MTBのすそ野を広げる新クラス編成を導入“魔の最終カーブ”を攻略 2年目の「ダウンヒルシリーズ」開幕戦を井本はじめが制す

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 2年目を迎えたマウンテンバイクダウンヒル競技のシリーズ戦「ダウンヒルシリーズ」の開幕戦が山口市の「十種ヶ峰(とくさがみね)ウッドパーク」で5月9、10日に開催され、トップカテゴリーの「プロクラス」では井本はじめ(SRAM / LITEC)が優勝を飾った。今シーズンは昇格・降格のある新しいクラス編成が導入され、各カテゴリーのレースが白熱。プロ選手による講座も開かれ、初年度よりもさらにサービスが充実した大会になった。

転倒の相次いだ超ドライな路面を攻略し、優勝した井本はじめ(SRAM/LITEC)転倒の相次いだ超ドライな路面を攻略し、優勝した井本はじめ(SRAM/LITEC)

プロに挑める「道場破り」システム導入

 開幕戦の会場には、2年連続で十種ヶ峰ウッドパークが選ばれた。1540mの特設コースは、前半は森の中のシングルトラック(道幅の狭いコース)を走り、後半はスキー場を疾走するハイスピードコース。初心者からプロまで幅広い層に対応し、ライン取り次第で誰もが満足できるレイアウトが用意された。メーン会場から見える位置にロードギャップ(道を飛び越えるジャンプ台)が設置され、トップライダーたちのジャンプが観客を沸かせた。

タイムドセッションでは3位だった井本はじめ(SRAM/LITEC)タイムドセッションでは3位だった井本はじめ(SRAM/LITEC)
メーン会場へ向かう激坂を下るKLUB KATZ のライダーメーン会場へ向かう激坂を下るKLUB KATZ のライダー

 コースのコンセプトは、オーガナイザーの志賀孝治氏いわく「ローカル殺し」。(地元の)ローカルライダーも、遠方からの参加者も、当日会場に来た全員が平等な条件で走れるように、常設コース3割、特設ルート7割というレイアウトで行われた。

 また、昨年からの変更点は2つ。ひとつは、新設された「クロスカントリーバイククラス」だ。「ダウンヒルバイクは持ってない…でも、せっかくだから出てみたい!」というライダーのために、リアサスペンションの装備されていないハードテイルバイクなら何でもOK、という間口を広げるクラスを設置した。今回は5人がエントリーし、会場のレンタルバイクで出場した親子もタイム計測を楽しんだ。

土曜日の夕方、「井本はじめのライン取り講座」で参加者に“最速ライン”を伝授する井本はじめ(右)土曜日の夕方、「井本はじめのライン取り講座」で参加者に“最速ライン”を伝授する井本はじめ(右)
「阿藤寛のセッティングお悩み講座」は順番待ちがでるほどの好評を博した「阿藤寛のセッティングお悩み講座」は順番待ちがでるほどの好評を博した

 もうひとつはクラス編成。「プロ」というクラスを新設し、その下に「エリート」「エキスパート」「スポーツ」「ファーストタイマー」「クロスカントリーバイククラス」という競技力別のピラミッドを構成して、上位クラスを目指しやすい仕組みとした。エリート~ファーストタイマー間には昇格・降格の基準があり、成績によって上下する。一方でプロは大会事務局の承認を得た者のみが走れるクラス。自他共に認める最高峰のメンバーが在籍でき、優勝賞金10万円を争う。今回は、昨年までMTBの公式戦として開催されてきた「Jシリーズ」の優勝経験者7人がプロクラスに名を連ねた。

安達靖(SRAM/LITEC)はタイムドセッションで無念のパンク安達靖(SRAM/LITEC)はタイムドセッションで無念のパンク
中国地方きっての新進気鋭の若手・田丸裕(SRAM/LITEC rising)はエリートクラス優勝候補のひとり中国地方きっての新進気鋭の若手・田丸裕(SRAM/LITEC rising)はエリートクラス優勝候補のひとり

 また、本戦のエリート男子で優勝したライダーに、その後のプロクラスの前走者としてもう一度走る権利を与える「道場破り」のシステムも導入した。その結果、プロクラスの表彰台に上った場合は、もちろん賞金を手にすることができる。エリートクラスの上位で走るライダーたちにとってはプロに挑戦するまたとないチャンスで、負けるわけにはいかないプロライダーたちにとっても良い刺激となったはずだ。

 土曜日のタイムドセッション後には、ウッドパークカップが行われた。林の中の100mほどのコースを走り抜ける10~20秒の短いレースだが、スタートからゴールまで全てが見渡せるレイアウトは盛り上がらないわけがない。42人のエントリーがあり、小学生から十種ヶ峰会場の支配人、そしてプロクラスライダーの走りに観客は大歓声。優勝は、唯一9秒台を叩き出した井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)だった。

「ウッドパークカップ」で唯一9秒台を叩き出して優勝した井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。明らかに速い走りで観客を沸かせた「ウッドパークカップ」で唯一9秒台を叩き出して優勝した井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。明らかに速い走りで観客を沸かせた
ショートダウンヒル「ウッドパークカップ」のスタート台に立つ参加者最年少8歳の内野文太くんショートダウンヒル「ウッドパークカップ」のスタート台に立つ参加者最年少8歳の内野文太くん
女子ビギナークラスで走る地元山口県の内富久美子さん(van-quish)女子ビギナークラスで走る地元山口県の内富久美子さん(van-quish)

乾いた路面と芝で転倒者続出

 本選の日曜日は、土砂降り超マッドコンディションだった昨年とは打って変わって、晴天&風によってドライなコースになった。「ドライすぎて荒れていると言っていいくらい」とは井本談。特に、フィニッシュまで10mの位置にある最後の左カーブは乾いた路面と芝のせいで滑りやすく、転倒者が続出した。まさに“魔の最終カーブ”となった。

エリート男子は藤村飛丸(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)が優勝エリート男子は藤村飛丸(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)が優勝

 エリート男子クラスでは、タイムドセッションでトップタイムをマークした林佳亮(COMMENCAL/Georide_japan)が最後のカーブで派手に転倒。タイムドセッション2位だった藤村飛丸(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)が2分24秒961で冷静に走り、優勝を手にした。

 そして「道場破り」としてプロクラスの第一走者として走り出した藤村はここでも冷静な走りで、エリートクラス優勝時とほぼ同じタイムをたたき出す。その後、プロクラスの第一走者、浦上太郎(Transition Airlines/CLEAT)は、藤村より早いタイムでロードギャップに現れたが、ゴール前の魔の最終カーブで滑り、大幅にコースアウトしてしまった。

コース序盤のシングルトラックを走る井本はじめ(SRAM/LITEC)コース序盤のシングルトラックを走る井本はじめ(SRAM/LITEC)

 しかし、さすがはプロライダー。その後次々と出走するライダーが2分20秒を切る好タイムで記録を更新した。そして「必ず勝つつもりでした」という井本が、2分17秒238で2015年シーズンのダウンヒルシリーズ初優勝を飾った。ファンサービスとして前日に行われた「井本はじめのライン取り講座」で「最速ラインを伝授します!」と話していたとおり、参加者たちはまさに優勝者のラインを伝授されたということに。

昨年の年間ランキング1位で、ゼッケン「1」を付けて走る清水一輝(Patrol Mountain FJC)。今年からインドネシアのチームに移籍した昨年の年間ランキング1位で、ゼッケン「1」を付けて走る清水一輝(Patrol Mountain FJC)。今年からインドネシアのチームに移籍した
賞金を獲得したトップ3ライダーがミニSL「しんたろう号」に乗って退場賞金を獲得したトップ3ライダーがミニSL「しんたろう号」に乗って退場

 藤村はプロクラス出走者8人中5位。自転車を始めて2年目で、本戦当日に20歳になった若者の成長ぶりを見せつけられた結果となった。藤村はレース後、「プロクラスに参戦できて良かったです。プロに敵わない点の気付きもありました。もっと活躍できる選手になろうと思います」と話した。

日本を旅する2人のイギリス人も参加

エキスパート男子では日本を旅しているイギリス人、ピーター・ボーリンさんが優勝エキスパート男子では日本を旅しているイギリス人、ピーター・ボーリンさんが優勝

 今回、本戦へのエントリーは72人(3割が山口県)で、輪行しながら日本を旅する2人のイギリス人も参加した。ひょんなことから出会い、レースの開催を教えると山口県まで来てくれた。旅用のぼろぼろのMTBだったが、本戦ではオフィシャルメカニックであるマヴィックのレンタルサービスを使い、最新ホイールで出走。そのうちの1人、ピーター・ボーリンさんはエキスパートクラスで優勝を果たした。日本人ライダーとの交流も深まり、登録制ではない大会だからこその出会いは、彼らの日本での良い思い出の一つになったのではないだろうか。

 次戦は6月27、28日、愛知県瀬戸市のSRAM PARKで行われる。

搬送は軽トラを使用。スタート地点までは5分搬送は軽トラを使用。スタート地点までは5分
大人にも子どもにも大人気だった「しんたろう号」。十種ヶ峰ウッドパークの象徴でもある大人にも子どもにも大人気だった「しんたろう号」。十種ヶ峰ウッドパークの象徴でもある

レポート・平野志磨子
写真・Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

 

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