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ツアー・オブ・ジャパン2015 第5ステージ(富士山)イラン勢の独壇場 エマミがコースレコードで優勝、総合首位はポルセイェディゴラコール

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 ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)は5月22日、静岡県小山町で第5ステージ(富士山ステージ)が行われ、ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム)がコースレコードとなる38分27秒で優勝した。昨年の大会で新記録をマークしたミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズ ペトロケミカルチーム)も、自らの記録を更新する38分49秒でステージ2位となり、個人総合首位のグリーンジャージを獲得した。

コースレコードとなる38分27秒で富士山ステージを制したラヒーム・エマミコースレコードとなる38分27秒で富士山ステージを制したラヒーム・エマミ

晴れやかにセレモニーラン レース本番はサバイバルの様相

アクチュアルスタートを前に13.2kmのセレモニーランを行う選手たちアクチュアルスタートを前に13.2kmのセレモニーランを行う選手たち

 この日のステージは、2013年6月に世界文化遺産に登録された富士山が舞台。ふじあざみラインを駆け上って5合目を目指すTOJ名物の激坂ヒルクライムで、距離11.4km、標高差約1200m、最大勾配は22%に達する。グランツールの山岳ステージ顔負けの難コースだけに、毎年、個人総合争いの行方を大きく左右する。

 午前8時45分、選手たちは小山町生涯学習センターから13.2kmのセレモニーランへと出発した。今年から始まったセレモニーランは、地元と大会との結びつきをいっそう強める狙いもあり、選手たちは沿道の声援に応えながらスタート地点へと向かった。厳しいレース本番を控えながら、チームの垣根を越えて情報交換に努めるなど、明るい姿も見られた。

富士山の麓に位置する小山町立きたごうこども園の5歳児クラスが5合目で選手たちを出迎えた富士山の麓に位置する小山町立きたごうこども園の5歳児クラスが5合目で選手たちを出迎えた
個人総合首位でこのステージを迎えたアダム・フェラン。ロバート・ティケーロ監督がグリーンジャージにナンバーカードを貼り付ける個人総合首位でこのステージを迎えたアダム・フェラン。ロバート・ティケーロ監督がグリーンジャージにナンバーカードを貼り付ける

 ふじあざみライン入口に到着後は、チームごとにスタート準備やウォーミングアップを行った。特にこのステージは距離が短く、それでいてハードな上り坂でタイム差がつきやすいことから、好成績を目指す選手たちはスタート前にローラー台や試走で心拍数を上げておくなど入念な準備が必要だ。

 レースは午前10時にアクチュアル(正式)スタートが切られた。ファーストアタックは、第2ステージを制しリーダージャージを2日間着用したラファー・シティウィ(チュニジア、スカイダイヴドバイ プロサイクリングチーム)。約2kmを1人で逃げたが、メーン集団に捕えられた。代わってドラパック プロフェッショナルサイクリングがコントロールを始めたが、それもわずかの時間。やがて、アルヴィン・モアゼミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム)が集団の先頭に立つと、イラン勢が主導権を握った。残り7km地点で先頭集団は15人にまで減り、早くもサバイバルレースの様相となった。

ピシュガマン勢によるポルセイェディゴラコール包囲網

最終コーナーでは子供たちからの元気な声援が送られた最終コーナーでは子供たちからの元気な声援が送られた

 先頭を行く15人のうち、ピシュガマン ジャイアントチームが4人、タブリーズ ペトロケミカルチームが3人と、イランの2チームが多数の選手を送り込むことに成功。彼らはペースを緩めることなく、残り5kmを迎える頃には4選手が先行を開始。そのままステージ優勝をかけた死闘へと突入した。

 先頭に立った4人は、エマミ、アミール・ザルガリ、ホセイン・アスカリのピシュガマン勢と、タブリーズのポルセイェディゴラコール。イラン人選手同士の争いであると同時に、ピシュガマン3選手によるポルセイェディゴラコール包囲網が形成された。主にエマミが先頭に立ち、ポルセイェディゴラコールに前を譲らない構えだ。

 終盤に差し掛かり、ザルガリが脱落。さらには、アスカリも苦しそうな様子だ。遅れかけては何とか追いついて粘り続けたが、残り3kmを切ってエマミとポルセイェディゴラコールのペースについていくことができなくなってしまった。いよいよレースの行方はイラン2チームのエース対決となった。

記録更新したエマミ「とても美しく、素晴らしいレース」

ステージ優勝を飾ったラヒーム・エマミステージ優勝を飾ったラヒーム・エマミ

 そして、勝負が決したのは残り1km手前。エマミがアタックすると、ポルセイェディゴラコールは対応できなかった。6秒差でラスト1kmの看板を通過。快調に上るエマミはポルセイェディゴラコールの追撃を許さず、最終コーナーを抜けて勝利を確信。両手人差し指を天高く掲げ、ステージ優勝を決めた。

 エマミのタイムは、昨年ポルセイェディゴラコールがマークしたコースレコードを24秒更新する38分27秒。急坂にもかかわらず、アベレージスピード17.4km/hに達した。エマミは2011年に薬物違反により2年間の資格停止を受け、2013年に復帰した後はUCI(国際自転車競技連合)アジアツアーを中心に転戦。ステージレースで総合上位の常連として知られている。今回のTOJでは、集団コントロールや終盤のアタックなどチームに貢献する走りを見せてきたが、ついに富士山で実力者が本領を発揮した。

TOJ初参戦で富士山ステージ優勝を飾ったエマミTOJ初参戦で富士山ステージ優勝を飾ったエマミ
ステージ3位のホセイン・アスカリも39分4秒の好タイムステージ3位のホセイン・アスカリも39分4秒の好タイム

 エマミはレース後の記者会見で、「初出場のTOJで良い結果を残したいと思い走ってきた。チームとしても個人としても好リザルトを目指している。富士山は大会前から評判を耳にしていて、絶対に走りたいコースだった。とても美しく、素晴らしいレースで勝利できたことが本当にうれしい」と話した。

 さらに、イラン勢の強さについて問われると、「イラン人選手の多くがタブリーズ(イラン北西部の標高1350mの都市)を拠点としている。少し上れば、富士山ステージと同等の標高のコースがあり、日頃からそこでトレーニングをしている。だから、高地に対する適応力の高い選手がそろっている」と説明した。

個人総合首位に立ったポルセイェディゴラコール。地元の子供たちから選ばれた「TOJキッズ」と記念撮影個人総合首位に立ったポルセイェディゴラコール。地元の子供たちから選ばれた「TOJキッズ」と記念撮影

 ステージ2位のポルセイェディゴラコールも、昨年自身が記録したコースレコードを2秒更新する好走。惜しくも勝利は逃したが、個人総合で首位に立つことに成功した。第2ステージ(いなべ)で上位集団でフィニッシュした貯金が生かされた格好だ。

 レース後の記者会見では、「大事なステージと位置づけていた。TOJはシーズンにおける最重要レースの1つと考え、グリーンジャージ獲得を意識して走っていたので、この結果には満足している」と笑顔で述べた。リーダーチームとして戦う第6ステージは、エマミらピシュガマン勢の攻撃が予想されるが、「エマミは同じタブリーズでトレーニングを積む、私にとって一番の友人。ただ、レースとなれば話は別。ピシュガマンだけではなく、どのチームも強いのでとにかくジャージを守れるようがんばりたい」と語った。

昨年自身が打ち立てたコースレコードを2秒更新しステージ2位となったミルサマ・ポルセイェディゴラコール昨年自身が打ち立てたコースレコードを2秒更新しステージ2位となったミルサマ・ポルセイェディゴラコール
ポイント賞のブルージャージはフランシスコ・マンセボが守ったポイント賞のブルージャージはフランシスコ・マンセボが守った
総合10位につけるイリア・コシェヴォイが新人賞のホワイトジャージを獲得総合10位につけるイリア・コシェヴォイが新人賞のホワイトジャージを獲得

地力の差が浮き彫りとなった日本勢

 レースを掌握したイラン勢に対し、日本人選手は増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の22位が最高。トップから4分差をつけられてしまった。

日本勢最高は22位の増田成幸日本勢最高は22位の増田成幸

 3月のツール・ド・台湾で負傷し、その後の調整に苦労したなかでベストは尽くしたという増田。昨年とほぼ同じタイムで走ったことには満足しているとしながらも、「ステージ22位の自分が日本勢トップとしてこの場(記者会見)にいることは、日本人選手のレベルを表してしまっている」と嘆いた。特に、富士山は実力差がはっきりするステージだといい、「今日は完全に地力の差が出てしまった」と結果を悔やんだ。海外勢のレベルが年々上がっていく一方で、日本人選手が苦戦する窮状に「何としても底上げをしていきたい」と口にする。

 残る2ステージに向けては、UCIポイントの獲得にこだわりたいとし、「日本人選手でもやれるんだというところを見せたいし、それができるはずだと思っている。絶対に魅せる走りをしたい」と語気を強めた。

西薗良太(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)はステージ31位西薗良太(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)はステージ31位
「単純に力の差が結果として出てしまった」と悔やんだ増田成幸「単純に力の差が結果として出てしまった」と悔やんだ増田成幸

 ※ソニー「アクションカム」で撮影 

 23日の第6ステージ(伊豆)は、日本サイクルスポーツセンター内の特設周回コースを使用し、122kmの距離で争われる。1周12.2kmの間に6つの上り坂が待ち受け、厳しいアップダウンの連続となる難コースだ。総合首位のポルセイェディゴラコールに対し、続くエマミは19秒差。さらに50秒差にピシュガマン勢2人が控えており、総合優勝をめぐる攻防がヒートアップすることは確実。ここまで苦戦続きの日本勢が一矢報いることができるか、奮起にも期待したい。

文・写真 福光俊介

第5ステージ(富士山)結果
1 ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) 38分27秒
2 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズ ペトロケミカルチーム) +22秒
3 ホセイン・アスカリ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +37秒
4 ラミン・メフラバニアザル(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +1分8秒
5 アミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +1分10秒
6 ベンジャミン・ディボール(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) +1分43秒
7 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイヴ ドバイ プロサイクリング) +1分45秒
8 ガーデル・ミズバニ・イラナグ(イラン、タブリーズ ペトロケミカルチーム) +1分48秒
9 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +1分53秒
10 ディディエール・チャパッロ(コロンビア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +1分59秒

個人総合
1 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズ ペトロケミカルチーム) 10時間33分32秒
2 ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +19秒
3 ホセイン・アスカリ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +50秒
4 アミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) +50秒
5 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイヴ ドバイ プロサイクリング) +1分6秒
6 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +1分26秒
7 ディディエール・チャパッロ(コロンビア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +1分41秒
8 ダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +1分53秒
9 ガーデル・ミズバニ・イラナグ(イラン、タブリーズ ペトロケミカルチーム) +2分15秒
10 イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ) 2分17秒

ポイント賞
1 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイヴ ドバイ プロサイクリング) 33pts
2 ルカ・ピベルニク(スロベニア、ランプレ・メリダ) 33pts
3 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック プロフェッショナル) 33pts

山岳賞
1 ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマン ジャイアントチーム) 25pts
2 マッティア・ポッツォ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) 13pts
3 ディラン・ガードルストーン(オーストラリア、ドラパック プロフェッショナル) 12pts

新人賞
1 イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ) 10時間35分49秒
2 トーマス・デイヴィソン(ニュージーランド、アヴァンティ レーシングチーム) +32秒
3 ダニエル・ホワイトハウス(イギリス、チームUKYO) +1分12秒

チーム総合
1 ピシュガマン ジャイアントチーム 31時間42分26秒
2 タブリーズ ペトロケミカルチーム +4分41秒
3 アヴァンティ レーシングチーム +6分30秒

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