イタリアのスポーツバイクを生む職人たち<後編>塗装のプロフェッショナルが生むコルナゴ「C60」 伊「パマペイント」の鮮やかな職人技

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<前編>コルナゴ本社&自宅工房でみたブランドの真髄

 コルナゴ創業60周年となる2014年に登場したフラッグシップモデル「C60」は、ブランド創設者エルネスト・コルナゴ氏の邸宅下の工房でフレームが形作られ、塗装へと移る。その工程を見学しようと、同ブランドの塗装を請け負ってきたイタリア・カシーナの「パマペイント」社を「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」一行と共に訪れた。(レポート 柄沢亜希)

コルナゴ「C60」を塗装する「パマペイント」で働くスタッフ=イタリア、カシーナ(写真・柄沢亜希)コルナゴ「C60」を塗装する「パマペイント」で働くスタッフ=イタリア、カシーナ(写真・柄沢亜希)

およそ30の塗装工程を分担作業

パマペイントの内観パマペイントの内観

 C60に塗装を施すパマペイントは、エルネスト・コルナゴ氏の自宅工房から南東へ300kmほど離れた場所にある。大きな空間に機材が並ぶ工場で、10人のスタッフが働いている。

 機械の音が鳴り響き、塗料の匂いが漂う様子はまさに工場だが、仕事の内容は高度な技術を要する手作業が多く、社長のマッシモ・アウコーネ氏(Massimo Aucone)をはじめスタッフ全員が“職人”でもある。工場というより「大きな工房」と言った方がふさわしい。「60本のフレームがあれば、すべて同じだろうと異なるデザインだろうと、同じ作業」。アウコーネ氏が職人然と語った言葉が意味するのは、作業の核心部分がクリエイティブな手作業にあるということだ。

パマペイントのマッシモ・アウコーネ社長は15歳から塗装を始めたパマペイントのマッシモ・アウコーネ社長は15歳から塗装を始めた
無地のフレームが鮮やかに彩られていく様子を目の前で見学した無地のフレームが鮮やかに彩られていく様子を目の前で見学した

 いまではカーボンバイクを専門としているパマペイント。製作にはペーパーサンディング、下地、乾燥炉、マスキング、仕上げ塗装など、およそ30の工程があり、これらをスタッフで分担して1周間に100本程度のフレームを仕上げている。

 「特に気を遣うのは、UVコートなどの仕上げ。ほこりなどがない場所で塗装する必要がある」とアウコーネ社長。そして、C60にコーティング加工を施して仕上げる鮮やかな手さばきを見せてくれた。

サンディングをするパートのスタッフたちサンディングをするパートのスタッフたち
コーティング作業中のマッシモ・アウコーネ社長コーティング作業中のマッシモ・アウコーネ社長
コーティング後(右)と未加工のフレームを見比べるマッシモ・アウコーネ社長コーティング後(右)と未加工のフレームを見比べるマッシモ・アウコーネ社長

繊細なタッチで素早く吹き付け

マスキング後はカラフルな塗装作業へ。マッテオ・シモネッティさんが担当マスキング後はカラフルな塗装作業へ。マッテオ・シモネッティさんが担当

 スタッフのマッテオ・シモネッティさん(Matteo Simonetti)は、この道9年。趣味は自転車なのかと記者が尋ねると、シモネッティさんは笑いながら「いや、友だちとはサッカーを楽しんでいるよ」と答えた。そして「自転車のペイントは仕事としてやりがいがある。サッカーじゃペイントはできないしね」と続けた。

無地のフレームにディティールのシールを配置する作業

※ライトロ社のカメラ「ライトロ イルム」で撮影した画像は、撮影後にピント位置を変えられる点が最大の特徴です。マウスのクリック、スマホの場合画面のタッチで背景・前景といったピント調整を楽しんでください。

下塗りの終わったフレームがメリーゴーランドのように吊り下げられていた下塗りの終わったフレームがメリーゴーランドのように吊り下げられていた
ディティールを配置したら、ペイント用にマスキングを施していくディティールを配置したら、ペイント用にマスキングを施していく
20年かけて塗り固め続けたペイントの山。「(これを始めた)社長はマスターだよ(笑)」とマッテオ・シモネッティさん20年かけて塗り固め続けたペイントの山。「(これを始めた)社長はマスターだよ(笑)」とマッテオ・シモネッティさん

 C60の美しいグラデーションや、クラシカルなコルナゴの有機的なパターンがここで生み出されていると思うと感慨深い。ペイントの吹きつけ作業に見入っていると、シモネッティさんが「やってみる?」と記者に声をかけてくれた。

 恐る恐るスプレーを持ち、レバーを優しく握ったつもりだったが、記者が描けたのはベタベタとした丸…。「繊細なタッチが大切なんだ」と笑い、ふわりとペイントしてみせるシモネッティさんの姿に、改めてパマペイントが優れた職人の集まりであることを認識させられた。

「グリッターは高価なんだ」とラメ素材を混ぜた液を見せるマッテオ・シモネッティさん「グリッターは高価なんだ」とラメ素材を混ぜた液を見せるマッテオ・シモネッティさん
「イタリアンスイーツを召し上がれ」とダニエラさん。パマペイントで唯一の女性スタッフ「イタリアンスイーツを召し上がれ」とダニエラさん。パマペイントで唯一の女性スタッフ
パマペイント社員と写る「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」一行パマペイント社員と写る「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」一行

◇         ◇

 エルネスト・コルナゴ氏は会社を創設する前、将来を嘱望された自転車競技選手だったという。なるほど、レースやプロ選手への熱い想いがコルナゴ本社には充満していると、今回の訪問を通じて実感した。そして、それよりも強く感銘を受けたのは、日ごろビジネスとしては厳しく切り盛りしつつも「数あるブランドの中からコルナゴを選んでくれたことへの感謝」を伝えようとするエルネスト・コルナゴ氏の謙虚で誠実な姿だった。

コルナゴ本社社長室で仕事をする様子をみせてくれたエルネスト・コルナゴ氏コルナゴ本社社長室で仕事をする様子をみせてくれたエルネスト・コルナゴ氏

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