジアツアーのポイントによる出場枠確保を目指している。現在、国内のUCIコンチネンタルチームの多くがUCIポイント獲得にこだわって戦う姿勢を見せている。

 TOJは、UCIアジアツアーの中でポイント配分の多い1クラスに分類され、総合上位12選手とステージ上位6選手にUCIポイントが付与される。ステージ優勝なら16ポイント、総合優勝なら80ポイントを獲得できたが、地の利を生かして活躍することはできなかった。

 土井は第2ステージ(いなべ)22位、第3ステージ(美濃)6位、第4ステージ(南信州)17位と、それぞれ日本人最上位でフィニッシュし、3日連続でレース後の記者会見に日本人選手代表として臨んだ。その中で「正直、ネガティブなところしか見えてこない。もうちょっと攻撃的に走らないといけない」などと、日本人選手に積極性を求めるコメントを残している。

第7ステージ(東京)のレース前、報道陣のインタビューに応じる土井雪広(チームUKYO)。日本人選手の走りについて「攻めていけなかったことは反省しないといけない」と評した第7ステージ(東京)のレース前、報道陣のインタビューに応じる土井雪広(チームUKYO)。日本人選手の走りについて「攻めていけなかったことは反省しないといけない」と評した

 最終ステージを前に、改めてその真意を聞いた。土井は「僕自身は本調子と言えず、上位を争う位置で走れるレベルにはなかった」と前置きしたうえで、「大会を通して(日本勢が)アグレッシブに攻めていけなかったことは素直に反省しないといけない」と語った。

 また、全7ステージを通じて日本勢が獲得したUCIポイントが計8ポイントにとどまったことに触れ、「なぜUCIポイントを獲得できなかったのかを考えるときに、若い選手は自分がどのようにレースを走っていたか見つめ直すべきだと思う。集団についていくのが精一杯で、やがて遅れていく選手が多いが、何もせずに後方へ下がっていくのと、どんな形であれチャレンジして結果的に遅れていくのとでは内容がまったく異なる」と強調する。

 さらに、「それがたとえむだ足だったとしても、自分から動いてみる勇気は持たないといけない。失敗から学べることはたくさんあるのだから」と続けた。

プロトンの中で走る土井雪広(チームUKYO)。ブエルタ・ア・エスパーニャなど世界のトップレベルで走った経験が豊富で、今大会でも常に日本人上位でフィニッシュするなど、さまざまなレース展開に対応できるクレバーな走りが光ったプロトンの中で走る土井雪広(チームUKYO)。ブエルタ・ア・エスパーニャなど世界のトップレベルで走った経験が豊富で、今大会でも常に日本人上位でフィニッシュするなど、さまざまなレース展開に対応できるクレバーな走りが光った

 その点は、増田も同じように感じ、「もっといきのいい若手が出てきてもいいと思う」と述べた。

 土井も増田も、第6ステージで逃げた寺崎を高く評価する。レース直後には、日本ナショナルチームの浅田顕監督がブリヂストンアンカーの寺崎に駆け寄り、称えるシーンも見られた。イランの2チームが総合優勝争いでにらみ合う隙を突いて攻撃を繰り出した寺崎の走りこそが、いまの日本勢に求められているのだろう。

 順位だけでなく、レース内容でも日本勢と海外勢の差が大きかったことは否めない。若い選手に求められるのは、自ら飛び出してレースを動かしてみようという気概にあるようだ。最終日のゴールに到達することが目的ではなく、一度や二度のアタックにも満足せず、毎ステージ仕掛けてみせるくらいのチャレンジ精神が求められている。課題は鮮明になった。

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TOJ2015・サイドレポート ツアー・オブ・ジャパン2015

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