「暴走族みたいな人たち」ではありません荒川での共存を目指して サイクリストと地元住民が交流と理解を深めた「芋煮会」

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 荒川河川敷道路を利用するサイクリストと荒川沿川住民との親睦を深めるため、サトイモを使った鍋料理をみんなで楽しむ「芋煮会」が、東京都北区の「志茂ゆりの木公園」で5月10日に開かれた。サイクリストの走行マナーアップやルール順守を呼びかける「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」が主催し、サイクリストと地元の方々がお互いの理解を深めつつ交流を楽しんだ。

(レポート:グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事 瀬戸圭祐)

本格的な「芋煮会」でサイクリストと荒川沿川住民が親睦を深めた(写真・中林正二郎)本格的な「芋煮会」でサイクリストと荒川沿川住民が親睦を深めた(写真・中林正二郎)

「より良い自転車社会」のために

 「自転車で荒川を走っているのって、暴走族みたいな人たちなんでしょ?」

 グッド・チャリズム宣言プロジェクトは、荒川河川敷道路におけるサイクリストの走行マナーアップやルール順守を呼びかける活動に取り組んできたが、荒川沿川住民の方からの言葉に、強烈な不意打ちパンチを食らってしまった。

荒川河川敷でマナーアップを呼びかけるグッド・チャリズム宣言プロジェクトのメンバーたち(2014年4月)荒川河川敷でマナーアップを呼びかけるグッド・チャリズム宣言プロジェクトのメンバーたち(2014年4月)
荒川河川敷で本格的なゴミ拾いを行った(2014年8月)荒川河川敷で本格的なゴミ拾いを行った(2014年8月)

 東京都内を流れる荒川下流域の河川敷道路は、サイクリングロードではない。正式には災害時に物資などを輸送するための「緊急用河川敷道路」だが、平常時は一般に開放されていて、散策、ジョギング、そしてサイクリングなどを楽しむことができる。利用者は近くに住まう方が多く、沿川住民の方たちにとっては昔からの憩いの場だ。

受付には、グッドチャリズム宣言プロジェクトの荒川活動のPR用「あらかわろう」フラッグと芋煮会のTシャツを掲示(写真・中林正二郎)受付には、グッドチャリズム宣言プロジェクトの荒川活動のPR用「あらかわろう」フラッグと芋煮会のTシャツを掲示(写真・中林正二郎)

 しかし昨今の自転車ブームで、緊急用河川敷道路を高速走行するサイクリストが増え、事故も少なくない。河川敷を長年利用されてきた地元住民の方々には、「のんびりとした河川敷を、ヘルメットやサングラスをつけて猛スピードで走り抜けていく傍若無人な怖い人たち」というイメージができあがっていたのである。

 グッド・チャリズム宣言プロジェクトは、これまでサイクリストに向けてマナーアップの働きかけをしてきたが、「より良い自転車社会」のためには沿川住民の方々に理解を求めるとともに、サイクリストと仲良く共存できる環境を作っていかねばならないと強く感じるに至った。

鍋を囲んでコミュニケーション

今回はグッドチャリズム宣言プロジェクトと全日本芋煮会同好会の共同開催(写真・中林正二郎)今回はグッドチャリズム宣言プロジェクトと全日本芋煮会同好会の共同開催(写真・中林正二郎)

 そんな時に、「芋煮会」をやってはどうかというアイデアが浮上した。芋煮会は鍋料理を屋外で作って大勢で楽しむ行事で、主に東北地方で地域の伝統的な行事として催されてきた。そこには「持ち寄る」「自分たちでつくる」「分け合う」という、コミュニケーションの重要な要素が集約されている。全国に向けて芋煮会の普及活動をしている全日本芋煮会同好会のことを知り、「グッチャリ・あらかわろう芋煮会 feat.全日本芋煮会同好会」として開催することになった。

 イベントの目的はサイクリスト同士の親睦会ではなく、サイクリストと荒川沿川住民との結びつきや、お互いの理解を深めることであり、できる限り地元の方々に喜んでいただけることを優先した。

地元の方々をおもてなしする芋煮。肉も野菜もコンニャクも入り、その下には里芋がたくさん煮立っている(写真・中林正二郎)地元の方々をおもてなしする芋煮。肉も野菜もコンニャクも入り、その下には里芋がたくさん煮立っている(写真・中林正二郎)

 北区の関係者たちと相談しながら準備を進め、会場は荒川河川敷ではなく、地元の人が立ち寄りやすい岩淵水門近くの志茂ゆりの木公園とした。食材はできるだけ地元商店街で調達した。趣旨に賛同してくださった地元商店街の方々からは食材の差し入れをいただき、北区からは多くのミネラルウォーターなどをご提供いただいた。

40人のサイクリストのほとんどが各地から自走で参加。片道数十km以上走ってきた人も多数40人のサイクリストのほとんどが各地から自走で参加。片道数十km以上走ってきた人も多数
地元の方が差し入れてくださったコンニャク。これを手でちぎって煮込むのだ(写真・中林正二郎)地元の方が差し入れてくださったコンニャク。これを手でちぎって煮込むのだ(写真・中林正二郎)

仕込みから味付けまで和気あいあい

手で細かくちぎって株分けしたキノコ類を鍋に入れていく。思わず笑顔(写真・中林正二郎)手で細かくちぎって株分けしたキノコ類を鍋に入れていく。思わず笑顔(写真・中林正二郎)

 当日は5月初旬とは思えない夏日となり、朝から集まったサイクリストたちは買い出し班、テーブルなどの設営班、火起こし担当のかまど班などに分かれて準備にとりかかった。地元の方々は料理ができ上がったころに招待するはずだったが、準備から手伝ってくださる方もいて、さっそくコミュニケーションが始まった。

 設営が済むと、調理をスタート。主食である里芋の皮むきなど、いろんな食材の仕込みを和気あいあいとみんなで楽しむ。鍋の味は「牛肉としょうゆ味の山形風」と、「豚肉とみそで味付けした宮城風」の2種類で、プロである芋煮会同好会のメンバーがそれぞれ調理の指導とサポートをしてくれた。食材を入れ、何度も味見をしながら調味料を加えていき、火加減を調節しながら煮込んでいく。

材料は里芋が中心だが、ゴボウやニンジンなど地元で入手した新鮮な野菜がたくさん(写真・中林正二郎)材料は里芋が中心だが、ゴボウやニンジンなど地元で入手した新鮮な野菜がたくさん(写真・中林正二郎)
隠し味の生姜を細かく刻んで最初に炒める。これがおいしさのちょっとした秘密(写真・中林正二郎)隠し味の生姜を細かく刻んで最初に炒める。これがおいしさのちょっとした秘密(写真・中林正二郎)
公園にあるカマドで火を起こし、薪で火力を調節するのは技術が必要公園にあるカマドで火を起こし、薪で火力を調節するのは技術が必要
皆で切って下ごしらえした野菜を豪快に放り込む(写真・中林正二郎)皆で切って下ごしらえした野菜を豪快に放り込む(写真・中林正二郎)
食材を寸胴鍋に入れて煮立つのを待つ間に、記念撮影食材を寸胴鍋に入れて煮立つのを待つ間に、記念撮影

 その頃になると、地元の方々や一般サイクリストが次々にやってきた。サイクリストたちはスタッフとして地元の方々をおもてなし。さらに、さいたま市の自転車まちづくり推進課の方々も11人が参加してくださった。当日は「赤羽馬鹿祭り」という大規模な祭りと重なってしまったが、地元の方々とサイクリスト、芋煮会同好会のメンバーを含め総勢75人が集まり、大いに盛り上がった。

総勢約75人が参加。夏日の炎天下にもかかわらず、熱い芋煮にみんなで舌鼓(写真・中林正二郎)総勢約75人が参加。夏日の炎天下にもかかわらず、熱い芋煮にみんなで舌鼓(写真・中林正二郎)

「食と人 共に煮込んで 人つなぐ」

地元の子供たちもたくさん来てくれて、「おいしいぃ」を連発した(写真・中林正二郎)地元の子供たちもたくさん来てくれて、「おいしいぃ」を連発した(写真・中林正二郎)

 山形風も宮城風もそれぞれ芋煮会同好会のメンバーが“料理長”を務めただけあって、おいしいという言葉だけでは表せない絶妙な味。芋煮をきっかけに、さまざまな会話が進む。「食と人 共に煮込んで 人つなぐ」という芋煮会同好会の合言葉どおり、人と人、サイクリストと地元の方々とのコミュニケーションが深まっていき、「ぜひ、またやりましょう!」といううれしい言葉をたくさんいただいた。

 ひと通り食べた後は、鍋にカレールーを溶いてカレーうどんを作り、具もスープも残さず完食。ゴミを極力出さないようマイお椀、マイ箸、マイカップを原則とする、環境にも配慮した芋煮会同好会のイベント運営には見習うべきものが多かった。

このカレーうどん、野菜や芋やお肉のエキスでメッチャおいしい(写真・中林正二郎)このカレーうどん、野菜や芋やお肉のエキスでメッチャおいしい(写真・中林正二郎)
家庭では出せない味は、主婦やお母様方にも大好評(写真・中林正二郎)家庭では出せない味は、主婦やお母様方にも大好評(写真・中林正二郎)

 今回、サイクリストも地域住民の方も、みんな荒川を愛する気持ちは同じということを実感できた。イベントを通じて相互理解が深まり、河川敷の走行マナーが向上し、さらにはサイクリストが地域振興に一役買う存在になれれば、とても幸せなことだと思う。こうした交流の輪が他の地域にも大きく広がっていくことを願って、今後も活動を続けていきたい。

車いすライダーの自転車仲間も神奈川県から来場。もちろん一人で自走しての参加だ車いすライダーの自転車仲間も神奈川県から来場。もちろん一人で自走しての参加だ
最後まで楽しんだ参加者みんなで記念撮影(写真・中林正二郎)最後まで楽しんだ参加者みんなで記念撮影(写真・中林正二郎)

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