イタリアのスポーツバイクを生む職人たち<前編>創設者エルネスト・コルナゴ氏が自ら紹介 本社&自宅工房でみたブランドの真髄

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 イタリアのスポーツバイクメーカー「コルナゴ」は、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)らプロ選手が駆る高性能バイクを世に送り出し、数々の栄光でロードレースシーンを彩ってきた名門ブランドだ。2014年、創業60周年を機に登場させたフラッグシップモデル「C60」は、同社が持つ技術やデザインセンスを継承しつつ、より軽量で剛性バランスに優れた新世代の走りを生み出した。伝統とテクノロジーが共存するコルナゴの真髄を探ろうと、記者は同社の本社と創設者エルネスト・コルナゴ(Ernesto Colnago)氏の自宅工房、そして塗装を請け負う「パマペイント」社を訪れた。<前編>では、本社と自宅工房を紹介する。(レポート 柄沢亜希)

エルネスト・コルナゴ氏邸宅下の工房で実際の作業を見学。手前の男性はこの道27年だという=イタリア、カンビアーゴ(写真・柄沢亜希)エルネスト・コルナゴ氏邸宅下の工房で実際の作業を見学。手前の男性はこの道27年だという=イタリア、カンビアーゴ(写真・柄沢亜希)

本社ミュージアムのバイクは「子どもたちのよう」

コルナゴ本社のミュージアムには70~80台の名車を展示コルナゴ本社のミュージアムには70~80台の名車を展示

 コルナゴは、創設者で現社長のエルネスト・コルナゴ氏が生まれ育ったイタリア北部、ミラノ近郊の街カンビアーゴに本社を構える。世界市場に向けての受注・販売などを30人ほどの社員が管理しているほか、同じ建物内に、これまで生産してきた特別モデルを保管するミュージアムや、最新モデルのショールームを併設する。

 本社の一角を占めるミュージアムには、70~80台の自転車がていねいに並べられていた。一般公開はされておらず、世界各地のディーラーらが訪れた際に、特別に入ることができるのだという。エルネスト・コルナゴ氏とともに、甥でセールスマネージャーのアレックス(Alex)・コルナゴ氏が案内してくれた。

創設者エルネスト・コルナゴ氏(右)と甥でセールスマネージャーのアレックス・コルナゴ氏創設者エルネスト・コルナゴ氏(右)と甥でセールスマネージャーのアレックス・コルナゴ氏
「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」でコルナゴ本社を訪れた参加者。カットしたチューブをおみやげに「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」でコルナゴ本社を訪れた参加者。カットしたチューブをおみやげに

 ミュージアムの自転車はどれも、選手が実戦で乗ったものや記念モデルなど特別なバイクばかり。エルネスト・コルナゴ氏にとって最も心に残るバイクはどれかと記者が問うと、「すべてのバイクは子どもたちのようで、ひとつを選ぶのは難しい」としばらく考えた後、険しい石畳で争われるクラシックレース「パリ~ルーベ」における“5勝バイク”を指差した。

 並んでいたのは、かつてのイタリアの強豪チーム「マペイ」がパリ~ルーベで挙げた5つの勝利を支えた名車たち。2010年にラリーカーの事故で死亡した故フランコ・バッレリーニが、1995年に続き98年に2勝目を挙げたバイクは、偉業に敬意を表して付着した泥をそのままに保管されていた。

故フランコ・バッレリーニが1998年に「パリ~ルーベ」で勝利したバイクを持つエルネスト・コルナゴ氏故フランコ・バッレリーニが1998年に「パリ~ルーベ」で勝利したバイクを持つエルネスト・コルナゴ氏

※ライトロ社のカメラ「ライトロ イルム」で撮影した画像は、撮影後にピント位置を変えられる点が最大の特徴です。マウスのクリック、スマホの場合画面のタッチで背景・前景といったピント調整を楽しんでください。

最新技術、快適性、そして美の追求

フェラーリと協業したコンセプトモデル。世界に3台現存するというフェラーリと協業したコンセプトモデル。世界に3台現存するという

 コルナゴがスポーツカーブランド「フェラーリ」との協業で展開する「CF」シリーズでは、世界に3台しかないコンセプトモデルも陳列されていた。1987年、フェラーリに「特別なバイクを作ってほしい」とオーダーしてできあがったものは、「長さを変えられるステム、油圧ブレーキ、ストレートフォーク、カーボン素材、前後ディレイラーなしの内装8段変速、インテグレーデッドケーブルなど、すべてがスペシャルでした」とアレックス・コルナゴ氏が説明した。

 さらにアレックス氏は、「バイクは完璧に機能した」と前置きした上で、「13kgと重すぎること、また高価すぎたため製品化はされませんでした。ただし、カーボン技術やコルナゴが強みとするストレートフォークは継承された」と、新技術を積極的に研究して成長してきた同社の歩みを振り返った。

ストレートフォークはその後の製品に継承されたストレートフォークはその後の製品に継承された
内装8段と画期的ながら重量過多となった駆動部分内装8段と画期的ながら重量過多となった駆動部分

 ほかに、軽量化を目的として各所に手作業で穴を穿ったエディ・メルクス用バイクをはじめ、ローマ法王に贈呈した記念バイク、エルネスト・コルナゴ氏結婚50周年記念モデルや80歳記念バイクも並んだ。入口近くに置かれたC60のプロトタイプは、フレームの形が判別されにくいよう、全体にカモフラージュのための柄が施されていた。

あらゆるパーツに穴を開け軽量化を目指したあらゆるパーツに穴を開け軽量化を目指した
トップチューブがまるでキャンバスであるかのように描かれたペイントトップチューブがまるでキャンバスであるかのように描かれたペイント
全体に柄を施しフレーム形状をわかりにくくした「C60」のプロトタイプ全体に柄を施しフレーム形状をわかりにくくした「C60」のプロトタイプ

コルナゴ氏の邸宅の下の工房に潜入

エルネスト・コルナゴ氏から「長年ありがとう」とコメントをもらいつつ本を受け取る「ミソノイサイクル」の御園井智三郎さんエルネスト・コルナゴ氏から「長年ありがとう」とコメントをもらいつつ本を受け取る「ミソノイサイクル」の御園井智三郎さん

 社長室では、エルネスト・コルナゴ氏が自ら出迎えてくれた。コルナゴを輸入する日本総代理店「エヌビーエス」が主催した「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」の参加者10人に対し、エルネスト・コルナゴ氏は一人ひとりと握手を交わし、コルナゴの歴史を収めた大型本にサインをしてプレゼントした。静岡県浜松市でおよそ120年続く自転車店「ミソノイサイクル」の五代目、御園井智三郎さんは、コルナゴ氏から長年の同社製品取り扱いに対して感謝を述べられ、「嬉しいです」と感じ入ったように本を抱えた。

エルネスト・コルナゴ氏の社長室は数々の装飾品に囲まれていたエルネスト・コルナゴ氏の社長室は数々の装飾品に囲まれていた
受け取った本を持ちエルネスト・コルナゴ氏を囲んで記念撮影する「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」参加者受け取った本を持ちエルネスト・コルナゴ氏を囲んで記念撮影する「コルナゴ本社&ジロ・デ・イタリア観戦ツアー」参加者
本社前の道を挟んで建つエルネスト・コルナゴ氏の邸宅本社前の道を挟んで建つエルネスト・コルナゴ氏の邸宅

 さらに、エルネスト・コルナゴ氏の自宅の下にはいまも稼働する工房があると聞き、訪れた。“秘密基地”のような雰囲気にわくわくしながら入っていくと、勤続27年という男性が接着剤でチューブをつなぐ工程を手作業で行なっているところだった。アレックス・コルナゴ氏によれば、こうして自宅に工房を構えるスタイルは、イタリアの老舗自転車ブランドにはよくあるのだという。

 現在ここでは6人ほどの職人が働いており、C60を1週間で110~120本完成させているという。接着作業に続くのは、ケーブル用の穴を開け、アルコールで汚れを取り、品質チェックの後に梱包する作業。汚れを取る場面では、ラック1台分の作業を終えるたびに、新たな汚れなどが付着しないようゴム手袋を新調していたのが印象的だった。

<後編 塗装のプロフェッショナルが生むコルナゴ「C60」>へつづく

フレームのパーツに接着剤を塗っていくフレームのパーツに接着剤を塗っていく
接着を待つカーボンチューブ接着を待つカーボンチューブ
接着剤でつないだチューブは専用機にセットして乾燥機へ入れる接着剤でつないだチューブは専用機にセットして乾燥機へ入れる
乾燥機から取り出したフレーム乾燥機から取り出したフレーム
フレームに穴を開けていく作業フレームに穴を開けていく作業
エルネスト・コルナゴ氏自宅下の工房では6人ほどが働いているエルネスト・コルナゴ氏自宅下の工房では6人ほどが働いている

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