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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<109>落車したポッツォヴィーヴォのけがは外傷のみ ジロ・デ・イタリア注目の話題をピックアップ

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 今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが開幕! 第1ステージから熱い戦いが展開され、興奮がおさまりませんね。そんなジロですが、序盤のステージを終えて、今後の戦いのカギとなりそうないくつかの情報が現地から届いています。これらがレースにどのように影響するのか、注目の話題をピックアップしてみます。

病院から婚約者へ自ら電話

 まずは、第3ステージ残り40km付近の下りで激しく落車し、容体が心配されたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)についてお伝えしたい。

開幕前のチームプレゼンテーションに出席したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>開幕前のチームプレゼンテーションに出席したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 落車直後はその場から動くことができず横たわり、沿道の観衆やレース関係者に囲まれている状況がテレビ画面に映し出された。路面に浮かんだ血溜まりから、2011年第3ステージで落車し命を落としたワウテル・ウェイラント(ベルギー)の姿と重ね合わせたファンも少なくなかっただろう。

 イタリアメディアを中心にさまざまな報道がなされたが、レース終了から約2時間後にチームがポッツォヴィーヴォの様子について正式発表。近郊のジェノヴァ市内の病院へと搬送され、重度の顔面外傷と右目上の裂傷と診断された。頭蓋骨の骨折はなく、最も心配された意識や呼吸の問題は一切なかったことも明らかにしている。

 落車した瞬間の記憶はないという彼だが、ドクターヘリで病院へ移動後、婚約者のヴァレンティナさんに電話で事態を報告したという。当面はけがの経過観察を行いながら過ごしていくこととなる。

2014年のジロ・デ・イタリアの会場で撮影したドメニコ・ポッツォヴィーヴォと婚約者のヴァレンティナさん<写真・砂田弓弦>2014年のジロ・デ・イタリアの会場で撮影したドメニコ・ポッツォヴィーヴォと婚約者のヴァレンティナさん<写真・砂田弓弦>

多くの関係者がコンタドールの総合優勝を予想

 ジロ、ツール・ド・フランス両レースでの総合優勝“ダブル・ツール”を目指すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)。大会関係者や各チームスタッフの多くが彼の総合優勝を予想する。群を抜く実績と圧倒的な存在感は、すでにライバルと一線を画している印象だ。

多くの関係者が総合優勝の最有力候補として挙げるアルベルト・コンタドール(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>多くの関係者が総合優勝の最有力候補として挙げるアルベルト・コンタドール(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 レースディレクターのマウロ・ヴェーニ氏は、コンタドールを「苦しい局面で自分自身をコントロールする能力に長けている」と評価。3週間の戦いにおいては、誰しもが経験するという「バッドデイ(極端に調子を崩す日)」が訪れても、コンタドールであれば上手くクリアできるであろうと見ているようだ。

 「今シーズンの勝利が少ないことから、自身もチームもプレッシャーを感じているだろう」と述べるのは、ロット・ソウダルのゼネラルマネージャーであるマルク・セルジャン氏。また、「そうしたプレッシャーの中で力を発揮できるのがコンタドールだ」とも。マット・ホワイト氏(オリカ・グリーンエッジスポーツディレクター)、ジャンニ・サヴィオ氏(アンドローニジョカットリゼネラルマネージャー)も、「コンタドールの実績は他を凌駕する」と口をそろえる。追随する選手としては、リッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)の名を挙げている。

 グランツール総合優勝6度の実績は、やはり現役ライダーの中では別格との見方が強いようだ。

ティンコフ・サクソは働きすぎ?

 第2ステージ以降、ティンコフ・サクソが長時間にわたってメーン集団のコントロールを担っている。蛍光イエローのトレインが集団先頭を固めている姿は、一目でインパクト十分だ。リーダーチームではないにもかかわらず(第3ステージ終了時)、なぜここまで徹底した走りを見せているのかに注目が集まっている。

 スプリンターを配していないことから、総合リーダーであるコンタドールのためのポジショニングであることはおおよそ想像ができる。先々のステージを見据え、大会全体の主導権を握る強い意志の表れであると同時に、ライバル選手やチームの攻撃を封じる意味合いもあると推察する。

徹底して集団をコントロールするティンコフ・サクソのトレイン(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>徹底して集団をコントロールするティンコフ・サクソのトレイン(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 しかし、このスタンスに誰もが納得しているわけではないようだ。フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は呆れた様子で、「コンタドールの危険回避のためであることは理解できるが、1日中集団をコントロールし続ける理由が分からない」とコメント。第3ステージでは逃げグループに加わって勝利を狙ったが、終盤にメーン集団に吸収されてしまっており、思い通りの走りができなかった悔しさをにじませていた。

 ティンコフ・サクソは、イヴァン・バッソ(イタリア)やマイケル・ロジャース(オーストラリア)らベテランがチームの中心。また、若い選手も含め山岳系のアシストが多いなかで、平地まで集団をコントロールしている現状は、山岳が本格化する大会中盤以降でどのように影響が出るか。総合優勝争いにおけるキーポイントの1つになるかもしれない。

ポートの総合優勝に向け大型キャンピングカーを試験導入

 今大会序盤のトピックの1つに、チーム スカイが導入した大型キャンピングカーの存在がある。これは、エースのポートが集中して3週間を送ることができるようチームが手配したもので、彼のジロにおける結果次第では7月のツール以降もエースクラスの選手のために取り入れていくこととなりそうだ。

 車内には、テレビやトイレ、キッチンといった生活するうえでの基本装備が整う。ホテルの駐車場に停めて利用しているが、食事やミーティングはホテルで過ごすチームメートともに行動する。

トム・ボーネン(左)と会話中のリッチー・ポート(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>トム・ボーネン(左)と会話中のリッチー・ポート(ジロ・デ・イタリア2015)<写真・砂田弓弦>

 ポートはこれまでも枕とマットレスを持参するなど、睡眠にこだわってきた。単独エースとして3週間を戦うのは実質初めてとなることもあって、チームが最大限配慮したのだろう。

 このようなスタイルは、世界を転戦するF1ドライバーやモトGP(バイクレース)のパイロットに見られる。セキュリティ面や周囲の騒音など、さまざまな懸念もあるが、エースライダーが周囲に煩わされることなく良い心身状態を維持する効果的な方法として、さらに注目を集めるかもしれない。

 近い将来、大型キャンピングカーの確保がUCIワールドチームのスタンダードとなることも大いにあり得るだろう。

ジロ第5~9ステージの展望

・第5ステージ(5月13日、ラ・スペツィア~アベトーネ、152km、難易度3)
今大会最初の山頂ゴール。アベトーネへの上りは、距離17.3km、平均勾配5.4%、最大勾配10%と、総合系ライダーが動くには難度が低めか。まずはライバルから遅れないことが重要となりそう。

・第6ステージ(5月14日、モンテカティーニ・テルメ~カスティリオーネ・デッラ・ペスカーイア、183km、難易度1)
久々の平坦ステージ。とはいっても、中盤に4級山岳を含んだいくつかのアップダウンが連続して登場。スプリンターにとっては、ここをクリアしないことには勝負に絡むことができない。

・第7ステージ(5月15日、グロッセート~フィウッジ、264km、難易度2)
今大会の最長ステージ。平坦に位置づけられているが、終盤に控える上りがゴールに向けてどのように影響するかが注目。ピュアスプリンターよりは上れるスプリンター向きのコースか。

ジロ・デ・イタリア2015 第8ステージのコールプロフィール ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2015 第8ステージのコールプロフィール ©RCS SPORT

・第8ステージ(5月16日、フィウッジ~カンピテッロ・マテーゼ、186km、難易度4)
大会最初の上級山岳ステージとなる。1級山岳カンピテッロ・マテーゼは、登坂距離13km、平均勾配6.9%、最大勾配12%。総合争いのメンバーは、大方このステージで絞られることになるはずだ。

・第9ステージ(5月17日、ベネヴェント~サン・ジョルジョ・デル・サンニオ、215km、難易度4)
中盤で2級山岳と1級山岳を立て続けに越えるレイアウト。ゴール前約12kmでも2級山岳が控えているが、レイアウト的に逃げ集団にチャンスありか。山岳賞ジャージを狙う選手が動く可能性もある。

今週の爆走ライダー-イルヌール・ザカリン(ロシア、チーム カチューシャ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 チーム カチューシャのジロ出場メンバーは、9人中8人がロシア人で構成されている。そのなかで総合エースを任されるのが、チーム1年目、25歳のザカリンだ。

 トップシーンへの登場は今年が初めてとはいえ、2007年にヨーロッパ選手権ジュニア個人TTを制するなど、国内では期待されてきた選手。2009年に禁止薬物メタンドロステノロンの陽性反応で2年間の出場停止となったが、本格復帰した2012年に現チームが研修生登録をするなど、復活が待たれていた。

 転機は昨年。UCI1クラス、2クラスのステージレースで次々と総合優勝。世界選手権のロシア代表にも抜擢され、ついに国内トップの座に成長した。

 今年に入り、ブエルタ・アル・パイス・ヴァスコ(バスク一周)で総合9位。さらにはツール・ド・ロマンディで総合優勝と、シーズン前半からエース級の活躍をみせている。チームがテーマに掲げる「オリンピックや世界選手権の出場枠獲得に向け、自国選手(ロシア人選手)でのUCIポイント獲得」をかなえる有力選手の誕生だ。

第5ステージで首位に立ったイルヌール・ザカリン(ツール・ド・ロマンディ2015)©Tim De Waele / Team Katusha第5ステージで首位に立ったイルヌール・ザカリン(ツール・ド・ロマンディ2015)©Tim De Waele / Team Katusha
最終ステージ、リーダージャージでタイムトライアルに臨んだイルヌール・ザカリン(ツール・ド・ロマンディ2015)©Tim De Waele / Team Katusha最終ステージ、リーダージャージでタイムトライアルに臨んだイルヌール・ザカリン(ツール・ド・ロマンディ2015)©Tim De Waele / Team Katusha

 今回のジロの目標は「ステージ優勝」としている。得意とするのは山岳でのアタック。パンチ力は十分で、ライバルを驚かせるベストタイミングでの飛び出しが魅力だ。TTにも強いことから、展開次第では総合上位の期待もかかる。

 ここまでは順調にステージをこなしている。重要なのは、ステージレースで未体験の第2週、第3週。誰もが苦しむ局面をどのように攻略するのか、その実力が試される。大会中盤以降、何かをやってくれるかもしれない存在として押さえてほしい。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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